MVNOの整理淘汰が進む試練の2018年、注目される楽天の動向

MVNOの整理淘汰が進む試練の2018年、注目される楽天の動向

2018.01.02

2016年までは大手キャリアから顧客を奪い、破竹の勢いで急成長してきたMVNO。だが2017年に入るとその流れが一転。大手キャリアの顧客流出防止策強化によって顧客獲得が難しくなり、ついには経営破たんするMVNOも現れた。今年からは急増したMVNOの淘汰が加速するなど、MVNO同士の生き残りに向けた戦いが加速する可能性が高いが、一方でMVNOからキャリアになることを表明した楽天の動きも注目される。

大手キャリアの反撃で破たんするMVNOも

2017年は、MVNOにとって大きな転機となった年といえるだろう。なぜなら、それまで格安な通信料で大手キャリアから顧客を奪い、順調に契約数を伸ばしてきたのが、一転して思うように契約数を獲得できなくなってしまったからだ。

その理由は、MVNOへの顧客流出に危機感を募らせた大手キャリア側が、顧客流出阻止のため低価格のサービスを大幅に強化したからである。ソフトバンクは低価格ブランドのワイモバイルを強化し、NTTドコモは「docomo with」や月額980円の「シンプルプラン」など、より安価に利用できる料金プランの充実を図ってきた。

そしてKDDIは、MVNO大手のビッグローブを買収して傘下のMVNOを増やし、さらに「auピタットプラン」など安価な料金プランの充実を図ることにより、グループ外への顧客流出阻止を徹底している。そうした大手キャリアの施策が大きな影響を与え、MVNOへ流出する顧客が大幅に減少したのである。

MVNOの停滞ぶりはさまざまな数字から見ても明らかだ。MVNO大手のインターネット・イニシアティブ(IIJ)が発表した、2017年度第2四半期決算の内容を見ると、個人向けMVNOの「IIJmioモバイル」の四半期の契約純増数が6000人にまで減少している。2016年度第2四半期の純増数を見ると、6.4万契約も増加していたことを考えると、純増数の伸びはおよそ10分の1にまで落ち込んでしまっていることが分かる。

IIJの個人向けMVNO「IIJmioモバイル」の純増数は今年に入って急減。2016年には5、6万契約を獲得できていたのが、2017年は1万を割り込むにまで至っている

さらに大きな衝撃を与えたのが、「FREETEL」ブランドでMVNOとして通信事業を展開していたスマートフォンメーカー、プラスワン・マーケティングが、昨年12月に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、経営破たんしたことだ。同社の通信事業は11月に楽天が買収したことで受け皿となり、契約者がある日突然サービスを利用できなくなるという最悪の事態は免れている。

しかしながら同社は有名タレントを起用するなどして積極的な販売拡大を進め、MVNOとしても大手に迫る勢いを見せていた。それだけに同社の経営破たんは、MVNOの落ち込みを示す象徴的な出来事として、驚きを与えたことは確かだ。

2017年の前半までは勢いを見せていたプラスワン・マーケティングは、その後急速に資金繰りに窮し、楽天にMVNO事業を売却した後に経営破たんに至った

再編を見据える上でも注目されるIIJのフルMVNO化

MVNOにとっては非常に厳しい年となった2017年だが、大手キャリアのMVNOに対する危機感は強い。大手キャリアによる市場寡占を懸念する総務省が現在、新しい有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を実施しており、その結果によっては大手キャリアに対して再び何らかの指導がなされ、MVNOが再び有利になることも考えられる。だが総務省の大ナタがない限り、この傾向は今年も続くと考えられ、限られたパイを奪い合うMVNO同士の競争が一層激化することは必至だ。

その先にあるのは、MVNOの淘汰と再編であることは言うまでもない。そもそも700以上存在するMVNOが全て生き残り、キャリアと対抗し得る勢力になるというのは困難なことだ。かねてより言われている通り、かつてのインターネットサービスプロバイダーと同様、増え過ぎた事業者の整理淘汰が急速に進み、いくつかの企業やグループに集約される動きが、今年は急加速するのではないだろうか。

