ここまでやる? 電動化に本気のトヨタが開発した“世界初の磁石”

ここまでやる? 電動化に本気のトヨタが開発した“世界初の磁石”

2018.02.21

クルマの電動化に本気で取り組む姿勢を明確にして、マツダと合弁会社を立ち上げたり、バッテリーでパナソニックと組んだりと、ここ最近は活発な動きを見せているトヨタ自動車。2030年には550万台の電動化車両を売ると意気込む同社が、新たに発表したのは“磁石”の開発に関する取り組みだった。

トヨタが開発した「省ネオジム耐熱磁石」。キャラメルくらいの磁石に鉄でできた小さな玉がくっついて、ブドウの房のような感じになっている

なぜトヨタが磁石を開発するのか

トヨタが開発したのは、世界初の「省ネオジム耐熱磁石」だ。なぜ磁石なのかというと、電動パワーステアリングや電動車を走らせる駆動装置としてなど、クルマが必要とするモーターに、磁石が部品として欠かせないものであるため。なぜネオジムを省くのかといえば、このレアアースが貴重な鉱物資源であり、地域的にも中国、インド、ロシアなどに偏在していて調達リスクがあるためだ。

電動化車両の普及に向けたトヨタのマイルストーン

クルマのモーターなどに使う磁石は、高温でも高い磁力を保てることが重要。ネオジムは磁石の磁力と耐熱性を高めるために不可欠な材料だ。これを減らせば磁石の性能が落ちるわけだが、トヨタはネオジムをより安価で豊富なランタンとセリウムに代替すべく、新しい技術を開発した。開発のポイントは3つある。

中央の横線が現在のネオジムの生産量。ネオジム需要の見通しはさまざまだが、楽観的な見立てでも2025年には供給が不足する

顕微鏡で見れば分かるそうだが、磁石を構成するのは小さな粒だという。まずトヨタは、その粒を微細化し、粒と粒の仕切り面積を広げた。次に、粒を二重構造にして、ネオジム濃度の濃い表面の層と、濃度の薄い内部とに分けた。そして3つ目だが、ネオジムの代替として磁石に混ぜるランタンとセリウムの配合比を研究し、ネオジムを減らしても磁石の特性を低下させないよう、うまいバランスを見つけた。

つまり、従来は磁石の全体に広がっていたネオジムを、磁石を構成する粒の表面に“めっき”するような形で使うようにすることで、その使用量を抑える感じだ。

磁石の粒を小さくして、それをネオジム濃度の濃い層でコーティングする

電動車両普及に向けて不可欠な要素技術

この新型磁石により、ネオジムの使用量は仕向け先にもよるが20~50%の削減が見込めるという。ネオジム磁石からネオジムを減らそうとする動きは中国などでも活発だそうだが、トヨタの新型磁石は省ネオジム化に加え、同じく磁石に使用されるレアメタルのディスプロシウムの低減を達成しつつ、耐熱性を担保している点で世界初なのだという。ちなみに、磁石自体はトヨタではなく専門のメーカーが作る。トヨタは磁石を開発し、メーカーに提案して生産を依頼する立場だ。

右側が従来のネオジム磁石。上に載せた新型磁石の画像と比べると、ネオジムを減らしても磁力が落ちていないことが分かる

2017年10月時点でネオジムは1キロあたり100ドルであったのに対し、ランタンとセリウムは5~7ドルだったというから、新型磁石がもたらす材料コストの削減効果は大きそう。生産コストについては計算できていないらしいが、それとの差し引きが実際のコスト低減効果になる。この磁石の実用化についてトヨタは、クルマのパワステなどのモーターで2020年代前半、電動車の駆動用モーターで10年以内という目標を掲げる。クルマだけでなく、ロボットや家電などへの応用も期待できるそうだ。

安くて豊富な鉱物の比率が増えれば、磁石の材料費は安くなる。次の問題は、生産コストの上昇をいかに抑えるかだ

トヨタはクルマの電動化に向けた基幹技術として「モーター」「インバーター」「バッテリー」の3つを挙げる。これらに関連する技術開発は活発化しているものと想像できるが、磁石の優先度はどのくらいなのだろうか。新型磁石の説明会に登壇した同社先進技術開発カンパニーの加藤晃氏に聞いてみると、同氏は優先順位を明確化することを避けた上で、3つの基幹技術の全てで「障害を取り除いていく」と力強く語った。

トヨタの先進技術開発カンパニー 先端材料技術部 技範 担当部長で工学博士の加藤晃氏

さながら大学の講義のようだった今回の説明会。出席してみて感じたのは、磁石まで自社開発し、技術の手の内化を進めるトヨタの底知れなさだ。説明会で同社広報に話を聞くと、トヨタが手を出している領域の広さについては「私でも把握しきれていません」と苦笑まじりに話していた。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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