ドコモのインド事業が収束へ前進、海外投資も終わりへ?

ドコモのインド事業が収束へ前進、海外投資も終わりへ?

2016.06.24

NTTドコモは24日、保有株の売却を巡りインドの財閥企業タタ・サンズと係争していた件で、ロンドン国際仲裁裁判所より仲裁裁定を受領、ドコモの主張が認められたと発表した。これにより、ドコモのインド事業は収束に向けて前進したことになる。それは同時にドコモにとって積極的な海外投資戦略の終わりを意味するかもしれない。

係争の経緯

ドコモがインド市場への参入を表明したのは2008年11月。インドのモバイル事業の将来性を評価し、タタ・サンズ傘下のモバイル通信事業者タタ・テレサービシズに出資すると発表した。同社の株式の約26%を取得、そのために約2640億円を要した。

タタ・ドコモウェブサイト

巨額の出資となったが、注ぎ込んだのはそれだけにとどまらない。翌年3月には関連会社タタ・テレサービシズ マハラシュトラへの約110億円の出資も公表、さらには、2011年5月には、ネットワーク増強のためにタタ・サンズへ約146億円の追加出資も実行した。

しかし、これらの投資から得るものは少なかった。契約者数を大きく伸ばしたものの、出資前からタタ・テレサービシズが保有していた周波数免許が無効にされるなど、想定外の事態が重なり、タタ・テレサービシズの事業は立ち行かなくなる。2014年3月末において、ドコモには2,200億円以上の関連損失になった。タタ・テレサービシズ自身も960億円の債務超過となった。

ドコモは、インドの市場環境も考慮し、撤退を決意する。それが2014年4月のことだ。しかし、この撤退は出資当初から用意されていたプランでもある。万が一に備えて、タタ・サンズ、タタ・テレサービシズと株主間協定を締結し、退路を確保していたからだ。その内容は、2014年3月期において、所定の業績市場を下回った場合に、一定の条件で株式を売却できるというものだった。ドコモはその条件に従い、タタ・テレサービシズの全株式の買取りを同年7月にタタ側に求めた。

想定外だったのは、タタ側が協定を履行しなかったことかもしれない。そのため、ドコモは2015年1月にロンドン国際仲裁裁判所に駆け込み、仲裁の申し立てを行うことになった。ロンドン国際仲裁裁判所の裁定は、ドコモの主張を認め、タタ・サンズに損害賠償を命じるというものだった。タタ・テレサービシズの全株式と引き換えに、ドコモが要求する請求額の約1300億円を賠償するというのが具体的な内容となる。

ドコモは現段階で、損害賠償の履行についても不確定としており、収束に向かいつつあるも、いつ確定するかわからないとしている。これが今回のニュースというわけだ。

うまくいかないといえば、ドコモが過去に行った一連の海外通信事業者への投資も同じ。2002年3月期決算では、米AT&Tワイヤレス、オランダのKPNモバイルなど海外出資先の株式評価損により、8128億円(うちAT&Tが5056億円、KPNモバイルが2627億円)の減損処理を実施、それが響き、上場来初の赤字に陥った。いずれも、iモードの世界展開のために、巨額の海外投資を行ってきたが、実を結ばずに終わっている。

キャリアへの投資に否定的な新社長

海外投資では泣かされ続けてきたドコモだが、タタを最後に積極的な海外投資は終わりを迎えそうだ。ドコモの吉澤和弘新社長は海外展開に積極的な姿勢を示していないからだ。

社長就任会見で吉澤和弘氏

先日行われた社長就任会見で吉澤氏は「キャリアの規模が大きくなっているため出資は難しい」と、海外通信キャリアへの投資はきっぱりと否定する。続けて「ドコモは(出資先の)ネット・モバイルやボンジョルノにおいて、モバイルキャリアを相手に決済、課金プラットフォームを提供している。そうしたビジネスを大きくしていく余地はある」としつつも「投資ということではなく」と前置きをしている。さらに「モバイルICTソリューションをNTTグループ全体で考えていくことはある」と述べるが、こちらも「出資関係ではいかないと思うんですけど……」と補足する。海外投資の可能性をゼロとは言わないまでも、ドコモ発足当初から同社に在籍し、すべてを見てきた吉澤氏にとって、海外投資はあまりいいものに映っていないようだ。

こうしたスタンスは、ソフトバンクグループとは対照的だ。ソフトバンクグループは「ソフトバンク 2.0」というキーワードを掲げ、海外への事業投資を積極的に進めている。先日、代表取締役副社長の退任が決まったニケシュ・アローラ氏を中心に、米国、インド、東南アジアの有望な企業への投資を積極的に進めてきた。もはや、国内通信事業を担うソフトバンクは、ソフトバンクグループをなす一企業の位置になり、半投資会社化していた感がある。海外投資に否定的なドコモ、その逆をいくソフトバンクグループ。どちらが正しい道をたどっていることになるのだろうか。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu