ドコモの「d払い」でキャッシュレス化は進むか

ドコモの「d払い」でキャッシュレス化は進むか

2018.01.18

NTTドコモは17日、2018年4月より新たな決済サービス「d払い」を提供すると発表した。これまでネットショップなどオンラインでの利用に制限されていた電話料金合算払い(ドコモのケータイ払い)がリアル店舗でも使用可能になる。とりわけドコモ契約者の利便性を高めたサービスとなるが、キャッシュレス化は進むだろうか。

写真左:ローソン執行役員 マーケティング本部長の野辺一也氏、写真右:NTTドコモの執行役員 プラットフォームビジネス推進部長の前田義晃氏

d払いとは

「d払い」はスマーフォンアプリを利用して、d払い加盟店においてキャッシュレスでの買い物ができるサービスだ。使い方は次のような流れとなる。

店員が商品のバーコードを読み取る。次に利用者が「d払い」アプリの画面を提示する。画面にはバーコードとQRコードが表示されており、店員がそれを決済端末で読み込む。これで決済が完了する。支払いは電話料金合算払い(ドコモのケータイ払い)ほか、クレジットカードにも対応する。

注目したいのは、電話料金合算払いの部分だ。これまで、電話料金合算払いはオンラインでの利用に制限されていたが、d払いではリアル店舗での利用が可能となる。電話料金合算払いでは、銀行引き落としによる支払方法を選択する人もおり、クレジットカードの利用に強い抵抗感を抱く人向けのスマートな決済方法になると言えそうだ。

電話料金合算払いはドコモ契約者の向けのサービスとなるが、クレジットカードでの支払いも用意されており、他のキャリアを利用していても本サービスを利用することができる。ある意味、クレジット決済を前提に考えれば、「iD」の利用といった従来法とさして変わらない面が大きい。

そういう側面がありつつも、NTTドコモの執行役員 プラットフォームビジネス推進部長の前田義晃氏は「クレジットカードでは敬遠されがち。今まで敬遠されてきた方々にも受け入れてもらえるのでは」と今回の狙いについて語る。

しかし、ドコモの決済サービスに詳しい人だと、さらなるツッコミが出る。ドコモにはすでに電話料金合算払いが可能かつ「iD」マークのあるリアル店舗で使える「dカード mini」があるからだ。

ドコモの狙いはどこに?

そこを考慮すると「d払い」は今までにないユーザーメリットを提供するものではない。ユーザーへの新たな選択肢を用意し、キャッシュレス化の普及とユーザーの利便性を高めるというところに主眼が置かれたサービスとなる。一部サービス内容が重複使用しようとも、ドコモ側に大きなメリットがあったとも見ることができそうだ。

ドコモにとっての旨みは、決済に伴う手数料収入だ。この手数料収入は利用回数が増えるほど増えていく。利用の増加には導入店舗を増やす必要があり、店舗側に決済端末を用意しなければならない。

この点において、今回のサービスでは、コストのかかる決済端末の導入がなくとも幅広く対応できるようになったというのもクローズアップすべきポイントだ。導入コストの低下により、サービスの普及が見込みやすいのだ。「d払い」ではバーコード、QRコードが読み取れれば、決済処理が行なえる。店舗側の設備負担が少ないというわけである。

店舗側にもメリットはある。たとえばコンビニ。発表会に登壇したローソン執行役員 マーケティング本部長の野辺一也氏によると、早朝や昼時など込み合う時間帯では、レジ前に人が並んでしまうという。キャッシュレス化を進めることで、作業はスムーズになり、込み合うことによる売上逸失を回避することもできるとする。

ローソンではこれまでもキャッシュレス化に取り組んできたものの現金払いは全体の8割とまだまだ多く、d払いのようなキャッシュレス化に対する期待は大きいようだ。

「モバイル決済 for AirREGI」を活用することで小規模店舗でも手軽に導入が可能なようだ

購買履歴の活用という旨み

ドコモにとっての狙いはもうひとつある。それは購買履歴の有効活用だ。これからはデータの利活用がビジネスを大きく左右する要素となりそうだが、ドコモは利用者の承諾を取ったうえで、すでにこうしたデータの活用を進めている。

具体的には、個々に応じた商品リコメンドや、ある一定の条件、たとえば「30代男性で商品Aを購入した人」などといった条件をもとに、対象者をピックアップしマーケティング施策を打つなどといったものだ。

ドコモでは決済情報に限らず、様々な生活サービスを提供しており、そうしたデータも活用することで、精緻なマーケティングに生かしていくことも可能だという。今回の取り組みは、扱えるデータの量を増やし、こうしたビジネス上のメリットも大きく見えてくる。

ビジネスメリットを最大化するには、まずは加盟店を増やすことが先決。現在ローソン、マツモトキヨシなど10社19000店での取り扱いを予定しており、想起に10万店以上の展開を目指していくという。キャッシュレス化を進めるにはまずはインフラの整備から。その障壁を減らしたのが今回のサービスとなるが、利用加盟店を増やすには他のサービスとの手数料率の差にも目を向けていく必要があるだろう。

後は利用者が増えるか、である。利用者の立場に立てば、「iD」との違いがわかりにくいといった側面も気になるが、ユーザーに対してどれだけポイント付与率など魅力に見せられるかにもかかっていく(ポイントは加盟店手数料にオンされ最終的にはこの部分の舵取りが重要なようだ)。果たして、目算どおりに普及していくだろうか。

Amazon Goの上を行くパナソニックの秘蔵っ子「レジロボ」の勝算

Amazon Goの上を行くパナソニックの秘蔵っ子「レジロボ」の勝算

2018.01.18

社会発展、社会貢献を経営理念とするパナソニックにとって、そしてB2Bソリューションを強化するパナソニックにとって、日本が抱える社会課題の解決は「やらなければならない」ものだろう。

2017年2月、パナソニックはローソンと共同で完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験を行った。

なぜコンビニのレジを自動化するロボットが社会課題の解決に繋がるのか。パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 小売・物流システムビジネスユニットのビジネスユニット長であり、取締役の足立 秀人氏に話を聞いた。

パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 小売・物流システムビジネスユニット ビジネスユニット長 取締役 足立 秀人氏

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

コンビニ VS Amazon

「レジロボ」は、コンビニエンスストアにおけるレジ業務の自動化を担う。現在流通しているさまざまな商品はバーコード(JANコード)を読み取ることで商品名や値段を取得できるが、レジロボではこれを電子タグのRFIDに置き換え、商品の向きなどに関わらず近距離無線通信で簡単に読み取れるようにした。これにより、かごを置くだけで決済から袋詰めまで、ロボットがスムーズにこなしてくれるようになる。

レジロボ
袋詰めが自動的に行われ、利用者はそのまま袋を持ち上げるだけで良い

ローソンとパナソニックの協業、両社のコーポレートカラーから「BLUEプロジェクト」と名付けられたこのプロジェクトは、4年前にスタートした。さまざまな議論を行った両社だが、特にコアとなる技術の内のひとつがレジのロボット…ではなくRFIDだ。

RFIDを利用したレジロボの実証実験が行われた2カ月後、2017年4月に経済産業省が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定した。というのも、RFIDを商品に埋め込むには、パナソニック、あるいはローソン単体だけではとうてい無理な話。調達から生産、物流、流通、販売というサプライチェーンの上流から下流まで、すべてのプレイヤーが参画しなくてはならないのだ。

レジロボでの精算は3ステップ。ポイントとなるのは各商品に添付されたRFID(画像内右側中央部)

特に危機感を抱いているのがローソンなどのコンビニだ。コンビニは大手三社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)がそれぞれ1~3万店舗を全国に展開している。1店舗あたりに必要なスタッフは24時間体制に対して20名程度と言われているが、昨今の人手不足や人件費の高騰から、満足に雇うことが出来ない。

さらに頭を悩ます要素が「少子化」「自動化」の波だ。コンビニの働き手は若年層と主婦層だが、主婦層はただでさえ共働きなどでコンビニのアルバイトへの定着が難しく、若年層は少子化によって担い手が減っている。三大都市圏では、留学生などの外国人が多く採用されているものの、担い手の主力としてはカウントしづらい。

一方の自動化は、話題となった米Amazon.comの「Amazon Go」が日本の産業界にとって、ライバルと言える。

もし日本にこの"黒船"がやってきたとしても、「コンビニのきめ細かな生産、物流、流通ネットワークがあるから問題ない」と思いたいところだが、少なくともECサイトでは、日本企業を超えるのも時間の問題とまで言われるまで成長した。物流拠点は共通化できるため、"万が一"が万が一でない可能性も十分にある。

カギを握るRFIDは、Amazon Goでは採用されていない。というのも、彼らはクラウド基盤の「AWS」で培った画像認識技術によって、ユーザーが購入する商品を特定する腹づもりなのだ。しかし足立氏は「画像認識では、同じ商品のどの個品が売れたのか判別できず、トレーサビリティに課題がある」と話す。RFIDはサプライチェーンが求める個品管理要求に対して柔軟に対応できる、「産業界のニーズ」に即した仕様というわけだ。

このニーズは、リアル店舗で接点を長年持ち続けているコンビニ業界だからこその視点。彼らが課題としているのは「サプライチェーンの効率化」であって、「巨大ECサイトの中間管理コストの最適化」ではない。Amazon自身、そうした認識のズレを感じたからこそ、1兆円を超える金額で米大手スーパー「Whole Foods Market」を買収したのではないかと言われている。

「レジロボ」の真の狙いはサプライチェーンの効率化だが、これにはRFIDだけでなく、「AI」や「IoT」といったバズワードも加えたプラットフォーム化が重要になると足立氏は説く。

効率化された「次世代サプライチェーン」は、調達から生産、物流、流通、販売のすべてをひと繋ぎにする可能性を持った"ソリューション"となる。個品管理によってデータの粒度は細かくなるが、これをビッグデータとしてAIに分析させれば、これまで見えてこなかったデータが可視化される。

レジロボの進化の方向性。棚管理もできるスマートシェルフや万引き防止ゲートなどを組み合わせたソリューションを展開する
次世代サプライチェーン

「上流から下流まで」とはよく言ったものだが、プライベートブランドの展開ですべてを司る存在となったコンビニとって、すべてのデータを持ち合わせていることは最終的に「あなたのためのコンビニ」を作れることになる。

その一例として、足立氏ら"BLUEプロジェクト"が構想するのは、個客に合わせたカスタマイズ商品だ。例えば、朝にネット経由で自分の好きな野菜を入れたサラダを注文しておけば、植物工場からカスタマイズされたサラダが作られ、昼にはコンビニエンスストアのロッカーに届いて購入できるというサービスだ。個人への最適化だけでなく、在庫ロス、物流ロス、廃棄ロスのない、すべてのステークホルダーにメリットのあるシステムになるのだ。

また、人の手を介さずにIoTの形でロボット、スマートシェルフなどが稼働する時代になれば、人がいなくても対応できる本格的な"省人化"の時代が到来する。「人が要らない」はネガティブに映るが、人口減少社会の日本にとって、労働集約的な業務の機械化は願ったり叶ったり。むしろ高度人材に少ない人口資源を集中できるのであれば、まさに「社会課題の解決」に繋がるものと言っていい。

とはいえ、こうした取り組みは一朝一夕で成し遂げられない。10年後、いや、下手したら30年後の未来かもしれない。さらに言えば、パナソニック1社でサプライチェーン全体の管理など、実現できるはずがない。もちろん、足立氏もその点は認めており、さまざまな企業などが協力してプラットフォームを作り、「日本の産業としてしっかり育てる必要がある」と話す。

例えば、2017年7月にロボット技術のスキューズ社と業務提携したのも、その一環だ。スキューズ社は食品工場などのロボットを製造しており、足立氏は「製造の末端であり、物流の起点。個品管理のタッチポイントとなる存在で、彼らとの提携は第一歩だ」と語る。

パナソニックは自前でもロボットを抱えているが、業界横断ソリューションとして捉えた時、必ずしも自前主義は必要ない。むしろ、バックエンドシステムの作り込みとハードウェアの協調が可能なプレイヤーが少ないため、双方を抱えるパナソニックはプラットフォーマーになれる下地がある。プラットフォーマーになるのであれば、ハードウェアにこだわっていてはダメというのが足立氏の見立てだ。

各タッチポイントでキラーエッジデバイスが情報を収集してデータを分析、解析する

さらに一歩踏み込むと、プラットフォーマーとして地位を確立すれば、ハードウェアの販売も容易になる。Amazonがスマートスピーカーの「Amazon Echo」やタブレット端末の「Amazon Kindle」などの端末を格安で販売しているように、B2Bでも同じモデルを構築できる可能性がある。

情報基盤の上流で得られたデータや利益を循環させていく「Amazonモデル」を、すでに決済端末や搬送ロボットで一定のポジションを築いているパナソニックがサプライチェーンに適用していく。これが彼らのシナリオと言えるかも知れない。

グローバルで戦うために必要なこと

パナソニックや産業界が、こうした次世代サプライチェーンを推し進める背景には、米国や中国などの巨大市場を背景に資本・技術を蓄えるプレイヤーへの危機感があると足立氏は説く。特に気を抜けないのが中国だ。昨秋、足立氏は出張で中国に足を運んだが、「Amazon Goより、中国ですでに稼働している無人小売店の方が進んでいて驚いた」(足立氏)。

さらに言えば、テクノロジー全般に対する姿勢自体が前のめりであり、「これからも進化してくると思う。AIやロボットなど、さまざまな最新技術のキャッチアップが日本企業よりも遥かに早い」と足立氏は警鐘を鳴らす。それはパナソニック自身においても課題となっており、足立氏は「商品化スピードがまだまだ遅い。品質管理は私たちのビジネスにとって重要だが、彼らのスピードに対抗するためにも、これまでのノウハウをフルに活かして簡素化しなければならない」と語る。

そこで大きな存在になるのが社長の樋口氏。樋口氏は「とにかく決断が早い。早すぎると言っても良い(笑)」(足立氏)。とは言え、やたらめったら判断しているのではなく、松下電器産業からHP、ダイエー、マイクロソフトそして再びパナソニックに戻ってきた経験から培った「目利き力があるからだと思う」(足立氏)。だからこそ、開発プロセスの短縮を実現できるのでは、と足立氏は期待を寄せる。

次世代サプライチェーンに向けた取り組みを続ける足立氏は、東京五輪が行われる2020年に、訪日外国人が「Wow」と声を上げるようなソリューションの開発を進めているという。「人手不足や安心安全など(の課題)をすべて解決したい」と意気込むが、日の丸を背負うサプライチェーンの代表選手となれるか。この取り組みは緒に就いたばかりだ。

ソニーとパナソニック、CES 2018に見る「目指す未来」の違い

ソニーとパナソニック、CES 2018に見る「目指す未来」の違い

2018.01.18

米ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2018は、いよいよ「家電見本市」という表現が当てはまらなくなってきた。新聞各紙の報道も、引き続き「家電見本市」という媒体がある一方、「家電・IT見本市」、「テクノロジーイベント」などといった表現を用いる例があった。

実際、家電は主役の一角を担うものの、主要な自動車メーカーの出展により、自動運転時代を見据えた展示が目立ったほか、GoogleやAmazonの音声アシスタントをはじめとするAI機能活用や、ロボティクス、ドローンに関する展示が増加。ヘルスケアやIoT、ウェアラブル、スマートシティに関する展示など、内容は多岐に渡った。

CESの主催者であるCTA(Consumer Technology Association=全米民生技術協会)は、2016年から、かつてのCEA(Consumer Electronics Association=全米家電協会)から名称を変更。エレクトロニクスからテクノロジーへと主軸を移した同協会の立ち位置を明確に示したイベントになったともいえるだろう。

また、3900社以上の出展のうち、約1700社が中国企業というように、米国における展示会ではあるが、中国という新たな勢力が台頭していることを感じさせるものとなった。では、日本企業はどうなのか。

トヨタ自動車も出展
中国メーカーの進出も目立った

ソニーのDNAは「コンシューマ製品の強さ」

CESにおいて、日本企業の主役の座を長年担っているソニーとパナソニックの2社が展示した内容は、これまで以上に対照的だった。それは、両社社長の発言一つとってもそうだ。

ソニー 代表執行役 社長 兼 CEOの平井 一夫氏は、「コンシューマエレクトロニクス領域において、さらなるイノベーションを追求すること、そして、新たな事業への挑戦という2点を展示の軸にした」と語っていた。一方でパナソニックの代表取締役社長である津賀 一宏氏は「他社のブースには、もっとBtoBが並んでいるのかと思ったがそうでもなかった。パナソニックだけが家電の展示がなかったことには驚いた」と話す。

ソニー 代表執行役 社長 兼 CEO 平井 一夫氏

平井氏は、CES 2018の会場における共同インタビューでも、「お客様に直接お届けするコンシューマ製品をいかに強くしていくかが、ソニーのDNAであり、一番得意としているところである。コンシューマビジネスを大事にしていくことが私の強い意志である」と語っていた。

その言葉を裏付けるように、ソニーブースでは、コンシューマ製品が目白押しだった。例年通りに、ブース入口で最新のテレビを展示したほか、デジタルカメラやヘッドフォン、日本のみ発売されているaiboを米国で初公開するなど、数多くの最新コンシューマ製品を展示した。

有機ELテレビでは、55型/65型の「BRAVIA A8Fシリーズ」を展示。高画質プロセッサ「X1 Extreme」によって、有機ELパネルの特長を大限に引き出した深い黒や明るさを表現するほか、画面自体を振動させて音を出力する「アコースティック サーフェス」を採用し、映像そのものから音が聴こえるような臨場感を実現している。

活況のソニーブース
米国市場で今年5月に投入予定のBRAVIA A8Fシリーズ

また、高画質化への取り組みでは、次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を参考展示。前述のX1 Extremeと比較して、約2倍のリアルタイム画像処理能力を実現した上、液晶/有機ELのパネルの違いを乗り越えてそれぞれの特長を引き出し、高レベルの画質を実現できるという。

これに加えてブース内では、4K有機ELディスプレイと8K液晶ディスプレイによるデモストレーションを行った。8Kでも独自の画像処理技術とバックライト技術を組み合わせて、HDRフォーマットの最高値である10,000nitsの超高ピーク輝度を表現するなど、X1 Ultimateが実用段階にあることを示した。

さらに、ヘッドフォンではワイヤレス ノイズキャンセリング ステレオヘッドセット「WF-SP700N」を展示。左右独立型ヘッドフォンとして世界初となるIPX4の防滴対応を実現したスポーツシーン向けのもので、アークサポーターの採用により、重心位置を工夫した設計で高い装着安定性を実現している。国内でも発売する予定だ。

参考展示した8Kディスプレイ。HDRフォーマットの上限である1万nitsのピーク輝度を達成している
WF-SP700Nは昨今人気を集める左右独立型ヘッドフォンだ

海外でも人気の「aibo」

一方、苦戦が伝えられているスマートフォンの「Xperia」だが、ミッドレンジモデルとなる「Xperia XA2 Ultra」を公開した。6.0型フルHDディスプレイや約2300万画素のメインカメラを採用したほか、フロント部に手ブレや暗所に強い1600万画素の高精細カメラと、大人数を写せる約120度の超広角の800万画素セルフィーカメラの二眼を搭載した。

また、新機軸コンセプトの製品を投入するLife Space UXからは、4K超短焦点プロジェクター「LSPX-A1」を展示し、注目を集めていた。人工大理石の天面に加えて、木目調の棚を採用することで、家具のように居住空間になじむ佇まいを実現。壁面に置くだけで最大120型の4K HDR 大画面を壁に投射できる。

Xperia XA2 Ultra
4K超短焦点プロジェクター「LSPX-A1」

だが、目玉として海外メディアから特に高い関心を集めていたのが「aibo」だ。

海外における展示は今回が初めてで、平井氏は「海外でも、一度は本物を見てもらい、様々なコメントを得たいと感じた」とその狙いを語る。というのも、ソニー本社で開発し、ソニー本社の日本人エンジニアが開発した製品がaiboだ。「日本人の目で見ているから可愛いものなのか、それとも米国人や中国人にとっても可愛いと思ってもらえるのかといったリアクションを知りたいという目的もあった」というのだ。

まずは日本の需要を優先し、台数が確保できるようになった段階で海外展開を目指すと平井氏。aiboは部品点数が多く、製造に時間がかかる商品のため時間がかかるとして「ちょっと時間はかかるが、確実に供給できることを前提に発売することが、お客様にとって一番不利益にならない形での市場投入になると考えている」(平井氏)。

海外初お披露目となったaibo

過去最高益を目指す今のソニーの勢いを表すように数多くの製品を展示したソニーだが、平井氏はこの攻勢ぶりを「これらは、KANDO(感動) at Last One Inchを実現する製品を展示した」と表現する。

そうした中で唯一、B2B領域で展示したものが「車載向けイメージセンサー」だ。平井氏は、プレスカンファレンスで、トヨタと日産、デンソー、ボッシュ、ヒュンダイ、KIA、NVIDIA、モービルアイとパートナーシップを組んだことを公表した。展示コーナーでは、高解像度、高感度、ハイダイナミックレンジの技術デモを行っており、自動運転社会の到来に向けた技術力の高さをアピールした。

平井氏は、車載向けイメージセンサーへの取り組みを、「人間の目を超えるセンシング能力を持つソニーの高性能なイメージセンサーを、クルマの目として高度な完全自動運転社会の実現に貢献したいと考えている」と話す。ただし、ソニー自身がクルマづくりに直接参入するのではなく、あくまで「イメージセンサーの技術で、自動運転の領域で貢献していくことになる」(平井氏)という。

とはいえ、単なる部品屋という立ち位置に収まる気もないようで、「単純にイメージセンサーだけを供給するのではなく、その技術にプラスαとなるソニーならではの付加価値を提供するビジネスモデルを確立したい」(平井氏)とも語っていた。カメラ事業などで培った各種認識技術などの応用を目指していくものとみられる。

唯一の共通事項は「自動車産業」

一方のパナソニックは、3月に創業100周年を迎えることもあり、記念展示として第1号家電製品とともに最新家電製品を展示。また、未来の住空間環境プロジェクト「HOME X」のコンセプト展示も行っていたのだが、一般的な家電メーカーが行う商品紹介を主軸とする家電の展示はメインブースで一切行わず、ホテルに確保した別会場に招待者だけを招いて公開した。

こうしたパナソニックの姿勢の変化は、2013年1月に行われたCESの基調講演で津賀氏自身がB2Bシフトを鮮明にしてから一貫している。

「パナソニックは、テレビだけの会社ではなく、B2Bへ全面的にシフトし、さまざまなパートナーとともに、顧客の生活するスペースでお役立ちする道を広げていくことを話した。その中核になる技術やモノづくり力は家電で培ってきたものだが、パナソニックブースからは、できるだけ家電製品を減らしていくことに取り組んできた」(津賀氏)

コンシューマにこだわり続けるソニーと、B2Bにシフトしたパナソニック。日本を代表する2社だが、その方向性の違いは明らか。

ソニーの平井氏は、「電機メーカー各社は、以前は同じ方向を向いてCESに出展していたが、ソニーにはソニー独自のやり方があり、他社には他社のやり方があるということが明確になった。自分たちが持っている資産をどう有効活用するかを徹底的に考えると、すべての企業が同じ方向にいくわけがない。進むべき道が変わってくるのはいいことである」とする。

パナソニック 代表取締役社長 津賀 一宏氏

パナソニックの津賀社長も、「CESには、自動車メーカーをはじめとして様々な業種の企業が出展し、スタートアップ企業の出展も増加している。CESの主催者であるCTAのゲーリー・シャピロCEOと話をしたが、業界の変化が起きており、CESもそれに伴って変化していることを強調していた」とする。

しいて言えば、津賀氏が「メインブースではB2Bやオートモーティブの展示」とあえて「オートモーティブ」と切り出したように、自動車産業への姿勢は共通している。エレクトロニクスの既存カテゴリがレッドオーシャン化する中で、新規領域をどう開拓していくのかという点で魅力的な領域がここ、ということなのだろう。

家電見本市から脱却する方向がより鮮明になったのが、今年のCES 2018。それは日本の電機メーカーの出展内容だけを見ても明確だ。各社が各社の得意分野を「テクノロジー」の観点から打ち出す展示会へと変化している。日本を代表する大手電機2社の展示は、まさにCESの多様性と広がりを象徴するものだといっていいだろう。