スバル車のカタチはどう変わる? デザイン部長に聞く“次の一歩”

スバル車のカタチはどう変わる? デザイン部長に聞く“次の一歩”

2018.03.31

SUBARU(スバル)はクルマをデザインする時に何を大切にしていて、今後はどんな方向性を模索していくのか。本社ショールームにコンセプトカー4台を展示し、デザインを語るイベントを開催中の同社で石井デザイン部長に話を聞く機会があった。今後は「歩幅を大きく」してデザインを進化させるというが、スバルの次の一歩とは。

スバルはデザインで何を大切にしているのか

次期「レヴォーグ(?)」も展示中

東京の渋谷区恵比寿にあるスバル本社ショールームでは現在、同社のデザインを体感できるイベント「SUBARU DESIGN MUSEUM」が開催中だ。2018年3月のジュネーブ・モーターショーで世界初披露となった「VIZIV TOURER CONCEPT」など、同社のコンセプトカー4台を間近で見ることができる貴重な機会となっている。スバル「XV」のクレイモデル(粘土で作った模型)なども展示してある。

本社ショールームには、ジュネーブで公開したばかりの「VIZIV TOURER CONCEPT」も展示してある

これは書籍「スバルデザイン」(御堀直嗣著、三樹書房)の発刊を期に企画されたイベントで、期間は4月7日まで。土曜日と日曜日には、スバルのデザイン部によるプレゼンを1日に2回(13時と16時)、聞くことができる。同イベントのオープニングイベントには石井部長が登壇し、スバルのデザインについて解説した。

中島飛行機に端を発するスバルのDNA

スバルがデザインで大事にするものとは何か。石井部長はスバルの原点が中島飛行機研究所であったことから説き起こした。飛行機を作る上で最も大事なのは、パイロットが無事に帰ってくること。フランス人技師を招聘して飛行機作りに乗り出したスバルは、創業当初から安全性を大切にしており、今も「安心と愉しさ」というメッセージを掲げる。カッコいいクルマを作ろうとする場合でも、安全であることがスバル車にとって至上命題なのだ。「死亡事故ゼロを目指すクルマ作りにデザインでも協力する」と石井部長は語る。

例えば、1958年に登場した「スバル360」にも飛行機作りのスピリットが息づく。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の「三種の神器」が庶民に行き渡り、次の夢としてマイカーを求める機運が高まった時期に、廉価でクルマを提供しようとスバルが開発した軽自動車の「360」は、小さいながら広い室内が特徴で、「大人4人が乗っても赤城山を登れる」(石井部長)走破性を持っていた。この室内の作り方には、飛行機作りで得た「モノコック構造」のノウハウを活用したのだという。

「スバル360」(右側)は飛行機作りのスピリットを受け継ぐという

「360」の時代から現在までにスバルは、クロスオーバーの「アウトバック」であったりSUVの「フォレスター」であったり、最新型ではセダンとハッチバックからスタイルを選べる「インプレッサ」であったりと、さまざまなクルマを世に問うてきた。「360」以降のスバル車のデザインを分析した上で、現在のスバルがデザインのテーマに掲げるのは「ダイナミック」と「ソリッド」だ。

初代「フォレスター」の模型も展示してあった

「動物のようなしなやかさ」「シンプル」「エモーショナル」「引き算の美学」といったワードを自動車メーカーのデザインに関する説明では耳にしてきたが、石井部長は「一目でスバルの価値が分かるデザインを構築したい」と考え、「躍動感」や「カタマリ感」を感じる言葉をチョイスしたのだという。

量産車にも明確に息づくコンセプト

スバルの顧客が共通して認知しているスバル車を言葉にしたものが「ダイナミック」と「ソリッド」だったと石井部長は振り返る。これを表現するのは「スタンス」「ボリューム」「サーフェス」の3つの要素で、人間でいうと「骨格」「肉付き」「彫りの深さ」に相当するそうだ。これらをボディ全体で表現し、一目でスバル車と分かってもらえるデザインを探ろうと2013年に研究を始め、2014年にジュネーブショーで発表したのがコンセプトカー「VIZIV 2 CONCEPT」だった。

