日本車デザインに新潮流? 注目すべき“ジャパニーズ・ヘリテージ”

日本車デザインに新潮流? 注目すべき“ジャパニーズ・ヘリテージ”

2018.01.10

先の「東京モーターショー」でも感じたことだが、日本車のデザインに新たな流れが起きつつあるようだ。一言で言えば「ジャパニーズ・ヘリテージ」。個性が希薄と言われてきた日本車のデザインが、新たなフェーズに入ったことを実感する、好ましい方向性だ。

日本車デザインに「ジャパニーズ・ヘリテージ」とでも呼ぶべき新たな潮流が起こりつつある(画像はトヨタ自動車の新型「センチュリー」)

欧米と方向性を異にし始めた? 日本車の新しいデザイン

日本の自動車産業は第2次世界大戦後、欧米に追いつけ追い越せという気持ちで歩みを進めてきた。終戦直後には欧米車種のノックダウン生産を行った会社があったし、その後もデザインや技術など、クルマ作りの多くの部分で欧米を参考にしてきた。

中には模倣ではないかと思われるデザインもあった。最近の中国ブランドの自動車と似たような状況だったのかもしれない。なので、筆者が身を置く自動車ジャーナリズムの世界でも欧米、特に欧州車と比べてどうかという視点の評論が多かったような気がする。

しかし、デザインについては最近、欧米と同じ方向性ではない、ジャパンオリジナルの造形が目立ってきたと思っている。その方向性が明確に見えたのが、2017年10~11月に開催された「第45回東京モーターショー」だった。

新型「センチュリー」で再確認した日本製高級車の姿

日本を代表する自動車ブランドであるトヨタ自動車は、ここで数車種のコンセプトカーをお披露目したが、会場でそれに劣らぬ注目を集めていた市販車があった。2018年半ばに発売予定の新型「センチュリー」と、ショー直前に発売された「ジャパンタクシー」だ。

新型「センチュリー」(左)と「ジャパンタクシー」

センチュリーは1967年、つまり今から約半世紀前に登場したトヨタの最高級車である。ちなみに、センチュリーという名前はトヨタの礎を築いた発明家、豊田佐吉の生誕100周年を記念したものだった。

驚くべきは、そこから現在までにモデルチェンジを1度しか行っていないことだ。それは今から約20年前の1997年に実施された。エンジンがV型8気筒から日本の市販乗用車で唯一のV型12気筒に乗せ換えられた一方で、スタイリングは初代の雰囲気を濃厚に残していた。

1967年の登場以来、1度しかモデルチェンジを行っていない「センチュリー」(画像は新型、提供:トヨタ自動車)

当時の日本はバブル経済を経験した直後であり、多くの欧州製高級車が路上を走っていた。しかし、センチュリーのデザインがモデルチェンジでこれらの影響を受けることはなかった。

初代では「フジ・ノーブルホワイト」「カムイ・エターナルブラック」など、日本語と英語の折衷だったボディカラーの名称は、「神威」「瑞雲」など漢字で表記されるようになり、日本の高級車であることを明確にしていた。

現行「センチュリー」の「神威 エターナルブラック」(画像提供:トヨタ自動車)

そして、2017年のモーターショーで一般公開された新型もまた、初代からデザインを継承していた。それが多くの人々に好意的に受け入れられた。

価格は1,000万円以上と予想される超高級車だから、多くの人にとって手が届かない存在だし、皇族の方々や内閣の大臣クラスなど、限られた人々のための車種ではある。しかし、ここまで注目されたのは、日本を代表する高級車であるという雰囲気を独特のデザインから感じ取っていたからではないだろうか。

乗用車とは一線を画す「ハイラックス」も人気に

欧米の影響を受けていない、ジャパンオリジナルのデザインに人気が集まる。これは2017年に発売された他のトヨタ車にも共通している。13年ぶりに日本市場に復活したピックアップトラックの「ハイラックス」と、マイナーチェンジを受けたワンボックスの「ハイエース」だ。

13年ぶりに日本市場に復活した「ハイラックス」

どちらも、現在の乗用車とは一線を画した機能重視の形をしている。ピックアップは米国が源流のボディタイプであるが、ハイエースのワンボックススタイルは現在、日本の商用車が主役となっている。

それが若者に受けている。ハイラックスの購入者の中心は20~30歳代だそうで、ハイエースもマリンスポーツなどレジャーのツールとしての需要が増えているという。

「ハイエース」のマイナーチェンジを機にトヨタが実施した発表会には歴代モデルがそろい踏みした

ハイラックスやハイエースのような新興国でも活躍する商用車は、壊れても簡単に直せること、部品の供給が安定していることが大事である。これが、シンプルで機能重視のデザインを継承する理由だろう。多くの乗用車とは異なるその形が人気を集めているという現象は興味深い。

