好調のアイス市場を牽引する立役者は「昭和生まれ」の“中年”商品!?

好調のアイス市場を牽引する立役者は「昭和生まれ」の“中年”商品!?

2016.06.27

およそ“ウン十年”ぶりに、森永乳業のアイス「ピノ」を口にした。チョコレートでコーティングされたバニラが、一口大の“円錐台”に形成されている点は昔とまったく変わりがなかったが、味がずいぶんと濃厚になったなと思った。筆者の記憶の中にある「ピノ」は、チョコがパリッとしていて、その外殻を割ってチョコとバニラを堪能するイメージだった。だが、今の「ピノ」はチョコとバニラが同時に口溶けするような滑らかさだ。

温暖化だけが「アイス好調」の理由ではない

森永乳業 第一営業本部 冷菓事業部 冷菓マーケティンググループ 蓮沼裕二氏

アイスクリーム市場が堅調だ。日本アイスクリーム協会の調べによると、2005年に3,533億円だったアイスクリーム市場は年々伸び続け、2014年には4,369億円まで成長し過去最高を続伸。気象庁によると、今年の夏は暑くなるそうなので、2016年も市場規模が伸びることが予想される。

「確かに温暖化による気温上昇がアイスの売れ行き押し上げたのは確かでしょう」。そう前置きした上で、「ピノ」を担当する森永乳業 冷菓マーケティンググループの蓮沼裕二氏は「単に“涼”を得るだけの存在ではなく、暮らしの中に浸透しているのが好調な要因です」と分析する。「お風呂上がりに」「オフィスでのちょっとした休憩に」「ランチの締めに」といったシーンで、“リラックス”をより一層感じるためにアイスが食べられているのだそうだ。

特に同社の「ピノ」や「PARM(パルム)」は、夏場に売り上げが最大化するのは確かだが、秋や冬になっても、ほかの氷菓に比べ落ち込みは少ないという。ピノを冷蔵庫に買い置きしているというユーザーは、「ピノはコタツで本を読みながらピックで刺して食べるもの」とのイメージを持っているのだそうだ。

このアイス市場は“もっとも新陳代謝が少ない”マーケットのひとつといえるだろう。業界では100億円以上の売り上げているブランドを「メガブランド」と呼ぶ。中でも以下の製品が“5大メガブランド”とくくられることが多い。森永乳業の「ピノ」と「PARM(パルム)」、森永製菓の「チョコモナカジャンボ」、明治の「エッセル スーパーカップ」、赤城乳業の「ガリガリ君」だ。

蓮沼氏は「具体的な数字はいえませんが、ピノもパルムも100億円以上売り上げていることは確かです」と太鼓判を押す。

こうして5大メガブランドを列挙すると気づくのが、「PARM(パルム)」と「スーパーカップ」以外が“昭和生まれ”の製品であること。5大メガブランド以外にもロッテの「雪見だいふく」やグリコの「ジャイアントコーン」や「パナップ」といった、市場で強い存在感を示す製品はだいたい昭和生まれだ。

こうした昭和生まれのブランドがマーケットで長く支持されているおもな理由が「先行優位性」だろう。長い期間積み上げてきた強いブランド力に裏打ちされ、現在でもこうした製品の人気は衰えない。

親が子どもに「味」を伝える

また蓮沼氏は“ライフサイクル”が関係しているという。たとえば「ピノ」の場合、「子どもの頃おやつとして家族で分け合う」→「10代後半から20代に成長していくと、ピノは“こどもっぽい”“新しい味を試したい”という理由で客が離れていく」→「子育て世代になり、“昔のあの味”を自分の子どもにも味合わせたいと回帰する」というサイクルだ。当然、親に「ピノ」を食べさせてもらった現在の子どももこれが原体験となり、将来、自分の子どもに「ピノ」を与える可能性が高くなる。

おそらくこうしたサイクルは、「ピノ」に限らずロングセラーを続けているほかのアイスでも生じているのではないか。

さらに蓮沼氏は、「時代に合った味のリニューアル」がロングセラーの秘密だとしている。「ピノの場合、長年みなさまに支持をいただいておりますが、時代背景に応じて味やパッケージ、マーケティングに至るまでリニューアルしています。これは弊社だけでなく、他社のロングセラー商品でも必ずおこなっていることだと思います。老舗アイスブランドが市場を引っ張るのは、各メーカーの努力のたまものといえるでしょう」と、成熟したアイスブランドが人気を失わない理由のひとつを語る。

時代に合ったテイストにリニューアルされるピノ。マンゴー&パッションフルーツ味や抹茶味といった「多テイスト」戦略も展開される

冒頭で、筆者はウン十年前のピノと比べると今のピノのほうが“濃厚になった”と明記したが、この度重なるリニューアルによるものだったのか、と気づかされた。

さて、文中に出てきた昭和生まれのアイス達だが、ザッとその年齢を挙げてみよう。「ジャイアントコーン」は前身の「グリコーン」時代を含めると53歳、「ピノ」は切りがよくちょうど今年で40歳、「パナップ」は38歳、「雪見だいふく」は36歳、今年の春、価格改定で話題になった「ガリガリ君」が35歳だ。みな、まさに“立派な中年”。いよいよ夏本番を迎えるにあたって、この中年達の人気がますます上がっていくことだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu