【500 Startups Japanトップインタビュー】<1>500 Startupsに選ばれるための3つの条件とは?

【500 Startups Japanトップインタビュー】<1>500 Startupsに選ばれるための3つの条件とは?

2016.06.28

【500 Startups Japanトップインタビュー】<1>500 Startupsに選ばれるための3つの条件とは?

伝統的VCと一線を画す「Lots of Little Bets」

 2010年に設立された500 Startupsは、世界60カ国の1500社以上に投資。20カ国以上に拠点を持ち、4つのメインファンドに加え、11の地域特化型ファンドと、2つの領域特化型ファンドを設立している。この圧倒的な数字を背景に「世界で最もアクティブなシードVCと自負している」と話すのはライニー氏。

 500 Startupsが投資する際の前提条件となるのが「シード」、つまり起業したてで企業の立ち上がり段階(アーリーステージ)であるということだ。

 しかし、立ち上がり段階ゆえに、そこから成長せずに死んでいく企業も多い。そこで500 Startupsが掲げる方針が「Lots of Little Bets(小さい投資を多数行う)」だ。さらに、生き残った企業に追加投資を適宜行うことで、「リターンを犠牲にせずに伝統的なVCと比べてリスクを低減している」(同氏)という。

 もともと500 Startupsの社名は500社投資するという意気込みを表現したものというが、すでに世界1500社以上へ投資していることからも、同社の勢いがうかがえる。

 そして、世界中で投資を進めるのは、イノベーションはシリコンバレー以外でも起こると見ているからだ。澤山氏は「インターネットやスマホが発展途上国でも普及してきている。我々はシリコンバレーでベンチャーを待つのではなく、世界中に出かけてイノベーションの種を見つけ、支援する」と話す。

理想はハスラー・ハッカー・デザイナー

 その上で、具体的に投資判断をする際に見ている要素は2つあるという。1つ目はコンセプトが良いことだ。「スタートアップ時はいろいろな失敗や壁にぶち当たるので一筋縄ではいかない」(澤山氏)中で、大きな方向性が時代の流れに合っているかどうか、そして紆余曲折があっても成長し続けられるコンセプトになっているかを見ている。

 2つ目は経営層がバランスの取れた「チーム」であること。この「チーム」というのがポイントで、経営者1人の場合は投資対象から外すケースも多いという。「1人でできるほどスタートアップは簡単でない」と澤山氏は断言する。

 また、アメリカでは理想的なチーム構成を表すものとして「ハスラー、ハッカー、デザイナー」という言葉があるという。これは、ハスラーはビジネスをつくる人、ハッカーはシステムを作る人、デザイナーは人や会社など全体像に関わる大きなデザインを描く人、という役割分担を意味する。

「もちろん、地域や分野によって必要な能力は変わってくる。そこで必要なスキルセットがそろうことが大事」とライニー氏。例えばBtoBであれば、パワーのある法人営業マンが必要で、さらに日本であれば、“飲みニケーション”もできるような人材がいれば頼もしいだろう。また、役職で表すと、突き進むタイプのCEO(最高経営責任者)、それを固めるCOO(最高執行責任者)やCTO(最高技術責任者)がそろっていることが、良いチームの一例だという。

 中でもITを駆使するベンチャー企業への投資が多い500 Startupsにとって、優秀なCTOは必須の人材と見ている。「技術は外注で」というベンチャーには投資しないこともあるという。一方で、技術面だけでなく、プロダクトの価値をどう売り込むかというマーケティングの視点を持った人材も必須だという。澤山氏は「一番良いプロダクトが勝つとは限らない。技術と同じくらい伝える力も備えておく必要がある」とその重要性に言及する。

エンジニア畑の日本人×マーケティング畑のアメリカ人

 テクノロジーとマーケティングという2つの側面の役割分担は500 Startups Japanを率いる2人についても言える。というのは、澤山氏はテクノロジーのバックグラウンドを持っており、ライニー氏はマーケティング分野での専門性を持っているからだ。澤山氏は大学院でコンピューターシミュレーションを学び、2014年、2015年と2年連続で TechCrunch Tokyo Hackathonの入賞経験を持つという筋金入りだ。メディアで「エンジニアVC誕生」と紹介されたのもうなずける。

 日本人の澤山氏とシリコンバレー事情に精通したアメリカ人のライニー氏は、国籍の面でもお互いをまさに補完しあう関係。2人とも流ちょうな英語・日本語を話すバイリンガルだが、細かいニュアンスはネイティブだからこそ分かることもある。「世界と日本を結ぶという意味でもベストパーナー。チームが大事というのは我々自身が最も体感している」と澤山氏は実感を込めて話す。

 こうして、シード、コンセプト、チームの3つの条件がそろえば「分野」にはこだわらないという。「本当に新しいものはどこから生まれてくるか分からない。良い企業へ先手を打って投資したい」。ライドシェアのウーバー(Uber)や民泊仲介のエアビーアンドビー(Airbnb)を例に挙げながらライニー氏は説明する。

 実績もついてきている。500 Startupsが数々のシードへ投資した中で、10億~100億円の規模で、同社が「ポニー」と呼ぶに足る企業は300社以上ある。また、100億~1000億円の規模の「ケンタウロス」と呼ぶ企業も37社になった。さらに、1000億円以上に成長したいわゆる「ユニコーン」も3社ある。

 ライニー氏は「日本でもグローバルなユニコーンの誕生に貢献していきたい」と意気込む。では、どのような戦略を描いているのだろうか。続く第2回では、500 Startups Japanの日本戦略を中心にお届けする。

編集:M&A Online編集部

プロフィール


左:代表兼マネージングパートナーJames Riney氏
略歴:500 Startups Japan代表。J.P.モルガンに勤務の後、「ビリギャル」を世に送り出したSTORYS.JP初代CEOを務める。次にDeNAの投資部門に移り、初期段階の国際投資を担当。DeNAのタイ、インドネシア、フィリピン、インドへの出資を主導した。その後500 Startups Japan立ち上げに関わり現職。

右:マネージングパートナー 澤山 陽平氏
略歴:JPモルガンの投資銀行部門においてTMTセクターの資金調達やクロスボーダーM&Aのアドバイザリー業務に携わった後、野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(NR&A)にてITセクターの未上場企業の調査/評価/支援業務に従事、2015年12月より500 Startups Japanのマネージングパートナーに就任


ベンチャーキャピタル
500 Startups Japan: http://500startups.jp/

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu