「メルチャリ」は成功できるか - メルカリのシェアサイクル事業の行方

「メルチャリ」は成功できるか - メルカリのシェアサイクル事業の行方

2018.02.14

著名企業の参入表明が連なり2017年から注目を集め始めたシェアサイクル事業。メルカリのシェアサイクル「メルチャリ」が今月27日から福岡市内で始まることが宣言された。そもそも、なぜ福岡市で始めるのか。事業として成功できるのだろうか。

メルチャリの自転車。電動ではないものの変速は可能

なぜ福岡市でサービスインなのか

メルチャリが福岡市でサービスを始める理由。ざっくりと言えば、現時点の事業の位置づけ、持ちうるリソースなど、トータルして福岡が最適なエリアと判断したからに過ぎない。

まずは運営元の主張に耳を傾けてみよう。メルカリ子会社でメルチャリの運営を担うソウゾウの松本龍祐代表によると4つの理由があるという。

福岡を選んだ4つの理由

1つ目はメルカリのカスタマーサポート拠点が福岡にあり、これをメルチャリにも活用できると考えたことだ。

2つ目が自転車に適したフラットな地形だったこと。実はこれが初期投資にかかる費用を大きく抑えることを可能とする。坂道の多いエリアになると電動アシスト自転車のほうがサービスを展開には向いているが、通常の自転車よりも1台あたりのコストは嵩む。少なくとも倍、3倍以上高くなると見てもいいかもしれない。

メルチャリではサービス開始当初は200台、今夏までに2000台でのサービス提供を予定しており、自転車だけで数千万円の初期投資が必要になる。電動アシストでなくともサービスインが可能なエリアとして福岡市となったのは大きな理由となりそうだ。

先の2つはリソースの問題、残る2つは利用想定と関わる。3つ目の理由として福岡市の中心街が博多駅周辺、天神と分かれており、ここをつなぐ移動手段としてサービス利用が見込まれるからだ。4つ目が公共交通手段の発達したエリアにおいて、ラストワンマイルとも言うべきリーチが自転車の活用で可能になると見ているからだ。

メルチャリでは、1回の利用時間が15分程度を利用想定のメインにしている。長距離の移動ではなく、公共交通機関では行きにくい場所への移動だ。具体的には、公共交通機関では行きにくかったラーメン屋に自転車を使って気軽に行くなどといったことができるようになる。サービス提供エリアのどこにいても、すぐに駐輪ポートが見つかり、ちょっとした場所へなら気軽に移動できる、そんな利用をイメージしている。

こうした短時間利用タイプのシェアサイクルが現在話題となっており、ドコモ・バイクシェアやモバイクが提供するサービスと同種のものだ。人口が多い福岡市は、ビジネス展開の上でもマッチした土地柄のようだ。

東京都市部で始めなかった理由

ビジネス面を見れば人口が多い東京都心部が最適だ。でも東京都心部を選ばなかった。その理由は、事業の規模感が福岡市よりも何倍も大きくなってしまうことにある。この部分がメルチャリ事業の現在の位置づけとも関わる。

松本代表に話を伺うと端々に出てくるのが「実証」といった言葉。福岡市でのサービスには実証実験の意味合いが多分にあり、小さすぎず大きすぎずのエリアで仮説を検証していきたいというのだ。

では何を試すのか。それはメルチャリの本質となる「個人参加型のサービスが成立するか否か」である。

足りない部分を個人の力で補うという考え

シェアサイクルでは違法駐輪や放置自転車が問題となる。運営を悩ますこの問題にメルチャリは個人参加型の仕組みで対処できるかを検証する。

その仕組みとは次のようなもの。違法駐輪の自転車を発見したら、メルチャリユーザーが所定の場所まで持っていく、協力者は15分無料で自転車の利用が可能となったり、マイルが付与される。マイルは一定に達したら、メルカリポイントへの交換もしくは、メルチャリオリジナルグッズにかえることができる。故障車の発見・報告なども含め、運営の負担を減らすアクションをユーザーに肩代わりしてもらおうというわけだ。

もうひとつが個人宅や店舗の軒先などのスペースを駐輪ポートとして活用できるか、である。メルチャリの描くシェアサイクルの姿として、自宅のスペースに置かれたシェアサイクルを使って駅まで移動したり、帰宅したりするというものがある。街中だけでなく、住宅街からも気軽にシェアサイクルで移動できる未来が来るかもしれないのだ。こうした未来の実現のために、メルチャリでは駐輪ポートの提供を呼びかけている。

メルチャリは成功できるか

メルチャリの描くシェアサイクルの姿は画期的だが、そこには課題がある。

この種のビジネスは利用料が低く、1台あたり1日の利用回数を上げることで収益を確保する。メルチャリでは1分4円。30分使用しても売上は120円にしかならない。

収益を上げるには1台あたり1日の利用回数を上げる必要があるが、住宅街まで踏み込むことで1日当たりの利用回数は減り、適材適所にシェアサイクルがないといった可能性も出てくる。街中よりも人通りの少ない住宅に自転車が置かれても利用されにくい。街中での移動のみに限定したほうが収益的にもいいはずだ。

また、個人宅や店舗の軒先などのスペース活用についても、街中でのサービスが増え、多くの人に認知されて盛り上がっていくことで、協力者が増えていくと思われる。

もちろん、運営元自体もこれらのリスクについては認識している。だからこそ、松本代表からは実証実験という言葉が出てくるわけだ。

住宅地であっても、どのエリアならビジネス上も問題ないのか。そもそも個人の力を借りて運営することが本当にできるのか。個人の力を借りるためにリワードは十分なのか。様々な観点から個人参加型サービスが成立するかを試していく必要があるのだ。

当面の目標として、ポート数を開始当初の50カ所から今夏までに200カ所へ(個人宅・店舗の軒先を除く)、自転車を開始当初の200台から今夏までに2000台へと増やしていく。これらの数値は決して少ないものではない。今年いっぱいでどれだけ理想に近づけるか。実証実験の行方次第でメルカリらしさを本領発揮できるかどうかが見えてきそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu