2018年のアップルはどうなるか? 好調を保つためのiPhone戦略

2018年のアップルはどうなるか? 好調を保つためのiPhone戦略

2018.01.18

アップルは2017年、iPhone 10周年を迎える記念すべき1年を終えた。アップルは新しい本社機能をもつApple Parkをオープンさせ、Apple Storeの新しいコンセプトの店舗も次々にオープンさせている。

主力製品であるiPhoneは、これまでの系譜を踏襲したiPhone 8、iPhone 8 Plusに加え、次世代iPhoneの姿を現すiPhone Xも投入した。

iPhone 8

また、2017年3月に投入したiPad(第5世代)は、iPadでニーズが集まっていた企業や教育向けの大量導入モデルの需要を叶え、四半期の販売台数を1000万台に復帰させることに成功した。

プロユーザー軽視との批判を集めていたMacラインアップに対しても、MacBook Proの2年連続の更新、iMacラインアップの性能の引き上げ、さらに高い性能を発揮するiMac Proの投入で、その責任を果たした。

その他の製品は、Apple Watch、AirPodsが好調さを増しており、それぞれのカテゴリで業界のトップを進んでいる。またApp Storeなどのサービス部門についても、2020年までの4年間で売上高を倍増させる計画にむけて、順調に歩んでいる。

そんな2018年を迎えたアップルは、今年、どのような1年を過ごすことになるのだろうか。

前提となる世界経済は?

アップルに限らず、多くの企業は、自国だけでなく、世界経済の影響を色濃く受ける。

2008年のリーマンショックに端を発した世界的な景気の減速からの回復と、モバイル時代の到来の波を上手くつかんだアップルは、世界最高の時価総額を記録し、なおも株価の上昇は続いている。アップルの好業績は、世界経済の順調な回復と拡大の地合が背景にあることは間違いない。

世界的な景気拡大と技術革新速度に直接的な相関はないため、景気拡大がiPhoneの進化に直接的に働きかけることはないが、特に新興国市場の景気拡大は、高付加価値のスマートフォンを扱うアップルにとって、特にアジア太平洋地域における売上高の向上を助ける要素となる。

ただし、米国は金融緩和政策からの出口戦略として、2018年も引き続き利上げを実施していくことが考えられる。加えてトランプ政権の税制改革によって、海外に滞留している企業の資金を米国に環流させる際の税優遇も始まる。そのため、新興国向けの投資に異変が起きる可能性が指摘されており、その影響が新興国の景気に冷や水を浴びせないかが心配される。

iPhone戦略での注目は?

主力製品であるiPhoneが属するスマートフォン市場は、世界的な成長限界に近づいており、買い替え需要や乗り換え需要をいかにつかむか、それが販売台数を伸ばす鍵となっている。

また、別の尺度として、平均販売価格を高めることによる売上高の上昇も採りうるべき戦略だ。こちらについては、iPhone Xの投入がもっともわかりやすい施策だった。

アップルは2018年モデルで、iPhone Xのようにホームボタンなし、Face IDによる顔認証機能を備えた全画面モデルへと移行させていくことになるとみられる。iPhone Xよりさらに大きな有機EL液晶を備えるモデルが登場することは想像に容易だ。

5.8インチモデルの値下げとともに、大画面モデルの投入を行い、平均販売価格を高止まりする戦略に打って出てくるのではないか、と予測している。

廉価版モデルを魅力的にする?

先進国市場で5割前後のシェアを誇るアップルが、さらに他社からシェアを奪って行くには、アップルがこれまで苦手としている廉価版のiPhoneのラインアップ強化に努めることが必要となる。

現在、最新モデルとしてiPhone 8・iPhone 8 Plus、iPhone Xの3機種が用意されており、iPhone 6sシリーズ、iPhone 7シリーズ、そしてiPhone SEの、合計8機種が販売されている。価格はiPhone SEの349ドルから100ドル刻みで展開している。

iPhone SE以外のモデルは1-2年前の最新モデルが充てられており、最新のiOS 11では、A9を搭載する2年前のiPhone 6sやiPhone SEでも、最新の拡張現実アプリを動作させることができるように整備している。

筆者が注目しているのは、iPhone SEの刷新だ。

iPhone SEは2016年3月に、当時の最新モデルであるiPhone 6sと同じA9プロセッサや1200万画素カメラを備えながら、iPhone 5sと同じ4インチサイズのボディを採用した廉価版スマートフォンとして登場した。すでに2年が経過し、現在はiOS 11で全ての体験を楽しむことができる下限の性能に位置している。

iPhone SEの刷新を期待

同じA9プロセッサを登場するiPhone 6sは、2018年モデルのiPhoneが登場する際にラインアップから姿を消すことが考えられるが、iPhone SEが引き続きラインアップに残されるのであれば、次期iOSに向けた性能向上が必要となる。

