格安スマホ業界を騒がせた「FREETEL」が復活、どう反省を活かしたか?

格安スマホ業界を騒がせた「FREETEL」が復活、どう反省を活かしたか?

2018.02.13

2月9日、モバイル業界を騒がせてきた「FREETEL」の新製品発表会が開催された。プラスワン・マーケティング(POM)から端末事業を買い取ったMAYA SYSTEMのもとで、新生FREETELとして再出発する。

MAYA SYSTEMが「FREETEL」の新製品発表会を開催

2017年末に経営が悪化し、格安スマホ「淘汰の時代」を象徴する存在になってしまったFREETELだが、果たしてその端末事業を引き継いだ狙いはどこにあるのだろうか。

「儲からない」MVNO事業を捨て、端末事業で再出発

MAYA SYSTEMとは、MAYAグループの一角としてITソリューション事業を手がけており、クラウドSIMを利用したWi-Fiルーター「jetfi」を展開してきた会社だという。発表会に登壇した代表取締役の吉田利一氏は、NTTコミュニケーションズの出身で、通信業界にも造詣が深い。

MAYAグループの概要。ほかに人材派遣やIoT事業も手がける

FREETELの端末事業については、2018年1月9日にPOMからの譲り受けが完了。POMが提供していた残債免除で端末を交換するサービスなど、MVNO事業を承継した楽天側との協議事項は残っているが、1月15日からは端末の販売も再開したという。

果たしてFREETELの端末事業を買って「よかった」と言えるのか。吉田氏は自問自答する形で問いを投げかけ、「答えはイエスだ。優秀な社員や、30万人近いFREETEL端末のユーザー、販売チャネル、ブランドが手に入り、全体では非常にプラスになった」と好感触を語った。

POMが失敗した原因はどこにあったのか。吉田氏はNTTコミュニケーションズ時代の経験を踏まえ、「MVNO事業は(FREETELの)30万人程度では儲からない。最低でも100万人は必要」と規模感を指摘する。POMもユーザー獲得のためTVCMや店舗展開を急速に推し進めたが、コストがかさみ頓挫した。

MAYA SYSTEM 代表取締役の吉田利一氏

その端末事業を受け継いだMAYA SYSTEMの印象は、「現実路線」だ。POM時代には増田薫社長が「10年で世界一を目指す」とぶち上げ、世界戦略を語った。だがMAYAは対照的に足場固めを優先する。国内SIMフリー市場はファーウェイなどが強いことを念頭におき、端末ラインアップは広げすぎず、やや特化した端末に集中していくという。

最初のステップとして吉田氏は、一連の騒動でついたFREETELの「悪いブランドイメージ」を払拭したいと語る。まずはグループ会社が手がけるコールセンターの受託事業を活用し、3月から4月にかけて自社でサポート体制を立ち上げるとした。

「eSIMスマホ」でMVNOの弱点を補完へ

サポート体制強化の次のステップとしてMAYAが見据えるのが、FREETELの開発能力を活かした「海外eSIMスマートフォン」の実現だ。

すでにMAYAが販売するWi-Fiルーターは、eSIMを利用して海外の現地キャリアに接続するサービスを提供している。この技術をスマートフォンに搭載することを目指しており、今夏の提供に向けてテストに着手しているという。

今夏にも「海外eSIMスマートフォン」を提供へ

メリットは、国内のMVNOが提供していない「海外データローミング」を補完できる点にある。eSIMスマホが実現すれば、国内ではMVNOの格安SIMを使いつつ、海外では現地キャリアの安価なデータ通信を使う、「いいとこ取り」が可能になる。

その中核となっているのが、POMからMAYAに移籍した端末開発部隊だ。発表会ではPOM時代から開発を進めていた新製品として、デュアルカメラ搭載の「REI 2 Dual」や、低価格機の「Priori 5」を発表した。資金繰りの悪化によりお蔵入りになりかけたところを、MAYAの支援や関係者の尽力で発売にこぎ着けたという。

POM時代から開発を進めてきた「REI 2 Dual」

特徴は、従来のFREETEL端末のようにODM企業のベースモデルを改良するのではなく、初めて自社で端末を設計した点にある。POM時代から取り組んできたソフトウェアの改良も進んでおり、着実にレベルアップしている印象だ。

MAYAも認める通り、SIMフリー市場での生き残りは容易ではない。だが「eSIM」という特徴を活かした事業展開が軌道に乗れば、グローバルの端末メーカーとはひと味違う存在になりそうだ。

