そろそろ準備が必要?モバイル世代が存在感を出し始めたECマーケット

そろそろ準備が必要?モバイル世代が存在感を出し始めたECマーケット

2016.01.26

最新のITテクノロジーと融合しはじめた世界最大のリテーラーイベント

NRFが主催する「RETAIL'S BIG SHOW 2016」公式サイト

「いかに売るのか?」個人消費は、いうまでもなく経済の大きな柱のひとつだ。小売業界はその最先端で研究を重ねている。2016年1月17日から20日(現地時間)にニューヨークで開かれた祭典「RETAIL'S BIG SHOW 2016」は、世界中の小売業界や流通業界が注目するイベントだ。全米小売業協会が主催するこのイベントでは、最新のリテールビジネス事例やソリューションが紹介される。講演者は300人を越え、世界的なブランドを持つメーカーやリテーラーが顔を揃え、最新の事例や研究結果を披露する。

The National Retail Federation(NRF:全米小売業協会)は、世界最大のリテール協会であり、デパートストアやチェーンストア、カタログ、インターネットリテーラーまで広範なジャンルを世界規模でサポートする団体である。前身であるNational Retail Dry Goods Associationの設立が1911年。以来、消費資本主義の本場である米国において、百年以上にわたる歴史を持ち、同イベントも今年で105回目を迎えている。

The North FaceのAIプラットフォーム。IBMの人工知能ワトソンと連携している。対話的に答えていくことで、目的の商品へとたどり着く

IT技術が絶え間なく進化する現代。100年前では想像もつかなかったようなIT技術が至る所で紹介されている。たとえば人工知能もそのひとつ。アウトドア用品や登山用衣服などを手がけるThe North FaceがIBMの人工知能ワトソンと提携し、ユーザーを対象に60日間にわたり同社のオンラインショップで検証を行ったことを披露している。現在でもベータ版として公開されているが「WHERE AND WHEN WILL YOU BE USING THIS JACKET?」と尋ねるワトソンと対話していくことで目的の商品へとたどり着ける。実際に試してみると、その精度はもちろん、楽しさも提供してくれる。心地よく満足のいく買い物ができそうだ。75%のユーザーが再度利用したいという意向を示し、ユーザーの滞在時間も以前よりも2分増加しているそうだ。

NRFが発表している「Top 100 Retailers」。米国内のビッグリテイラーたちの熾烈な競争がみえる

NRFが発表しているリテーラーのランキング「Top 100 Retailers」は、米国内でのセールス金額をもとに試算されたもので、各年のランキングがWebページにも掲載されている。

米国内でのセールスにおいて、2008年から2015年を通じての1位は、不動のウォルマート。だが、2009年度版(2008Sales)の19位からランキングに現れるAmazon.comは、2010年度版(2009Sales)の26位を経て、2011年度版(2010Sales)の19位、2012年度版(2011Sales)の15位、2013年度版(2012Sales)の11位、2014年度版(2013Sales)と着実に順位を上げてきた。2015年度版(2014Sales)は9位と前年同順位だが、米国内売り上げで20%を超える対前年成長率を維持している。オンライン販売を専業として行うAmazonの売り上げが、消費大国である米国のリテール全体の中でも際立つ伸びを示している。

2015年末に見られたスマートフォン経由による購買の著しい増加

著しい成長を見せるEC市場だが、なかでも最近各社から発表されているスマートフォンやタブレットを中心としたモバイル経由での購入上昇の兆候は見逃せない点だ。

中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングスは、2015年11月11日のバーゲンセール取引額が1日で912億元(約1兆7620億円)に達し、売上高の68%がモバイル機器での受注だったことも明らかにしている。Amazonも2015年の感謝祭から年末にかけてのホリデーシーズン期間中、70%のユーザーがモバイル端末を通して購買していることを発表した。

また、Adobeが1月に発表した最新の米国のリサーチ結果では、2015年のホリデーシーズンにおけるオンライン消費を昨年比12.7%増と推定している。スマートフォン単体でのトラフィックが、デスクトップを追い抜く期間があったことに触れている。クリスマスや年末の期間とあって、各社工夫を凝らしたキャンペーンを展開するホリデーシーズンではあるが、例年に無いスマートフォンの勢いが特徴として出始めていることがわかる。

「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」

日本においても、同様の傾向が経済産業省のデータから読み取れる。昨年5月に公開された「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」では、2014年のBtoC-EC市場規模を12兆7,970億円(昨年度比14.6%)と試算、BtoC-EC分野のトピックスとしてスマートフォン経由の売上げの上昇を採り上げている。ヤフーや楽天、千趣会、ニッセン、スタートトゥデイといった日本ECプレイヤー達の直近のスマートフォン経由での売上げが2014年の時点で目覚ましく上昇している。中には、売上げの過半数がモバイル経由である企業も現れている。

FRB(連邦準備制度理事会)が公開している「Consumers and Mobile Financial Services 2015(PDF)」

これらスマートフォンを含むモバイル端末による購入については、世代で見た象徴的なデータもある。FRB(連邦準備制度理事会)が2015年の3月に出した「Consumers and Mobile Financial Services 2015」は、消費者のモバイルによるオンラインバンクや購入動向の米国内での調査レポートだが、2011年から2014年の間、過去1年間のモバイルを使った支払いの有無について世代を区切ってヒアリングしている。各年を通して18-29の世代が常に高い数値を示すが、徐々にその世代が高齢層へと広がっていく様子がうかがえる。モバイルコマースは当面衰えることはなく拡大を続けていくことになる。

モバイル経由での購買が増えるなかでは、あらためてモバイルファーストな取り組みが重要となってくる。当然、Amazonやウォルマートもスマートフォンアプリには力を入れている。

モバイルファーストな時代にまず優先的にすべきこととは?

オムニチャネルというキーワード。"オンラインと実店舗を融合させ顧客にシームレスな体験を提供する"、"デバイスを問わずすべての顧客接点を統合する"など、多義的に言及されることが多い。このキーワードに戸惑う声もWeb上に散見される。各小売店のIT化の状況や規模によって、ケースバイケースで随分とやることが異なってくる。

EC化が進んでない店舗では、実店舗との融合は先の話になるだろうし、集客や顧客のリスト化が進んでいないECサイトでは、適切なタイミングでのキャンペーン戦略も限られてくる。取り扱う商品によってシームレスな体験も変わってくるだろう。NRFは、オムニチャネルについてまずすべきことを「OMNICHANNEL RETAIL INDEX 2015」と題した資料で提示している。120のリテーラーの200Webサイトを通じて調査し、そのポイントをまとめたものだ。何からはじめれば良いのかに戸惑う場合の指針のひとつになる。

1.Mobile-OPTIMIZED EMAILS モバイルに最適化されたEmail
54%のリテーラーがこれを利用している

2.MOBILE-OPTIMIZED SITE モバイルに最適化されたWeb
95%がモバイルに最適化されたWeb

3.ONLINE CUSTOMER SERVICE OPTION
35%が商品ページにライブチャットシステムを導入、75%がモバイルサイトにクリックコールを設定している

4.FLEXIBLE SHIPPING OPTIONS 柔軟な配送オプション
77%が店舗からの自宅配送を行っている一方、わずか28%しかオンラインで購入し、店舗で受け取ることを認めていない

5.RETURNS 返品
70%がオンラインでの購入品の店舗での返品を認めている

6.MARKETING OMNICHANNEL SERVICE オムニチャネルサービスをマーケティングする
46%がオムニチャネルサービスを展開していることを店舗に掲げている

7.LOYALTY PROGRAMS ポイントサービス
48%がオンライン / オフラインで互換性のあるポイントサービスを行っている

8.INVENTRY LOOK-UP 在庫調べ
49%がモバイル端末での店舗在庫情報を提示している

本質的なメッセージを伝えられるか?

Coldwater Creek

NRFのWebサイトにはカタログを中心としたリテールを展開する企業Coldwater Creekのストーリーも掲載してある。1984年に設立した同社は、店舗を400店構える盛況をみせるが、不景気の煽りを受け2014年に廃業にいたる。同社は再建へいたる道程のなかで、原点回帰となるカタログへの復帰を図る。店舗ではなくオンラインに焦点をあてたカタログビジネスは2015年の春にスタートし、400%から500%にのぼる売上げ増加を達成したという。

カタログが持つ創造性やストーリーは、編集者やライター、モデル達が創意工夫を凝らして商品の魅力を引き出す。それは、価格表や機能表だけでは伝えられない魅力だ。

日本においてもカタログを展開する企業は数多くあるが、紙媒体を中心に落ち着きのある層をファンとして取り込んできた実績がある。これはなかなか歴史の浅いインターネット企業には真似ができないチャネルだ。

オープンで開かれたデジタルの世界では、いわゆるデジタルネィティブたちが毎年出現しては、顧客として増え続けていく。この層を従来の層と同様にWeb、媒体を問わずいかにファンとして取り込んでいくのがとても重要になっていくのだと思う。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。