観光輸送に力を入れ始めた西鉄の思惑

観光輸送に力を入れ始めた西鉄の思惑

2018.01.08

西日本鉄道(西鉄)は2017年4月、「2018年度末に、本格的な観光列車を導入する」と発表した。インテリアには沿線地域の素材を取り入れ、さらに地元の食材を活用した料理を提供し「地域」を感じさせる列車を目指すという。いわゆる「レストラントレイン」である。

導入の目的は、利用客の沿線地域での消費、地域の店舗・企業などの販売拡大支援や、あるいは情報発信による観光客の増加、沿線イメージ向上による居住人口の増加などへの期待だ。

車両は既存の電車の改造。天神大牟田線(西鉄福岡〜大牟田間)での運行が予定されており、2017年度中には設計を固め、2018年度に車両改造を実施するとしている。ほどなく、車両のイメージやネーミングが発表されよう。

2本の観光列車「旅人」「水都」

西鉄が観光客をターゲットとした列車を投入するのは、これが初めてではない。

2014年にまず、太宰府の観光活性化を目的として「旅人(たびと)」を8000形電車の改造でお目見えさせた。8000形は2人掛けの転換式クロスシートを備えた天神大牟田線の特急用電車で、都市間輸送や通勤輸送に活躍したタイプだ。

改造内容は大規模なものではない。車体は太宰府をイメージさせるイラストでフルラッピング。車内の化粧板も各車ごとに異なる和文様柄に変更し、6両編成中1両の一部座席を撤去して、観光PRコーナーを設けるといったものであった。

この「旅人」は太宰府を訪れる観光客にアピールしたが、観光専用でもない。西鉄福岡(天神)~太宰府間の急行や、西鉄二日市〜太宰府間の普通へ重点的に運用されたものの、他の8000形と同様、従来通りの通勤・通学列車にも使われている。

「旅人」に続いて、2015年には同じく8000形の改造で「水都」も登場した。これは水郷として知られる柳川への観光をアピールするための列車で、デザインは柳川にふさわしいものとされたが、基本的な改造の方針は「旅人」と同じ。車内設備的に、通勤・通学列車に充当しても差し支えないようにされ、実際には特急中心に運用されている。

左:「水都」車内に設けられた観光PRコーナー。柳川の文化財のレプリカや特産品、パンフレットなどが置かれている。右:天神大牟田線を走る「水都」。主に特急に使われる

ただ8000形は、全部で6両編成6本があったうち、「旅人」「水都」へ2本が改造された頃には、後継車への完全な置き換えがすでに検討されていた。観光列車そのものは好評であったため、3000形に引き継ぐことになり、2017年7月には新「水都」、同9月には新「旅人」が登場している。

いずれも、改造の方向性は8000形と同じ。充当される列車は西鉄の公式サイトで公表されているが、やはり観光専用ではなく、通勤・通学列車にもそのまま使われている。

なお、「旅人」「水都」ともに、西鉄の一般特急列車と同じく、特別な料金や予約は必要なく、乗車券だけで自由に乗車できる。

都市間輸送の伸びは期待できず

西鉄天神大牟田線は、鹿児島本線に対抗し、福岡市と久留米市、大牟田市を結んで電車を高速・高頻度で運転して、ビジネス客のシェアを奪おうと1939年に全通した路線だ。戦後も一貫して、8000形のような長距離輸送に向いた快適な特急用電車を投入してきた。

左:大牟田駅で発車を待つ「水都」。この駅から乗る日中の利用客は、決して多くはない。右:橋上駅化が完成し、面目を一新した西鉄柳川駅は観光拠点として機能

太宰府天満宮がある太宰府への支線を建設したり、鹿児島本線のルートから外れた柳川を経由したりするなど、独自の経営施策も採られた。しかし、基本的には福岡県内の都市間輸送、および福岡市などへの通勤・通学輸送を担う鉄道として機能してきている。

ただ、肝心の都市間輸送が、最近かげりを見せ始めている。特に産業都市大牟田の衰退は著しく、10年前には約13万人あった人口も11万人台にまで落ちこんできており、10万人以上の都市としては、全国的に見ても人口減少率、高齢化率が高い。西鉄大牟田駅の1日平均乗降客数も、10年間で約9500人から約8500人に落ちこんだ。

久留米市の人口は約30万人で推移してきているが、町の中心部にある西鉄久留米駅は、JR久留米駅と比べて立地条件が良いにもかかわらず、1日平均乗降客数が10年で約4万人から約3万3000人と、比率で言えば大牟田駅以上に落ちこんでいる。九州新幹線が開業し所要時間では圧倒的に有利になったことや、となりの花畑駅周辺が再開発され、同駅に利用が分散したことなどが要因として考えられる。

観光輸送に活路を見出す?

太宰府駅は、観光地としての装いを整えている

こうした事情が、西鉄をして、それまであまり顧みてこられなかった観光輸送へ目を向けさせたと考えられよう。幸い、九州へのインバウンド客の入れ込みは好調で、太宰府や柳川では外国人観光客の姿が非常に目立つようになった。

太宰府は太宰府天満宮を模した駅舎で、記念撮影スポットとして人気の的となっている。西鉄柳川駅も2015年に橋上駅化が完成し、観光案内所や「川下り船」の乗船券売り場などが入って、観光客を迎え入れる体制を整えた。両駅とも、1日平均乗降客数は微増微減を繰り返しており、まず堅調と言えよう。

2018年度末に登場予定の「新・観光列車」は「旅人」「水都」とは異なり、特別料金を必要とする観光専用列車となることが予想される。列車1本で運べる旅客数は多くはないとは言え、観光地を内外へアピールする効果は大きいだろう。

先行例としては、西武鉄道の「西武 旅するレストラン 52席の至福」が挙げられる。そちらも地元の食材を活かした料理を提供する「レストラントレイン」で、秩父への観光をアピールする存在として、人気を集めていると聞く。

首都圏と九州とでは事情が少々異なり、西鉄の新・観光列車のメインターゲットは、やはり「近場」の海外からの観光客となろうか。「旅人」「水都」の車内には、英語、中国語、ハングルなどで書かれた観光パンフレットが完備されているなど、対応はすでに十分と見た。

左:「旅人」の車内。特急用電車から、大きくは改造されていない。右:太宰府線を走る「旅人」。普通にも充当される

どのような列車がデビューするのか。発表を楽しみに待ちたい。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。