三菱自動車の新型SUV「エクリプス クロス」とはどんなクルマか

三菱自動車の新型SUV「エクリプス クロス」とはどんなクルマか

2018.01.12

三菱自動車工業から2018年3月に発売となる新型車「エクリプス クロス」。その商品性販促に向けて三菱が実施するネットを使った新しい取り組みについては既報の通りだが、実際のところ、乗ってみた印象はどうなのだろうか。モータージャーナリストの岡本幸一郎氏からレポートが届いたので以下でお伝えする。

三菱自動車の「エクリプスクロス」

3車種目となるクロスオーバーSUV、そのキャラクターは

三菱自動車からひさびさの新型車となる「エクリプス クロス」の予約注文の受付が、2017年12月22日より開始された。カテゴリーとしては、世界的に人気の高いSUVの中でも、とりわけ今後も高い伸びが見込まれるコンパクトクラスのクロスオーバーSUVだ。

「パジェロ」は別格として、三菱にはすでに「アウトランダー」と「RVR」というクロスオーバーSUVがあり、位置づけとしてはその間を埋めることになる。ご参考まで、3モデルのホイールベースはすべて2,670mmと共通で、ボディサイズはアウトランダー(ガソリン車)が全長4,695mm×全幅1,810mm×全高1,710mm、RVRが4,365mm×1,770mm×1,630mmのところ、エクリプス クロスは4,405mm×1,805mm×1,685mmとなっている。

ホイールベースは既存クロスオーバーSUV2車種と共通。クーペスタイルが特徴だ

ただし、単に間を埋めるだけでなく、スポーティなキャラクターが与えられているのは見ての通りだ。「エクリプス」という過去にあったクーペの車名に、SUVを表す「クロス」を加えたことからも、三菱がこのクルマで意図したことが伝わってくる。なお、車名については社内でも議論があり、実に1,000近くにおよぶ案の中から選出したそうだ。

車名を継承? 北米でヒットした「エクリプス」との関係性は

件のエクリプスは日本ではカタログモデルとしては一代限りで、2代目以降は限定的に販売されるにとどまったため、いまひとつ車名が認知されていない感があるが、欧米ほか海外展開もされた中で、とくに北米では初代が高性能4WDクーペとしてヒットを博したことから、かなりメジャーな存在となっていた。北米では続く2代目以降も売れ行きはおおむね好調で、4代目が2012年まで生産されたことから、その名はかなり浸透している。グローバルで展開する車種ゆえ、名前の影響力も無視できない。

米国から輸入販売した2代目「エクリプス」(画像提供:三菱自動車工業)

すでに海外の一部地域でエクリプス クロスの販売は始まっており、日本では2018年3月に発売予定だが、そのプロトタイプを、ひとあし早く大磯ロングビーチの大駐車場に設定された特設コースで試すことができた。

SUVクーペの印象を変える存在に?

外観は三菱らしいアグレッシブな雰囲気と、現代的なスタイリッシュなイメージを併せ持っていて、なかなか存在感がある。実のところ、日本では軒並みSUVクーペが苦戦気味で、そんな状況を鑑みて海外展開している「CX-4」の国内導入を見送ったマツダのような例もあるが、エクリプス クロスのスタイリングは、日本人にもすんなり受け入れられそうな気がする。ボディカラーも、このところ赤の表現力は各社の腕の見せどころとなっているが、多コートを重ね塗りしたという三菱の新色「レッドダイヤモンド」も印象深い。

新色「レッドダイヤモンド」に塗られた「エクリプスクロス」

パワートレインはガソリン1.5リッター直噴ターボエンジンと8速スポーツモード付きCVT(無段変速機)という組み合わせのみとなり、2WD(FF)と4WDが選べる。アウトランダーにあるプラグインハイブリッド(PHEV)の検討もあったようだが、現時点では見送られている。

エンジンは今後、三菱の主力エンジンとなることを念頭に数々の技術を盛り込んだ、全くの新開発品となる。三菱というと、かねてからターボエンジンには定評があるが、この新しいエンジンも1,800rpmという低い回転域から4,500rpmまでの幅広い回転域で250Nmの最大トルクを発生しており、1.5リッターというイメージから想像するよりもずっと力強い。CVTはアウトランダーやRVRと基本は同じものだが、ATのようにステップアップ変速を行い、低回転域でエンジン回転数が不要に変化しないようにするなど、ATに対して遜色ないドライバビリティを追求している点が新しい。

