樋口泰行が考える「パナソニック、次の100年」

樋口泰行が考える「パナソニック、次の100年」

2018.01.23

パナソニック コネクテッドソリューションズ社の社長である樋口泰行氏へのインタビュー、後編のテーマは「100年後のパナソニック」だ。

パナソニックは2018年3月に創業100周年を迎える。日本ヒューレット・パッカードとダイエー、そして日本マイクロソフトと、トップを歴任した樋口氏がパナソニックに「戻ってきた」のも、創業100周年を迎えたパナソニックの今後と無関係ではない。樋口氏の考える「これからのパナソニック像」とは、どんなものなのだろうか。

パナソニック 代表取締役 専務執行役員 兼 パナソニック コネクティッドソリューションズ社 社長 樋口 泰行氏

【特集】変わる、パナソニック。

2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。

次の100年のために改革を断行

「2018年、パナソニックは創業100周年です。しかしこのままでは、次の100年は厳しい」

樋口氏の言葉は厳しい。

前編で触れたように、パナソニックは「真のB2Bシフト」を目指した構造改革中だ。その構造改革を断行しないと、パナソニックは次の100年を越える企業になれないと樋口氏は考える。

パナソニックがこれからビジネスの主軸に据えようとしているのはB2Bビジネス、それも、顧客に対して課題解決の手段を提供する「ソリューションビジネス」である。これまでのパナソニックは、企業や個人に対して「より良い製品・技術を提供する」ことで差別化してきた。

だが、ソリューションビジネスになると、提供すべきは単なる技術や部品ではなく、それらを使ってどう課題を解決するのか、という部分になる。思考方法もビジネス手法も、当然変わらざるを得ない。

「ソリューションビジネスでは、難しさがグンと上がります。やはり、ソリューションビジネスをやった経験がないと難しい部分があります。既存の『製品主体の事業部』が強い体制では新しいトライアルがやりづらく、難しい。ソリューションビジネスへの転換は、過去にIBMも直面しました。彼らですら、ハードからソフトへの転換は難しいことでした。IBMは『同じ人員では改革できない』として人を多く入れ替え、企業体質を変えました。しかし、日本は同じ手法が取れない環境にある。そこでどうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけません」(樋口氏)

そのような環境で断行できる改革とは何か。樋口氏は、担当するコネクティッドソリューションズ社を本社のある大阪・門真市から東京へと移転し、個人の席を自由に決められる「フリーアドレス/フレックスシーティング」を導入した。

「まずは顧客接点を増やさなくてはならない。そのためには、顧客から遠い門真に居ても何もできません。顧客の近くにいて、温度を感じないとできないことが多いのです。ですから、なるべく顧客の近くに行こう……というのが、拠点を東京へと移した理由です。これが第一歩ですね。これは一般論ですが、東京から離れるとさまざまなベンチマーキングが難しくなります。コンプライアンスにしてもダイバーシティにしても。企業を近代化していく点で遅れる。そういうところがあります」(樋口氏)

樋口氏は大学卒業と同時に松下電器産業(当時)へ入社し、1992年に同社を離れた。25年ぶりのパナソニックとなるが、いわゆる"浦島太郎感"は「まったくなかった」という。初日から「馴染んでしまった」と樋口氏は話すが、その真意は「良いことばかりではない」という裏返しだ。

「持続可能な企業になっていくためには、体質の改善が必要です。社員一人ひとりが自ら動けるようにならないとダメです。パナソニックには27万人も社員がいるのに、新しい戦略を考える時には外部のコンサルタントに依頼する。そしてその戦略をなかなか実行できないケースが多い。まずは外の世界の景色を見て、何をアップデートしないといけないのか、自らが感度よく動かないといけません。純粋培養で、上司の言うことに従って仕事をする、という形だけでは、自律的な思考がなくなっていきます。もっと多様性を理解し、"やわらか頭"で考える必要がある。時間で働くのではなく、上司の考えで働くのでもない。そのためにまずは『働き方改革』をドライブしていかないといけないんです。それを前提として初めて『では、どんな立ち位置が望ましいのか』といった戦略を考えて、手を打てるようになるはずです」(樋口氏)

樋口氏の下では、ソリューションビジネスの経験がある「パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)」のメンバーを中心に、B2Bビジネス体制、そして意識の改革も進められている。「この8カ月で何年か分の変化は訪れたのではないか」(樋口氏)とはいうものの、業績的にソリューションビジネスが占めるパイはまだ大きくはない。

これをいかに育て、大きくしていくかが、これからの100年に繋がる大きなテーマだ。ソリューションビジネスの比率が高まってこそ、樋口氏が請われた最大の理由「真のB2B改革」の成果といえる。では、その実現にどれほどの時間がかかるのか?

樋口氏も、決して楽観はしていない。

「10年~15年はかかると思います。ヨーロッパ系・アメリカ系の企業を見ても、体制のトランスフォーメーションにはそのくらいかかっています。ここで大事なことは『私自身がこの先の10年間、そこに関わり続けることはできないだろう』ということです。やる人が変わっても、次の人が『この改革は正しい』と、信念をもって続けることが大切なんです。場合によってはトランスフォーメーションは財務的な数字だけを見ていても効果がわからない場合があります。しかし、ビジネスの勘が働く人であれば『実行して良かった』と理解してくれるはずです。短期的な利益だけを追求してしまうと、次の世代に会社を良い体質の状態で渡すことができなくなります。今は高度成長期とは違います。右肩上がりではないし、メガトン級プレイヤーもいない。そんな中でどう立ち位置を確保するのか、かなり戦略的に考えないといけません」

IT企業が世の中の主導権を握りつつある中、いくらパナソニックとて舵取りが難しい時代と言える。

「昔は比較的シンプルな戦略でよかったわけですが、今はそうではありません。私はパナソニックの外で25年の経験を積み、曲がりなりにも『戦略的に考えること』を学んできました。当社に『戦略的に考える』礎を作れたらな、と思います。これはパナソニックだけの話ではなく、日本全体で見てもそうです。政府主導でさまざまな業界の再編が行われ、いよいよダメになってから清算する、ということの連続でしたから。電機業界においても、他の家電メーカーでも、パナソニックでも同じことが起きました。パナソニックが生き残れたのは比較的に財務的に強かったというだけ。これに甘んじていてはいけませんし、さらに体質を改善していく必要があるということを、自分たちで考えていかなくてはなりません」(樋口氏)

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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