好決算のアップルをどう評価すべきか - 2018年第1四半期決算より

好決算のアップルをどう評価すべきか - 2018年第1四半期決算より

2018.02.09

アップルは米国時間2月1日に、2018年第1四半期決算(2017年10-12月)を発表した。売上高は883億ドルで前年同期比13%増、1株あたりの利益は3.83ドルと、いずれもアナリストの予想を上回る結果を報告した。

アップルのビジネスの中心は引き続きiPhoneであり、今回の決算では初めて、iPhoneの売上比率が7割になった。ティム・クックCEOは、史上最高の四半期決算とした上で、「新型ラインアップから得られた過去最高の売上高を含む、幅広い分野で成長が見られた」点を強調した。

iPhone Xは実際に売れていた

999ドル(日本では11万円以上)からというこれまでよりも300ドル以上高い価格で設定されたiPhone Xは、その価格から販売減速をもたらすのではないか、との予測が出ていた。

iPhone X

モルガン・スタンレー証券のアナリスト、ケイティ・ヒーバディ氏は、iPhone Xの販売期間が他のデバイスよりも短いため、今回の決算では大きな影響が出ないだろう、との見方を出していた。つまりiPhone Xは、アップルにとってiPhone販売の減速要因であるとの見方を示していたのだ。

しかしながら、2018年第1四半期、アップルはiPhoneの販売台数7731万6000台を報告した。この数字は前年同期比1%減。今回の決算に含まれるのは13週間であり、前四半期が14週であったことを考えると、販売台数の勢いは微増、と見ることができる。

iPhone販売台数の推移(出典:アップル決算資料をもとに編集部作成)

アップルのティム・クックCEOは、iPhone X発売の11月3日以降、毎週の販売において、iPhone Xがラインアップの中で常にトップだったことを報告し、iPhone Xの販売が好調だったことをアピールした。

その結果は売上高に現れている。2018年第1四半期のiPhoneの売上高は615億7600万ドルで、前年同期比13%増となった。当然、販売価格が高いiPhone Xが多く含まれることで、800ドルをうかがう平均価格まで押し上げられ、同じ販売台数でより多くの売上高を確保できた。

既にスマートフォン市場は成長限界

アップルは2016年に続いて、2017年もiPhoneを1年間に2億1000万台ほどのiPhoneを販売したが、どちらかというと販売台数が維持できた、という評価をすべきかもしれない。

IDCの調査によると、2017年第4四半期(10-12月)、世界のスマートフォン市場での出荷台数は前年同期から6.5%減少したという。トップ5メーカーはシャオミを除いて、いずれもマイナス成長を記録しており、ファーウェイ、オッポといった中国メーカーが下落を牽引する形となっている。

アップルは前述の通り、2017年第4四半期のスマートフォン販売では1%減にとどめ、スマートフォンメーカーとしては最大の出荷台数を記録し、また販売期間が他のデバイスより1カ月短いiPhone Xが最も売れたスマートフォンの座を勝ち取った。

しかし、スマートフォン市場が今後上向くとの見通しも立てにくい。「iPhone X」特需の恩恵に授かったアップルも、2018年第2四半期(1-3月)の売上高等のガイダンスはアナリストの予想を下回る弱気を見せた。

反応が鈍かった中国市場

アップルの決算の中で、中国市場の回復の遅れが気になる。

中国市場はiPhone 6発売で爆発的に売上高が伸びてから、長期にわたる調整局面を迎えていた。2017年には前年同期比割れを食い止め、2018年第1四半期も前年同期比からプラス成長となった。

iPhone販売台数の推移(出典:アップル決算資料をもとに編集部作成)

それでも、中国の売上高は前年同期比11%増。iPhone Xに最も反応したのは17%増となったアジア太平洋地域と、26%増と大幅に増加した日本市場。特に日本市場は、iPhone 8、iPhone 8 Plus発売が含まれる2017年第4四半期には前年同期比11%減を記録していただけに、iPhone X待ちが顕著だった、とふりかえることができる。

中国は2月16日に春節を迎え、消費も活発化するとみられる。ここでiPhoneの新製品ラインアップがどのように受け入れられるのか、引き続き注目していく必要がある。

平均販売価格は100ドル上がった

アップルのiPhone X投入のタイミングは、スマートフォン市場のマイナス成長が始まるタイミングとピタリと一致している。アップルはiPhone Xを、製品10周年となる2017年にリリースできたことに計画性があったわけではないとの話もする。

