デザイナー起点でメガホンを再発明、パナソニック「メガホンヤク」開発秘話

デザイナー起点でメガホンを再発明、パナソニック「メガホンヤク」開発秘話

2018.01.17

パナソニックが強化するB2Bビジネスにおいて重要な役割を担うコネクティッドソリューションズ社。同社が提供する多言語翻訳サービスの端末「メガホンヤク」は、デザイナーの発案から生まれた製品だ。その開発の背景を同社 デザインセンター 第1デザイン部 クリエイト1課 課長の松本 宏之氏に聞いた。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 デザインセンター 第1デザイン部 クリエイト1課 課長の松本 宏之氏

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

プロトタイプだけのつもりが……

メガホンヤクは、拡声器(メガホン)型の端末を使い、空港や駅、イベントで訪日外国人に対して案内・誘導などを行うための翻訳サービスだ。端末の見た目は一般的なメガホンで、「多数の人に同時に音声を届ける」という役割は変わらない。翻訳機能が搭載されているのが特徴で、メガホンヤクに話しかけるとその言葉を最大4カ国語に翻訳してくれる。

メガホンヤク

メガホンヤクを開発するきっかけは、パナソニック社内で開催の内覧会「ワンダージャパンソリューションズ(WJS)」だった。

「完成前の試作を展示して来場者とともに商品として創り上げていく」という目的で、2015年2月に初めて開催された。2020年の東京五輪という一大イベントに向け、未完成なプロトタイプを顧客に見せることで、社内だけでは気づけなかった要素を製品開発に活かそうという狙いがあったのだ。

イベントで用意されたテーマの一つが「インバウンドの外国人訪日客に向けたもの」。これに対して「役立つもの、面白いもの」の提案を求められた松本氏は、UXデザイナー、デザインエンジニアと3人で「翻訳メガホン」のコンセプトを考え出した。

「以前なら、CGやモックアップなどで表現すれば十分だったが、最近は『体験』してもらわないと伝わらない」(松本氏)として、実際にスマートフォンやスピーカー、バッテリーを埋め込んだメガホン型の翻訳機を試作、提案した。

メガホンヤクの最初のラフ
当初は松本氏が自宅で模型を製作した
持ち手はスプレー缶、メガホン部分はプラスチックの植木鉢という手作り感満載の試作品だ

結果としてWJSで高い評価を得たものの、松本氏としてはプロトタイプの提案で一旦完結したと考えていたという。だが数カ月後、同社の技術者が集結するイノベーションセンター(IC)の翻訳技術を開発している部署が興味を持ったという話を聞きつけて担当者に連絡。それがきっかけで商品化に向けた開発がスタートした。

だが、WJSでのプロトタイプ初号機はデザイン性やコンパクトさを優先したため拡声器としての製品レベルが及ばず、「空港での実証実験でも、100m先までは声が届かなかった」(松本氏)という。そこでまずは要求水準を満たす大型の拡声器にスマートフォンを装着したものをICの技術メンバーが試作した。

次の課題は小型化だったが、メガホンの構造は単純なように見えて「形状にものすごいノウハウが詰まっている」(松本氏)ため、性能を落とすことなく、スマホとの融合や小型化を図るのにかなり苦労したという。もし、ベースとなるメガホンの形を大きく変えてしまえば、開発期間が1年半~2年も余計にかかってしまい、スピード、投資金額ともに長大になりすぎる。

試作を重ね、最終型へと行き着いた

そうした判断から、メガホンの構造は現行の拡声器をうまく共用しながら、ディスプレイと本体との融合、操作性など、技術者と一緒になって試行錯誤を重ねていった。結果として、スタートから1年半後の16年12月、販売を開始することができた。

既存の商品カテゴリの製品開発でも時間がかかるのに、(メガホンヤクという)ニューカテゴリの商品をゼロからこの短期間で商品化できたのは、「機能性確保とスピード開発」の両輪を常に意識合わせしながら進めたことによるものだという。

「胸を張って割り切った」メガホンヤク

製品化したメガホンヤクは「定型翻訳」を採用している。Webサービスやアプリで利用する自由翻訳を採用しないのは不自然にも思えるが、メガホンヤクが利用されるシーンから逆算した仕様だと言う。

双方向に会話するデバイスではないメガホンのため、自由な会話は必要ない。駅や空港といった決まった場所で、非常時における訪日外国人などの誘導にこのメガホンヤクが必要となる。それであれば、無駄な通信によるバッテリー切れを起こすことの方が問題になる。

また、約300にも及ぶ定形翻訳文も単純にテンプレートを用意するだけではない。パナソニックが長年培ってきた音響技術や音声照合・認識技術を駆使して、発話内容を聞き取り、それに適した翻訳文を選択する。非常時の誘導では、「情報の正確性」が最優先。万一でも「右」を「左」と翻訳しては命に関わる可能性もある。そうした致命的な誤認識をしないように徹底的にチューニングしたほか、さまざまな言葉の言い回し、方言といった差分も限りなく吸収したという。

もちろん、一般的な自由翻訳を採用する手がなかったわけではない。ただ、B2B向けという商品の性質上、販売数が限られるため、開発工数、コストが増大する翻訳機能ではリニアに価格に直結する。だからこそ、顧客から一番求められている価値は何か、最優先すべき目標を開発メンバー全員で共有した上で「胸を張って(機能を)割り切った」と松本氏は話す。

松本氏はプロダクトのデザイン性について「ユーザビリティを徹底的に磨き上げ、丁寧に作り上げていくことで、機能性も向上し他社との差別化になる。機能美を突き詰めると自然と一番使いやすい形になるし、それが商品の特徴になる」と説明する。スタイリングだけを重視することは「デザインのエゴ」と言いきる。

そうした美学はメガホンヤクにも生きている。片手でも難なく操作できるように、メガホンの重心の位置やグリップ形状まで徹底的に吟味、非常時に素早く間違いなく使えるようにした。「カタログでアピールするようなものではないが、見えない配慮ができていないと商品としてはダメ」(松本氏)。

重心一つとってもプロダクトデザイン。片手で操作しやすいように改良したメガホンヤク

こうした細やかな気遣いは、「家電で培われたDNAが生きているからこそ」だと松本氏は話す。B2B事業であっても、その機器を利用する従業員、B2B2Cの最終的なエンドユーザーは『人』。人を中心に考えるパナソニックとして、デザインに分け隔ては存在しない。「デザイナーとして、『使いやすい』という言葉はデザインが褒められたと感じている。かっこいいデザインだけがデザインではない。ユーザビリティと機能性はイコール」(松本氏)。

実は松本氏は、昨年10月から羽田空港に導入された出入国審査用の顔認証ゲートのデザインにも携わっている。こちらはB2B2Cに近い製品だが、「使いやすく、円滑で厳格なゲート」という要望に対して、人が自然と取る行動を重視した製品デザインを開発メンバーで徹底的に考え抜いたと話す。

顔を認証し、パスポートを読み取ってゲートを開ける。まずはこうした機能性において、高い技術力を持つ企業同士の戦いで競い勝つことはもちろんだが、その上で「お客様視点でどれだけ使いやすさに配慮を尽くしたか」が決定的な差別化のポイントになる、と松本氏は強調する。

"樋口後"は「新しいものを生み出しやすい環境に」

樋口 泰行氏のカンパニー社長就任後、社内の雰囲気が変化したと松本氏は話す。

コネクティッドソリューションズの社員全員に対して樋口氏は、「みんなでビジネスをやっていこう」という思いを込めたメールを何度も直接発信しているという。さらに、社内であってもスーツが基本だった過去から、ラフな格好で自然体に仕事ができるように変え、オフィスも東京への移転を機に「フリーアドレス/フレックスシーティング」となった。

これまでとは異なり、デザインセンターだけのフロアにはせず、営業部門や設計部門といったさまざまな部署、さらには外部の協力会社なども交えた「協創の場」に変化したことで「新たなものを生み出しやすい環境」になってきたと感じると松本氏は喜ぶ。

100年企業のパナソニックは、長年の経験があるからこそ、必ずしもイノベーションを起こしやすい環境ではなかった。そこに新風を吹き込む樋口氏が来たことで、「情熱と(会社の)支援によるシナジーが加速していく空気がある」(松本氏)という。今後、パナソニックからB2Bの現場に向けた使いやすいデザインがより多く放たれることを期待したい。

今、求められる人材とは? - ロバート・ウォルターズが明かす傾向

今、求められる人材とは? - ロバート・ウォルターズが明かす傾向

2018.01.17

ロバート・ウォルターズ・ジャパンは16日、外資系・日系グローバル企業の国内拠点の中途採用事例をもとに、産業・職種別の採用動向と給与水準をまとめた「給与調査 2018」を刊行した。それをもとに求められる人材の傾向などを説明。そこからは"テクノロジー"や"契約社員"といったキーワードが浮かんできた。

「給与調査 2018」を刊行。無料配布するほかホームページ上でも公開

同社が説明したのは、国内における1万弱の取扱事例(うち採用事例は約2500件)から導いた人材トレンドについてだ。

デイビッド・スワン社長は、世界的な傾向として、専門性の高い「プロフェッショナル」に人気が集まっていると指摘する。伝統的な技術・専門職以外に、ビッグデータの活用やサイバーセキュリティの構築、フィンテックの活用など、いずれも専門性が高く、新興分野ほど需要が高いようだ。

この傾向は日本も同様である。日本における分野別のトレンドをいくつか例を挙げてみよう。そこからも専門性の高さがわかるはずだ。

自動車分野ではソフトウェアエンジニア、レーダー、超音波やカメラなどのセンサリングシステムなどの専門技術を持つ人材、プログラミング、システムに関連の技術を持つ人材への需要も高かったとする。ほかにも、フィンテック、メディテック、HRテックなど「テック」という言葉で括られる新興分野への需要が高まっているようだ。

給与水準も需要の大きさを反映する。プロフェッショナルのベースサラリーは転職前に比べて10-15%アップ。さらに新興分野の転職者は20-25%と大幅アップした。新興分野では、需給がアンバランスだからこそ、アップ幅も増えるわけで、引く手あまたであることが容易に想像できるだろう。

興味深いのは、多くの企業の傾向として、ミッドエイジ、シニアと呼ばれる年齢層の採用が見られたことだ。これは即戦力を求める企業が増えていることのあらわれであり、年間を通じて40歳を超えた人たちの採用が続いたという。

もうひとつ興味深いのは、企業の人材採用に関する取り組みとスタンスについて。企業は人材確保のために、ワークスタイルの変革に取り組んだところが数多く見受けられたが、一方で人材採用における雇用形態からは慎重な側面が見られたという。

採用当初は契約社員での雇用を行い、以後、正社員に切り替えていく方式をとる企業が多かった。これは過剰な人材採用を回避したいという企業の心理のあらわれである。

ただし、優秀な人材が再度外部に流出してしまえば無意味となる。このため、正社員への雇用切り替えも行なっているようだが、企業側は慎重な姿勢を崩していないことは理解しておきたい。

最新トレンドを見ていくと、プロフェッショナル人材が求められているとともに、テクノロジーの存在感が増していることに気づく。そうした仕事は最終的には製品やサービスに反映されることになる。転職を希望せずとも、多少なりとも多くの人に関わっていくと考えられるはずだ。とりわけテクノロジーは日進月歩で進化しており、改めて情報との接し方について見直してみるのもいいのではないだろうか。

"働き方改革"で「内向き目線の会社」からの脱却目指すパナソニック

2018.01.16

代表取締役社長に樋口泰行氏が就任して以降、パナソニックの社内分社であるコネクティッドソリューションズ社は働き方改革とダイバーシティを猛烈に推進している。

中でも重要になってくるのが、社内で働く従業員がこれまで培ってきた文化や意識を変えていくことだ。だがこれまで、大阪の製造業としてものづくり一筋に取り組んできた従業員が、東京を中心としたB2B主体のビジネスへとマインドを切り替えるのは容易なことではない。

そうした社内の意識改革に、パナソニックはどのような考えを持って取り組んでいるのだろうか。コネクティッドソリューションズ社の常務 営業推進本部 本部長 ダイバーシティ推進担当の山中 雅恵氏と、常務 人事センター 所長の大橋 智加氏に話を聞いた。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 営業推進本部 本部長 ダイバーシティ推進担当 山中 雅恵氏(左)と、常務 人事センター 所長 大橋 智加氏(右)

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

「昭和のおっちゃんの会社」からの脱却

IBMやマイクロソフトという外資系企業、住設メーカーで日本企業のリクシルを経て、2017年7月にパナソニックに入社した山中氏は、入社直後のイメージが「昭和のおっちゃんの会社」だったと話す。

「(社員に)質問すると『過去からこうやっていた』という回答の人が多いし、『従来よりも良くなった』という感想を持てても、『競合より勝っているか』『顧客が満足しているか』という視点のない人が多い。目線が内向きになっている」(山中氏)

一方で長年パナソニックに在籍している大橋氏は、旧来のパナソニックの風土について「良いものづくりさえしていればいいという考え方が主流だったかもしれない」と話す。高度成長期以降「いいものを安く作ること」を最も重視する価値観の下にすべての事業が動いており、昨今のような、とりわけB2B事業で最も重要な顧客の声を聞き取るといった体制が機能しきれていなかったというのだ。

もう一つ、大橋氏は「上司が絶対的な存在に近く、若い世代が自由にものを言いづらかった。端的に言えば風通しが悪かったかもしれない」と話す。

そうした状況を見て山中氏は、「もったいない。社員一人ひとりは優秀なのだから、環境を変える後押しさえすれば、実力をもっと発揮できる企業になるのではないか」と感じたという。樋口体制で臨む働き方改革は、単なるワークスタイル変革ではなく、「約100年の歴史の中で社員に根付いた閉鎖的な価値観を変える」という狙いがある。

制度は問題なし、だが「価値観が古い」

なぜ環境の変化をすること=価値観の変化なのか。

山中氏によれば、パナソニックは過去に在籍していた企業と比較しても「制度面ではダイバーシティに代表される"自由な働き方"を支援できるような体制が整っている。ただ、価値観に起因する徹底度合いが足りない」と感じた。

具体的な社内課題は3点。1つはダイバーシティの達成に向けてKPIを設定し、それを必ず達成するという仕組み上の問題。2つ目は組織の末端にまで「ダイバーシティを推進する」という意識が浸透していないこと。そして3つ目は、トップのダイバーシティへのコミットメントにムラがあり、制度面での環境は整っていたにもかかわらず、取り組み度合いに波があったことだ。

これらの課題を解消するため、山中氏や大橋氏が現場の声を聞く「ダイバーシティ推進の全国キャラバン」を実施。そこで集めた意見を樋口氏に共有しながら、ダイバーシティ推進を確実にするためのサイクルを回しているという。

ただ、製造業ならではの「技術者に男性が多く、男性比率が圧倒的に高い」という慢性的な課題がある。周囲に女性が少ない職場で長年勤めている人に対して、急に「ダイバーシティ推進のため意識を変えよう」と語りかけても難しい側面がある。実際、山中氏がキャラバンでヒアリングした中でも「女性の部下に子供ができた時、どう話をすればいいのか分からない」という意見があり、「指針」よりも「具体的な対処法」を現場は求めがちなようだ。

一方で山中氏はこのケースに対し、「女性の出産に関して、産後すぐに職場復帰する人がいれば、長く育児休暇を取る人もいる。個々のニーズに応える制度は整っているにもかかわらず、本人がやりたい方法を選び、周囲がそれを前向きにサポートできない」という個別対応が求められることを指摘。こうした選択肢があることを丁寧に説明することで理解を深めたい意向だ。

ダイバーシティ推進の本質は、女性が働きやすい会社、男性優位という片翼の視点だけでなく、多様な視点を取り入れられる会社に進化することで、企業競争力にも繋がる点にある。「ダイバーシティの推進は開始当初こそ華々しいが、実は一朝一夕で実現できるものではない。KPIを回し続けてしつこく継続するしかない」(山中氏)という、長期的な視野に立って実現に向けた取り組みを進める構えのようだ。

働き方改革は、何もダイバーシティ推進だけではない。コネクティッドソリューションズ社の大阪から東京への移転もその一環だ。「意識を変え、お客様視点への変革には場所の問題は大きかった」と、大橋氏は答えている。

東京オフィスでは、仕切りをなくしたオープンスペースをベースに、社長である樋口氏までもがその中で仕事をしている。また、Skypeやテレビ会議システムを活用したテレコミュニケーション、テレワークも積極的に利用している。このあたりは、日本マイクロソフト 前会長の樋口氏ならでは、といった印象も受けるが、実はソリューションの導入だけでなく「会議室を減らす」という大なたを振るっていた。

"大なた"である理由は、大阪の門真時代、常に「会議室を増やしてほしい」という要望があったから。東京オフィス移転の際もそうした要望があり、「会議室を減らしたことには当初、反発の声が多く上がっていた」(大橋氏)。しかし、オフィスの造りをオープン型に切り替えることで社員同士のコミュニケーションの仕切りがなくなり、意見交換の機会が増えた。結果として会議が減り、行われる会議も「一つ一つの時間が短くなり、中身が濃いものになっているという実感がある」(大橋氏)。

「社内でも大なり小なり課題があるという意識は抱えていた。これまでにも色々取り組んできたが、本質を変えることができていなかった。社長の樋口が率先して、自ら働き方を変えていく姿を見せるというやり方が、社員にとっては新鮮に映っていると思う」(大橋氏)

移転したことで、「日本型大企業」らしからぬオープンなオフィスへと変貌を遂げた

職場が変わり、コミュニケーションも変わった。となれば、マネジメントも変える。日本企業は長年「年功序列制」での評価が定着していると言われてきたが「パナソニックでは、実は10年以上前から成果主義評価だった」(大橋氏)。ただ一方で、これまでの評価手法は上司が部下を評価する一方通行のもの。そこで人事制度の改革でも「360度評価」を取り入れ、部下からの評価軸も加えることで、誰もが納得できる「成果主義評価」へと変化させようとしている。

「コミュニケーションの変革とマネジメントの変革は同じ。日常のマネジメントが変わらないと本質は変わらない。日々の部下との接点を変えるための研修や仕組作りに力を入れていく。上司が部下を取り仕切るのではなく、互いに自らの意見を出し合える関係を構築できれば」(大橋氏)

製造業で勝てなければ日本企業に勝ち目はない

社内の働き方改革に取り組んでいる山中氏と大橋氏だが、どういったポイントを大事にして改革に取り組んでいるのだろうか。

大橋氏は「向かう方法や方法論は合っている」と答えるなど、両者の意識や考え方は一致しているようだが、そのことをどう伝えるかという、コミュニケーションの部分に関しては、両者で相談しながら決めていくことが多いのだという。

「私は7月にパナソニックに入社したばかりですし、鈍感力が強すぎる部分があるので(苦笑)、わからないことも多い」と山中氏は自己分析した上で、だからこそ長年の社内体制を熟知している大橋氏と頻繁に相談し、アドバイスを受けながら意識改革に向けた取り組みを進めているのだそうだ。

山中氏はこれまでの経験を踏まえ、「IT業界に携わっていて、日本企業はITの世界で勝ち目が薄いと感じている。だからこそ、日本が勝てるフィールドである製造業を強くしたい。製造業で勝てなければ、世界で勝てる日本企業はないというぐらいの思いで精一杯努力したい」と、日本にとっていかに製造業の復活が重要かを力説する。

技術畑ではない山中氏がパナソニックで果たす役割は、営業力の強化や組織の活性化という製造業にとっては「影のサポート役」かもしれない。しかし、「昭和のおっちゃんの会社」が「世界水準の働き方」を達成できれば、この会社が世界のリーディングカンパニーになる未来も見えてくるだろう。