「クロスオーバー車の新しい価値提案というコンセプトで作った」(石井部長)という「VIZIV 2 CONCEPT」

スバルが「ダイナミック」と「ソリッド」という考え方を落とし込んだ初めての量産車は2016年10月に発売となった「インプレッサ」だが、「VIZIV 2」の要素を最大限に盛り込んだのは2017年5月に発売した「XV」だ。ちなみに、2018年3月28日に「ニューヨーク国際自動車ショー」で世界初公開した新型「フォレスター」は、2015年のコンセプトカー「VIZIV FUTURE CONCEPT」から多くの要素を取り入れているという。

「SUVの楽しさを一目で分かるように」(石井部長)したかったという「VIZIV FUTURE CONCEPT」(画像左)と、このコンセプトカーから多くの要素を取り入れたという新型「フォレスター」(右側、画像提供:SUBARU)

「ダイナミック」と「ソリッド」がスバル車のデザインの方向性であり、それは最新のコンセプトカー「VIZIV TOURER CONCEPT」も共有するところだ。では今後、この方向でどのような展開をスバルは見せてくれるのだろうか。

機能の進化がデザインを決める?

「自分の反省としては、今までは歩幅が少し、狭かったかな」。スバル車の2020年以降のデザインについて、がらりと変えるのか、小さな変化を積み重ねていくのかと聞くと、石井部長はこのように答えた。「もうちょっと進化の歩幅、革新の歩幅を、世の中の流れも速いので(広げたい)。崩すのではなく、同じ軸の上で、歩幅をもう少し先に持っていきたいと思っていて、次のデザインでは仕込んでいる」というのだ。

2017年の東京モーターショーでも展示された「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」

歩幅についてもう少し教えて欲しいと問うと石井部長は、「スバルのデザインは、形やトレンドを追いかける『グラフィック的』なものではないので、歩幅を広げるには機能が必要になる。機能と一緒に歩幅を広げていかなければならない。設計、研究・実験、サプライヤーまでを幅広く含めた、機能の進化を伴ったデザインの進化だ」と説明した。デザイナーの意向だけでクルマの形を決めていくのではなく、顧客のために実現したい機能を踏まえた上で、全社的に物事を進めていく姿勢を整え、大きな歩幅で前進していく。これがスバルの方向性のようだ。

機能といえば、電動化や自動化など、クルマが新機能を獲得する日は迫っている。これがデザインに影響するかどうかといえば「大きく影響する」というのが石井部長の考えだが、「今はスタディ段階なので、多くはいえない。時間を掛けて探りたい」として詳細については言及を避けた。

スバル商品企画本部・デザイン部の石井守デザイン部長

偶然だが、スバル本社でのイベントの前日、ボルボ車のデザインを統括するマクシミリアン・ミッソーニ氏(ボルボ・カー・グループ、デザイン部門バイスプレジデント)の話を聞く機会があった。同氏が語ったのは、デザインの進化においては、大きく(がらりと)変えるのも、小さな変化を重ねていくのも危険であり、ある程度の「Big Step」が不可欠ということだった。確かに、今のボルボ車は一時期の四角いイメージから大きく変化している。

石井部長が「歩幅」について語った時、ミッソーニ氏の言葉を思い出して興味深かった。スバルもボルボも、多種多様なクルマを用意して年間1,000万台を売る企業ではない分、クルマの個性を群として打ち出すことや、それがどんな個性であるかはブランド戦略上、かなり重要な要素だと思われる。両社が踏み出す次の一歩は、それぞれにとって重要な意味を持つに違いないし、ファンが多そうな両社だけに、多くの人の注目を集めることにもなるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu