インバウンドを夜に呼び込め! - 明治座が取り組む日本橋活性

インバウンドを夜に呼び込め! - 明治座が取り組む日本橋活性

2016.06.27

訪日外国人旅行を指す「インバウンド」、もはや目にしない日がないほど浸透したこの言葉。日本政府観光局によれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年47.1%増の1,974万人と、2,000万人に迫る勢いだった。これを受けて政府は「2020年に4,000万人」という目標を掲げる。

ここに来て、インバウンドの代名詞でもあった「爆買い」が減速気味。詳細な背景については6月21日掲載の記事に説明を譲るが、観光客数の増加も鈍化、買い物単価も下落、円高進行となかなか厳しい状況になってきた。インバウンド消費が「モノ」から「コト」へ移行したと指摘されるなか、魅力的な「コト」作りが急務だ。

その答えのひとつとして、明治座が打ち出したのが「SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」(以下、SAKURA)だ。明治座は日本の伝統芸能とアニメ、最新のテクノロジーを融合させた新たなエンターテインメントと謳う。特徴的なのは公演が20時30分からと、夜遅い時間帯に設定されていることだ。

明治座の新しい取り組み、その名も「SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」 (C)2016藤ちょこ/明治座

なぜ明治座が夜の時間帯に、インバウンド向けの公演を行うのだろうか。どうやら、SAKURAは日本橋の活性化において、重要な役割を担うことになりそうだ。

なぜ「夜」だったのか

明治座があるのは東京都中央区。日本橋駅まで約2kmの距離はあるものの、日本橋エリアに属する。日本橋エリアといえば、日本橋三井タワーやコレド日本橋、コレド室町など三井不動産が意欲的に再開発を行う地域だ。

日本橋エリアに限った話ではないが、実は夜間に外国人観光客が楽しめるような取り組みはまだまだ少ない。明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏は「20時を過ぎると、日本橋の一帯は人通りが寂しくなってしまう」と話す。

明治座はもともと「夜の時間帯を使って新しい取り組みをしたい」と構想していた。というのも、「来場者は50代以上のシニア層が多い」「団体客と個人客の割合がおよそ7:3である」「ひとつの興行の回転数が落ちてきている」といった事情があるから。そこで、20時30分以降の「第3部」を行い、インバウンドを夜の時間帯に呼び込もうという作戦へ打って出た。

公演自体は9月7日からスタートするが、それに先がけて6月に内覧会を開催した。前列左から2番めがイープラス 取締役副社長の倉見尚也氏、3番めが明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏、4番めが三井不動産 日本橋街づくり推進部長 上田隆康氏
エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏

そのコンテンツとして今回お披露目されたのがSAKURAだ。「日本橋ナイトプログラム」と表現していることからもわかるように、日本橋から発信する夜間市場活性化のための催しとなる。伝統的な"日本らしさ"を詰め込みつつ、アニメやプロジェクションマッピングの手法を用いた観客参加型のプログラム。内覧会に参加した三田氏は「インバウンドだけでなく、日本の若い層を呼び込むキッカケになったら」と期待を寄せる。

エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏は、クールジャパン戦略推進会議有識者メンバーでもある。「昼の時間帯はもはやトレードオフの状態。一方で、夜の時間帯は+αにしかならない。東京を観光都市にするには、夜も楽しめるショーが必要だ。SAKURA以外にも"夜間市場"を盛り上げてくれる取り組みが今後出てくることを期待している」と福原氏はいう。

東京にエンターテインメントを

チケット販売という"流通"を担うのはイープラス。共催というかたちで名を連ねる。舛添要一元都知事が「ブロードウェイのような劇場街を東京に作りたい」と表明したことは記憶に新しいが、イープラス 取締役副社長の倉見尚也氏は「ニューヨークを訪れる外国人観光客の目的は、ほとんどがブロードウェイでの演劇鑑賞。その経済効果は年間1兆円ともいわれている。現在、東京を訪れる外国人観光客は食事や買い物目的が多く、演劇鑑賞などのエンターテインメント目的はきわめて少ない」と指摘する。

本稿冒頭でインバウンド消費がモノからコトへ移行している、という視点を紹介したが、明治座がSAKURAという"コト"で狙うのはファン作り、さらにはリピーターの獲得である。

SAKURA上映中の一幕。桜の木を表現している(内覧会にて撮影。ダイジェスト版につき、本公演とは異なる可能性がある)

ファン作りはともかく、リピーターの獲得に向けてキラーコンテンツとなりうると考えているのがアニメだ。SAKURAでは、サクラ役をオーディションで決定し、「2.5次元」コンテンツとする。

2.5次元とは、2次元と3次元の間のこと。紙面や画面上のマンガやアニメといった2次元コンテンツを原作とし、実在の人物が演じるミュージカルといった3次元へ持ち込んだ形式のものだ。SAKURAの主人公であるサクラも、アニメとリアルが融合したかたちで登場する。

最近では『KING OF PRISM by PrettyRhythm』、通称「キンプリ」の応援上映が話題だが、SAKURAも観客参加型を謳う。参加型のプログラムが受け入れられている現状を鑑みると、日本の若い層へもアプローチできるかもしれない。

外国人の反応は?

内覧会でSAKURAのダイジェスト版を筆者も観てきたが、日本の四季折々の風景を、音楽とダンス、プロジェクションマッピングを駆使して表現していた。日本に生まれ育った筆者からすると、少し"お腹いっぱい"な感じもしたが、琴や和太鼓、篳篥(ひちりき)の生演奏は臨場感たっぷり。外国人の参加者数名に感想を聞いたところ、「着物や浴衣、忍者のコスチュームなど衣装がかっこいい」「ブレイクダンスやプロジェクションマッピングといった新しい要素を採り入れているのがおもしろい」「桜吹雪は自国にない演出で、驚いたけど楽しかった」と総じて好評だった。一方で、長いこと日本に滞在している外国人参加者は「日本の伝統芸能はゆっくりしたテンポで魅せるものが多い。今回のSAKURAは少しスピード感がありすぎたかも」と、また違った感想を持ったようだ。

日本といえば桜、というイメージは根強いらしく、桜が咲いていない時期にあたる2016年9月7日から2017年3月31日という公演日程はちょうどいいかもしれない(2017年度以降の予定については調整中とのこと)。

土産物店では桜の塩漬けなど、SAKURAにちなんだ商品が並ぶ予定だとか

相乗効果を狙う

三田氏によれば、今後は旅行代理店などを通じて現地でもPRしていく。そのほかにも、国内の鉄道会社などと協業していく話も出ているそうだ。SAKURAが軌道に乗れば、開演前に近くで食事をする観光客なども増え、地域一帯の活性化につながる。

空白の夜間市場に挑戦する明治座。他社に先がけて成功するか、まずは7月12日正午(国内外問わず)のチケット予約開始に注目したい。

感動に流されがちなスポーツと「プリンセス駅伝、四つん這い走行」

カレー沢薫の時流漂流 第15回

感動に流されがちなスポーツと「プリンセス駅伝、四つん這い走行」

2018.11.12

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第15回は、「プリンセス駅伝の四つん這い走行」問題について

今年は「パワハラ」「黒い交際」「殺人タックル」など、スポーツ界が荒れに荒れた。

スポーツにつきまとう「感動」という尺度

というよりは、今までずっと「わかり哲也」の背景ぐらい荒れ続けていたが、関係者専用のプライベートビーチだったため、一般人の目につかなかっただけのような気もする。

その一方、ワールドカップでは予選を批判した奴は全員死んだのかというぐらい本戦の健闘が称えられたり、夏の甲子園では金足農が秋田県勢として103年ぶりに決勝に進出し大きな注目を集めたりと、感動的なこともあった。

しかし、結果だけを言えば、ワールドカップは1回戦敗退だ。金足農も決勝で敗れ準優勝。逆に優勝したのに金足農の陰に隠れた大阪桐蔭が可哀想なぐらいだ。

つまり、見る側はスポーツに対し、時に結果よりも「感動」を求めがちということだ。金足農が仮に優勝していたとしても、その勝利が「地獄甲子園」式で得た物なら讃えられなかっただろう。

スポーツに感動を求めるのは悪いことではない。私のような、床を這っているコードでこけるような先のない中年は、もはや他人の活躍に乗っかって泣いたり笑ったりするしかないのだ。

だが、「感動した! 痛みに耐えてよく頑張った! 」という言葉があるように、スポーツの感動には「選手が無理をする姿」も含まれていることは否定できない。その無理が「43度の風呂」レベルならまだ良いが、選手生命、さらには最悪命を脅かしかねない時もある。

インターネット大相撲では済まない「プリンセス駅伝」問題

そんな、文字通り「選手が痛みに耐えて頑張った」事件が、先日行われた「プリンセス駅伝」で起こった。女子駅伝だからプリンセス駅伝なのだろうが、私が走者だったら相当居心地の悪いネーミングだ。

その駅伝の中で、10代の走者が中継所の直前で走行不能となったが、何と四つん這いの状態で流血しながらタスキをつないだという。四つん這いで移動した距離は約200メートル。私だったら小一時間かかる、結構な距離だ。その選手がリードの外れた柴犬ぐらいのスピードで四つん這い走行した、というなら制止する間もなくタスキは渡されていたかもしれないが、満身創痍の状態なら相当時間がかかっただろう。

当然、その姿には「誰か止めろよ」と批判が噴出した。しかし、批判がある一方で「感動した!」と、流血四つん這いで走る女子の姿にバッチリ感動した勢がいるのも事実だ。それに対し「怪我しながら走る選手を美談にする勢を許さない勢」が現れ、いつものインターネット大相撲に発展しているのはよくあることなのだが、これはかなり複雑な問題なのである。

監督が倒れた選手に「お前棄権したらわかっとるやろな? 」とアイコンタクトをしたり、観客が「俺たちを感動させるために走れや」と選手を後ろからジープで追い立てたりしたと言うなら論外だが、監督はテレビモニターで「二足歩行が厳しい」という致命的な状態の選手を見て、ちゃんと棄権を申し入れている。

だが、その棄権が現場の審判に伝わった時には、すでにタスキ受け渡し地点の20メートル手前に来ていたそうだ。つまり、満身創痍の選手が四つん這いで180メートル移動してしまうまで棄権の申し入れが審判に伝わらなかった、ということだ。ここでまず連絡体制の不備が指摘されている。

そして、審判は棄権の申し入れを知った後も、「あとちょっとだし」と最後まで走らせてしまったと言う。痛みに耐えて頑張る選手、という「感動」に流され、無理をさせてしまった感は否めない。

そもそも棄権の申し入れがあるなしに拘わらず、現場判断で中止させるべきはなかったのか、という声もある。今、試しに家の中を四つん這いで走ってみたが、これで200メートルはなかなかキツイ。何より見た目が痛々しい。

私の場合、無職の中年が昼間に家の中を四つん這いで走っているというただの「イタい」状態だが、走れなくなった若い選手が流血しながら四つん這いで走る姿は、十分制止すべき痛々しさだろう。実際、棄権申し入れがなくても、現場判断で走れなくなった選手を止める権限が審判にはある。

それでも懸命に走る意志を見せる選手に心打たれて止められなかったのかというと、必ずしも感動だけが理由ではないようだ。企業にとって駅伝というのは非常に重要なものであり、それをチームではなく審判の判断で止めるというのは、審判員側と企業側に大きな禍根を残すことになりかねないのだという。よって審判側は「よほど勇気がないと止められない」そうだ。

また、選手にとっても企業の名前を背負っている上、「自分がコケたら皆コケる」という駅伝のルール上、選手には大きなプレッシャーがかかっている。つまり選手も現場も「止まるに止まれないし、止めるに止められない」状況になっていたのかもしれない。

そして結果から言うと、この選手は「全治3~4か月の骨折」となった。あの四つん這いでの200メートルがなかったら、もう少し怪我が軽くなった可能性は大いにある。

このように、無理は早めに止めないと、逆に有望な選手を潰すことになりかねない。

「無茶しやがって…」という展開は漫画などに任せ、ダメな時は「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ」と早々に打ち切り、次のチャンスに賭けるべきだろう。

タイヤ技術でオリパラを支えよ! ブリヂストン、義足の改良に挑む

タイヤ技術でオリパラを支えよ! ブリヂストン、義足の改良に挑む

2018.11.12

オリパラの裏側には、さまざまな最新技術が隠れている

パラアスリートを支える、ブリヂストンの「タイヤ技術」って?

義足用ソールの開発に挑む研究者らに話を聞いた

東京2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催まで2年を切った。自国開催ということもあり、現地で観戦しようと考えている人も多いだろう。そこで1つ提案したいのが、オリンピック・パラリンピックを「技術」の視点で見ることだ。

2018年の平昌オリンピック・パラリンピックでは世界初の5Gの実証実験サービスが行われ、開会式ではインテルがドローンによる光のパフォーマンスが行われた。このような派手なものに限らず、大会の裏にはいくつもの技術が隠れている。パラアスリートが用いる器具などがその典型的な例と言える。

そこで本稿では、「ワールドワイドパラリンピックパートナー」であるブリヂストンによる、自社技術の活用によってパラアスリートを支援する取り組み「パラアスリート技術支援プロジェクト」に注目。東京2020を支える技術の裏側に迫る。

タイヤ技術でパラアスリートを支えよ! 

パラアスリート技術支援プロジェクトは、同社のオリンピック・パラリンピックのパートナー契約締結を機に『タイヤやゴムの技術をアスリートのために活かせないか』という想いから発足したという。ではその技術で何を作っているのかというと、1つの例が義足用の「ソール」(地面に接する部分、靴底)だ。

今回話を聞いた、ブリヂストン 先端企画本部 先端技術推進部 先端技術企画推進第1ユニット 主任部員の小平美帆さん(左)とオリンピック・パラリンピックマーケティング推進部 アクティベーション推進ユニット 課長 鳥山聡子さん(右)

「当社では、パラトライアスロン選手の秦由加子さんの義足用ソールを開発しました。現在も定期的に本人と話し合いの場を設けながら、当社の技術でサポートできる部分はないか、ということを模索しています」(鳥山さん※以下、鳥山)

秦由加子 選手。1981年生まれ。千葉県出身。3歳から10歳まで水泳を習う。13歳で骨肉腫を発症し、右足の大腿部切断を余儀なくされたが、2007年に障がい者水泳チームで水泳を再開。2013年にパラトライアスロンに転向した。大腿部切断でパラトライアスロンを行っている唯一の日本人選手だ

なぜ同社がソール部分に注目するようになったかというと、「タイヤ技術との親和性の高さ」が理由だと小平さんは語る。

「もともと当社では、タイヤはもちろん、ゴルフシューズや農業機械用のゴムクローラなど、『地面と接する部分』の製品開発に強みを持っております。ソールも同じく、地面と接するモノ。そこで当社の持つ技術との親和性が高いと感じ、注目するようになりました」(小平さん※以下、小平)

さらに、ソールの素材はゴムと高分子の複合体であり、これは同社の製品でもよく使われる素材であった。タイヤ製品で培った技術を活用することで、選手をサポートできるのではないか? と考え、新ソールの開発を始めたというわけだ。

義足イメージ。ランニングシューズの底のように、特有なパターン(模様)の入っている部分が、ブリヂストンの開発したソール

「ランニングシューズを切って、義足に貼る」が当たり前?

そもそも、義足用のソール開発に力を入れている企業というのはグローバルで見ても少ない。義足を必要とする人は多くいる一方で、切断箇所や筋肉量の違いなど、個人個人によってのニーズが異なるために、高ロットでの生産ができず、なかなかビジネスとして成り立たないことが原因だという。では、秦選手の使用していたソールには具体的にどのような課題があったのか。

「これは秦さんに限らず、ほとんどのパラアスリートに当てはまることなのですが、それぞれが個人に最適化されたツールを使えていないという課題がありました。もともと、多くの種類が市場に出回っているわけではないので、パラアスリート向けの『高品質な製品』自体が少なく、モノによっては、開発されて数十年経っている”最新モデル”もあります」(鳥山)

驚くべきことに、世界大会で活躍する秦選手のような人であっても、ランニングシューズを買って、ソール部分を切り取り、義足に貼り付けて使っていたのだとか。そのように「売られているものを転用して使う」というパラアスリートは少なくないそうだ。

「当たり前ですが、ランニングシューズのソールは、義足を必要とする人向けに開発されたものではありません。地面と接触した際にかかる力は違うし、耐摩耗性が求められる箇所も異なります。秦さんは以前、雨の中でのレースで、『滑るのが怖くて、思い切って走ることができなかった』という経験をしたそうです。そうした意見を聞き、どんな状況であっても安心して走れるようなソールを開発したい、と考えるようになりました」(小平)

タイヤ開発のノウハウを詰め込んだソール開発

しかし、いくら「地面と接するモノ」だからといって、タイヤとソールで求められる技術が一緒だとは思えない。どのようにブリヂストンの持つノウハウをソール開発に適応させたのか。

「はじめはゼロからの挑戦でした。そもそも、『義足のソールに求められることって何? 』という疑問からのスタートなんです。勉強の日々でしたね。どうにか当社の技術を活用できないか、と考え、まずは走る際にかかる力を測るために、タイヤ開発に使用する測定器を使って圧力測定を行いました」(小平)

圧力測定時の様子。ランニング時、ソールへの力のかかり方がどう変化するかを調査した

ほかにも、使用した後の摩耗部分の分析などを行い、グリップ力を上げつつ摩耗を抑えられるソールはどのようなゴム材料・溝形状にすればよいかをひたすら考えたそう。

さまざまなデータから見えた課題に対して「どうブリヂストンの技術を適応させれば良いか」と考え、試行錯誤を重ねた後に、ようやくソールを開発。2017年4月、初めて秦選手に新ソールをつけた義足で走ってもらうことになった。

「私たちのソールで走ってみた秦さんには『全然違う! 』と、すぐに気に入っていただきました。その1カ月後には早速、新ソールで大会にも出場していただきました。その大会もあいにくの雨だったのですが、確実に滑りにくくなっているとのフィードバックをいただき、手応えを感じました」(小平)

小平さんや鳥山さんは、秦選手と密にコミュニケーションを取りながら、フィードバックを元にソールの改良を続けた

さまざまな領域での技術活用も視野

そのレース以来、秦選手は変わらずブリヂストンが開発したソールを使い続けている。現在のソールは2代目で、2017年に開発したモデルから、パターンと材質を変更しているそう。

しかし、いくら製品の改良を実現したと言っても、事業化につなげられなければ、同社の「パラアスリート支援」は一過性のものになってしまう。同社は今後、この取り組みをどのように続けていく予定なのか。

「秦さんとの協力によって生まれた技術が将来、当社製品のブレイクスルーにつながる可能性はあると考えています。将来的には、さまざまな領域での技術の活用も視野に入れております。ですが、何よりこの取り組みは、当社がグローバルメッセージとして掲げる『CHASE YOUR DREAM』を体現するもの。

CHASE YOUR DREAMとは、ブリヂストンが、さまざまな困難を乗り越えながら「夢に向かって挑戦し続けるすべての人を支えていく」という想いを表現したメッセージ

そのため、必ずしも『将来的なリターン』を求めてこの活動をやっている訳ではありません。私たちの取り組みが社内外に広がり、当社の『夢に向かって挑戦し続けるすべての人を支えたい』という想いに触れていただき、一緒にオリンピック・パラリンピックを応援してくれる仲間を広げていくことを目指しています」(鳥山)

「2020東京」まで1歩ずつ、2人3脚で

現在、すでに秦選手用の最新ソールは完成しているそうだが、まだまだブリヂストンの挑戦は続く。

「最新モデルは、秦さんの要望を満たし、かつさまざまなデータから考えられる問題点を解決した自信作。しかし、パラリンピックまではまだ時間があります。今後も本人のフィードバックをもとに、より改良を続けていきたいです」(小平)

パラアスリートと一緒に夢を追い続けるブリヂストン。今回紹介したのは、同社の秦選手との取り組みだけだが、それに限らず、ほかにも多くのアスリートを支援しているそうだ。

オリンピック・パラリンピックでもっとも日の目を浴びるのは選手。しかし、その周りには、選手たちを支えている多くの人たちがいる。来る2020年、パラリンピックでは、選手の義足や車椅子などにも注目し、そこに隠れた技術の背景を想像してみるのも楽しみ方の1つだ。

ブリヂストンと秦選手の挑戦をこれからも応援したい