防戦から攻勢に移った携帯大手3社、2018年も攻め続けられるか

防戦から攻勢に移った携帯大手3社、2018年も攻め続けられるか

2018.01.01

相次ぐ総務省からの指導と、低価格なMVNOの急伸で一方的な防戦を強いられてきた携帯大手3社。だが2016年半ば頃から昨年にかけ、低価格戦略を強化したことで顧客流出の阻止に成功。一転して再び優位な立場に立つに至っている。だが今年は再び動き出した総務省への対応を迫られるとともに、低価格戦略を推し進めたことで低下した収益の改善などが求められ、決して安泰とはいえない。

顧客流出防止の強化で一転してキャリアが有利に

昨年の携帯電話業界の動向を振り返ると、ここ数年来元気がなかった大手キャリアが、ようやく反転攻勢に転じた1年だったといえるだろう。

大手キャリアに対してはここ数年来、逆風の嵐が吹き荒れていたといっても過言ではない。その理由は、大手3社の市場寡占による市場競争の停滞を嫌い、新規参入事業者を増やして競争を加速したい、総務省が大ナタを振るったことだ。

中でも最も大きな影響をもたらしたのが、2015年末頃に実施された総務省の有識者会議「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」だ。ここでの議論の結果、端末の実質0円販売を事実上禁止するなど、従来の商習慣を大きく覆すガイドラインが打ち出され、大手キャリアは大幅な戦略転換を余儀なくされたのだ。

加えて総務省はMVNOの支援も進め、現在では700社を超えるMVNOが市場参入するに至っている。その結果、従来の半分から3分の1で利用できるMVNOのサービスが人気となり、大手キャリアから顧客が流出。かつてのように端末価格の安さでユーザーを他社から奪うことができなくなる一方、顧客がMVNOに流出し続けるという、大手キャリアにとって圧倒的に不利な市場環境が生まれてしまったのである。

そうした状況に強い危機感を募らせた大手キャリアは、従来の方針を大きく転換。これ以上大きく新規顧客が増えないことを見越し、総務省の支持には従いながらも収益基盤となっている自社の顧客を守るべく、MVNOへの顧客流出を徹底して阻止する戦略に打って出たわけだ。

1つは、低価格のサービスを提供するサブブランドの強化である。ソフトバンクはワイモバイルブランドに力を入れ、低価格でサポートがしやすい「Android One」スマートフォンの充実を図るほか、学割施策を強化し学生層の獲得に力を入れるなどして一層の顧客獲得を進めている。またKDDIはUQコミュニケーションズの「UQ mobile」に加え、昨年1月にMVNOとしても大手のビッグローブを買収。ジュピターテレコムの「J:COM MOBILE」と合わせ、傘下のMVNOを増やし低価格を求める顧客の受け皿を増やした。

ワイモバイルは「Android One」スマートフォンの充実を図るなどして、独自性を打ち出し一層の販売拡大を進めている

そしてもう1つは、より安価な通信料を実現する料金プランの提供だ。NTTドコモの「docomo with」や、KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」などがそれに当たるのだが、これらは通信料金が従来より安い代わりに、端末代を値引きしない仕組みとなっている。端末の値引きをせずに通信料金を引き下げるというのは、まさに総務省の要望に沿ったものであり、総務省の要求に応えつつも、安い通信量で自社の顧客を守る手段に打って出たわけだ。

NTTドコモが「docomo with」を打ち出すなど、端末代を値引かない代わりに通信料を安くする新しい料金プランが急増したのも今年の大きな変化だといえる

再び動き出した総務省、大手キャリアに影響を与えるか

それら一連の施策の結果、大手キャリアの顧客流出は確実に低下しているようだ。実際NTTドコモは、昨年10月27日の決算会見において、MVNOの伸び悩みを受けて、2017年度の契約純増数を220万から130万へと大幅に下方修正したことを明らかにしている。一方で同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は、「自社のスマートフォンやタブレットの契約数が大きく減っているわけではない」と話しており、NTTドコモの顧客は現状維持がなされているようだ。

低価格戦略の出遅れによって、MVNOへの顧客流出を最も懸念していたKDDIの代表取締役社長である田中孝司氏も、昨年11月1日の決算会見で「番号ポータビリティによる(他社への)流出も、グループ全体で見ればほぼ止まっている。アンダーコントロールな状況になりつつあるんじゃないか」と話しており、一連の施策によってMVNOへの流出阻止に目途が立ったとの発言をしている。

ようやく顧客流出阻止に目途をつけることができた大手キャリアだが、現在の調子が来年も続くかというと、そうとは限らない。その理由はやはり総務省にある。大手キャリア、ならびにそのサブブランドや傘下のMVNOが勢力を伸ばしたことで、独立系MVNOの勢いが落ち、3社の寡占体制に再び戻ってしまうことを総務省は懸念。大手キャリアとMVNOとの間に同質・同等性が確保されているかを検証するべく、12月25日に新しい有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を実施したのだ。

12月25日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」では、大手キャリアの2年縛りの自動継続や、サブブランドの優遇などについて問題提起がなされた

その第1回目の会議では、特に大手キャリアの「2年縛り」が自動更新されてしまうことを問題視する声や、大手キャリア傘下のMVNOやサブブランドが優遇され、独立系MVNOとの間で競争上の平等性が担保されていないのではないかという指摘などが多くなされていた。参加者の中からは「MVNOと大手キャリアとでは事業規模や資金力などで広大な差がある。MVNOを振興する観点に立つならば、何らかのハンディキャップを課すことも必要なのではないか」(神奈川大学経営学部 教授の関口博正氏)など、大手キャリアに一層厳しい措置が必要との声も上がっていたようだ。

この会議では今後、大手キャリアやMVNOなどへのヒアリングを実施し、今年の3月まで6回にわたって議論を実施して何らかの結論を出すものと考えられる。既に大手キャリアに対する厳しい意見が上がっているだけに、2015年の有識者会議同様、今回の会議が大手キャリアに何らかの逆風をもたらす可能性は十分あり得るだろう。

安さを求める顧客に付加サービスを契約してもらえるか

だが総務省以外にも、大手キャリアを苦しめる大きな要素が1つある。それはARPUの低下だ。先にも触れた通り、大手キャリアはここ最近、顧客流出阻止のためサブブランドや低価格な料金プランを提供したのだが、その結果として当然のことながら、顧客1人当たりから得られる料金は減少しているのだ。

実際、ソフトバンクの2018年3月期 第2四半期決算において、ソフトバンク・ワイモバイルの主要回線の通信ARPUを見ると、前年同期比220円減の3790円となっている。同社のARPUの減少は既に長期的な傾向となっており、ワイモバイルへの注力によって通信事業でベースとなる売上を落としている様子を見て取ることができるだろう。

またKDDIも、高い売上を誇るauの契約者数が2500万を切るなど減少トレンドにある一方、UQ mobileなどのユーザー数が100万を超え、大幅に伸びている。それだけKDDIも1契約当たりの単価が低いユーザーが増えていると見られ、収益低下をいかにカバーするかが大きな課題となってくる。

KDDIはグループ全体の契約数こそ伸びているものの、auの契約数は2500万を割りこむ一方、傘下MVNOの契約数が100万を超えるなど急増しており、収益低下が懸念される

この点について、大手キャリアは既存顧客に対し、充実したサービスやコンテンツを提供することによって、売上を高める戦略に打って出ている。実際NTTドコモは「スマートライフ領域」の事業強化を図っており、金融・決済系サービスは、取扱高が1兆5000億円近くに上り、dカードの契約数も1800を超えるなど好調だ。またスポーツ動画配信の「DAZN for docomo」を展開するなどサービスの充実を図るなど、利用できるサービスの拡大を進めている。

KDDIも同様に、ライフデザイン事業への注力を進めており、有料会員サービスの「auスマートパス」は1500会員を突破。さらに決済サービスの「au WALLET」も、有効発行枚数が2000万を超えているほか、最近ではディー・エヌ・エーから買収して事業展開している「Wowma!」への注力を進めることで、サービスの拡大を図っている。

一方ソフトバンクは、自社サービスの充実度は高くないものの、同じソフトバンクグループ傘下のヤフーが運営する「Yahoo! Japan」との連携を急速拡大。ソフトバンク・ワイモバイル契約者に対し、有料の「Yahoo!プレミアム会員」相当のサービスを無料で提供する施策を展開しているほか、「Yahoo!ショッピング」で買い物をした時にポイントを優遇するキャンペーンなどを実施。ソフトバンクが持つ顧客を生かしてグループ内での売上を高める戦略に出ている。

だが今後は、各社共に一層低価格のサービス利用者が増える可能性が高く、付加サービスで売上を拡大していかなければ、従来通りの高収益体制を確保することは難しくなってくる。料金の安さを求める顧客に対していかに付加サービスを使ってもらうかという難題を乗り越えることが、今年以降大手キャリアにとって大きな課題となってくるだろう。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。