では、どういったMVNOが勝ち残ると考えられるだろうか。1つは、やはり企業体力のあるMVNOであろう。MVNOの多くは資本力が弱く、プラスワン・マーケティングもベンチャー故の資金力のなさが、結果的には破たんへとつながっている。それだけに、企業体力がある、あるいはMVNO以外の事業基盤を既に確立している企業が、MVNO再編の軸となる可能性が高いといえそうだ。

そしてもう1つは、他社との差異化要素を持つMVNOだ。MVNOは大手キャリアのネットワークを借りており、しかもその大半はNTTドコモのネットワークである。同じ料金で同じネットワークを借りていることから、元々差異化要素があまりないのだ。それゆえ他社と明確な差異化を図ることができたMVNOは、唯一無二の存在として生き残ることができる可能性が高い。

そうした意味でも今年注目されるのが、IIJのフルMVNO化である。同社は2016年に、NTTドコモと加入者管理機能の連携を申し込んでおり、2017年度の下期、つまり今年の3月末までにはフルMVNOとしてサービスを提供するとしている。

フルMVNOとなるには高い技術力と多くの投資が必要だが、一方でSIMを独自に発行できるなど、MVNO側のサービスの自由度が大幅に高まるメリットがある。IIJはフルMVNOによるサービスを、主として法人向けに提供する予定だが、将来的にはコンシューマー市場に向けたサービスとして展開することも考えられる。それだけに、同社のフルMVNO化の成否は、今後MVNOの差異化を進める方向性の1つとして注目されるところだ。

IIJは今年3月末までにフルMVNOとしてのサービスを提供予定。SIMを発行できるなどサービスの自由度が高まることから、今後のMVNOのあり方を考える上でも注目される

MVNOからキャリアへの転身を表明した楽天はどうなる?

そしてもう1つ、MVNO、ひいては今後の携帯電話業界の動向を占う上で大いに注目されているのが、楽天の動向である。楽天は昨年12月14日、総務省が既存の4G向けとして、新たに実施する予定の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当てを申請し、キャリアとして携帯電話事業に参入することを表明したのである。

楽天はMVNOとして「楽天モバイル」を運営しており、プラスワン・マーケティングから買収した通信事業と合わせて140万を超える契約を獲得。MVNOとしては既に大手の一角を占める存在となっている。だが大手キャリアからネットワークを借りている立場上、昼間に速度が落ちやすいなど、大手キャリアと比べればネットワーク面で多くの制約がある。そうしたことからか、楽天はMVNOとして事業拡大するのではなく、自らキャリアになるという選択を打ち出したのだ。

140万超の契約を獲得するなど、MVNOとして大手の一角を占めるに至った楽天。だがMVNOとしてではなく、キャリアとして携帯電話事業を本格化させることを表明している

だが回線を借りるだけでサービス提供できるMVNOと、自ら基地局の場所を借り、鉄塔などを敷設して充実したインフラを整備する必要があるキャリアとでは、全く別次元とも言うべき事業面でのハードルが待ち構えている。楽天は2025年までに最大6000億円の資金調達残高を見込んでいるが、大手キャリアは1年でその程度の金額をインフラに投資しているだけに、決して十分な額とはいえない。

それだけに、これからゼロベースでインフラを敷設し、大手キャリアに対抗し得る存在となるのは非現実的だとの見方が多数を占めている。そうした見方を覆し、明確に成功し得るプランを提示できるかどうかが、楽天には大きく問われている。

電波割り当ての申請は今年実施されると見られているだけに、楽天のキャリア化に関する動向は今年1つの山場を迎えることとなる。今後の業界全体の動向を占う上でも、楽天には大きな注目が集まることとなりそうだ。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる