"働き方改革"で「内向き目線の会社」からの脱却目指すパナソニック

2018.01.16

代表取締役社長に樋口泰行氏が就任して以降、パナソニックの社内分社であるコネクティッドソリューションズ社は働き方改革とダイバーシティを猛烈に推進している。

中でも重要になってくるのが、社内で働く従業員がこれまで培ってきた文化や意識を変えていくことだ。だがこれまで、大阪の製造業としてものづくり一筋に取り組んできた従業員が、東京を中心としたB2B主体のビジネスへとマインドを切り替えるのは容易なことではない。

そうした社内の意識改革に、パナソニックはどのような考えを持って取り組んでいるのだろうか。コネクティッドソリューションズ社の常務 営業推進本部 本部長 ダイバーシティ推進担当の山中 雅恵氏と、常務 人事センター 所長の大橋 智加氏に話を聞いた。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 営業推進本部 本部長 ダイバーシティ推進担当 山中 雅恵氏(左)と、常務 人事センター 所長 大橋 智加氏(右)

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

「昭和のおっちゃんの会社」からの脱却

IBMやマイクロソフトという外資系企業、住設メーカーで日本企業のリクシルを経て、2017年7月にパナソニックに入社した山中氏は、入社直後のイメージが「昭和のおっちゃんの会社」だったと話す。

「(社員に)質問すると『過去からこうやっていた』という回答の人が多いし、『従来よりも良くなった』という感想を持てても、『競合より勝っているか』『顧客が満足しているか』という視点のない人が多い。目線が内向きになっている」(山中氏)

一方で長年パナソニックに在籍している大橋氏は、旧来のパナソニックの風土について「良いものづくりさえしていればいいという考え方が主流だったかもしれない」と話す。高度成長期以降「いいものを安く作ること」を最も重視する価値観の下にすべての事業が動いており、昨今のような、とりわけB2B事業で最も重要な顧客の声を聞き取るといった体制が機能しきれていなかったというのだ。

もう一つ、大橋氏は「上司が絶対的な存在に近く、若い世代が自由にものを言いづらかった。端的に言えば風通しが悪かったかもしれない」と話す。

そうした状況を見て山中氏は、「もったいない。社員一人ひとりは優秀なのだから、環境を変える後押しさえすれば、実力をもっと発揮できる企業になるのではないか」と感じたという。樋口体制で臨む働き方改革は、単なるワークスタイル変革ではなく、「約100年の歴史の中で社員に根付いた閉鎖的な価値観を変える」という狙いがある。

制度は問題なし、だが「価値観が古い」

なぜ環境の変化をすること=価値観の変化なのか。

山中氏によれば、パナソニックは過去に在籍していた企業と比較しても「制度面ではダイバーシティに代表される"自由な働き方"を支援できるような体制が整っている。ただ、価値観に起因する徹底度合いが足りない」と感じた。

具体的な社内課題は3点。1つはダイバーシティの達成に向けてKPIを設定し、それを必ず達成するという仕組み上の問題。2つ目は組織の末端にまで「ダイバーシティを推進する」という意識が浸透していないこと。そして3つ目は、トップのダイバーシティへのコミットメントにムラがあり、制度面での環境は整っていたにもかかわらず、取り組み度合いに波があったことだ。

これらの課題を解消するため、山中氏や大橋氏が現場の声を聞く「ダイバーシティ推進の全国キャラバン」を実施。そこで集めた意見を樋口氏に共有しながら、ダイバーシティ推進を確実にするためのサイクルを回しているという。

ただ、製造業ならではの「技術者に男性が多く、男性比率が圧倒的に高い」という慢性的な課題がある。周囲に女性が少ない職場で長年勤めている人に対して、急に「ダイバーシティ推進のため意識を変えよう」と語りかけても難しい側面がある。実際、山中氏がキャラバンでヒアリングした中でも「女性の部下に子供ができた時、どう話をすればいいのか分からない」という意見があり、「指針」よりも「具体的な対処法」を現場は求めがちなようだ。

一方で山中氏はこのケースに対し、「女性の出産に関して、産後すぐに職場復帰する人がいれば、長く育児休暇を取る人もいる。個々のニーズに応える制度は整っているにもかかわらず、本人がやりたい方法を選び、周囲がそれを前向きにサポートできない」という個別対応が求められることを指摘。こうした選択肢があることを丁寧に説明することで理解を深めたい意向だ。