ホンダのEVコンセプトにも息づくヘリテージ

ジャパンオリジナルを大切にする傾向はトヨタ以外にも見られる。ホンダは同じ東京モーターショーで、「Honda Sports EV Concept」と「Honda Urban EV Concept」という2台のコンセプトカーを発表した。車名が示すように電気自動車(EV)で、丸いLEDランプを据えた顔はさまざまな情報を表示するディスプレイとするなど最新技術を搭載するが、無駄な線を極力排したスタイリングからは懐かしさも感じた。

ホンダが東京モーターショーで展示した「Honda Sports EV Concept」(左)と「Honda Urban EV Concept」

デザイナーは明らかにしていないが、アーバンEVは1972年に発表された初代「シビック」、スポーツEVは1965年に登場した「S600クーペ」のフォルムを彷彿とさせる。似たようなデザインが多いEVコンセプトの中で、ホンダらしいと感じるのは同社のヘリテージをうまく取り込んでいるからだろう。

「S600クーペ」(左)と初代「シビック」(画像提供:ホンダ)

発売前の一部の予想を裏切ってヒット作となった新型「シビック」も、かつてのホンダ車を思わせる雰囲気を濃厚に再現していた。

全高も運転席は現在のセダンやハッチバックとしては低く、その前に広がるインパネやエンジンフードも高さが抑えられており、低いスタンスで水平移動するようなコーナリングを含め、「ワンダーシビック」という愛称で親しまれた3代目「シビック」、デートカーの異名をもらった2代目「プレリュード」など、1980年代のホンダ車を思わせる世界観なのだ。

販売好調の新型「シビック」

現在、ホンダは新しいデザインの方向性を考えている最中だそうで、その1つとして世界的に注目を集めた1980年代のデザインがホンダらしさと考え、その雰囲気を感じるような造形を新型シビックに与えたのだという。

“艶”と“凛”でデザインを語るマツダ

モーターショーに出品されたコンセプトカーでは、マツダ「ビジョンクーペ」にも日本らしさが込められている。3年前のスポーツカーコンセプト「RXビジョン」同様、“艶”と“凛”という2つの日本の美意識を取り入れているからだ。

RXビジョンでは艶の部分を強調したのに対し、今回のビジョンクーペでは凛の部分を強調したそうだ。それをダイナミックな線に頼らず、優美な面で表現した。欧米のジャーナリストからも評価されている理由は、欧米とは違うデザインの価値観を見出したからだろう。

“凛”の「ビジョンクーペ」(左)と“艶”の「RXビジョン」

木造家屋とも通底? 日本で独特な形のクルマが生まれる理由

モーターショーでは発表されなかったが、今年はスズキ「ジムニー」のモデルチェンジも噂されている。すでに出回っているスクープ写真によれば、現行型より角張った、先代を思わせる機能重視のスタイリングになりそうだ。こちらも登場前から多くのクルマ好きの注目を集めている。

軽自動車は基本的に日本専売車種であり、以前からダイハツ「タント」やスズキ「ハスラー」など、欧州のカーデザインの流れとは異なるスタイリングを取り入れ、人気を博していた。

ダイハツ「タント」(左、画像提供:ダイハツ工業)とスズキ「ハスラー」(画像提供:スズキ)

いずれも木造家屋を思わせる水平基調の造形で、欧州に比べて平均速度が低く、空気抵抗などをそれほど追求しなくてよいためもあり、背が高く四角いフォルムが特徴だ。

こうした方向性は前に紹介したセンチュリー、ハイラックス、ハイエースにも通じる。日本の風土や環境から生まれた、日本ならではのカーデザインと言えるのではないだろうか。

かつては、それを欧州に比べて遅れているとする評論もあったが、ユーザーはそこにカッコよさを見出している。その状況にメーカーも気付き、応え始めた。2018年もジャパニーズ・ヘリテージを生かしたカーデザインがいくつか登場するだろう。筆者も日本人の一人として、それを望んでいる。

「落合陽一×鈴木えみ」が魅せる、現代の東京と服

「落合陽一×鈴木えみ」が魅せる、現代の東京と服

2018.10.19

落合陽一と鈴木えみがコラボ、インスタレーションを実施

東京の街を切り取った光で、”日常”の中の服を演出

「ランウェイを歩くより、恰好いい」と演出に好感触

モデルの鈴木えみ氏がデザインするオリジナル服飾ブランド「Lautashi(ラウタシー)」は10月18日、「Amazon Fashion Week TOKYO」のスペシャルプログラム”AT TOKYO”にて、2019年初夏コレクションをインスタレーション形式(作品の展示方法の1つ)で発表した。

メディアアーティストの落合陽一氏が演出を担当することで注目を集めたこのイベント。開催に先立って行われたインタビューで落合氏は、「『光』にフォーカスした演出を行います。”日本らしいものは出てこないけど、なぜか日本を感じてしまう”演出に注目して欲しい」と話していた。

その発言の意味するところを実感してみようと、会場を実際に取材することにした。

東京の日常の中の”服”を演出したい

イベント会場に入ると、暗闇の中にLautashiの新作に身を包んだモデル達が後ろを向いて立っていた。

「工業社会っぽいが、それが自然に溶け込んできている風景」を演出に組み込んだという落合氏。独特の光を用いた演出に加え、会場そのものの選択にもこだわったようだ

インスタレーションが始まると、モデルが振り返り、”東京の日常に溢れる音”をイメージしたという、騒がしく、どこか聞き慣れた音が鳴り始める。その後、天井や壁、モデルの合間に設置されたいくつものLED照明がさまざまに光り出す。そして、その色を青、赤、灰色と複雑に変化させ、照らす服の印象を次々に変えていく。

光の変化で、服の見え方も変わってくる
インスタレーションが始まり数分経つと、「是非自由に見て回ってください」との場内アナウンスが。モデルの間を自由に歩き回り、服を間近で見ることができた

僕らの日常とは、松屋やセブンイレブンの光

今回のインスタレーションを終え、鈴木、落合の両氏は以下のように語る。

「ファッションショーや雑誌って、服を完璧な照明や状態で見せることが多いんです。でも、日常にはさまざまな光が溢れています。今回のように、服をいくつもの照明条件で見せることで、”日常感”を感じさせられるような演出にしました。来場者が期待以上にモデルに近づいてくれて良かったです」(鈴木氏)

「光の演出には、日常に溢れるさまざまな光景を使っています。例えば、松屋やセブンイレブン、車のヘッドライトなどをあえてぼかして撮影して、(その画像をLEDで映し光源とすることで、街の光を再現した)照明に使っているんです。それらは普段、意識しないと目にも止めないようなものですが、そういうものから出る光が、たとえ人工的であっても、現代においては”自然”な存在となっています。私たちは普段、そういう照明条件で服を着ますよね」(落合氏)

左から、アマゾンジャパン バイスプレジデント ファッション事業部門 統括事業本部長のジェームズ・ピーターズ氏、メディアアーティストの落合陽一氏、モデル・デザイナーの鈴木えみ氏、サウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏

イベントの音楽を担当したサウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏は、街でサンプリングした音と会場での音を組み合わせることで、こちらも「どこか日本らしい」音楽でインスタレーションを彩っている。

Amazon Fashionを擁するアマゾンからは、日本でバイスプレジデントを務めるジェームズ・ピーターズ氏が来場。「消費者と非常に近い距離で服を見せられる。非常に素晴らしい演出だった」と、感銘を受けたことを語っていた。

落合氏の「なぜか日本を感じてしまう演出」という言葉通り、ありふれているようで、これまでにない体験を得られるインスタレーションとなったのではないだろうか。

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

2018.10.19

5Gの実装が1年前倒しされることに

「CEATECH」で5G技術を体験してきた

恐竜ハントや建機の遠隔操作などの技術を紹介

「5Gで世の中が大きく変わる」とは、ここ数年で聞き飽きた言葉だ。同時に、変わる未来に期待を持たされるのも確かである。

5Gとは第5世代移動通信システムの略。あらゆる物がインターネットに繋がるようになったIoT時代をさらに次の次元へと導く技術であり、世界中で研究開発が進められている。もっとも身近な存在であるスマホはもちろん、遠隔医療や自動運転などへの活用も期待されている。

さまざまな業界から社会実装が待ち望まれる5Gであるが、数年前から語られていた「2020年の実用化」を目前にして、「実用化を1年前倒しする」との報道がなされた。まず大手キャリア3社は、5G対応端末の貸与で限定的なサービスを開始し、2020年からユーザー所有のスマートフォンで使えるようにするとのことだ。

では具体的に、5Gの登場によって世の中がどう変わるのか? 2018年10月16日~19日にかけて千葉県・幕張メッセにて開催されている「CEATEC JAPAN 2018」における携帯キャリア各社の展示から、変わる未来の一部を覗いてきた。

