「iPhone X」大ヒットで好調のアップル、今年も人気は安泰か

「iPhone X」大ヒットで好調のアップル、今年も人気は安泰か

2018.01.12

絶好調の2018年第1四半期の売上予測を示しているアップル。その背景には、新機軸を打ち出した「iPhone X」の大ヒットがあると見られるが、今年もアップルはその好調ぶりを維持できるだろうか。その鍵を握るのは、やはりiPhoneとなりそうだが、アップルは今年、どのようなiPhoneを投入すると考えられるだろうか。

新機軸を求める声に応えて好業績を予想

アップルにとって、昨年は新たな転換期を迎えた年だったといえるだろう。その理由は、ホームボタンを排して前面がディスプレイを占めるデザインを採用し、指紋認証の代わりにAI技術を活用した顔認証システム「Face ID」を搭載するなど、新機軸を打ち出した新しいiPhone「iPhone X」にあるといって過言ではない。

アップルは2014年の「iPhone 6」以降、2017年に発売された「iPhone 8」に至るまで、4世代にわたって同じ形状のデザインを採用してきた。iPhone 6の発表当初は、それまでのiPhoneより大画面のディスプレイを採用したこと、さらにより大画面の「iPhone 6 Plus」シリーズを投入したことで大きな支持を集めたが、4世代も続くとさすがに「代わり映えがしない」という印象を消費者に抱かせていたのは事実だろう。

事実、iPhone 8/8 Plusの発売に際しては、従来のiPhoneのように予約が殺到して買いづらくなる事態は起きていない。またそれを販売する大手キャリアも、事前予約数は前モデルの「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」より落ちている旨の発言をしていた。

iPhone 8/8 Plusは従来基軸のモデルと大きく変わらないことから、iPhone Xと比べ事前予約の数は少なく、販売面での盛り上がりには欠けた

しかしながら、iPhone 8/8 Plusの発売から約2カ月後に発売されたiPhone Xに関しては、Apple Storeや大手キャリアの予約サイトにアクセスが殺到して繋がりづらい事態となり、各キャリアはiPhone Xの事前予約数が、iPhone 8/8 Plusを大きく超えるに至ったとしていた。部材や製造技術などの問題から、当初より出荷数が少ないと言われていたとはいえ、1カ月以上入手しづらい時期が続いていたことからも、その人気の高さをうかがい知ることができる。

またiPhone Xは、最も安いモデルであっても日本の価格で10万円を超えるというかなり高額なモデルだ。にもかかわらず、より安価なiPhone 8/8 Plusよりも、iPhone Xに人気が集中したことは、いかにアップルに新規性が求められていたかを示していたといえる。

そしてiPhone Xの好調は、アップルの業績にも大きく反映されているようだ。アップルは2018年第1四半期(2017年10~12月期)の売上高予測を840~870億ドル、日本円にして約9.5~9.9兆円と予測している。2017年度第1四半期の売上が784億ドル、日本円で約8.9兆円だったことを考えると、大幅な売上増を達成する可能性があるわけだ。

新iPhoneは「iPhone X化」が進む?

ゆえに今年も、アップルの業績を大きく左右するのはやはりiPhoneとなる可能性が高い。だが今年はアップルにとって、新たな新機軸を打ち出す年ではないと筆者は見る。

確かに昨年は、長く続いた従来のiPhoneのスタイルを大きく変え、買い替えを促す意味でもiPhone Xを投入する必要があった。だが既に新機軸を打ち出した今年は、普及価格帯のモデルにiPhone Xの要素を取り入れ、全般的なリニューアルを図っていくことを優先するものと考えられるからだ。

具体的には、前面をディスプレイが占めるデザインや、Face IDなどが、iPhone 8クラスのスタンダードモデル、そしてiPhone 8 Plusクラスの大画面モデルにまで導入されるものと予想される。スタンダードモデル以上の全モデルにiPhone Xの要素が入ることで、ラインアップ全体でリニューアルを図るというのが、今年のアップルの大きな取り組みになるのではないだろうか。

今年は縦長の全面ディスプレイやFace IDなど、iPhone Xの要素がスタンダードモデル以上に入ってくる可能性が高く、ラインアップ全体でリニューアルが図られると見られる

その際問題となってくるのは、新しいiPhoneを製造するのに必要な部材調達の難易度が上がっていることだろう。特に気になるのは、生産できる企業がまだ非常に限られている、有機ELディスプレイの採用だ。当面の間、有機ELディスプレイの調達はサムスンディスプレイに依存せざるを得ず、価格低下を見込みにくいからだ。

それゆえもし全モデルに有機ELを搭載するとなると、従来モデルよりも価格が上昇してしまうこととなる。価格を考慮するならば、液晶ディスプレイのモデルと、有機ELの2モデルが登場する可能性もあるかもしれない。

先進国は安泰だが新興国戦略が課題

もしスタンダードモデル以上のモデルチェンジが進み、あまり価格が高額にならないのであれば、iPhoneの販売の中核となっている先進国での販売は好調に推移するものと考えられる。特にiPhoneの人気が高い日本では、大ヒットが確約されていると言っていいだろう。

もし日本でiPhoneの販売増を阻む障壁があるとすれば、総務省や公正取引委員会など、キャリアのiPhone販売手法や、中古iPhoneが国内で流通しないことなどを疑問視している国内の行政機関だ。だが現在総務省内で進められている「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」などの様子を見る限り、iPhoneの市場シェア独占に対抗する決定打は、まだ見いだせていないという印象を受ける。

一方で、現在のアップルにとって大きな課題となっているのは新興国での販売である。アップルはあくまで高価格・高付加価値のビジネスを展開しており、元々の端末価格が高い。それゆえ低価格が求められる新興国でのシェア拡大が難しいというジレンマを常に抱えている。実際中国では、富裕層にこそ継続的な人気を獲得しているものの、一般層はミドルクラスに強いOppoやvivoなどの国内メーカーに押され、シェアを落としている状況なのだ。

それゆえアップルは近年、新興国攻略にも力を入れてきている。特に最近力を入れているのがインドであり、インドでのiPhone販売拡大に向け、低価格モデルの「iPhone SE」を現地製造するなどの取り組みを進めてきた。だがやはり低価格モデルに強みを持ち、躍進している中国メーカーと比べると、思うように市場シェアを伸ばせていないのが実情だ。

先進国での人気が継続しているとはいえ、先進国の市場は飽和傾向にあることに変わりはない。それだけに今年、アップルが新興国向けにどのような施策を打ち、それがシェア拡大へと結びつけられるかが、今後の同社の動向を見据える上でも重要になってくるのではないだろうか。そうした意味でも、今年はiPhoneのスタンダードモデルだけでなく、新興国を狙ったiPhone SEの後継モデルの動向も注目されるところだ。

新興国攻略に向け、2016年以来新機種が登場していない「iPhone SE」の後継モデルが登場するかどうかも注目されるところだ
メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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