ダイバーシティ推進の本質は、女性が働きやすい会社、男性優位という片翼の視点だけでなく、多様な視点を取り入れられる会社に進化することで、企業競争力にも繋がる点にある。「ダイバーシティの推進は開始当初こそ華々しいが、実は一朝一夕で実現できるものではない。KPIを回し続けてしつこく継続するしかない」(山中氏)という、長期的な視野に立って実現に向けた取り組みを進める構えのようだ。

働き方改革は、何もダイバーシティ推進だけではない。コネクティッドソリューションズ社の大阪から東京への移転もその一環だ。「意識を変え、お客様視点への変革には場所の問題は大きかった」と、大橋氏は答えている。

東京オフィスでは、仕切りをなくしたオープンスペースをベースに、社長である樋口氏までもがその中で仕事をしている。また、Skypeやテレビ会議システムを活用したテレコミュニケーション、テレワークも積極的に利用している。このあたりは、日本マイクロソフト 前会長の樋口氏ならでは、といった印象も受けるが、実はソリューションの導入だけでなく「会議室を減らす」という大なたを振るっていた。

"大なた"である理由は、大阪の門真時代、常に「会議室を増やしてほしい」という要望があったから。東京オフィス移転の際もそうした要望があり、「会議室を減らしたことには当初、反発の声が多く上がっていた」(大橋氏)。しかし、オフィスの造りをオープン型に切り替えることで社員同士のコミュニケーションの仕切りがなくなり、意見交換の機会が増えた。結果として会議が減り、行われる会議も「一つ一つの時間が短くなり、中身が濃いものになっているという実感がある」(大橋氏)。

「社内でも大なり小なり課題があるという意識は抱えていた。これまでにも色々取り組んできたが、本質を変えることができていなかった。社長の樋口が率先して、自ら働き方を変えていく姿を見せるというやり方が、社員にとっては新鮮に映っていると思う」(大橋氏)

移転したことで、「日本型大企業」らしからぬオープンなオフィスへと変貌を遂げた

職場が変わり、コミュニケーションも変わった。となれば、マネジメントも変える。日本企業は長年「年功序列制」での評価が定着していると言われてきたが「パナソニックでは、実は10年以上前から成果主義評価だった」(大橋氏)。ただ一方で、これまでの評価手法は上司が部下を評価する一方通行のもの。そこで人事制度の改革でも「360度評価」を取り入れ、部下からの評価軸も加えることで、誰もが納得できる「成果主義評価」へと変化させようとしている。

「コミュニケーションの変革とマネジメントの変革は同じ。日常のマネジメントが変わらないと本質は変わらない。日々の部下との接点を変えるための研修や仕組作りに力を入れていく。上司が部下を取り仕切るのではなく、互いに自らの意見を出し合える関係を構築できれば」(大橋氏)

製造業で勝てなければ日本企業に勝ち目はない

社内の働き方改革に取り組んでいる山中氏と大橋氏だが、どういったポイントを大事にして改革に取り組んでいるのだろうか。

大橋氏は「向かう方法や方法論は合っている」と答えるなど、両者の意識や考え方は一致しているようだが、そのことをどう伝えるかという、コミュニケーションの部分に関しては、両者で相談しながら決めていくことが多いのだという。

「私は7月にパナソニックに入社したばかりですし、鈍感力が強すぎる部分があるので(苦笑)、わからないことも多い」と山中氏は自己分析した上で、だからこそ長年の社内体制を熟知している大橋氏と頻繁に相談し、アドバイスを受けながら意識改革に向けた取り組みを進めているのだそうだ。

山中氏はこれまでの経験を踏まえ、「IT業界に携わっていて、日本企業はITの世界で勝ち目が薄いと感じている。だからこそ、日本が勝てるフィールドである製造業を強くしたい。製造業で勝てなければ、世界で勝てる日本企業はないというぐらいの思いで精一杯努力したい」と、日本にとっていかに製造業の復活が重要かを力説する。

技術畑ではない山中氏がパナソニックで果たす役割は、営業力の強化や組織の活性化という製造業にとっては「影のサポート役」かもしれない。しかし、「昭和のおっちゃんの会社」が「世界水準の働き方」を達成できれば、この会社が世界のリーディングカンパニーになる未来も見えてくるだろう。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。