例えば、iPhone 7と同じA10 Fusionや、iPhone 8と同じA11 Bionicプロセッサを搭載したモデルへと刷新されることを期待している。

A11 Bionicプロセッサの搭載を期待

iPhone SEは、日本でも端末価格の安さから格安SIMとの組み合わせで人気を集めているものの、iPhone 7以降対応している日本での店頭や改札でのApple Payにはまだ対応していない。

今年刷新することで、アップルがこれまで苦手だった低価格帯のスマートフォンを求めるユーザーに訴求することができるようになり、販売台数の向上を目指す上で重要な施策となるだろう。

iPad、Macは引き続き現在の路線を堅持

前述の通り、iPadとMacについては、2017年の再生策が奏功しており、これを継続していくことになる。

新型iPad Pro

Macについては、引き続き、素早い最新スペックの製品投入を行っていくことになるほか、年始に報じられたiOSアプリとmacOSアプリの統合によって、iPhoneやiPadのユーザーがよりMacを利用しやすくする環境整備に取り組んでいくことになるのではないだろうか。

またiPadについては、2017年は廉価版の需要に十分応えられたことで販売台数を回復したが、平均販売価格の定価を招いていた。すでに年末年始から日本でも「What’s a computer」というコマーシャルを放映しており、iPad Proがコンピュータの代替として認知されるようプロモーションを開始している。

iPadの成否は、iPad Proがその販売における存在感を示し、結果として平均販売価格が上昇していくかどうかにかかっている。ただ、Chromebookや2-in-1 PCなどは価格競争力の上で勝っており、引き続き厳しい戦いが予想される。

サービス部門で狙う次のターゲットは?

アップルはサービス部門の売上高を順調に成長させている。2017決算年度の売上高299億8000万ドルで、Fortune 100企業の規模を達成している。

このカテゴリは主にApp Storeでの売上が多くを占めており、iPhoneユーザーの拡大と、継続利用するユーザーが増えれば増えるほど、App Storeでのアプリ購買や定期購読料が伸び、売上高が拡大していく構造だ。

ここで、前述の通り、スマートフォンの販売が飽和を向かえてくると、新規ユーザー増加による売上拡大が見込みにくくなっていく。

そのため、アップルは、アプリ開発者に対して定期購読型の課金プラットホームを開放し、しかも1年以上継続しているユーザーからの収益は、手数料をこれまでの30%から15%に割り引く施策を採った。

開発者は、売り切り型のアプリ販売ビジネスから購読型ビジネスに移行することで、より多くの収益を安定的に得られるようになる。アップルからすれば、既存のユーザーが長くアプリを使えば、継続して手数料収入が得られるようになる。開発者へのインセンティブを与えつつ、App Storeのビジネスモデルを緩やかに変更しようとしているのだ。

この購読モデルが狙っている大きな市場は、米国におけるテレビ市場だ。現在、「コードカッティング」と言われるケーブルテレビや衛星放送の解約の流れが続いており、その受け皿はこれまで、多様なコンテンツを配信するNetflixやHulu、Amazon Primeが担ってきた。

しかしHBO Nowなど、ケーブルチャンネルがアプリをリリースして独自に集客をスタートさせているほか、Disneyもアプリによるストリーミングへの参入を表明している。今後コードカッティングから、複数のストリーミングサービスの加入という新しい視聴スタイルへと移行する際、アップルはそのプラットホームとして存在感を示していこうとしているのだ。

アップルはすでに米国市場から、「TV」アプリを導入し、複数あるストリーミングサービスを束ねた「番組表」のようなアプリを、Apple TVやiPhone、iPadに導入した。放送、エンタテインメント市場でのプラットホーム化は、アップルのサービス部門における次の成長の源泉として、注目している。

トランプ政権と上手くやっていけるか

アップルに限らずシリコンバレー企業は、そのビジネスや思想的に、トランプ政権の政策と対立しがちだ。環境政策、移民政策、税制問題など、主要な政策での対立は、シリコンバレーでの成長と無縁だった米国の人々がトランプ大統領を支持しているという構造的な問題にもつながる。

そうした中で、アップルは、税制改革による資金の米国環流のメリットを得つつ、トランプ大統領が目指す製造業の米国回帰に、同社に意味がある形で応えていこうとしている。 2017年、アップルは先端製造業ファンドを立ち上げ、すでに米国企業への投資を実施している。米国内での投資と雇用創出をアピールすることが狙いではあるが、iPhoneなどで利用されているガラスを製造するコーニングや、光学技術企業への投資は、同社の未来の製品に直結している。

今後、プロセッサやディスプレイなどの製品の主要パーツが米国内での生産に移されたり、Mac Pro以外のなんらかの製品を米国内で組み立てる施策を打ち出すこともあり得るだろう。そうした政治との関わりについても、興味深いテーマであり続ける。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。