商用化にメドついた「5G」と成り行き関わるスポーツイベント

商用化にメドついた「5G」と成り行き関わるスポーツイベント

2018.01.11

現在主流の「4G」の次の世代となるモバイル通信システム「5G」。これまで実験レベルにとどまっていた5Gだが、昨年12月に第1弾の標準仕様が策定されたことで、いよいよ実用化に向けた動きが加速することとなる。今年は5Gの商用化を見据えた第一歩というべき年になりそうだが、その将来を見据える上でも注目されるのが、あの世界的なスポーツイベントである。

昨年末に5G NRの仕様策定が完了、商用化に目途

ここ数年来、NTTドコモなど大手キャリアが力を入れている、次世代のモバイル通信システムの「5G」。下り最大20Gbpsを実現するなど、現在主流の「4G」(LTE-Advanced)よりはるかに高い性能を実現するもので、日本ではNTTドコモが、東京五輪が実施される2020年に合わせて、5Gの一部仕様を用いたサービスを提供するとしている。

だが実際のところ、通信業界の中でも長い間5Gに関する関心はあまり高まっていなかった。5Gの早期実現に熱心なのは、4Gの普及がいち早く進んだ日本や韓国など一部の国にとどまっていたため、仕様策定が進まず一時は2020年の商用サービス実現も危ぶまれた程だ。

しかしながら2017年に入ってその流れは大きく変わり、5Gの早期実現に向けた動きが急加速したのである。実際2月には、世界各国のキャリアや通信機器ベンダー22社が、5Gの仕様策定を進めている標準化団体の「3GPP」に対して5Gの早期策定を求める共同提案を実施。それに応える形で3GPPは3月に、2019年の商用化を可能にするべく5Gの無線通信方式「5G NR」の仕様策定を前倒しすることを表明したのだ。

そして3GPPは昨年12月に、5G NRの標準仕様の初版策定が完了したことを発表。5Gと4Gと併用するノンスタンドアロンの5G NRの標準化が今年3月までに完了する見込みとしている。NTTドコモでは2020年に、ノンスタンドアロンの5G NRを用いたサービスを提供するとしていることから、一連の3GPPの発表によってその実現に向けた目途が立ったことになる。

これまで5Gに関する取り組みといえば、標準化の進展に向けた将来像や技術のアピールに関する内容が多くを占めていた。だが仕様が決まった今年からは、サービス開始に向けたより具体的な取り組みが増え、商用化に向けた動きが大きく前進することは間違いないだろう。

NTTドコモが公表した5Gの標準化スケジュール。昨年12月末に5G NRの仕様策定が完了し、今年3月にノンスタンドアロンの5G NRの標準化が完了することで、2020年の商用化にも目途が立った

技術からサービスへ移りつつある5Gのアピール

5Gの技術研究に力を入れており、3GPPでの標準化作業にも尽力してきたNTTドコモが昨年実施した5Gに関するイベントを見ると、専門的な要素技術の展示ではなく、サービス開始を見据えた具体的な内容が増えていることが理解できる。

中でも同社が5Gのアピール機会を急速に増やしたのが、5G NRの仕様策定前後にかけて、つまり昨年の11月から12月にかけてである。実際、昨年11月には東京・お台場の日本科学未来館で、「見えてきた、ちょっと先の未来~5Gが創る未来のライフスタイル~」を実施。5Gの特徴である大容量通信を生かした8K映像の伝送実験や、低遅延を生かしたロボットの遠隔操作など、一般消費者にも分かりやすい内容の展示を実施して5Gの魅力を伝えていた。

NTTドコモが11月に実施したイベントでは、人の動きに追従する遠隔操作ロボットなど、高速大容量・低遅延といった5Gの特性を生かせた分かりやすい展示が多くなされていた

またNTTドコモは、NTTグループの最新テクノロジーを活用した体験を提案するプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT」も展開。11月に実施された「VOL.01 距離をなくせ。」では、アーティストのPerfumeとのコラボレーションを実施。5Gの低遅延を生かし、世界3ヵ国に離れている3人のメンバーのパフォーマンスを、ずれや遅れが生じることなくリアルタイムに1つの映像に合成して配信するというイベントを実施していた。

さらに、11月29日の東京パラリンピック1000日前のカウントダウンイベントに合わせて実施された「VOL.2 視点を拡張せよ。」では、5Gの大容量通信を生かし、車いすフェンシングの試合風景を9台の2K解像度のカメラで撮影。それを一部に5Gを組み込んだネットワークを通じて離れた会場に送信することにより、試合会場から遠く離れた場所から、多視点でスポーツ中継を楽しめる取り組みを披露している。

11月29日に実施された「FUTURE-EXPERIMENT」の第2弾では、5Gの高速・大容量という特性を生かし、車いすフェンシングの試合を9つの視点で切り替えながら視聴できる取り組みを実施

今年は5Gを活用した具体的なサービスをアピールする機会が一層増え、多くの場所で5Gに関する取り組みを目にする機会が増えていくだろう。もっとも現在のところ、そうしたデモに用いられているのは実験用の大型の機器であるため、5Gのサービス提供が現実的ではないように見えてしまうが、実は既にクアルコムが5Gに対応したモデム「Snapdragon X50」を開発しているほか、インテルも昨年に5G対応のモデム「XMM 8060」を発表。5G対応デバイスを開発可能にするための準備も着々と進んでいるのだ。

5Gの今後を見据える上で注目される2つのイベントとは

そして今年、5Gの動向を見据える上で重要なイベントは2つある。1つは2月26日からスペイン・バルセロナで開催される、世界最大の携帯電話見本市イベント「Mobile World Congress」(MWC)だ。昨年もMWCでは多くの企業が5Gに関する展示を積極的に実施していたし、22社が3GPPに対して5Gの仕様早期策定を促したのも、このイベントに合わせてなされたものだ。

そうしたことから今年も、MWCでは5Gに関する展示が一層増えると考えられる。例えばスマートフォン型の5G端末が発表されるなど、より現実的な形で5Gのデバイスが登場したりすることもあるかもしれないだけに、MWCでの各社の展示には期待が持たれるところだ。

そしてもう1つ注目すべきは、2月9日より実施される平昌冬季五輪である。なぜスポーツイベントである平昌五輪に注目すべきなのかというと、その開催国である韓国が、日本同様5Gの早期展開に最も力を入れている国の1つだからだ。

しかもスマートフォン世界最大手のサムスン電子が、五輪の最高位スポンサーとなっているほか、韓国大手キャリアのKTも、平昌五輪のスポンサー顔を連ねている。そして両社は平昌五輪に向け5Gの試験サービスを実施するとの報道がなされており、平昌五輪に合わせて韓国で5Gに関する展示やアピールが積極的に実施されると考えられるのだ。

仕様策定に目途が立った今後、世界的に5Gに対する機運は高まってくるものと考えられるが、その前哨戦として2月に実施される2つのイベントには、大きな注目が集まることとなりそうだ。2020年の商用サービス化を占う上でも、今年は5Gから目が離せない年になるだろう。

スマートフォン最大手の韓国サムスン電子は五輪の最高位のスポンサーだけに、平昌五輪では5Gに関する技術の積極的なアピールをするものと考えられる
何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる