Amazon Goの上を行くパナソニックの秘蔵っ子「レジロボ」の勝算

Amazon Goの上を行くパナソニックの秘蔵っ子「レジロボ」の勝算

2018.01.18

社会発展、社会貢献を経営理念とするパナソニックにとって、そしてB2Bソリューションを強化するパナソニックにとって、日本が抱える社会課題の解決は「やらなければならない」ものだろう。

2017年2月、パナソニックはローソンと共同で完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験を行った。

なぜコンビニのレジを自動化するロボットが社会課題の解決に繋がるのか。パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 小売・物流システムビジネスユニットのビジネスユニット長であり、取締役の足立 秀人氏に話を聞いた。

パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 小売・物流システムビジネスユニット ビジネスユニット長 取締役 足立 秀人氏

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

コンビニ VS Amazon

「レジロボ」は、コンビニエンスストアにおけるレジ業務の自動化を担う。現在流通しているさまざまな商品はバーコード(JANコード)を読み取ることで商品名や値段を取得できるが、レジロボではこれを電子タグのRFIDに置き換え、商品の向きなどに関わらず近距離無線通信で簡単に読み取れるようにした。これにより、かごを置くだけで決済から袋詰めまで、ロボットがスムーズにこなしてくれるようになる。

レジロボ
袋詰めが自動的に行われ、利用者はそのまま袋を持ち上げるだけで良い

ローソンとパナソニックの協業、両社のコーポレートカラーから「BLUEプロジェクト」と名付けられたこのプロジェクトは、4年前にスタートした。さまざまな議論を行った両社だが、特にコアとなる技術の内のひとつがレジのロボット…ではなくRFIDだ。

RFIDを利用したレジロボの実証実験が行われた2カ月後、2017年4月に経済産業省が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定した。というのも、RFIDを商品に埋め込むには、パナソニック、あるいはローソン単体だけではとうてい無理な話。調達から生産、物流、流通、販売というサプライチェーンの上流から下流まで、すべてのプレイヤーが参画しなくてはならないのだ。

レジロボでの精算は3ステップ。ポイントとなるのは各商品に添付されたRFID(画像内右側中央部)

特に危機感を抱いているのがローソンなどのコンビニだ。コンビニは大手三社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)がそれぞれ1~3万店舗を全国に展開している。1店舗あたりに必要なスタッフは24時間体制に対して20名程度と言われているが、昨今の人手不足や人件費の高騰から、満足に雇うことが出来ない。

さらに頭を悩ます要素が「少子化」「自動化」の波だ。コンビニの働き手は若年層と主婦層だが、主婦層はただでさえ共働きなどでコンビニのアルバイトへの定着が難しく、若年層は少子化によって担い手が減っている。三大都市圏では、留学生などの外国人が多く採用されているものの、担い手の主力としてはカウントしづらい。

一方の自動化は、話題となった米Amazon.comの「Amazon Go」が日本の産業界にとって、ライバルと言える。

もし日本にこの"黒船"がやってきたとしても、「コンビニのきめ細かな生産、物流、流通ネットワークがあるから問題ない」と思いたいところだが、少なくともECサイトでは、日本企業を超えるのも時間の問題とまで言われるまで成長した。物流拠点は共通化できるため、"万が一"が万が一でない可能性も十分にある。

カギを握るRFIDは、Amazon Goでは採用されていない。というのも、彼らはクラウド基盤の「AWS」で培った画像認識技術によって、ユーザーが購入する商品を特定する腹づもりなのだ。しかし足立氏は「画像認識では、同じ商品のどの個品が売れたのか判別できず、トレーサビリティに課題がある」と話す。RFIDはサプライチェーンが求める個品管理要求に対して柔軟に対応できる、「産業界のニーズ」に即した仕様というわけだ。

このニーズは、リアル店舗で接点を長年持ち続けているコンビニ業界だからこその視点。彼らが課題としているのは「サプライチェーンの効率化」であって、「巨大ECサイトの中間管理コストの最適化」ではない。Amazon自身、そうした認識のズレを感じたからこそ、1兆円を超える金額で米大手スーパー「Whole Foods Market」を買収したのではないかと言われている。

「レジロボ」の真の狙いはサプライチェーンの効率化だが、これにはRFIDだけでなく、「AI」や「IoT」といったバズワードも加えたプラットフォーム化が重要になると足立氏は説く。

効率化された「次世代サプライチェーン」は、調達から生産、物流、流通、販売のすべてをひと繋ぎにする可能性を持った"ソリューション"となる。個品管理によってデータの粒度は細かくなるが、これをビッグデータとしてAIに分析させれば、これまで見えてこなかったデータが可視化される。

