2018年のスマートフォン市場を占う3つのキーワード

2018年のスマートフォン市場を占う3つのキーワード

2018.01.06

「iPhone X」の予約殺到するなど、iPhoneの圧倒的人気を再確認させられた2017年のスマートフォン市場。では今年、スマートフォン市場には変化が訪れると考えられるだろうか。注目すべきポイントは「AI」「キャリア」そして「中国メーカー」だ。

AI対応チップセットの広まりが何を生み出すか

2017年のスマートフォン端末の動向を振り返ると、やはり「iPhone X」の圧勝という印象が強いのではないだろうか。ホームボタンを排し、前面を5.8インチの有機ELディスプレイが覆うという新しいデザインに加え、人工知能(AI)関連の処理を高速にこなす新しいチップセット「A11 Bionic」の搭載によって、精度の高い顔認証システム「Face ID」を実現。従来のiPhoneとは大きく異なる新機軸を打ち出したことで、iPhone Xは発表直後から大きな注目を集めた。

2017年に大きな話題となったのは「iPhone X」。従来のiPhoneとは大きく異なる新機軸を打ち出したことが人気となり、品薄の状態が長く続いた

その予約開始直後には、iPhone Xを購入したいユーザーがApple Storeやキャリアの予約サイトに殺到し、発売直後から1ヶ月以上待たされる事態となった。また当初の販売数が少ないことを受け、アップルがiPhone XのApple Store店頭での販売を実施したことから、Apple Storeの各店舗には久しぶりに長蛇の列が現れる事態となった。

日本はiPhone人気が突出して高い国ではあるものの、昨年はiPhone Xの登場によってその人気ぶりを改めて認識させられたといえるだろう。順当にいけば今年には、iPhone Xに搭載された要素が普及価格帯のモデルにも採用されると考えられ、iPhone人気は一層盤石なものとなる可能性が高い。

だがスマートフォンの進化という意味でいうと、iPhone Xが搭載したA11 Bionicのように、AI関連処理の高速化に力を入れたチップセットの活用が、今年は大きな注目を集めると考えられそうだ。同種の仕組みを備えたチップセットは、ファーウェイが「Kirin 970」で既に開発しており、日本でもそれを搭載した「HUAWEI Mate10 Pro」を昨年末に発売している。だがずれも自社スマートフォンへの搭載を前提とした独自のチップセットであったため、AIの活用が他のメーカーへは広がりにくかった。

A11 Bionicだけでなく、ファーウェイの「Kirin 970」など、AI処理の高速化に対応したチップセットは増加傾向にある

しかし昨年12月に、クアルコムがAI処理の高速化に力を入れたチップセット「Snapdragon 845」を発表している。クアルコムのチップセットは多くのスマートフォンメーカーに採用されているだけに、今年は多くのメーカーのフラッグシップモデルに、AI処理に長けたチップセットが搭載されるだろう。

そうなると注目されるのが、端末側でのAI処理が強化されたことで、どのような機能を実現してくるかということ。AI関連の処理は顔認証だけでなくさまざまな用途に用いられることが考えられるだけに、各メーカーがそれを生かしてどのような新機能を搭載してくるかに、大きな注目が集まるところだ。

キャリア主導モデルがスマートフォンの形を変える?

スマートフォンの進化という意味でもう1つ、注目すべきはキャリアの動向だ。昨年10月に、NTTドコモが2画面ディスプレイを搭載したオリジナルモデル「M」を発表したことが大きな話題となったが、今年は一層、キャリアがオリジナルモデルの開発に力を入れる流れが拡大すると考えられるからだ。

実はNTTドコモは、昨年発表した冬春商戦向けモデル11機種のうち、オリジナルモデルが5機種と、約半数を占めるに至っている。その理由は、端末の開発がメーカー主導となり、各キャリア共に同じ端末を取り扱うようになったため、端末によるキャリア間の差異化ができなくなってきたとNTTドコモが考えたことにある。

NTTドコモは冬春商戦に向けて発表した11機種のうち、「M」だけでなく約半数の5機種をオリジナルモデルが占めていた

しかも端末メーカーは、売上を最大化するため消費者のニーズに応える売れ筋のモデルの開発には力を入れるが、新しいコンセプトやデザインの端末の開発は、販売数が読めないためリスクが大きく、あまり積極的に取り組みたがらない。そうしたことから現在のスマートフォンは、基本的には“薄くて大きい板”をひたすら追求し続けるのみとなっており、それが端末の閉塞感をも生み出している。

そこで登場するのがキャリアだ。かつてのフィーチャーフォンのように、キャリアが自ら主導して端末を開発し、メーカーに製造してもらった製品を買い上げてリスクを担保することにより、意欲的な要素を備えた新しいスタイルの端末を提供するという取り組みが広がれば、そうした端末進化の閉塞感を打開する鍵の1つとなる可能性が高い。

こうしたキャリアの端末開発手法はかつて、キャリアがメーカーを縛る要因になるとして大きな批判を集めた。だがスマートフォンの進化に停滞感が漂っている現在、キャリアがリスクを取って新たなチャレンジをすることは、重要な意味を持つのではないかと筆者は考える。キャリア主導モデルの広がりを見る上でも、まずは今年発売予定の「M」をはじめとした、NTTドコモのオリジナルモデルの動向を追っていく必要があるだろう。

世界第4位の中国メーカーが日本参入か

最後に、今年の日本のスマートフォン市場に大きな変化をもたらす可能性が高いと見られるのが、中国メーカーの動向である。確かにここ数年来、特にSIMフリースマートフォン市場の開拓が進んで以降、中国のスマートフォンメーカーは躍進を続けているというのは多くの人がご存じの通りだ。

実際ファーウェイは、フラッグシップモデルから低価格モデルまで幅広いラインアップを揃えることで販売を拡大。昨年にはSIMフリー市場でのトップシェアを確固なものとしている。またZTEは、NTTドコモとの協業によって「MONO」「M」などの製造を受けることでキャリア向けのスマートフォン製造を手掛けるようになり、販売を大きく伸ばしたと見られている。

そして今年注目される動向の1つは、ファーウェイがキャリア向け市場に進出できるかどうかである。というのも昨年、ファーウェイの関係者に取材した際、SIMフリーに限らず幅広い市場開拓を進める旨の発言や、今年発売される新機種でより日本人に適したモデルを提供する旨の発言を何度か耳にしているからだ。

ファーウェイはWi-Fiルーターなどでキャリアとの接点は以前から持っているし、国内でもSIMフリー市場で大きな実績を収めている。さらに昨年末に発売されたMate10 Proでは、耐水・防塵性能への対応も実現しており、日本向けで対応していない大きな機能はFeliCaのみという状況だ。裏を返せばそうした部分に対応できさえすれば、ファーウェイ製のスマートフォンが大手キャリアから登場しても何らおかしくない状況となっているだけに、今年それが実現するのかどうかは1つの注目ポイントとなるだろう。

ファーウェイはMate10 Proで耐水・防塵性能対応を進めており、FeliCaにさえ対応すれば日本向け対応はほぼ済む。それだけに今年のキャリア市場進出が注目される

そしてもう1つは、新たな中国メーカーの日本市場参入だ。実は昨年11月頃、中国のスマートフォンメーカー大手であるOppoが、求人サイトに日本法人を設立し、スタッフを募集していることが明らかとなり、業界関係者の間で話題となったのである。Oppoは既に日本語のWebサイトも用意していることから、日本進出に向けて何らかの動きを見せていることは確かなようだ。

Oppoはファーウェイに次ぐ世界第4位のスマートフォンメーカーであり、性能はミドルからミドルハイクラスながらも、自分撮り用のインカメラの画質を向上させたり、急速充電機能を強化したりするなど、ユーザーニーズに徹底して答えたスマートフォンを提供して人気を獲得。さらに大規模なプロモーション展開などを実施することで、中国や新興国での販売を急拡大させている。

そのOppoがどのような形で日本市場進出を果たすのかは、現時点では分からない。だが世界規模で販売力を持つ企業だけに、市場に一定の影響を与える可能性は高いだろう。Oppoの進出、そしてそれによって日本市場にどのような変化がもたらされるのかに、注目しておくべきだろう。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。