テスラで大幅減収も、逆に好調際立つパナソニック

テスラで大幅減収も、逆に好調際立つパナソニック

2018.02.10

2月5日に発表されたパナソニックの2017年度第3四半期決算。売上高は前年同期比1717億円増の2兆543億円、営業利益も225億円増の1201億円と増収増益の好調を維持した。しかし、報道陣の目下の関心は前期同様に「テスラ」だった

パナソニックは、テスラ向けに米ネバダ州で2170円筒形リチウムイオン電池セルを製造する「ギガファクトリー」を立ち上げた。この電池が搭載される電気自動車「モデル3」は、昨年7月時点で予約台数が50万台を超えており、パナソニックにとっても収益面で大きな期待を抱いていた。

米ネバダ州北部のギガファクトリー

しかし、7月に生産を開始したにも関わらず、9月までの3カ月で生産したモデル3はわずか260台。第2四半期決算の時点でパナソニック 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 津賀 一宏氏は、「生産の問題が解決すれば、一気に立ち上がるだろう。我々の増産体制も加速することになる」と語って、今期同様に増収増益だったにも関わらず、通期見通しの引き上げを見送っていた。

結果としては今期も増収増益を果たし、通期見通しも売上高で1500億円増の7兆9500億円、営業利益も150億円増の3500億円に引き上げた。ただし、テスラを担当するビジネスユニットを含む二次電池事業部の売上高は、450億円のマイナス修正(4265億円)、営業利益も120億円のマイナス修正(54億円の営業損失)となった。

パナソニック 取締役執行役員 CFO 梅田 博和氏

質疑応答でパナソニック 取締役執行役員 CFO 梅田 博和氏は、「今回、売上と営業利益の下方修正は、モデル3(電池)の修正によるもので、(下げ幅は)倍額あった」と語った。つまり、テスラ関連で売上高の見込みが900億円マイナスのインパクトがあったことになる。

テスラ自身は前年比で赤字幅が拡大

事業部全体では、角型車載電池事業が従前からのOEM向け製品で量産が順調に伸長しており、増益に寄与。また、動力系の売上が期初想定より伸長したことで、着地は半額の450億円の減収、120億円の減益にとどまったという構図だ。では、この"出血"はいつまで続くのか。

パナソニックは、これまでもモデルXやモデルSに対して円筒形リチウムイオン電池セルは提供してきた。つまり、テスラ全体の問題というよりもモデル3の問題ということになる。モデル3はテスラにとっての"普及車"であり、生産コストを抑えるために野心的な製造工程の自動化を目指していた。

ただ、電気自動車の中核をなすリチウムイオン電池は、サムスン電子「Galaxy Note 4」の発火事故の記憶に新しいように、発火リスクが存在する。製造工程ではなおのこと、慎重に作業を行わなければならず、ここの製造自動化に手間取っているというのが実態だ。

二次電池事業はマイナス修正を余儀なくされた

7~9月期の時点で生産台数が260台止まりだったにも関わらず、第2四半期決算発表時に見通しを引き下げられなかった理由は、テスラ自身が生産見通しを具体的に示せず、「流動的だったため、影響額を読みきれなかった」と梅田氏は語る。テスラ自身は1月に最新の生産状況を公表し、10月~12月の納車実績が1550台と前四半期よりも伸長したものの、当初の7~9月期の計画にも満たない数字だった。

ただ、同時に3月末までには週あたり生産台数を2500台まで引き上げると表明し、6月末までには当初2017年内に達成するとしていた週あたり5000台を生産する予定だという。なお、テスラ自身も2月7日に2017年通期決算を発表。売上高こそ前年比68%増の117億5875万ドル(約1兆2795億円)だったが、営業損益の赤字幅は前年の6億6734万ドルから16億3208万ドル(1775億円)までさらに拡大している。

そうした事業環境の中、テスラは投資の元手となる資金調達を行った。モデルSとモデルXのリース債権を証券化し、今月始めに5億5600万ドル(約607億円)を調達している。"綱渡り"とまではいかないものの、設備投資を継続しなければならないテスラが、3月末の週産2500台、6月末の週産5000台目標を達成できるのか。パナソニックにとっては気を揉む日が続きそうだ。

3月の100周年を飾れるか

とはいえ、会社全体では増収増益を果たしているように今のパナソニックは強い。二次電池事業部も車載向け角型電池は日本や中国・大連で工場の拡大・増産体制を敷いており、「来年度以降に貢献」(梅田氏)という状況。前述の通り、売上高、利益の両面でマイナスをカバーしていることからも、旧三洋を含む電池事業の底力が見て取れる。

利益面ではインダストリアル事業で、車載向け、メカトロが大きく貢献し、100億円ほどの貢献となった。また、アメリカで法人税が34%から21%へと見直された影響などで、純利益は期初の通期見通しである1600億円から500億円増の2100億円へと修正した。円安による利益貢献はあるものの、為替影響を除く実質ベースでも第3四半期の成長率は106%と力強さを持つ。

売上高こそオートモーティブの伸長に負けるが、利益面では大きく貢献したというインダストリアル事業

「確かにアメリカ(テスラ)のマイナスがあるものの、上積みできたのはその他事業が当初見込みよりもしっかり稼いでくれているため。期待したところは稼いでくれなかったものの、それ以外が想定以上に稼いでリカバリできた」(梅田氏)

テスラの状況次第では、そしてその他事業の「想定以上の稼ぎ」が継続するようであれば、パナソニックは創業100周年となる3月を万全の態勢で迎えられそうだ。

通期見通しは昨年より6000億増と好調。さらなる上積みなるか
スーパーカーのランボルギーニからSUV「ウルス」が登場する理由

スーパーカーのランボルギーニからSUV「ウルス」が登場する理由

2018.02.10

ランボルギーニがSUVを発売する。かねてから流れていた噂が真実になった。2月6日、「ウルス」(URUS)と名づけられたSUVが東京で発表されたのだ。スーパーカーのランボルギーニがなぜSUVなのか。中身はランボルギーニにふさわしいのか。改めて考えてみた。

2月6日に六本木の泉ガーデンギャラリーで開催された「ウルス」発表会の様子。クルマに手を置いているのは来日したランボルギーニのステファノ・ドメニカリCEO

「ウルス」登場にポルシェの影響?

1963年に自動車メーカーとして産声を上げたランボルギーニは当初、V型12気筒エンジンを車体の前に積み、後輪を駆動するラグジュアリークーペも作っていた。しかし、同じエンジンをミッドシップ搭載したスーパーカー「ミウラ」や「カウンタック」が高い評価を得ると、以降発表した車種の多くがミッドシップ2人乗りのスーパーカーになった。

現在販売されているV型10気筒の「ウラカン」、そしてV12の「アヴェンタドール」も同様である。

ランボルギーニといえば、「カウンタック」(画像)などのスーパーカーを作るメーカーというイメージだが…(ランボルギーニ・デイ 2017にて編集部撮影)

そのランボルギーニがなぜ、SUVを出したのか。ランボルギーニと同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェの成功に影響されたことは否定できないだろう。

ベントレー、マセラティ、ジャガーからも登場したSUV

2002年にポルシェ初のSUVである「カイエン」が発表されるまで、このブランドは2ドアのスポーツカーだけを作り続けてきた。代表格が1964年以来の歴史を誇るリアエンジンの「911」だ。

しかし、ポルシェが発表した2017年の全世界での販売台数によると、トータルで約24.6万台を販売した中で、「718ケイマン」および「718ボクスター」が2.5万台、「911」が3.2万台、「パナメーラ」が2.8万台、「マカン」が9.7万台以上と発表されている。残りがカイエンとなるので、その台数は6.4万台となる。

ポルシェの売れ筋となっているSUV「マカン」

つまり、SUVのカイエンとマカンを足すと16.1万台であり、全体の65%にも上る。いまや、ポルシェの主力はSUVなのである。逆に、911と718を合わせたスポーツカーは23%に過ぎないことになる。

これ以外にも、やはりフォルクスワーゲン・グループのベントレー、ランボルギーニと同じイタリアのマセラティ、英国のジャガーなどが、ここ10年の間に初めてSUVを発売し、いずれも好調な販売成績をあげている。

それだけではない。SUVには縁がないだろうと見られていた英国の超高級車ロールス・ロイスと、スポーツカーの代表格であるフェラーリもSUVを送り出そうとしている。

実はSUVを作ったこともあるランボルギーニ

ただし、これらのブランドの中で、ランボルギーニは例外的な存在でもある。かつてSUVを手掛けたことがあるからだ。1970年代に発表した「チータ」と1980年代に作られた「LM002」である。

かつてランボルギーニが作ったSUV「LM002」

このうち、米軍向けとして開発されたチータは制式採用が叶わず、試作車のみで生涯を終わるが、当時のカウンタックと基本的に同じエンジンを積んだLM002は、少数ながら生産・販売されている。

