ソフトバンクが学割を強化、株式公開に向けた地盤強化か

ソフトバンクが学割を強化、株式公開に向けた地盤強化か

2018.01.16

ソフトバンクは1月15日、記者発表会を開催し、同社の学生向け割引サービス「学割先生」を1月17日から開始すると発表した。これまでの学割が学生だけを対象としてきたのに対し、学校の教師も対象にしている点が新しいが、一体どのような戦略を立てているのだろうか。

大容量ユーザーに特化した「学割先生」

今回発表された「学割先生」は、パケット容量が50GBの「ウルトラギガモンスター」をベースに、最大で月額3980円〜という価格を実現した、大容量ユーザーよりのプランだ。また、最新のiPhone 8/8 PlusやiPhone Xなどが最大で90%オフになる「半額サポート for iPhone」も適用されるため、最初からiPhoneの最新機種でスマホデビューが可能になる。

50GBを月額3980円で利用できる。ただし割引は最初の1年のみで、2年目からは5000円になる
学割により、3年前と比べるとデータ単価は10分の1以下になったとアピール

対象となるユーザーは25歳未満、または学校の教員(厳密には「公立学校共済組合組合員証」「文部科学省共済組合組合員証」または「私立学校教職員共済加入者証」を提示できる人)で、通話定額(ライト含む)とデータ定額50GBに加入することが条件となる。

これまでの学割が1〜20GBまでの各プランを利用できたのに対し、「学割先生」では「ウルトラギガモンスター」しか選べないことと、若年層については従来通りだが、新たに教員を対象としたのが新しい点だ。

キャリアの学割としては初めて対象に教員が加わった。私見だが、学校の先生というと、今だにガラケーユーザーが多い印象があるため、なかなか面白いキャンペーンだと思える

この点について、ソフトバンクの榛葉 淳代表取締役副社長兼COOは、中高生などを中心に学生・生徒にスマートフォンが普及しており、学校の先生たちにも生徒たちとの情報共有などをしやすくするため、同じ環境を安価に提供したいという狙いがあるとした。

文部科学省の「文部科学統計要覧(平成29年版)」の「学校教育総括」によると、全国の教員数は約192万人で、専属の教員である本務者だけでも約139万人に上る。特定の職種に対する割引はあまり意味がないのではと思っていたが、ここにさらに家族などが加わる可能性を考えても、なかなかインパクトのある数字だ。

また、春商戦は学生の契約が増加する時期であり、ソフトバンクでは1〜5月に学生の新規契約の76%が集中しているという。MMO総研の調査では学生ユーザーのスマートフォン利用時間の平均が1日あたり5.3時間に達するという結果を紹介し、学生と大容量プランの相性がいいことを強調した。

榛葉COOは「ウルトラギガモンスター」が88%、「みんな家族割」が90%、半額サポート for iPhoneが83%もの顧客満足度を得ていることを紹介しており、これらをトータルで提供することで、満足度の高いサービスになることを示唆した

初めてのスマホユーザー向けにも割引を拡充

学割が大容量ユーザーに特化している一方で、 学生ユーザーのおよそ過半数となる54%が初めてのスマホになるという調査結果を紹介し、こうした「初スマホ」ユーザー向けの「スマホデビュー割」も拡充された。こちらは月間1GBながら、1980円/月で利用できる低額サービスだ。

割安な利用料の代わりに購入できる端末(特別割引機種)が決まっていたのだが、今回この端末に、最新の「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」が加わった。これにより、iPhone SEを含む従来の6機種から8機種へと対象機種が増えたことになる。

1GBで1980円/月は他社と比べると特段安いわけではないが、対象スマホが拡充されると事情が変わってくる

学生の間ではiPhoneが根強い人気を保っており、できれば最新機種を使いたい、という要望も高い。そこでiPhone 8というのは確かに魅力的な選択肢になるだろう。ちょっと邪推すれば、iPhone 8がiPhone Xの人気に押されて在庫が余り気味だからなのではないか、という意地悪な見方もできなくはないが、ユーザーとしては選択肢が広がるのだから歓迎できるだろう。

このほか、2月〜4月に開催される「SUPER FRIDAY」においても学生が優遇される内容となることが明らかになった。具体的には、2月の金曜日に提供される「吉野家の牛丼並盛り」が学生(25歳以下)ユーザーの場合は1回につき2杯ずつ、3月の「サーティーワンのアイス(シングルカップ)」が4月にも引き続き提供される(一般ユーザーは3月のみ)、ということになる。

開催されるたびに店頭に長蛇の列ができる「SUPER FRIDAY」だが、今回も大きな人気を集めそうだ
サーティーワンでは専用の新フレーバーも提供される。試食したところ、さっぱりとした爽やかなフレーバーだった

学割強化の狙いはユーザー基盤の安定化か

総務省のガイドラインが登場して以降、端末の大幅な値引きなどが影を潜め、低価格なMVNOが10%近いシェアを獲得するなど、携帯市場にも流動化の動きが見えてきた。これに対して3大キャリアは端末の割賦契約を2年から4年に伸ばしたり、長期契約者への特典強化などで対応しているが、昨年あたりから強化されているのが「学割」だ。

キャリアが学生を狙う理由としては、親が生計を握っている学生の場合、複数回線割引を提供することで親子を共に獲得しやすいこと、卒業までの数年はキャリアが変わりにくいこと、結果として長期割引が適用されるようになれば、卒業後も長く利用することが期待できることなどが挙げられるだろう。そのため、通常プランと比較するとかなり思い切った割引が行われているのが現状だ。

NTTドコモは「ドコモの学割」、auは「ピタット学割」「フラット学割」を展開している。「ドコモの学割」は親とシェアグループに入ることで月額280円〜という低価格を、auは月額1480円/1GB〜の「ピタット定額」、20GBで3980円〜、30GBで5980円〜(それぞれ通常は4500円〜、6500円〜)の「フラット定額」で、低価格志向と大容量ユーザーをともにカバーしている。

これに対抗する形となったソフトバンクは、大容量側のユーザーは他社に倍する50GBの「学割先生」で大きく掬いつつ、低価格志向のユーザーへは「スマホデビュー割」にiPhone 8を加えることで、利用料を大きく下げることなくアピールしてみせた。これから本格化する春の学生加入シーズンに向けて、なかなか強力な武器を用意したと言えるだろう。

株式公開との関係は?

今回の発表会が開催される直前、日経新聞が「ソフトバンクグループは今年中にも携帯会社であるソフトバンクの株式公開を計画している」と報道した。ソフトバンクグループからは「正式に進めることを決定した事実はない」というコメントが発表されており、今回の発表会では「ソフトバンクとしてのコメントは控える」としてこの件に関する言及はなかったが、もし実現すれば、株式公開後は独立した事業としての採算性を高めなければならず、そのためには長期間にわたって安定してユーザーを確保していくことが重要になる。

そうした事情も勘案してみると、他社と比べてかなりの大盤振る舞いに見える今回の学割強化は、学生のうちからユーザーを囲い込み、安定した経営基盤を確保する地盤強化のための施策と受け取ることもできる。また、教員を取り込む点については、ソフトバンクが強化している教育ICT向けの事業との連動においても、ソフトバンクユーザーを増えれば採用が有利になるという思惑があるのではないか、という推測もできる。

一方でMVNOなども一部で家族割など、MNOに対抗する施策を広げてきており、従来のように「家族で囲い込めば安泰」とはいえない状況も出てきている。今春の新生活シーズン商戦において、ソフトバンクの選択が市場にどう受け入れられるかが注目される。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。