その一方でスマートフォンの販売台数が減少する中で、売上高全体の7割を占めるiPhoneビジネスからいかに収益を確保するか、という「正しい戦略」を淡々と実現した姿が浮かび上がる。

iPhoneの売上高から販売台数を除した平均販売価格は796.42ドル。iPhone 7シリーズを発売した前年同期は約695ドルであったことから、iPhone X投入で100ドル上昇させることに成功した。もちろん、2018年には5.8インチ有機ELディスプレイ搭載のiPhoneを値下げすることになるだろうから、この約800ドルという価格は一時的な最高値になる可能性が高い。

しかし、販売台数が今後伸びない市場環境の中で、平均販売価格を高めて売上高を確保するチャレンジに成功した、とふりかえることができる。

サービス部門はApp Storeから購読型サービスへ注目が移る

アップルはiPhoneのビジネスとともに、App StoreやApple Musicを含むサービス部門の売上高に注目している。2016年の売上高を2020年までに2倍に成長させる目標を持っている。

2018年第1四半期のサービス部門の売上高は84億7100万ドルで、Mac、iPad、その他の製品よりも多い、iPhoneに次ぐ売上規模2位の座を確実なものとしている。ホリデーシーズンなどの季節変動が少なく、しかし前年同期比18%増という数字を記録し、引き続き高成長を続けていることが分かる。

サービス部門の売上推移(出典:アップル決算資料をもとに編集部作成)

加えて、アップルは有料購読型サービスのユーザー数が2億4000万を超え、この四半期で3000万件増加したことも発表した。これにはApple Music、iCloud追加ストレージなどが含まれており、アクティブユーザー数13億人を抱えていることから、この数字は寄り増加していくことが見込める。

Apple Music単体では、The Wall Street Journalに対して3600万契約を達成したことを明らかにし、月間の成長率が5%となっていることがわかった。米国市場での協業となる音楽ストリーミングサービスSpotifyが3%成長であることから、The Wall Street Journalは2018年の夏には、Apple MusicがSpotifyを米国市場で追い越すことになると指摘している。

iPhone向けのアクセサリでも市場性がある

またサービス部門異常に著しい成長を遂げたのがその他の製品だ。売上高58億8900万ドルは全カテゴリで最も成長率が高い前年同期比36%増。Apple Watch、AirPods、Beats製品といったウェアラブル製品に限れば70%増を記録した。

Apple Watchも好調だ。最新のApple Watch Series 3は前年のSeries 2の2倍以上売れており、世界のあらゆる地域で2桁成長を記録する製品となっている。

Apple WatchはiPhoneユーザーのためのスマートウォッチであり、Androidユーザーは自分のスマホとペアリングして利用することができない。つまり、ウェアラブル製品としては、アップル自ら、販売台数の上限の枠をiPhoneユーザーに限定してしまっていることになる。

しかしApple Watchはスマートウォッチ市場でトップを走り続けており、年間1500万台以上の販売を実現してると見られる(アップルは具体的な数字を公表していない)。

AirPodsもAndroidで利用することはできるが、最大の性能を発揮する組み合わせの相手はiPhoneだ。しかしワイヤレスヘッドフォンでは最も大きな勢力へと成長し、需給も安定したことから、アップルのその他の製品の売上高に貢献する存在となった。

つまり、アップルのプラットホームに閉じたからといって、その製品が協業他社との競争に負けるわけではないことを表している。アップルが13億台というアクティブデバイスをアピールするようになったことは、アップルのエコシステム向けに製品をリリースすることの合理性の裏付けともいえる。

2月9日にアップルはホームスピーカー、HomePodを発売する。このデバイスは、iPhoneやiPad、Apple TVなどHomeKitがコントロールできるデバイスと、Apple Musicの契約を組み合わせなければ、アップルが描く体験を実現することはできない、アップルのエコシステムに閉じた製品だ。

HomePod(画像:アップルより)

それでも、現在増え続けているApple Musicの契約者が一定の割合でも購入すれば、すぐにこの分野のトップが取れる、と踏んでいるのではないだろうか。

総じて見ると、iPhoneだけで売上高をのばしていくことが難しくなっていくスマホ飽和時代に備えて、サービス、アクセサリといった製品を成長させてきたことが、今回の決算からうかがうことができる。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。