合従連衡は異次元の時代へ、2018年の自動車業界を予測する

合従連衡は異次元の時代へ、2018年の自動車業界を予測する

2018.01.05

2017年の自動車産業は「100年に1度の大転換期」にあって、電動化、知能化、情報化のイノベーション(技術革新)に向けたさまざまな動きがあったが、とくにトヨタ自動車が電動化戦略を前面に打ち出したことは注目に値する。合従連衡は電動化が核となるのか。2018年を展望する。

危機感を強める世界のトップメーカー

言うまでもなく、トヨタは日本の自動車産業のリーディング企業であり、世界のトップ自動車メーカーである。そのトヨタが「従来の延長線上に未来はない」(豊田章男社長)との危機感を強めて、一気に電動化戦略を打ち出してきた。

トヨタの豊田社長は、転換期の自動車業界にあって、従来のやり方が通用しなくなることへの危機感を機会あるごとに発信していた

その具体例が、マツダおよびデンソーとの電気自動車(EV)基幹技術開発会社「EV C.A. Spirit」の設立(2017年9月)、「車両電動化技術説明会」(同11月)、パナソニックとの車載用角型電池事業の協業検討合意(12月)、「電動車普及に向けたチャレンジ」(12月)の公表という矢継ぎ早の発表だ。さらに、この間にはスズキとの業務提携で具体化に向けた歩みを進め、インドにおける2020年頃のEV投入に向けた生産・販売の協業検討合意(11月)を発表している。

トヨタは本当に電動化で出遅れたのか

「EVに出遅れたトヨタ」との報道が多かったが、実態は違う。トヨタの電動化戦略はEVだけでなく、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)も含む電動車に向かう地図を「従来の枠組みを超えて展開していく」(寺師茂樹副社長)方針に切り替えて、今後はオープンで「日本車連合」による基準づくりと量産・量販によるコスト削減を狙う方向を一気に打ち出したのだ。

2017年8月に両社の資本提携を発表したトヨタの豊田社長(左)とマツダの小飼社長

日本車の中で、トヨタと資本提携ないし業務提携の関係にあるのはダイハツ、日野自動車、スバル、マツダ、いすゞ自動車、スズキといった面々。一方で、仏ルノー資本の日産自動車に、その傘下となった三菱自動車工業で形成する「ルノー・日産・三菱自」連合が一大勢力を築いており、単独となるのがホンダという構図になる。

2018年は、トヨタの日本連合の枠組みがどのように広がるかが注目される。電動車のカギを握る電池事業の観点では、次世代電池と言われる全固体電池で「トヨタ日本連合」にホンダが加わることもあり得るし、ホンダがGMと緩やかな提携を広げるとともに異業種提携を積極化することも考えられよう。

つまづいた日産、3社アライアンスの今後に影響は

東京モーターショーの開催を目前に控えた2017年9月末に、日産の国内工場で完成車検査の不正が明るみに出た。工場の生産ラインの最終検査ラインで無資格者が完成検査に関わっていた問題だ。西川廣人社長が陳謝会見を開いたものの、その後も不正が続いていたことで日産は、10月中旬からの約3週間、国内向けの生産と出荷を停止し、再発防止策を導入した。

日産の西川社長は無資格検査問題で対応に追われた

日産に続いてスバルにも同様の不正が見つかり、東京モーターショーの開会式当日には、吉永泰之社長の陳謝会見に波及する事態となった。日本のクルマづくりは品質・性能で定評があっただけに、コンプライアンス(法令順守)の欠如や経営サイドと製造現場の乖離は、ある意味で日本車のモノづくりの根幹を問われかねない失態と映った。一方で、国内向けの完成車検査だけが国土交通省から各メーカーへの委託となっている制度設計にも疑問を差し挟む余地はあるのだが。

いずれにしても、日産では長年、この検査不正が続いていたということで、17年間も日産の社長を務めたカルロス・ゴーン氏の経営責任を問う声も出た。日産は、仏ルノーの傘下に入ってからV字回復を果たし、ルノー・日産連合は、国際アライアンスの成功例とされてきたのみならず、V字回復後は日産がルノーを助ける構図へと情勢が変わってきていた。2016年には燃費不正で窮地に陥った三菱自動車を日産が助ける形で資本提携し、三菱自では日産流経営手法の導入から1年が経過して、業績V字回復の流れを作っていた矢先でもあった。

三菱自動車は2017年10月に新しい中期経営計画を発表、V字回復に向けて野心的な数値目標を掲げていた(画像は中計を発表する三菱自動車の益子修CEO)

ゴーン会長の去就も話題に

皮肉にも、「ルノー・日産・三菱3社連合」の会長として、ゴーン氏がパリで2022年までの中期経営計画を発表したのが9月15日のことだった。3社連合は2022年に2016年比4割増の1,400万台を販売し、2020年までにはEV専用の共通プラットホームを用意して、12車種のEVを投入することで「EVのリーダーとなる」(ゴーン会長)と怪気炎を上げた直後に、日産で不正が発覚したのである。

日産は、生産担当の松元史明副社長を更迭し、ゴーン時代以前の旧・日産から続いていたと見られる無資格検査の再発防止の徹底を図ることになるが、どこまで信頼回復への道筋に結びつけられるか、ということになる。

2017年4月にゴーン長期政権の後を継いだ西川体制は、早々につまづくことになった。ルノー・日産・三菱の3社連合において、何といっても中核は日産だ。フランスでは、ゴーン氏がルノーCEOを退任するのではとの報道も出ている。

いずれにせよ、2018年に日産が立ち直れるか、あるいは立ち直りの兆しを見せられるかは、3社連合の今後を占う上で注目すべきポイントだろう。

スケールメリットを追いつつブランドで生き残るために

従来の自動車メーカー間の合従連衡は、日本車でいうとトヨタ連合とルノー・日産・三菱連合に単独のホンダ、トラックではダイムラー傘下の三菱ふそうにボルボ傘下のUDトラックスと、12社ブランドの色分けがある程度、整理されていた観があった。

スケールメリットを追うという観点で見た場合の合従連衡は、トヨタ連合がスバル、マツダ、スズキもあわせると現行で世界1,800万台の規模となる。ルノー・日産は、三菱自を加えるとほぼ1,000万台で2022年には1,400万台を狙う。これに拮抗するのは、フォルクスワーゲン(VW)グループとGMグループだろう。

スズキが加わると、トヨタ連合の販売台数は世界最大の1,800万台規模となる(画像はスズキ「スペーシア」の発表会に出席した鈴木俊宏社長)

ダイムラーやBMWは、台数規模よりもブランドのプレミアム化(差別化)を追う方向であり、PSAプジョー・シトロエンはプレミアム化を進める一方で、オペルやマレーシア・プロトンを買収し、ルノー・日産連合に対抗する動きも見せる。

つまり、完成車メーカーとしてはスケールメリット(量産・量販によるコスト削減)を享受しつつ、そのブランド力を持ってどう生き残りを図るかが焦点となるのである。

電動化が参入障壁を下げた? 異業種も虎視眈々の自動車産業

一方で、イノベーション(技術革新)のスピードは早まる中、電機業界や通信業界、素材業界、半導体業界から自動車業界に参入した新興勢力が、手を組む相手を選ぶという流れも進んでいる。また、中国やインドなどの新興国では地場メーカーも台頭してきている。

2017年には、米国のEVベンチャー・テスラが一時、GMやフォードの時価総額を上回ったことも話題になった。テスラはパナソニックと電池製造で合弁工場「ギガファクトリー」を立ち上げている。現在は解消したが、テスラは以前、トヨタと提携していた事実もある。

トヨタと車載用角型電池で手を組んだパナソニックは、テスラと米国で電池の合弁工場を立ち上げている間柄でもある

EVには、英国のダイソンが参入を表明し、日本でもヤマダ電機が手を挙げるなど2017年に新たな動きが出た。また、モーターの日本電産がM&A戦略に加えPSAとの提携に乗り出している。

2018年において注目すべきは、電動化・知能化・情報化のイノベーションが進む流れの中で、従来の枠組みと異なる仲間づくりがあらゆる形で具現化しそうなことだろう。

また、もう1つ注視しなければはらないのはメガサプライヤーの動向だ。すでに欧州では、ボッシュやコンチネンタルといった企業が、この自動車イノベーションの流れに乗り、逆支配体制、つまりは技術支配力を高めているのだ。

自動車世界販売は、2018年も前年を上回って9,600万台半ばまで伸びると予測される。2020年代の世界1億台時代に向けて、各社・各国でイノベーションへの対応を急務として進める勢力が林立し、中国やインドなどは国策として自動車産業を育成すべく施策を打ち出している。こういった事情を背景とし、2018年は協業と競争が異次元の合従連衡をさらに明確にさせる気配である。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。