ゴーン氏最後の野望「世界覇権」に暗雲? 日産自動車の業績に異変

ゴーン氏最後の野望「世界覇権」に暗雲? 日産自動車の業績に異変

2018.02.14

2017年のグローバル販売でトヨタを抜いて世界2位のポジションを獲得した日産・ルノー・三菱自動車の3社連合。トップに立つカルロス・ゴーン氏にとって、世界覇権が現実味を増してきたように思える状況だが、アライアンスの中核をなす日産の現状は心配の種となっているかもしれない。

日産の業績に変調?

通期の営業利益が大幅減の見通しに

日産自動車は、今期(2017年4月~2018年3月)の連結営業利益が前期比23.9%減の5,650億円となる見通しを発表した。

本業の儲けを示す営業利益でこれだけの大幅減となるのは、昨年に発覚した国内工場の無資格検査問題により生産や輸出に遅れが発生したことに加え、国内販売減少の影響が拡大したことによる。

さらに、これまで日産の稼ぎ頭であった米国販売で過剰在庫を抱え、インセンティブ(販売奨励金)を積み増す悪循環が顕在化し、利益を大きく悪化させている。日産の今期最終純利益は7,050億円を確保する見通しだが、このうち2,077億円は米国の税制改革(法人減税)の効果が出たものであり、「2,000億円をかさ上げしたモノが実情」(日産の田川丈二常務役員)ということである。

2017年4月、長期政権のカルロス・ゴーン氏から社長を禅譲される形で発足した西川廣人日産体制だが、国内工場での無資格検査問題、米国販売における乱調と、スタートから躓いた状況にあり、その立て直しが急務となっている。

日産の2017年度第3四半期決算説明会に登壇した田川常務

3社連合はVWに次ぐ世代第2位の規模に

一方で、2016年に燃費データ不正問題で窮地に陥った三菱自動車に34%出資して日産の傘下に収め、「ルノー・日産・三菱自」連合という新たな国際3社アライアンスの枠組みを統率するゴーン氏の野望は、3社連合による世界覇権だ。

2017年の世界販売ランキングで、ルノー・日産・三菱自連合は1,060万8,366台(前年比6.5%増)とトヨタグループの1,038万6,000台を抜き、トップを走るフォルクスワーゲン(VW)グループの1,074万1,500台に迫る2位の座を確保した。

ゴーン氏は、3社の会長とルノーの社長・CEOを兼務しており、三菱自動車の約100万台を上乗せして、3社連合で世界販売1,000万台超えを果たしたわけである。

しかし、この3社連合の中核である日産の変調は、ゴーン氏の野望達成に暗雲を投げかけるものであり、ゴーン氏自体にも、長年にわたる日産とルノーのマネジメントに対して、求心力を保持し続けられるかという疑問が突きつけられることになりそうだ。

世界最大の自動車市場・中国では積極姿勢

日産は、無資格検査問題の影響が色濃い日本事業の正常化や米国販売の立て直しを尻目に、中国での販売拡大戦略をぶちあげている。

中国での合弁先である東風汽車では、2022年までの5年間で600億元(1兆円強)を投資する計画を発表。中国での販売台数は、昨年の150万台から2022年までに260万台まで引き上げるとする。また、純粋な電気自動車(EV)や、日産独自のハイブリッド技術である「e-POWER」搭載車を含めた20車種の電動車を投入し、2022年までに電動化車両の販売台数を78万台(全体の30%)に引き上げるというのだ。

世界最大の自動車市場となった中国では、独VWを米GMが追い、さらにホンダ、日産、フォード、トヨタが第三勢力を形作る構図となっているが、日産はこの第三勢力から抜け出し、VWおよびGMと並ぶ位置づけを確保していく方針だ。中国が国策とする電動化施策に呼応してEV化を積極的に進める一方、中国の配車アプリ大手である滴滴出行とルノー・日産・三菱自連合がEVシェアリング協業で提携合意するなど、積極的な動きをみせている。

