ソニーとパナソニック、CES 2018に見る「目指す未来」の違い

ソニーとパナソニック、CES 2018に見る「目指す未来」の違い

2018.01.18

米ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2018は、いよいよ「家電見本市」という表現が当てはまらなくなってきた。新聞各紙の報道も、引き続き「家電見本市」という媒体がある一方、「家電・IT見本市」、「テクノロジーイベント」などといった表現を用いる例があった。

実際、家電は主役の一角を担うものの、主要な自動車メーカーの出展により、自動運転時代を見据えた展示が目立ったほか、GoogleやAmazonの音声アシスタントをはじめとするAI機能活用や、ロボティクス、ドローンに関する展示が増加。ヘルスケアやIoT、ウェアラブル、スマートシティに関する展示など、内容は多岐に渡った。

CESの主催者であるCTA(Consumer Technology Association=全米民生技術協会)は、2016年から、かつてのCEA(Consumer Electronics Association=全米家電協会)から名称を変更。エレクトロニクスからテクノロジーへと主軸を移した同協会の立ち位置を明確に示したイベントになったともいえるだろう。

また、3900社以上の出展のうち、約1700社が中国企業というように、米国における展示会ではあるが、中国という新たな勢力が台頭していることを感じさせるものとなった。では、日本企業はどうなのか。

トヨタ自動車も出展
中国メーカーの進出も目立った

ソニーのDNAは「コンシューマ製品の強さ」

CESにおいて、日本企業の主役の座を長年担っているソニーとパナソニックの2社が展示した内容は、これまで以上に対照的だった。それは、両社社長の発言一つとってもそうだ。

ソニー 代表執行役 社長 兼 CEOの平井 一夫氏は、「コンシューマエレクトロニクス領域において、さらなるイノベーションを追求すること、そして、新たな事業への挑戦という2点を展示の軸にした」と語っていた。一方でパナソニックの代表取締役社長である津賀 一宏氏は「他社のブースには、もっとBtoBが並んでいるのかと思ったがそうでもなかった。パナソニックだけが家電の展示がなかったことには驚いた」と話す。

ソニー 代表執行役 社長 兼 CEO 平井 一夫氏

平井氏は、CES 2018の会場における共同インタビューでも、「お客様に直接お届けするコンシューマ製品をいかに強くしていくかが、ソニーのDNAであり、一番得意としているところである。コンシューマビジネスを大事にしていくことが私の強い意志である」と語っていた。

その言葉を裏付けるように、ソニーブースでは、コンシューマ製品が目白押しだった。例年通りに、ブース入口で最新のテレビを展示したほか、デジタルカメラやヘッドフォン、日本のみ発売されているaiboを米国で初公開するなど、数多くの最新コンシューマ製品を展示した。

有機ELテレビでは、55型/65型の「BRAVIA A8Fシリーズ」を展示。高画質プロセッサ「X1 Extreme」によって、有機ELパネルの特長を大限に引き出した深い黒や明るさを表現するほか、画面自体を振動させて音を出力する「アコースティック サーフェス」を採用し、映像そのものから音が聴こえるような臨場感を実現している。

活況のソニーブース
米国市場で今年5月に投入予定のBRAVIA A8Fシリーズ

また、高画質化への取り組みでは、次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を参考展示。前述のX1 Extremeと比較して、約2倍のリアルタイム画像処理能力を実現した上、液晶/有機ELのパネルの違いを乗り越えてそれぞれの特長を引き出し、高レベルの画質を実現できるという。

これに加えてブース内では、4K有機ELディスプレイと8K液晶ディスプレイによるデモストレーションを行った。8Kでも独自の画像処理技術とバックライト技術を組み合わせて、HDRフォーマットの最高値である10,000nitsの超高ピーク輝度を表現するなど、X1 Ultimateが実用段階にあることを示した。

さらに、ヘッドフォンではワイヤレス ノイズキャンセリング ステレオヘッドセット「WF-SP700N」を展示。左右独立型ヘッドフォンとして世界初となるIPX4の防滴対応を実現したスポーツシーン向けのもので、アークサポーターの採用により、重心位置を工夫した設計で高い装着安定性を実現している。国内でも発売する予定だ。

参考展示した8Kディスプレイ。HDRフォーマットの上限である1万nitsのピーク輝度を達成している
WF-SP700Nは昨今人気を集める左右独立型ヘッドフォンだ

海外でも人気の「aibo」

一方、苦戦が伝えられているスマートフォンの「Xperia」だが、ミッドレンジモデルとなる「Xperia XA2 Ultra」を公開した。6.0型フルHDディスプレイや約2300万画素のメインカメラを採用したほか、フロント部に手ブレや暗所に強い1600万画素の高精細カメラと、大人数を写せる約120度の超広角の800万画素セルフィーカメラの二眼を搭載した。

また、新機軸コンセプトの製品を投入するLife Space UXからは、4K超短焦点プロジェクター「LSPX-A1」を展示し、注目を集めていた。人工大理石の天面に加えて、木目調の棚を採用することで、家具のように居住空間になじむ佇まいを実現。壁面に置くだけで最大120型の4K HDR 大画面を壁に投射できる。

Xperia XA2 Ultra
4K超短焦点プロジェクター「LSPX-A1」

だが、目玉として海外メディアから特に高い関心を集めていたのが「aibo」だ。

海外における展示は今回が初めてで、平井氏は「海外でも、一度は本物を見てもらい、様々なコメントを得たいと感じた」とその狙いを語る。というのも、ソニー本社で開発し、ソニー本社の日本人エンジニアが開発した製品がaiboだ。「日本人の目で見ているから可愛いものなのか、それとも米国人や中国人にとっても可愛いと思ってもらえるのかといったリアクションを知りたいという目的もあった」というのだ。

まずは日本の需要を優先し、台数が確保できるようになった段階で海外展開を目指すと平井氏。aiboは部品点数が多く、製造に時間がかかる商品のため時間がかかるとして「ちょっと時間はかかるが、確実に供給できることを前提に発売することが、お客様にとって一番不利益にならない形での市場投入になると考えている」(平井氏)。

海外初お披露目となったaibo

過去最高益を目指す今のソニーの勢いを表すように数多くの製品を展示したソニーだが、平井氏はこの攻勢ぶりを「これらは、KANDO(感動) at Last One Inchを実現する製品を展示した」と表現する。

そうした中で唯一、B2B領域で展示したものが「車載向けイメージセンサー」だ。平井氏は、プレスカンファレンスで、トヨタと日産、デンソー、ボッシュ、ヒュンダイ、KIA、NVIDIA、モービルアイとパートナーシップを組んだことを公表した。展示コーナーでは、高解像度、高感度、ハイダイナミックレンジの技術デモを行っており、自動運転社会の到来に向けた技術力の高さをアピールした。

平井氏は、車載向けイメージセンサーへの取り組みを、「人間の目を超えるセンシング能力を持つソニーの高性能なイメージセンサーを、クルマの目として高度な完全自動運転社会の実現に貢献したいと考えている」と話す。ただし、ソニー自身がクルマづくりに直接参入するのではなく、あくまで「イメージセンサーの技術で、自動運転の領域で貢献していくことになる」(平井氏)という。

とはいえ、単なる部品屋という立ち位置に収まる気もないようで、「単純にイメージセンサーだけを供給するのではなく、その技術にプラスαとなるソニーならではの付加価値を提供するビジネスモデルを確立したい」(平井氏)とも語っていた。カメラ事業などで培った各種認識技術などの応用を目指していくものとみられる。

唯一の共通事項は「自動車産業」

一方のパナソニックは、3月に創業100周年を迎えることもあり、記念展示として第1号家電製品とともに最新家電製品を展示。また、未来の住空間環境プロジェクト「HOME X」のコンセプト展示も行っていたのだが、一般的な家電メーカーが行う商品紹介を主軸とする家電の展示はメインブースで一切行わず、ホテルに確保した別会場に招待者だけを招いて公開した。

こうしたパナソニックの姿勢の変化は、2013年1月に行われたCESの基調講演で津賀氏自身がB2Bシフトを鮮明にしてから一貫している。

「パナソニックは、テレビだけの会社ではなく、B2Bへ全面的にシフトし、さまざまなパートナーとともに、顧客の生活するスペースでお役立ちする道を広げていくことを話した。その中核になる技術やモノづくり力は家電で培ってきたものだが、パナソニックブースからは、できるだけ家電製品を減らしていくことに取り組んできた」(津賀氏)

コンシューマにこだわり続けるソニーと、B2Bにシフトしたパナソニック。日本を代表する2社だが、その方向性の違いは明らか。

ソニーの平井氏は、「電機メーカー各社は、以前は同じ方向を向いてCESに出展していたが、ソニーにはソニー独自のやり方があり、他社には他社のやり方があるということが明確になった。自分たちが持っている資産をどう有効活用するかを徹底的に考えると、すべての企業が同じ方向にいくわけがない。進むべき道が変わってくるのはいいことである」とする。

パナソニック 代表取締役社長 津賀 一宏氏

パナソニックの津賀社長も、「CESには、自動車メーカーをはじめとして様々な業種の企業が出展し、スタートアップ企業の出展も増加している。CESの主催者であるCTAのゲーリー・シャピロCEOと話をしたが、業界の変化が起きており、CESもそれに伴って変化していることを強調していた」とする。

しいて言えば、津賀氏が「メインブースではB2Bやオートモーティブの展示」とあえて「オートモーティブ」と切り出したように、自動車産業への姿勢は共通している。エレクトロニクスの既存カテゴリがレッドオーシャン化する中で、新規領域をどう開拓していくのかという点で魅力的な領域がここ、ということなのだろう。

家電見本市から脱却する方向がより鮮明になったのが、今年のCES 2018。それは日本の電機メーカーの出展内容だけを見ても明確だ。各社が各社の得意分野を「テクノロジー」の観点から打ち出す展示会へと変化している。日本を代表する大手電機2社の展示は、まさにCESの多様性と広がりを象徴するものだといっていいだろう。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。