だから今回の発表会で、筆者はLM002の実車を見ることができるかもしれないと期待していた。しかし、会場に置かれていたのは、ウルスの他にはウラカンとアヴェンタドールの2台のスーパーカーだけ。それどころか、プレゼンテーションでもLM002に言及することはなかった。

「ウルス」の発表会には「ウラカン」(画像)と「アヴェンタドール」が置かれていた

あえてマニアを狙わない戦略も見え隠れ

でも、この方針は正しいと思った。チータやLM002はオフロード走行を念頭に置いた車種であり、舗装路をスーパーカー並みに走ることを目的に送り出されたウルスとは目指す方向があまりにも違う。しかも、LM002を知るのはコアなランボルギーニ・マニアだけだ。

日本での知名度が限りなくゼロに近い車種に無理矢理イメージをつなげるより、ウルスを全く新しいランボルギーニとして紹介したほうが分かりやすいし、幅広いユーザーにアピールできるはずだ。

「ウルス」と「LM002」(画像)は、同じSUVだが方向性が全く異なる(ランボルギーニ・デイ 2017にて編集部撮影)

そういえば発表会場も、ランボルギーニのブランドイメージからするとフツーだった。もっと挑戦的で情熱的な空間を予想していたので、肩透かしを食ったような印象だったが、これも既存のマニアとは別の種類のユーザーにアピールすることで、拡販を目指したいという気持ちの表れなのだろう。

しかし、見た目は写真でお分かりのように、ランボルギーニのSUVである。とにかくエッジが効いている。インテリアはそれに比べると独自色は薄いが、シートのグラフィックなどによって“らしさ”を演出していることが分かる。

ランボルギーニのSUVだけあってエッジの効いた見た目だ

それでいて、現行ランボルギーニとしては唯一となる後席には大人が楽に座れ、後方の荷室にはゴルフバッグが2~3個収まるという。スーパーカーでは得られない使い勝手をウルスは実現している。

エンジンの小ささは気になるものの…

ちょっと意外だったのはエンジンで、ランボルギーニ初のターボ付きとなるそれは、4LのV型8気筒と小さい。6.5LのV12エンジンを背負って運んでいるような走りのアヴェンタドールを知る者としては残念に思った。

でも、ウルスを買うユーザーの多くは、そんなことは気にしないだろう。現にポルシェのカイエンやマカンは、911が50年以上搭載し続けてきた水平対向6気筒エンジンではないが、大部分のユーザーはその点を問題視していない。

エンジンは小さいと感じたが、「ウルス」の購入者が気にするかどうかは別の話だ

大事なのは、個々のエンジニアリングがどうかではなく、デザイン、パフォーマンス、ドライビングエモーションなど、ブランドとしてのDNAが備わっているかどうかなのである。

販売台数2倍の野心的な目標に不可欠な存在

たしかに性能は凄い。最高出力は650hp、最大トルクは850Nmで、後者についてはアヴェンタドールを上回る。

全長5,112mm、全幅2,016mm、全高1,638mmという巨体でありながら、車両重量は2.2トン未満と軽量化に気を配ったおかげもあり、時速100キロまでの加速は3.6秒、最高速度は305キロと、世界最速SUVであることをアピールした。

4WDのみならず4WS(4輪操舵システム)も備え、トルクべクタリング、エアサスペンション、アクティブスタビライザー、カーボンセラミックブレーキなどのハイテクもあますところなく装備。エゴモードと名付けられた個別設定も可能なドライブモード・セレクター「タンブーロ」も用意している。

価格は2,580万円。同等のボディサイズを持つアウディのSUV「Q7」の約2.5倍だが、ウラカンとは同等である。しかもウルスは、ウラカンとは違い5人が乗れてゴルフバッグも積める。

先進技術も満載の「ウルス」。荷室(画像右)にはゴルフバッグも積める

今回の発表会には、イタリアからステファノ・ドメニカリCEOも来日した。かつてフェラーリF1チームの代表も務めたドメニカリ氏は、日本はランボルギーニにとって米国に次ぐ世界第2位のマーケットであると紹介。世界レベルでは、これから2年間で販売台数を2倍にしたいと表明した。

スーパーカーだけでは、この数字は達成不可能だろう。ランボルギーニのようなブランドも、今やビジネスが大事なのである。マニア以外にもアピールできるSUVが登場したからこそ成長が期待できるし、ウルスが売れて開発資金が増えれば、スーパーカーの進化にも拍車が掛かる。