1.5リッターのイメージをくつがえす力強い走りを見せた

気持ちよいドライブを実現すべく盛り込んだ思想

ハンドリング面の特徴として挙げられるのが「S-AWC」だ。「AWC」は「All Wheel Control」を意味する。これは具体的なデバイスというよりも、各輪のブレーキ、フロントデファレンシャルの差動制限、パワーステアリングなどを最適に制御することで、4輪の駆動力と制動力を高度に統合制御するというシステム、ひいては“思想”とご理解いただけばよい。

4輪の駆動力を高度に制御できていることを実証したデモの様子

これにより、ドライバーの操作に忠実な車両挙動を実現し、安心して気持ちよくドライブできることを目的としている。走行モードは「AUTO」、滑りやすい路面に適した「SNOW」、走破性を高めた「GRAVEL」の3つから選べる。

手間を惜しまず高めた走行性能

今回、同じ条件下でアウトランダーやRVRと乗り比べることもできたのだが、違いは歴然。とくにアウトランダーは、2017年のはじめにマイナーチェンジして、もともと評価の高かった走行性能により磨きがかけられたのだが、そのアウトランダーよりも、より俊敏で正確性のあるハンドリングと、高い接地性を実現している。ステアリングを深く切り込んでいったときもより忠実に曲がる。

「RVR」(左)および「アウトランダー」(右)との乗り比べもできた

これには土台のよさも効いているに違いない。プラットフォームやサスペンションアーム類、大半のメンバーは基本的にアウトランダーやRVRと共通だが、さらなるボディ剛性向上のため、アウトランダーでも用いた構造用接着剤をできるだけ多く採用し、とくにリアまわりに重点的に施した。フロントには3点留めのストラットタワーバーを装着したほか、各部に諸々の手当てをしている。

むろん生産の手間は増えるが、より上の乗り味を目指し、軽快感を出すため、このクルマには必要と判断したと開発関係者は述べている。

上質な乗り味を実現すべく三菱自動車は手間をかけている

ステアリングのギア比調整で疲れないクルマに

また、パワーステアリングの平均のギア比を、アウトランダーは16.65:1のところ、エクリプス クロスでは14.70:1と約1割もクイックにしていることも、俊敏で軽快な走り味に寄与しているのはいうまでもない。

走りのよさは一般的なユーザーがごく普通に走る上でも恩恵がある。正確にクルマが反応してくれると修正舵が必要となる状況も減るため、ドライバーの疲労感も小さくなるし、ステアリングを切り返したときに車体の揺り戻しが小さいので、後席乗員にとっても不快な思いをせずに済む。まさしくいいことずくめだ。

ステアリングへの反応が正確だとドライバーの疲労感も小さくなる

限られた中での試乗ではあったが、クルマのよさは十分に伝わってきた。この内容で車両価格が約260万円~310万円というのはコストパフォーマンスもかなり高いように思う。なかなか魅力的な、快心のニューモデルである。

ソニーでもがっかり、「クラウドファンディング」を変えられるか

ソニーでもがっかり、「クラウドファンディング」を変えられるか

2018.01.12

ここ数年の間、スタートアップやベンチャー企業によるハードウェア開発のブームがあったように思う。大手電機メーカーでは作れないような尖った製品を企画し、未来感のある、格好いいYouTube動画をアップする姿を見ていると、私たち消費者はそれを見ているだけで、ワクワクさせられた。

そうした商品の多くはクラウドファンディングの仕組みを通す。すぐに製品として発売されるわけではなく、お金を払って、開発が完了するまで、製品が届くのをただひたすら待つ。ほとんどのケースで、スタートアップ企業が設定した日付に製品が完成することはなかった。数ヶ月~半年以上待たされるのはザラだ。

設定されたはずの期限をそれだけ過ぎてしまうと、届いた箱を開けたところでもはや何の感動もない。クラウドファンディングで「購入」ボタンを押したときの興奮した気持ちは、すっかり冷めてしまっているのだ。

始末が悪いことに、箱を開けて製品を手に取ると、さらにガッカリ感が増してくる。お世辞にも質感が高いとは言えず、安っぽいことがほとんどだ。クラウドファンディングのページではCGで描かれていたためか、格好良く、高級感も漂っていたのだが、目の前にある実物は、Webページの画像とは全く異なるものでしかなかった。

【特集】
ソニー変革の一丁目一番地、SAPのいま

2018年3月期の通期決算予想で、過去最高益となる6300億円が見込まれるソニー。イメージセンサーやテレビなど、既存製品の収益力向上、シェア増がモメンタムを作り出している。一方で、かつてのソニーファンが口を揃えて話す「ソニーらしさ」とは、ウォークマンやプレイステーションを生み出したソニーの社訓「自由闊達にして愉快なる理想工場」の賜物だ。世界中の大企業が新機軸のイノベーションを生み出す苦しみに陥るなか、ソニーは「SAP」でそれを乗り越えようとしている。スタートから4年目に突入するSAPの今を見た。

ソニーでも"がっかり"

仕事柄、テクノロジーとして画期的なものはいち早く自分で使ってみて、できれば我先にと購入し、記事を書いてレポートすることが半ば信条だ。しかし残念ながら、これまで購入したハードウェアスタートアップの製品は「レビューを書こう」という気にならないものがほとんどだ。

そして前回にインタビューした新規事業創出部 統括部長の小田島 伸至氏率いるSAPが世に投入した製品も、ソニーの名前を冠すれど「それに近いもの」という印象が拭えなかった。ITやモバイルを中心に取材活動しているため、SAPが手がける製品は目にする機会が多く、開発者に取材することもある。

特にwena wristは当時、ソニーの入社したての社員が開発担当者だったことで、ストーリーとして取材しがいがあったし、各メーカーの腕時計型ウェアラブル機器の方向性が当時は不明瞭ななかで、「ベルト部分にFeliCaを載せる」という画期的なアイデアが素晴らしかった。

ソニー 新規事業部門 副部門長 兼 新規事業創出部 統括部長 小田島 伸至氏
入社してすぐにwenaのアイデアがオーディションに合格したソニー 新規事業創出部 wena事業室 統括課長 對馬 哲平氏

実際、ワクワクしながら購入手続きをしたものの、届いた製品の印象は「ちょっと安っぽい」。結局、ほとんど使わずじまいだったことを取材して思い出した。wenaだけでなく、その前には「FES Watch」も購入していたが、こちらも同じく「安っぽい」という理由で、一度も装着して街に出ることがなかった。

wena wristとFES Watchは「腕時計」である以上、それなりの質感をどうしても求めてしまう。ユーザーからすれば「ソニー」の看板を背負う製品としての期待値になるからだ。腕に装着する私は40歳を超えたおっさんだし、いくら最先端のデバイスだからといって、気持ち的に妥協するわけにはいかないのだ。

FES Watch(ソニー Webサイトより)

今回、SAPの取材を通してFES Watchの後継機種である「FES Watch U」やwena wristの第2世代モデルを触る機会があったが、初代の製品より遙かに質感が向上し、製品としての完成度が増していたことに驚いた。

FES Watch U(ソニー Webサイトより)

初代FES Watchは、ベルト部分がプラスティックでとにかく「安っぽい」という印象しかなかったが、FES Watch Uはバンド部分がシリコン素材になり、装着感が快適になっていた。また、ケース部分もガラスになったことで、初代とは比較できないほどに質感が増していた。

wena wristもラインナップが増え、時計やバンドとしての選択肢が増えただけでなく、質感が高まったように感じた。「初代から、この質感で出してくれれば」と本音が出てしまうが、やはり最初から、それを求めるのは無理があるのだろう。こうした後継機種の出来を見ると、このあたりが「ソニーがSAPを手がける底力」のように思う。

第2世代製品のwena wrist pro

やはり、ぽっと出のスタートアップやベンチャーとなると、ハードウェアというWebサービスとは異なる"継続的な改善・改良"の難しさから、最初に出した製品で終わってしまうことが多い。しかしSAPであれば、後継機種を継続して開発でき、さらに完成度を高めた製品を出せる環境が整っているようだ。

実際、小田島氏はSAPに対して「スタートアップに着目した組織だが、継続的に事業を続けていくのがミッションだ」と語っている。まさに「継続は力なり」ではないが、製品開発を継続することで、良いものに仕上がっているのが手に取るようにわかるのだ。

安定したモノづくり、だけではないソニーの強み

また、SAPの強みとして「実際に手にとって試し、購入できる販路がある」という点も忘れてはならない。FES Watch Uであれば、時計専門店だけでなく、セレクトショップなどでも取り扱われている。wena wristも時計専門店や家電量販店で購入できる。

一番いい例はパーソナルアロマディフューザーの「AROMASTIC」だ。この製品は名前の通り、スティック糊ぐらいの大きさの機械のボタンを押すと、アロマが香ってくる。つまりこの製品の良さは「アロマを手軽に持ち運べる」という点に集約されるのだが、実際に体験しなければほとんどの人にとってその良さは理解できないだろう。

AROMASTIC(ソニー Webサイトより)

いくらソニーとてアロマ取り扱いショップの販路はなかったが、大手のニールズヤードなどをすぐに開拓し、実体験から購入までのスキームをすぐさま構築した。筆者の実体験として、Webサイトやプレスリリース上では正直、AROMASTICの良さが全くわからなかった。しかし製品に触れ、アロマを嗅いだところ、すぐさま病みつきになって、気付いた時には購入ボタンを押していた。

今の時代、「新しいモノを作る」ことは、アイデアがあればクラウドファンディングで資金を集め、中国に行って作ってくれる工場を見つければ具現化できる。しかし、ハードウェアがともなう「デバイス」は、それ単体で"バズらせる"ことは、モノがあふれるように存在する現代では至難の業だろう。

「ネットの住人」以外に認知してもらい、リアルの体験によって納得して購入してもらう。さらに、初代で終わらせることなく、継続して開発していくには、企業としての体力も不可欠だ。その点において、SAPは単に「ソニーのものづくり」だけでは語れず、販路開拓やマーケティング、広報といったサポート体制が充実しているのが、強みと言えるだろう。

「iPhone X」大ヒットで好調のアップル、今年も人気は安泰か

「iPhone X」大ヒットで好調のアップル、今年も人気は安泰か

2018.01.12

絶好調の2018年第1四半期の売上予測を示しているアップル。その背景には、新機軸を打ち出した「iPhone X」の大ヒットがあると見られるが、今年もアップルはその好調ぶりを維持できるだろうか。その鍵を握るのは、やはりiPhoneとなりそうだが、アップルは今年、どのようなiPhoneを投入すると考えられるだろうか。

新機軸を求める声に応えて好業績を予想

アップルにとって、昨年は新たな転換期を迎えた年だったといえるだろう。その理由は、ホームボタンを排して前面がディスプレイを占めるデザインを採用し、指紋認証の代わりにAI技術を活用した顔認証システム「Face ID」を搭載するなど、新機軸を打ち出した新しいiPhone「iPhone X」にあるといって過言ではない。

アップルは2014年の「iPhone 6」以降、2017年に発売された「iPhone 8」に至るまで、4世代にわたって同じ形状のデザインを採用してきた。iPhone 6の発表当初は、それまでのiPhoneより大画面のディスプレイを採用したこと、さらにより大画面の「iPhone 6 Plus」シリーズを投入したことで大きな支持を集めたが、4世代も続くとさすがに「代わり映えがしない」という印象を消費者に抱かせていたのは事実だろう。

事実、iPhone 8/8 Plusの発売に際しては、従来のiPhoneのように予約が殺到して買いづらくなる事態は起きていない。またそれを販売する大手キャリアも、事前予約数は前モデルの「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」より落ちている旨の発言をしていた。

iPhone 8/8 Plusは従来基軸のモデルと大きく変わらないことから、iPhone Xと比べ事前予約の数は少なく、販売面での盛り上がりには欠けた

しかしながら、iPhone 8/8 Plusの発売から約2カ月後に発売されたiPhone Xに関しては、Apple Storeや大手キャリアの予約サイトにアクセスが殺到して繋がりづらい事態となり、各キャリアはiPhone Xの事前予約数が、iPhone 8/8 Plusを大きく超えるに至ったとしていた。部材や製造技術などの問題から、当初より出荷数が少ないと言われていたとはいえ、1カ月以上入手しづらい時期が続いていたことからも、その人気の高さをうかがい知ることができる。

またiPhone Xは、最も安いモデルであっても日本の価格で10万円を超えるというかなり高額なモデルだ。にもかかわらず、より安価なiPhone 8/8 Plusよりも、iPhone Xに人気が集中したことは、いかにアップルに新規性が求められていたかを示していたといえる。

そしてiPhone Xの好調は、アップルの業績にも大きく反映されているようだ。アップルは2018年第1四半期(2017年10~12月期)の売上高予測を840~870億ドル、日本円にして約9.5~9.9兆円と予測している。2017年度第1四半期の売上が784億ドル、日本円で約8.9兆円だったことを考えると、大幅な売上増を達成する可能性があるわけだ。

新iPhoneは「iPhone X化」が進む?

ゆえに今年も、アップルの業績を大きく左右するのはやはりiPhoneとなる可能性が高い。だが今年はアップルにとって、新たな新機軸を打ち出す年ではないと筆者は見る。

確かに昨年は、長く続いた従来のiPhoneのスタイルを大きく変え、買い替えを促す意味でもiPhone Xを投入する必要があった。だが既に新機軸を打ち出した今年は、普及価格帯のモデルにiPhone Xの要素を取り入れ、全般的なリニューアルを図っていくことを優先するものと考えられるからだ。

具体的には、前面をディスプレイが占めるデザインや、Face IDなどが、iPhone 8クラスのスタンダードモデル、そしてiPhone 8 Plusクラスの大画面モデルにまで導入されるものと予想される。スタンダードモデル以上の全モデルにiPhone Xの要素が入ることで、ラインアップ全体でリニューアルを図るというのが、今年のアップルの大きな取り組みになるのではないだろうか。

今年は縦長の全面ディスプレイやFace IDなど、iPhone Xの要素がスタンダードモデル以上に入ってくる可能性が高く、ラインアップ全体でリニューアルが図られると見られる

その際問題となってくるのは、新しいiPhoneを製造するのに必要な部材調達の難易度が上がっていることだろう。特に気になるのは、生産できる企業がまだ非常に限られている、有機ELディスプレイの採用だ。当面の間、有機ELディスプレイの調達はサムスンディスプレイに依存せざるを得ず、価格低下を見込みにくいからだ。

それゆえもし全モデルに有機ELを搭載するとなると、従来モデルよりも価格が上昇してしまうこととなる。価格を考慮するならば、液晶ディスプレイのモデルと、有機ELの2モデルが登場する可能性もあるかもしれない。

先進国は安泰だが新興国戦略が課題

もしスタンダードモデル以上のモデルチェンジが進み、あまり価格が高額にならないのであれば、iPhoneの販売の中核となっている先進国での販売は好調に推移するものと考えられる。特にiPhoneの人気が高い日本では、大ヒットが確約されていると言っていいだろう。

もし日本でiPhoneの販売増を阻む障壁があるとすれば、総務省や公正取引委員会など、キャリアのiPhone販売手法や、中古iPhoneが国内で流通しないことなどを疑問視している国内の行政機関だ。だが現在総務省内で進められている「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」などの様子を見る限り、iPhoneの市場シェア独占に対抗する決定打は、まだ見いだせていないという印象を受ける。

一方で、現在のアップルにとって大きな課題となっているのは新興国での販売である。アップルはあくまで高価格・高付加価値のビジネスを展開しており、元々の端末価格が高い。それゆえ低価格が求められる新興国でのシェア拡大が難しいというジレンマを常に抱えている。実際中国では、富裕層にこそ継続的な人気を獲得しているものの、一般層はミドルクラスに強いOppoやvivoなどの国内メーカーに押され、シェアを落としている状況なのだ。

それゆえアップルは近年、新興国攻略にも力を入れてきている。特に最近力を入れているのがインドであり、インドでのiPhone販売拡大に向け、低価格モデルの「iPhone SE」を現地製造するなどの取り組みを進めてきた。だがやはり低価格モデルに強みを持ち、躍進している中国メーカーと比べると、思うように市場シェアを伸ばせていないのが実情だ。

先進国での人気が継続しているとはいえ、先進国の市場は飽和傾向にあることに変わりはない。それだけに今年、アップルが新興国向けにどのような施策を打ち、それがシェア拡大へと結びつけられるかが、今後の同社の動向を見据える上でも重要になってくるのではないだろうか。そうした意味でも、今年はiPhoneのスタンダードモデルだけでなく、新興国を狙ったiPhone SEの後継モデルの動向も注目されるところだ。

新興国攻略に向け、2016年以来新機種が登場していない「iPhone SE」の後継モデルが登場するかどうかも注目されるところだ