2018年のパソコン業界はどうなるか

2018年のパソコン業界はどうなるか

2018.01.03

2017年の日本のPC業界は、業界再編が続いた。

2017年11月には、富士通の100%子会社である富士通クライアントコンピューティングに、Lenovo Group Limited(レノボ・グループ・リミテッド)が51%を出資し、レノボ傘下で事業を推進することなった。

また、経営再建中の東芝においても、パソコン事業売却に向けた動きが一部報道されるなど、パソコン事業再編の憶測が後を絶たない。

富士通クライアントコンピューティングが、レノボ傘下に入ったことで、日本のPC市場に大きな変化が起こることになる。

富士通クライアントコンピューティングのノートPC生産拠点となる島根富士通

ひとつの陣営で4割を超えるシェアに

レノボは、2005年に、ThinkPadを擁するIBMのPC事業を買収したのに続き、2011年には、NECのPC事業を傘下に収めている。今回、富士通クライアントコンピューティングを傘下に収めたことにより、レノボおよびNECの合計シェアの25.6%に、国内第2位の富士通のシェア18.1%が加わり、43.7%のシェア(2016年度実績、MM総研調べ)に達する。

ひとつの陣営が4割を超えるシェアを持ったのは、1995年にNECのシェアが40.0%(データクエストジャパン=現ガートナージャパン調べ)となって以来、実に22年ぶりのものだ。それ以前は、NECが50%を超えるシェアを持っており、「ガリバー」と称されていた時代が続いていた。

富士通クライアントコンピューティングが、レノボ傘下で事業を推進することで、国内PC市場において、「ガリバー」に匹敵する一大陣営が、約四半世紀ぶりに復活する状況に至ったともいえる。

しかし、当時と異なるのは、1社ではなく、グループという点だ。そして、そのグループ構成もユニークだ。

たとえば、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの関係は、NECレノボ・ジャパングループとして、営業戦略やパートナー戦略を一本化しており、マーケティングやモノづくりにおいても連携している。体制が一本化しているという点で象徴的なのは、NECレノボ・ジャパングループでは社員を採用すると、全員がレノボ・ジャパンに所属し、そこから、レノボ・ジャパンか、NECパーソナルコンピュータのいずれかに配属になるという仕組みである点だ。会社やブランドは2つに分かれていても、事実上の一体経営となっていることを示している。

これに対して、富士通クライアントコンピューティングは、レノボ傘下に入っても、レノボNECグループとは、まったく別の組織体制となっている。

つまり、営業戦略やパートナー戦略、マーケティング戦略のほか、モノづくりに関しても、富士通クライアントコンピューティングは独自に行うことになる。レノボやNECブランドのモノづくりとは一線を画した体制が維持されることになるのだ。だが、OSやCPUなどの共通部品については、共通調達によって、コストダウン効果が見込まれる。バックエンドでの共通化によるメリット追求は行われることになるだろう。

新体制化で注目すべきこと

こうした陣営形成は、日本のPCメーカー大手では初めてだといえるだろう。

富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、この陣営の姿を自動車メーカーに例えてみせる。「たとえば、自動車メーカーのフォルクスワーゲングループでは、フォルクスワーゲンのほかに、アウディやポルシェといった異なるブランドも存在し、それぞれのカスタマベースを維持しながら、それぞれのカスタマに向けて、独自性の強いクルマを投入している。それと同じように、富士通の独自性を維持しながら、富士通が得意とするカスタマに向けて、富士通ならではの製品を投入していくことになる」と語る。

新体制がスタートするのは、2018年度第1四半期(2018年4~6月)の予定だ。2018年は、富士通クライアントコンピューティングの独自性がどれだけ維持されているのかを、まずは注視しておく必要があるだろう。

日本のPCメーカー過去・現在

だが、日本のPC事業の衰退ぶりは明白だ。かつての日本のPCメーカーは、世界で戦える規模を誇っていた。もしかしたら、読者の多くは、国内で圧倒的トップシェアを誇っていたNECが、日本最大のPCメーカーのポジションにいたと思っているかもしれないが、実は、日本最大のPCメーカーは東芝であった。一時期は年間2000万台規模のPC生産に乗り出し、全世界のノートPC市場を牽引していた。当時、NECの出荷台数は400万台規模であり、その差が大きいことがわかるだろう。

東芝はバイセル取引などにより、PC事業が不正会計の温床となり、事業そのものの縮小を余儀なくされ、過去の輝きはすでに失っている。

余談だが、NECはパッカードベルを買収した時点で、一時的に世界シェアナンバーワンになったことがあったが、これを達成した1996年当時の全世界の市場規模は約7000万台。約10%のシェアを獲得したが、1000万台規模には到達していなかった。

東芝に次いで大きな出荷台数を誇っていたのがソニーだ。ソニーは一時期、1000万台の出荷を目指しており、新興国などにも積極的に展開していた。だが、こうした積極策が利益縮小という形で裏目に出て、その後のPC事業売却につながる。

そして、3番手が富士通だ。同社も一時期は1000万台を目指していたが、日本および欧州では一定のシェアを確保したものの、北米市場での拡大につまづき、結局は1000万台の規模には到達しなかった。

現在、東芝は年間約180万台、ソニーはVAIOとなって、20万台規模にまで縮小。富士通も年間350万台規模となっている。世界トップシェアを争うレノボ、デル、ヒューレット・パッカードが6000万台規模のビジネスを行っていることに比較すると、日本のPCメーカーの競争力が落ち込んでいることは明白だ。好調といわれるパナソニックは、ようやく年間100万台を視野に入れようとしている段階だ。桁が違う規模でのビジネスを余儀なくされている。

PCは、共通的な部品を活用することが多く、とくに基幹部品となるCPUやOS、メモリなどは、調達価格にボリュームが大きく作用する。海外市場での競争力を失った日本のPCメーカーが、存続をかけて、海外メーカー傘下に入ったり、付加価値モデルにシフトしたりといったことでブランドと事業の生き残りに取り組んでいるのはそのためだ。

市場は底打ち?

だが、日本のPC市場の低迷は徐々に長いトンネルを抜け出そうとしている。一般社団法人電子情報技術産業協会の調べによると、2017年4月~11月までの国内PC出荷は、前年同期比3.9%減となり、前年割れで推移しており、通期での前年割れも見込まれるが、業界関係者の声を聞くと、「市場は底を打った」との声もあがる。

というのも、2018年以降、いくつかの明るい材料があるからだ。

具体的には、2020年の東京オリンピックまでの景気上昇が見込まれ、PC市場にもその恩恵が生まれること、2020年1月のWindows XPの延長サポート終了に伴う買い替え需要が発生するとみられること、さらに、2019年10月に消費増税が実施されるとすれば、それに伴う駆け込み需要も想定される。

また、先頃、政府が閣議決定した2017年度補正予算では、中小企業を対象にしたIT導入およびクラウドサービス導入に補助金を支給する「サービス等生産性向上IT導入支援事業」に500億円のほか、「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」で1000億円を計上したことも追い風になるとみられる。生産性革命に名称が変わりつつある「働き方改革」も、PC市場にとってはプラス要素だ。

加えて、2020年には小学校でのプログラミング教育の必須化が予定されており、これもPCの販売拡大につながる。すでに量販店店頭では、小学生向けのPCコーナーが設置されるといった動きもみられており、2018年以降、この需要が徐々に盛り上がりをみせるだろう。 このようにPC市場を取り巻く環境は明るい材料が目白押しだ。そして、従来は、電機メーカーという枠のなかでPCビジネスを行っていた体制から、国内PCメーカー各社が、PC専業という体制でビジネスを行える体制となっていることは、最優先でPC事業の取り組むことができるPCメーカーが増えたことにもつながり、それも、事業戦略上、プラス要素になりそうだ。

PCメーカー各社が、2020年まで続く、こうしたプラス要素を、収益や成長として、確実に刈り取ることができるか。その最初の一歩が2018年ということになる。

関連記事
総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
関連記事
Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

関連記事