すっかり

すっかり"全快"なシャープ、東芝PC事業買収の勝算

2018.02.06

シャープ 代表取締役 兼 副社長 執行役員 野村 勝明氏

シャープが発表した2017年度第3四半期(2017年4~12月)の連結業績は、2017年12月の東証一部復帰後初の業績発表となった。結果は第3四半期累計として4年ぶりの最終黒字となり、同社の経営が成長軌道にあることを改めて裏付けるものになった。

売上高は前年同期比22.7%増の1兆8294億円、営業利益は271.4%増の703億円、経常利益は前年同期の152億円の赤字から711億円の黒字に転換し、当期純利益も前年同期の411億円の赤字から553億円の黒字。シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村 勝明氏は、「すべてのセグメントで増収となり、特にアドバンスディスプレイシステムは大幅な増収になった。売上高、利益とも、通期予想の達成に向けて順調に推移した」と総括した。

セグメント別でもそれぞれ好調に推移

第3四半期(2017年10~12月)の実績では、売上高は全セグメントで2桁の伸長、各利益とも黒字を継続しており、2014年度の第1四半期以来となる5四半期連続での前年同期超えとなった。四半期純利益では、前年同期比で5倍に迫る大幅な増益を記録した。2017年度第3四半期累計のセグメント別業績でも、スマートホームの売上高が前年同期比12.0%増の4396億円、営業利益は78.1%増となる311億円となった。

野村氏は「AQUOS Rを中心に携帯電話が増収になったことに加えて、コードレス掃除機のRACTIVE Air、洗濯機が好調に推移。継続的なコストダウン効果により増益になった」とした。特にフラグシップのAQUOS Rが販売好調で、第3四半期でだけ見れば販売台数が4倍に拡大し、開発工程の効率化なども相まって、収益性が高まっているという。

一方、スマートビジネスソリューションの売上高は4.7%増の2429億円、営業利益が18.6%減の125億円。「サイネージの販売増加に加えて、販促投資の増加により、海外の複合機が好調だった」という。

また、IoTエレクトロデバイスの売上高は20.1%増の3816億円、営業利益が前年同期比2.1倍となる87億円だった。スマートフォン向けカメラモジュールの大幅な増加に加え、センサーモジュールや半導体など独自デバイスの販売増も貢献したという。第3四半期だけでは営業利益が前年同期比9.3%減の51億円とマイナス成長になったが、「これは、新たに開発しているモジュールで歩留まりの影響があったもの」と説明した。

前述の通り、アドバンスディスプレイシステムの売上高については38.7%増の8363億円、営業利益295億円の黒字に転換した。

「タブレットは3倍の成長、車載用は1.3倍の成長となるなど、中型パネルが増加したほか、中国やアジア、欧州で液晶テレビの売上げも伸長し、全体で約2倍になっている。中国では液晶テレビの販売で鴻海グループの販売網を活用。ネットから販売店ルートまで、大型化の流れのなかでシャープの液晶テレビに注目が集まっている」(野村氏)

なお、アドバンスディスプレイシステムの大幅な収益改善は、車載用パネルなど中型パネルへのカテゴリーシフトやIGZO、フリーフォームディスプレイの技術による差別化のほか、コストダウンが寄与したものだという。また、8Kテレビは、日本では2018年3月までに1000台の目標を掲げているが、「ほぼ計画通りに進捗している」と述べた。

東芝のPC事業のゆくえは?

好調に推移しているものの、通期の業績見通しは10月公表値を据え置き。売上高は前年比22.4%増の2兆5100億円、営業利益は前年比48.9%増の930億円、経常利益は247.0%増の870億円、当期純利益は前年の248億円の赤字から690億円への黒字転換を目指す。

「今後も、これまでの流れを止めることなく事業拡大に取り組み、着実に通期業績予想を達成し、事業に対する投資をしっかり行い、収益力の強化と財務体質の改善を図る。中期経営計画の達成に向けては、2017年度の計画をやり抜くことで、ホップ、ステップ、ジャンプのホップをしっかりとやりたい」(野村氏)

好調な業績のなかで、いくつか注目しておくべきポイントがある。ひとつは、アップルへの依存度の行方だ。会見では、「特定顧客との取引については答えられない」として言及を避けたが、一部報道では2018年1~3月でiPhoneXの生産が計画比で半減される見込み。シャープにとっても、第4四半期の影響は避けられないだろう。

野村氏は、「カメラモジュールで他社への開拓を進めており、特定顧客への依存率は減ることになる」とする。アップルへの依存度が減少することは、経営の安定的には寄与することになるが、第3四半期の営業利益が前年比でマイナスとなったIoTエレクトロデバイスが、第4四半期にどうなるのか注目される。

2点目は、シャープが東芝のPC事業を買収するという報道の行方だ。

この件に関しても野村氏は、「個別企業との取引の話であり、回答はご容赦願いたい」と語り、会見後の同社のPC事業の考え方に対する質問にも言及を避けた。一般的ともいえるこの質問についても、この時点ではなんらコメントをしないことを考えると、むしろ、この話が現実的に進んでいることを感じざるを得ない。

実は、鴻海グループが持つ欧州などのサーバー・PCの生産拠点は、HP.incやデルの生産拠点を買収したものであり、現在もHP.incやデルから受託生産を行っている。サーバーの生産量では、全世界の6割を鴻海グループが占めているとも言われるほどだ。

ただ、PCに関してはデスクトップPCの生産が中心で、ノートPCなどの生産では力不足の印象が否めない。ここに、東芝というブランド力と、かつてノートPCでトップシェアを維持し続けた開発力、技術力が加われば、鴻海グループとしての世界的な競争力が高まる。

東芝のPC事業にとっても、失った自社生産体制を改めて構築できるというメリットがあり、お互いの補完関係が見えてくる。今回の会見で、PC事業に関するコメントをかたくなに拒んだことは、かえって気になる。今後注目しておきたい動向だといえる。

次期CEO候補は3名の中から?

そして、最後が、2018年1月からスタートした社長の戴 正呉氏と3人の共同CEO体制である。この体制では事業軸と地域軸で担当を分担し、戴氏が事業軸として8Kエコシステムとアドバンスディスプレイシステム部門を担当。地域軸ではASEANおよび米国の8Kエコシステムを担当することになる。

野村氏ら3名がCEO候補生、あと半年で後任が決まるか

一方で副社長の石田 佳久氏はAIoTとスマートホーム、スマートビジネスソリューションを担当し、地域軸では欧州・米国のAIoTを担当する。また、野村氏はIoTエレクトロデバイス部門のほか、研究開発事業本部、管理統轄本部を担当。地域軸では日本を担当することになる。代表取締役の高山 俊明氏は事業軸で担当がなく、地域軸で中国を担当することになる。

「これは、将来のCEO選出に向けた人材のプールとして実行している」と野村氏は説明。それぞれの共同CEOが事業軸と地域軸で事業責任を持ち、クロスする部分については共同CEO同士が連携を目指す。次期CEOについては、外部からの登用も視野に入れているというが、この3人のなかから選出されることが現時点では有力だ。

戴社長の手腕により、成長軌道に乗ったシャープの今後の舵取りを担う次期CEOの選出に向けた動きは、今後半年間における重要なポイントになりそうだ。

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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