レジロボの進化の方向性。棚管理もできるスマートシェルフや万引き防止ゲートなどを組み合わせたソリューションを展開する
次世代サプライチェーン

「上流から下流まで」とはよく言ったものだが、プライベートブランドの展開ですべてを司る存在となったコンビニとって、すべてのデータを持ち合わせていることは最終的に「あなたのためのコンビニ」を作れることになる。

その一例として、足立氏ら"BLUEプロジェクト"が構想するのは、個客に合わせたカスタマイズ商品だ。例えば、朝にネット経由で自分の好きな野菜を入れたサラダを注文しておけば、植物工場からカスタマイズされたサラダが作られ、昼にはコンビニエンスストアのロッカーに届いて購入できるというサービスだ。個人への最適化だけでなく、在庫ロス、物流ロス、廃棄ロスのない、すべてのステークホルダーにメリットのあるシステムになるのだ。

また、人の手を介さずにIoTの形でロボット、スマートシェルフなどが稼働する時代になれば、人がいなくても対応できる本格的な"省人化"の時代が到来する。「人が要らない」はネガティブに映るが、人口減少社会の日本にとって、労働集約的な業務の機械化は願ったり叶ったり。むしろ高度人材に少ない人口資源を集中できるのであれば、まさに「社会課題の解決」に繋がるものと言っていい。

とはいえ、こうした取り組みは一朝一夕で成し遂げられない。10年後、いや、下手したら30年後の未来かもしれない。さらに言えば、パナソニック1社でサプライチェーン全体の管理など、実現できるはずがない。もちろん、足立氏もその点は認めており、さまざまな企業などが協力してプラットフォームを作り、「日本の産業としてしっかり育てる必要がある」と話す。

例えば、2017年7月にロボット技術のスキューズ社と業務提携したのも、その一環だ。スキューズ社は食品工場などのロボットを製造しており、足立氏は「製造の末端であり、物流の起点。個品管理のタッチポイントとなる存在で、彼らとの提携は第一歩だ」と語る。

パナソニックは自前でもロボットを抱えているが、業界横断ソリューションとして捉えた時、必ずしも自前主義は必要ない。むしろ、バックエンドシステムの作り込みとハードウェアの協調が可能なプレイヤーが少ないため、双方を抱えるパナソニックはプラットフォーマーになれる下地がある。プラットフォーマーになるのであれば、ハードウェアにこだわっていてはダメというのが足立氏の見立てだ。

各タッチポイントでキラーエッジデバイスが情報を収集してデータを分析、解析する

さらに一歩踏み込むと、プラットフォーマーとして地位を確立すれば、ハードウェアの販売も容易になる。Amazonがスマートスピーカーの「Amazon Echo」やタブレット端末の「Amazon Kindle」などの端末を格安で販売しているように、B2Bでも同じモデルを構築できる可能性がある。

情報基盤の上流で得られたデータや利益を循環させていく「Amazonモデル」を、すでに決済端末や搬送ロボットで一定のポジションを築いているパナソニックがサプライチェーンに適用していく。これが彼らのシナリオと言えるかも知れない。

グローバルで戦うために必要なこと

パナソニックや産業界が、こうした次世代サプライチェーンを推し進める背景には、米国や中国などの巨大市場を背景に資本・技術を蓄えるプレイヤーへの危機感があると足立氏は説く。特に気を抜けないのが中国だ。昨秋、足立氏は出張で中国に足を運んだが、「Amazon Goより、中国ですでに稼働している無人小売店の方が進んでいて驚いた」(足立氏)。

さらに言えば、テクノロジー全般に対する姿勢自体が前のめりであり、「これからも進化してくると思う。AIやロボットなど、さまざまな最新技術のキャッチアップが日本企業よりも遥かに早い」と足立氏は警鐘を鳴らす。それはパナソニック自身においても課題となっており、足立氏は「商品化スピードがまだまだ遅い。品質管理は私たちのビジネスにとって重要だが、彼らのスピードに対抗するためにも、これまでのノウハウをフルに活かして簡素化しなければならない」と語る。

そこで大きな存在になるのが社長の樋口氏。樋口氏は「とにかく決断が早い。早すぎると言っても良い(笑)」(足立氏)。とは言え、やたらめったら判断しているのではなく、松下電器産業からHP、ダイエー、マイクロソフトそして再びパナソニックに戻ってきた経験から培った「目利き力があるからだと思う」(足立氏)。だからこそ、開発プロセスの短縮を実現できるのでは、と足立氏は期待を寄せる。

次世代サプライチェーンに向けた取り組みを続ける足立氏は、東京五輪が行われる2020年に、訪日外国人が「Wow」と声を上げるようなソリューションの開発を進めているという。「人手不足や安心安全など(の課題)をすべて解決したい」と意気込むが、日の丸を背負うサプライチェーンの代表選手となれるか。この取り組みは緒に就いたばかりだ。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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