新製品発表会でパナソニックが「レッツじゃなくていい」と言ったワケ

新製品発表会でパナソニックが「レッツじゃなくていい」と言ったワケ

2018.01.27

キャンペーンキャラクターの比嘉愛未さん。手に持つPCは「Let's note SV7シリーズ」

「Let's noteじゃなくていい」というタイトルを裏切る形になるが、パナソニックは2016年度に32万台のレッツノートを販売し、現時点で2017年度の販売見通しは40万台と「21年目にして最高記録だ」とパナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 モバイルソリューションズ事業部 事業部長の坂元 寛明氏は話す。

好調な事業環境を背景に浮かれ気分なのか……というとそうではない。

この日、パナソニックはレッツノートの新製品「Let's note SV7シリーズ」を発表した。最新の第8世代インテル Core vProプロセッサーを採用し、クアッドコアによる高性能化を達成しながらも、レッツ最大のウリとなる堅牢性を維持し、光学ドライブ、Thunderbolt 3を搭載。それでいて1kg切りとなる重量999gを達成した渾身の自信作だ。

では、何が「レッツじゃなくていい」のか。

レッツ限定と他社製PC OKの使い分けも

それが、新製品に合わせて発表した「働き方改革支援サービス」だ。このサービスでは、社員一人ひとりの働き方を可視化することで、従業員自身が働き方を見つめ直して意識を変えることを目指す。具体的には、これまで提供してきた「HDD/SSD遠隔データ消去サービス」に加え、「ストレスチェックサービス」と「ソフトウェア型VPNサービス」「可視化サービス」を提供する。

ストレスチェックサービスはパナソニックが開発した「非接触バイタルセンシング」技術を活用し、PCのフロントカメラで捉えた顔画像からリアルタイムで脈拍数を測定。脈拍の変動からストレスレベルを推定して、社員のストレスレベルをチェックする。また、HDD/SSD遠隔データ消去サービスでは、ワイヤレスWANモデルの場合にリモートで電源をオンにしてPCデータの消去を可能にする。いずれもハードウェアレベルでのチューニングが必要なこともあり、レッツノート限定の機能となる。

デモ環境ではバイタルチェックの様子をグラフで可視化。顔面の血管を読み取り、利用者の脈拍によってストレスレベルを推定する

一方で「レッツじゃなくていい」機能はソフトウェア型VPNサービスと可視化サービスだ。企業のプライベートクラウドに接続したり、各種機密データを公衆無線LANなどでやり取りする場合にVPNを活用する事例が増えている。また、一部海外ではクラウドサービスへの接続ができないケースもあるため、VPNは必需サービスとも言える。

こうしたニーズに対して、米ネットモーションソフトウェアが開発したモバイルVPN「NetMotion Mobility」を使用したクラウドサービスとして、パナソニックが提供する。クラウドのVPNサーバーはパナソニック自身がシステム運用しており、独自の技術を活用してニーズの高いビデオ会議ソリューションの動画品質を保つという。

そしてパナソニックが一番の目玉とするのが「可視化サービス」だ。これまでにもPCのログ取得サービスはさまざま存在するが、パナソニックはログイン・ログアウトに加えてキーボードやマウス操作の時間、利用アプリの可視化を行った。これらのデータは円グラフや積み上げグラフ、時間軸などさまざまなグラフで表示。働きすぎていないか、働きの質が偏っていないかなど、定量的評価の判断が可能となる。

可視化サービスは"意識改革"

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 マーケティングセンター 営業企画部 部長の西谷 裕之氏は、働き方改革の本質は個人の生産性を向上させることであり、生産性の向上には「意識を変える必要がある」と話す。

「『意識』を取り巻く形で仕事がある。しかし、非主体業務時間と主体業務時間の切り分けや割合は自分自身で判断が難しい。意識を変えるには"可視化"が必要であり、これはダイエットに似ている。自身の体重の変動などを意識して減らすように、自分がどんな仕事をしているのか可視化すれば意識は変えられる。意識が変えられれば、非主体業務を減らせ、生産性の向上につながる」(西谷氏)

可視化サービスは、社員を管理するための労務管理ソリューションにも見えるが、パナソニックとしてはあくまで意識改革のためのツールだと話す。実際、平均的な社員がどういう働き方、アプリの利用傾向があるのかを見られるようにすることで、本人の意識の変容を促す。もちろん管理ソリューションとしても利用でき、例えばプロジェクト単位で使用するアプリのカテゴリ分けを行い、削減すべき業務、集中すべき業務のよりわけなどが可能になるという。

昨夏の段階でさまざまな業種・業態の企業に同サービスを打診したところ、100社超の企業が導入を検討。PC1台あたりの利用価格は月額1500円程度で、デスクトップ混在の環境も踏まえての一括導入を目指すべく「レッツじゃなくていい」を実現した。2015年に総務省が調査したテレワーク導入率は16.2%であり、そうした企業を中心に4年で累計20万台の導入をめざすという。単純計算でレッツノートの今季販売見通しが継続するとして、1/8の企業が導入する計算だ。テレワーク導入率ともほぼ合致する。これをさらに上向きにさせるためには「レッツじゃなくていい」ということなのだろう。

パナソニックは、「変わる、パナソニック。」でも特集したように、昨年から自社でも働き方改革を推進してきた。Skype導入によるテレワークの推進のみならず、オフィス移転やオープンスペース化など、ITソリューションありきではないトータルでの働き方改革を行っている。この姿勢は、ほかの企業でも注目したい事例だろう。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 東京オフィス

坂元氏は、働く姿勢の変化という勢いそのままに「(レッツだけではない)どんどん付加価値サービスを提供していきたい」と意気込む。それは、以前はレッツノート/タフブックというPC単体だけで製品を販売していた時代から「業界軸でソリューション化している」(坂元氏)時代に移り変わった環境に合わせた"改革"だ。実際、ヨーロッパではゼテスという物流系ソリューションを提供する会社を買収しており、タフブックとの組み合わせで販売を増やしている。

「お客様の声に耳を傾けて、そこから課題を見つけ出し、ソリューションとして提供することで価値を最大化することが、感覚的に難しい」とは、コネクティッドソリューションズ社 社長の樋口 泰行氏の弁だが、出だしで100社の検討は上々の滑り出し。この勢いを継続できるかどうかは、パナソニック自身が行う"改革"の質にもかかっている。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。