例えば、無人島で恐竜を狩れる

まずはauのブースから紹介する。ブース内でもっとも目を引いたのは、森をモチーフにした大きな展示とそこに吊るされた大きなモニター、そして何やら楽し気にしている高校生。気になって近づいてみると、なぜか大きな銃を手渡された。

ブースに入ると、大きな銃を渡された

「CEATEC会場内に恐竜が侵入しました…! おちおちブース見学なんてしてられませんよ!」(auブースの説明員)

ただならぬ緊張感が漂うauブース……。もちろんブース内に恐竜なんていない。銃をよく見てみるとそこにはスマホが搭載されており、『ジュラシックアイランド』という表記が。

スマホを覗くと『ジュラシックアイランド』と表示されている

数秒経つと、スマホがカメラモードに切り替わり、恐竜の足跡が表示された。その足跡を辿って銃先を向けると、スマホ越しにCEATEC会場を歩き回るティラノサウルスを見つけた。

登場したティラノサウルス(のイメージ)。筆者が片手で銃を持ち、画面を撮影していたところ「銃は重いので両手で持ってください」と注意されたので、実際のプレイ画像は撮れなかった

実はコレ、長崎のハウステンボスですでに実装されているもので、一世を風靡した『Pokemon Go』よろしく、AR技術を用いて現実世界で遊ぶことのできるゲームだ。

現状、このアトラクションは4Gにて提供されているそうだが、5Gを使用することで、より多くの人数でプレイができたり、恐竜の出現位置を共通化させたりできるようになるそう。筆者が体験したのも4Gを用いたものであったが、ティラノサウルスのほか、『ジュラシック・ワールド』で活躍したヴェロキラプトルなども登場して、思いのほか楽しめた。

「5Gによって大量のデータを迅速に端末に送信できるようになれば、従来モバイル側で行っていたデータ処理を、クラウド側で担当し、それをモバイルに送信することができるようになります。現在はハウステンボス内の特定のエリアにいるユーザーがプレイできるこのゲームですが、この技術を応用することで、将来的には遠隔地にいる人同士でも同じ恐竜を狩ることができるようになるでしょう」(技術説明員)

例えば、空を飛べる

次に目を引いたのは、大きな半球体のスクリーンに映された綺麗な映像だった。

「半球体スクリーンによる非日常体験」と題された展示。auブース内でもっとも行列が長かったのがこの展示だった

これは、エアレースやドローン、もしくはSUPER GTのマシンで撮った映像を、リアルタイムでスクリーンに映して体験できるというもの。ブースで実際に使用されていたのはすでに撮影された映像であったが、それでも雄大な映像を見ながらまるで自分が飛んでいるかのような体験ができるため、多くの人たちが並んでいた。

例えば、建機を遠隔地から動かせる

次はKDDIブースへ移動。こちらでは、同社がコマツと共同実験を進めている「5G活用による建設機械の遠隔制御」などの展示が行われている。

少子高齢化が進み、かつ職種が徐々に増えている今、人手不足に悩まされる業界は多い。建設業界もその1つであり、その問題を解決しようと開発されているのが同システムである。

遠隔操作コクピット。実際の建機と同じような操縦感で操作することが可能
遠隔で動く建機側で撮った映像を、リアルタイムで確認することができる

「これによって、例えば東京にいる建機の操縦者が、地方の建機を動かせるようになります。建機を操縦するタイミングは、ほかの工程との兼ね合いによって決まるため、デッドタイムが多いという問題がありました。しかし、このシステムを用いることによって、人が1カ所に留まりながら複数の場所で建機を動かせるようになります」(技術説明員)

ほかにもau、NTTドコモブースでは、好きな場所からスポーツを観戦できるシステムや、遠隔でのロボット操縦を実現するシステムなど、数多くの展示を行っており、そのどれもがどこか未来を感じさせるようなものであった。

5G実装まで1年

CEATECでは、紹介した2ブースのほかにも多くの企業が5Gに向けた取り組みを展示していた。それらを見ていると、「5Gで何ができる?」という疑問に対して「なんでもできる」と解答したくなるほど、どの技術も、仕事や日常生活がより便利に、より楽しくなりそう、と思えるものばかりであった。

なお、NTTドコモはラグビーワールドカップが開幕する2019年9月に「プレサービス」を始め、2020年春から「商用サービス」をスタートする予定だとしている。つまり、5Gの実装まで残り1年を切ったこととなる。

CEATECで体験したいくつもの技術が社会実装される日は近い。5Gという、どこか未来的な技術の足音が、もうすぐそこまで迫ってきている。