NTTドコモ吉澤社長に聞く、5G時代のパートナー戦略

NTTドコモ吉澤社長に聞く、5G時代のパートナー戦略

2018.02.28

2020年の東京五輪に合わせて、次世代のモバイル通信規格「5G」の商用サービス提供に向けた準備を進めているNTTドコモ。同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は来る5G時代の到来に向け、中期経営計画「beyond宣言」の下、どのような戦略をもって取り組もうとしているのだろうか。スペイン・バルセロナで開催されている「Mobile World Congress 2018」で話を聞いた。

5G時代にはパートナーとの協業が重要に

スペイン・バルセロナで2月26日より開催されている携帯電話の総合見本市イベント「Mobile World Congress 2018」。その初日の基調講演に登壇したのが、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏だ。

NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

現在NTTドコモは、次世代の通信規格「5G」の商用サービスを、2020年に展開するべく準備を進めている。そうしたことからスペイン・バルセロナで2月26日から実施されている携帯電話の総合見本市イベント「Mobile World Congress 2018」に、NTTドコモはNTTグループと共同で従来より一層大きなブースを展開。5G時代に向けた技術やサービスのアピールを積極化してきている。

そして吉澤氏は基調講演において、5G時代には、4Gの時代までのように通信事業者が単独でサービスを提供するのではなく、同社が掲げる中期計画「beyond宣言」に基づき、企業や自治体などさまざまなパートナーと協業しながらチャレンジを進めることだと話している。

実際基調講演の中で、吉澤氏はコマツとの協業による、5Gのネットワークで建設機械を遠隔操作する実証実験や、和歌山県・和歌山県立医科大学との協業による、4Kビデオ会議システムを用いたリアルタイム遠隔医療の実証実験事例などを紹介。多くの企業と5Gを活用したサービス創出に向けて取り組んでいることをアピールしていた。

「Mobile World Congress 2018」の基調講演は、NTTドコモの中期経営戦略「beyond宣言」と、それに基づいたパートナーとの5Gに関する協業に関する説明が中心となっていた

そうしたパートナーとのコラボレーションを重視したNTTドコモの姿勢は、同社がMobile World Congressで実施していた展示の様子からも見て取ることができる。NTTドコモはこれまで毎年、同イベントで展示を実施してきたが、今年は先にも触れた通り、NTTドコモだけでなく、NTTグループと共同で出展し、5Gの進展に向けてNTTグループ全体で積極的に取り組む様子をアピールしていた。

同社がコラボレーションを重視する背景には、5Gの時代に向け通信事業の環境が大きく変化していることが挙げられるようだ。実際吉澤氏は「ここにきてAIやIoT、そしてサービスの革新などが起きてきている。そうした時代には5Gを単独で手掛けるより、グループ内で連携をとることによって初めて見えてくるビジネスがある」と話しており、NTTグループが持つ技術やリソースを組み合わせることで、5Gの可能性をアピールしたい考えがあるようだ。

同じく「Mobile World Congress 2018」のNTTドコモブース。NTTグループと共同での出展となって規模が大きくなり、盛況な様子を見せていた

5GはB2B2Cによる利用が先行

もちろんNTTグループだけでなく、パートナー企業との協業に積極的に取り組んでいるそうで、「互いのアセットを掛け合わせることで見えてくることが、5Gを発展させる考え方の肝になる」と吉澤氏は話す。自社の強みである通信がベースにありながらも、色々なものと融合することでサービスを広げていくというのが、5G時代のビジネスのあり方となるようだ。

5Gネットワークを活用した、ロボットの遠隔操作による書道のパフォーマンス。こちらも新日鉄住金ソリューションズとの協業によって進められているものだ

5Gは高速・大容量や低遅延など、従来の4Gと比べ大幅な性能向上を実現できるとしているが、中でも吉澤氏が期待を寄せているのがアップロードの高速大容量化だ。4Gまではあまり重視されてこなかったアップロード時の通信速度だが、5Gではその高速化がなされることによって、リアルタイム性が求められる遠隔操作やライブ中継の映像伝達など、従来にない活用が期待できるというのがその理由だ。

ただ一方で気になるのは、NTTドコモが現在パートナーと取り組んでいるものの多くが、どちらかというとB2B向けの内容だということ。4Gの時のスマートフォンのように、一般消費者にその魅力が伝わりやすいキラーデバイスやサービスが存在せず、5Gの魅力や特徴が伝わりづらく普及が進まないことが懸念されている。

だが吉澤氏は「そんなことは、これまでの通信方式でも繰り返されてきたこと。実際にローンチすれば、ものすごいコンテンツやサービスが出てきてあっという間に生活の一部になる」と話し、そうした懸念を一蹴した。とはいうものの、5Gの普及に関してはやはり従来と異なってくると見ているようだ。

実際吉澤氏は「5Gの大容量通信によって、例えば音楽ライブをさまざまな場所に配信することができれば、ユーザーが5Gを直接実感していなくても顧客拡大へとつながり、メリットが生み出せる」と答えるなど、B2B2Cの取り組みによって消費者にメリットがもたらされるケースが増えるとの考えを示している。そのためには5Gの活用事例を増やしていく必要があるとのことで、2月21日に開始した、5Gの情報や実験環境などを提供する「5Gオープンパートナープログラム」の活用を積極的に進めていく考えを示した。

最新テクノロジーも協業で価値が高まる

今年韓国で実施された平昌五輪でも、KTやサムスン電子などが5Gを活用したサービスを展開していたものの、標準化のタイミングなどもあり、あくまで試験的なものとなっていた。だが東京五輪が実施される2020年には、5Gの本格的な商用化が期待されている。それだけに、2020年に5Gがどの程度まで使えるようになっているのかは、大いに気になるところだ。

この点について吉澤氏は、「標準化が終わったことから研究開発をスタートしているところ。実際に工事などを進めるのは2019年になる」と答え、着々と準備を進めている様子を示す。

またエリアに関しては、2020年のサービス開始時点ではトラフィックの多い主要都市や、パートナー企業と連携を進めている地域などでのエリア展開を進め、そこから規模を広げていく考えとのこと。だが東京五輪の会場に関しても「メインとなる東京は積極的にカバーしたいと考えている」と話し、競技会場は可能な限り5Gのエリア化を進める考えを示した。

ただサービスに関しては「その時点では5Gに対応する端末自体があまり揃っておらず、インバウンド向けに5Gのサービスを提供することなどは難しい」とのこと。それゆえ東京五輪における5Gの活用は、主にスタジアム内でのサービスや遠隔地へのライブ中継、またあるいはパートナー企業とのB2B2Cによるサービス提供になってくると考えているようだ。

2020年の5Gエリア整備について、「東京五輪の会場は積極的にカバーしていきたい」と吉澤氏は答えている

最後に、吉澤氏に現在興味を持っているテクノロジーについて聞いたところ、「データの相互利用でセキュリティを担保できる、ブロックチェーンとそれを活用したフィンテックは面白いと思っている。例えば弊社で現在、契約会員1人1人のデータを他の方と相互利用するデジタルマーケティングプラットフォームを春に提供しようとしているが、そういったものを業界同士、法人企業同士でデータ活用する仕組みをもっとやっていきたいと」と答えている。

NTTドコモは現在、タクシー会社と相互にデータを活用した「AIタクシー」を展開しているが、そうしたデータの相互活用をホテルや鉄道など、幅広い業種に広げることができれば、より面白い取り組みができると考えているようだ。

最近注目度が高まっている「AI」に関しても、NTTドコモ独自のAIエージェントサービスを春に提供するとしているが、「まだまだやれることはたくさんある。AIをブラッシュアップするのも自分達だけでできるわけではない。得意なところと協調、協創してやっていくことで顧客に社会的な価値を提供する」と話している。NTTドコモ自身がオープンなプラットフォームとなり、幅広いパートナーと手を組むことによって、最新技術の活用の幅をより広げていきたいというのが、吉澤氏の狙いとなっているようだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu