好調続く回転寿司、2018年はスシローが台風の目に

好調続く回転寿司、2018年はスシローが台風の目に

2018.01.09

外食産業のなかで好調なのが回転寿司だ。市場は拡大を続けており、2018年もこれまで同様の勢いが続きそうに見える。とりわけ、業界トップのあきんどスシロー(以下、スシロー)は、多角的に戦略を進めており、同社の動きに注目が集まりそうだ。

数々の動きを見せたスシローだが2018年も台風の目になりそうだ

2017年、低価格回転寿司チェーンのなかで、数多くの大きな動きを見せたのがスシローだ。紆余曲折を経て、同年3月に東証1部に復帰し、同年9月には元気寿司との経営統合に向けた発表が行なわれ、同年11月にはCSN地方創生ネットワークと資本・業務提携を打ち出した。

さらに、大型ショッピングセンターのフードコートへの出店計画に関する報道があったり、韓国に次ぐ海外展開として台湾への複数店舗の出店計画も公表した。業界動向を見る場合、味への取組み、出店計画などが重要だが、スシローの取組みはいずれも興味深い。

天然魚の取扱い拡大で差別化へ

まず、味について。CSN地方創生ネットワークとの資本・業務提携により、天然魚の取り扱いの幅が増えた(一部はこれまでも天然ものを提供)。CSN地方創生ネットワークは全国各地の漁師とネットワークを持ち、新鮮な魚を早急に飲食店に届ける「羽田市場」というサービスを運営、スシローはそのネットワークを生かすことにしたのだ。

天然魚は養殖とは違い、いつ、どれだけとれるかわからない。だからこそ、大量店舗を抱える回転寿司チェーンには取扱いが難しかった。そこに切り込んだのがスシローだった。

天然魚の取扱いを拡大することで、水留浩一社長は「旬の魚を旬なタイミングで提供できることがメリット」と話す。天然魚は養殖魚よりもプレミアム感を抱かせ、味への期待も高めてくれる。もちろん、提供できる量には限りがあるため、提供ネタが店舗によりバラつきが出るものの、天然魚はお客を引き寄せる大きな効果がありそうだ。

そして、天然魚への取組みは早速結果を出している。取扱いを拡大した11月の月次情報では全店・既存店売上、既存店客数・単価ともに前年同月を大きく上回った。この結果について、同社広報部では天然魚への取組みが大きな効果を発揮したと認識しており、この先にも大きな期待がかかりそうだ。

ちなみに、こうした天然魚への取組みは無添くら寿司がすでに実施している。しかし、ネットワークの広さでは、スシローと羽田市場が勝るというのが水留社長の見立て。他社が今後どう出てくるかにも注目したい。

元気寿司との経営統合で

スシローと元気寿司の経営統合は、さらに注目すべき事柄だ。様々な面で回転寿司業界の動きを左右するパワーを持つことになるからだ。スシローの親会社のスシローグローバルホールディングス(SGH)と米卸大手の神明、その子会社となる元気寿司の3社が資本業務提携を昨年9月に発表、SGHと元気寿司の経営統合に向けて動き出している。

SGHにはスシローブランドの店舗があり、元気寿司には主に元気寿司、魚べいブランドの店舗があるが、経営統合により、店舗ブランドの動向が注目される。既存ブランドは統合なのか、存続なのか、そのあたりは経営統合委員会で話し合われることになるが、今のところは既存ブランドの存続が基本路線のようだ。

ただし、既存ブランドが存続する場合、どういった統合効果を見込むのか、出店ハンドリングをどうするのかという疑問が生じる。

統合効果については、原材料の一括調達によるメリットがあると考えがちだが、話はそう単純ではない。特に米の部分だ。SGHは全国農業協同組合連合会から出資を受けており、スシローは全農パールライスから米を手当てしている。対して元気寿司の親会社は米卸大手の神明であり、元気寿司の米調達は神明のルートとなる。経営統合でどこから米を仕入れるかという問題が残る。そもそも経営統合の話自体、米消費の拡大という目的で神明が動いた案件であり、配慮が必要になることもあろう。

仕入れに関して、水留社長の考えのベースは、条件面で有利なほうを選択するというのものだ。米ばかりではなく、寿司ネタも同じ。情報をつき合わせたうえで、有利な条件を提示してくれるところをから仕入れる。とはいいつつも、それをソリッドに実行するのは、難しい側面もあるのだ。

出店計画はどうか。現状、スシローは人口10万人商圏あたり1店舗を出すという考えを持つ。そこには競合店が2、3店舗含まれることを前提にしており、経営統合後、スシロー、元気寿司、魚べいと複数の店舗ブランドが存在しても、影響は少ないようだ。

水留社長は「元気寿司の採算が合えば(スシロー商圏に)出店してもいい。ただし、将来的に統合によって出店ペースが上がり、どちらのブランドで出店するかを迷うなら、売上の高いほうになると思う」とも話す。

一店舗あたりの年間売上では、スシローが3億円超なのに対し、元気寿司、魚べいはおよそ2億円と見られる。経済合理性の観点からは、出店戦略の舵取りは難しい。ブランドを存続させる場合、どこがどういった役割を担うべきか、検討の余地は大きい。

水留社長は「スシローが積み上げてきたものを元気寿司サイドにどう移して、元気寿司、魚べいに展開する。シナジー効果は生み出せると思っている」とし、売上規模から見た経済合理性の不均衡感の解消に向けていく考えを示している。しかし、具体策はまだわからぬまま。どういったアイデアを打ち出すのか、注目されるところだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。