アップデートしたら冷蔵室が冷凍庫に、日立が描く「新しい家電」

アップデートしたら冷蔵室が冷凍庫に、日立が描く「新しい家電」

2018.02.02

日立アプライアンス 取締役社長 徳永 俊昭氏

日立製作所は2月から、家電の新コンセプト「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」を打ち出し、新宣伝キャンペーン「ハロー!ハピネス」を開始する。

日立アプライアンス 取締役社長の徳永 俊昭氏は、「グローバル社会の構造が大きく変化し、生活が多様化するなかで、『家電はそのままでいいのか』、『ひとつ先に進まなくてはいけないのでないか』と考えていた。その答えに、気づかせてくれたのがお客様の声だった」と切り出す。

その声とは「家事の時間は夜しか取れない」や「毎日の弁当は週末に作り置きしている」といった生活実態のものから、「何年たっても愛着を感じられる家電がほしい」や「まとめ買いに対応した家電がほしい」といった日立への要望までさまざまだ。このことから日立として「こうした生活課題の声にもっと耳を傾け、真摯に向き合い、ひとりひとりに寄り添ったうれしい暮らしを実現したいと考えた」と徳永氏は語る。

こうした課題の解決には、単なる製品を提供するだけでなく、仕組みやサービスを含めて提供していくことが必要であるという結論にたどり着いた。これが、新たな家電のコンセプトにつながったという。具体的な取り組みとして、「顧客視点での商品開発強化」と「毎日の暮らしを彩るデザイン価値の創造」「デジタル技術の活用により新たな価値を提供」の3点をあげる。

2018年度にも2,3製品の"コネクテッド"家電を投入

「お客様の視点での商品開発をさらに強化」では、国内にある生活ソフト開発センターと、2017年4月にタイに開設したグローバル商品開発センター、2017年10月に設立したVoCセンターに加え、2月からは外部機関との協同研究を行う生活マーケティング機能の強化を進め、顧客の声を吸い上げる活動を加速。商品やサービスに反映させる。

「毎日の暮らしを彩るデザイン価値の創造」では、高品質デザインの採用することにこだわる。「これまで当社が取り組んできたプレミアム商品は評価されているが、デザインがいいから日立を購入するという声はなかった。今後は、外部デザイナーとのコラボレーションを実施し、『シンプルだけど、思わず触りたくなる(Less but seductive)』というデザインを採用していく」(徳永氏)とした。

「デジタル技術の活用により新たな価値を提供」では、コネクテッド家電を順次販売。最新のソフトウェアをダウンロードすることで使い勝手や機能性を向上させる「ソフトウェア・デファインド・コンセプト」を採用するほか、コネクテッド家電をタッチポイントに新たなサービス事業の立ち上げに取り組む。

徳永氏はそれぞれの商品カテゴリーで必ずコネクテッド家電を用意し、「基本的にはコネクテッドでいくことを考えたい」と強調する。それを前提に、スマホ連携やAIスピーカーへの対応強化のほか、社外パートナーとの連携による新サービスの提供も視野に入れるという。

「今の洗濯機は節水に振り切った機能となっているが、水はもう少し使ってもいいし、時間が少しかかってもいいが、子供の泥汚れをしっかり落としたいというニーズに対して、泥汚れ専用モードを用意して、これを専用で使えるようにするといった機能を考えたい」(徳永氏)

同様に、冷蔵庫でも冷蔵室を冷凍室として使うソフトウェアを提供するといった新しい冷蔵庫のあり方も考えているという。「もちろん、実現のためには商品企画を詰めたり、技術的なハードルを超える必要もある。技術の日立に恥じない形で詰めていきたい」(徳永氏)。

新コンセプト製品の第1弾では、2月下旬に大容量冷蔵庫「真空チルド R-HW60J」とコネクテッド家電のロボットクリーナー「minimaru RV-EX20」、IHクッキングヒーター「火加減マイスター HT-L350KTWF」を投入する。また、来年度中にも2、3商品のコネクテッド家電を追加する計画だ。

宣伝キャンペーンのキーワード「ハロー!ハピネス」は、テレビCMなどのマス広告に加えて、デジタル広告を強化。WebやSNSを通じて、どのようなハピネスが一人ひとりの生活にもたらされるのか、それを生み出す日立の技術はなにかを、多様な生活シーンにあわせて提案するという。

新コンセプトに対応した家電製品群

イメージキャラクターには引き続き嵐を起用し、8年に渡って「エコにたし算」で行ってきた機能軸を中心とした訴求から、「生活シーンを軸にした新たな価値の訴求」へと転換することになる。家庭内だけでなく、人や家、街、社会がデータで結ばれ、生活の全方位に製品、仕組み、サービスを提供することで、家電を進化させるという狙いが伝わるのか。

製品作りと宣伝イメージの刷新だけでなく、ラストワンピースが、これを実現するための組織づくりだ。

日立製作所は2017年4月に、生活・エコシステム事業統括本部を設置。家電および空調を担当する日立アプライアンスと、家電製品の販売およびサービスを担当する日立コンシューマ・マーケティングを傘下に置いた。この組織で目指すのは、製販一体体制の実現だ。

日立製作所 生活・エコシステム事業統括本部長 中村 晃一郎氏

日立の家電事業は、歴史的にモノづくり側が主導権を握る傾向が強い。だが新体制では、統括本部のトップに日立コンシューマ・マーケティングの社長を務めていた中村晃一郎氏が就任し、製販一体体制の推進を裏付けた。中村氏は「お客様の声を聞くためには、製販一体の体制が不可欠。この体制でなければ、360°ハピネスは成し得ない」と語る。

日立製作所全体の方向性は、社会イノベーション事業を主軸におき、これによって「社会の課題を解決する企業」になることを目指している。では、家電で取り組む社会ノベーションとはなにか。

「家電を使用する生活者の課題を解決することである。日立の家電事業は、『ヒューマンセントリック ソーシャルイノベーションビジネス』に取り組み、生活課題を解決する企業になる。これは、IT、OT、プロダクトを持つ日立だからこそ実現できるものだ」(徳永氏)

「日立の新しい家電がはじまる」というのが、新コンセプトによって目指す姿。日立の家電がどう変わるのか、それは現時点でぼんやりとしたものだが、今後の数年に渡る日立の家電の変化に注目しておきたい。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。