日産のEV「リーフ」

国内販売に復活の兆し? 米国では攻めの姿勢が裏目に

一方、国内販売では無資格検査問題によるダメージからの復活を進めることが課題だ。国内販売は「昨年10~12月の受注は減少したが、今年に入って1月は昨年を超える受注に戻ってきている」(星野朝子国内営業統括専務)とする。だが、「セレナ」から続く新型車投入による国内巻き返しの途上で、2代目となったEV「リーフ」の発売間際に無資格検査問題が発覚したことは、日産ブランドのイメージダウンにつながった。消費者心理に与えた影響は大きいだろう。

加えて、三菱自からOEM供給を受ける軽自動車も、ようやく燃費不正問題が落とした影を払拭してきたばかりの状況である。今や国内販売シェアで5位のメーカーとなった日産が、厳しい国内販売競争で立て直しを図るのはこれからである。

「ノート」(画像)が2018年1月の国内登録車販売で1位となるなど、復活の兆しも見える日産だが、国内事業の立て直しはこれからだ

さらに、米国販売における過剰在庫問題は、ピークアウトした米国市場において日産の卸売りと小売りのアンバランス、高騰したインセンティブの正常化に向けた大きな課題となっている。

米国の自動車市場は2016年をピークとし、2017年は1,723万台と前年から2%減少して縮小傾向を示す。需要構造は乗用車セダンからピックアップトラックや大型SUVへとシフトしている状況だ。

日産は、この全需動向や需要構造変化の見通しを誤り、従来の攻めの戦略を進めたことでインセンティブの高騰を招き、過剰在庫を抱える結果となった。日産にとって米国は、中国とともに収益基盤であるだけに、米国事業の失敗は大きな痛手となる。米国事業の立て直し、販売正常化も急務となっているのだ。

3社連合では野心的な数値目標が先行

日産の無資格検査問題では、長年この検査不正が続いていたことで、17年間も日産の社長を務めていたカルロス・ゴーン氏の経営責任を問う声も出た。

日産はルノーの傘下に入ってからV字回復を達成し、国際アライアンスの成功例とされてきた。むしろ、V字回復後は日産がルノーを助ける構図ともなっている。2016年には燃費不正で窮地に陥った三菱自動車を助ける形で日産が資本提携し、三菱自は日産流経営手法の導入で業績V字回復の流れを作りつつある。

ゴーン氏がルノー・日産・三菱3社連合の会長として、2022年までの中期経営計画をパリで発表したのが2017年9月。3社連合は2022年に2016年比4割増の1,400万台を販売すると宣言したことに加え、2020年までにEV専用の共通プラットホームを用意し、中計期間中に12車種のEVを投入して「EVのアライアンスリーダーとなる」(ゴーン会長)と怪気炎を上げている。

一方で、今年に入り、ゴーン氏が約13年間務めたルノーのCEOを退任するとの報道が出ていたが、一転して続投することになりそうな情勢となった。だが、フランス政府は後継となるナンバー2を明確にするよう求めているという。

アライアンスの扇の要、日産の真価が試される

ルノーはフランス政府の意向を配慮しつつ、ライバルのPSA(プジョー・シトロエン)グループにも対抗していかねばならない。PSAはGMからオペルを買収したことで、昨年の欧州販売ではVWに次ぐ2位の座を確保している。また、三菱自動車は、今期中に黒字転換を達成し、V字回復に向かおうとする順調な動きを見せているが、持続的成長への体制づくりはこれからが本番だ。

ルノーと三菱自動車もそれぞれの事情を抱える中、アライアンスの扇の要として日産の真価が試される

ゴーン氏の信頼が厚い西川日産社長としては、この3社連合で世界覇権を、とのゴーン氏の野望を実現していくためにも、日産の立て直し、現状打開を早期に図らねばならない。つまり、ゴーン経営の真骨頂と言われたコミットメント(目標必達)経営からの転換も迫られているのだ。「収益と成長のバランス」経営を打ち出した西川日産の経営手腕が問われる。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu