アメリカ人に珠玉の酒を“おごる”!? クラウドファンディングで日本酒の魅力を世界に広げる

アメリカ人に珠玉の酒を“おごる”!? クラウドファンディングで日本酒の魅力を世界に広げる

2016.06.29

日本酒応援団・共同代表の古原さん(左)と竹下さん(右)

料理、文化、京都に富士山、治安の良さ、そしておもてなし……と、世界に誇れる日本の“自慢”は数々ある。寿司やアニメのようにいまや世界中でもてはやされているものもあれば、一方で、古くから日本人に親しまれ、いわば日本人のDNAに深く染み込んでいるものでありながら、まだまだ世界に真の価値を知られていない“自慢”もある。その代表といえるものが、日本酒だ。

ここに、熱き想いを抱いた若者たちがいる。「日本酒を応援したい!」、その気持ちを名前に目一杯込めて、2015年7月、日本酒の魅力を国内はもちろん世界中に広く伝えるための会社を設立した。「日本酒応援団株式会社」である。

「日本酒のあるライフスタイルを世界中に」。

このコンセプトを旗印に、「日本酒が好きな人を世界中で増やし、日本酒と地元地域のさらなる発展に貢献すること」を社のミッションとしている。

日本全国を見わたせば、大量生産でどこの量販店でもお目にかかれる大きな蔵元もあれば、昔ながらの手作りを貫き細々と酒造りを続ける小さな蔵元もある。実際のところ、日本の酒蔵はかつて1万以上あったが、年々減り続けており、現在残っているのはおよそ1,500。そのうち9割以上が、後継者問題や販路拡大に日々苦心する小規模の蔵元だという。

マニア層だけでなくメジャー層にも日本酒を

2015年秋にアメリカで開催された日本酒展示会に出展。現地の人から「SAKEはこんなにおいしいものだったのか」という感動の声が続出したという

同社はそうした、“いい酒を造るのに知られていない”小さな蔵にスポットを当て、レストランへの営業や展示会への出展、ラベルのデザインやマーケティングを含めた製造・販売全般のサポートを手掛ける。さらには自らの体を通じて“造る”ところから知りたいと願う日本酒ファンに向けて、田植え体験や酒造り体験も提供している。

2015年秋にはアメリカで、今年春には香港で、日本酒展示会にも出展した。海外市場に存続の道を探る小さな蔵の背中も積極的に押している。

その同社が現在展開しているのが、日本酒の本当のおいしさをアメリカの人たちに知ってもらうことを目指して企画した「日本酒をおごる」プロジェクトだ。

アメリカは、海外における日本酒の最大の市場である。しかしながら現状では、日本酒の海外への輸出はフランスワインの100分の1程度にすぎない。同社共同代表の古原忠直さんは言う。

「アメリカで流通している日本酒の8割は現地生産、すなわちアメリカで造られた日本酒です。残りの2割も大量生産が可能な大手酒造メーカーのものがほとんど。それに、そもそもまだマニアに呑まれているだけで、日常に入り込んでいるとは言えません。私たちは日本酒の真の魅力をアメリカに広めることで、“日本酒のあるライフスタイル”を提案し、小規模ながら昔ながらの手作りにこだわり、いい酒を造り続けている蔵の海外進出をサポートしたいと考えています」。

同プロジェクトは今年10月にニューヨークとサンフランシスコでの開催を予定している新酒発表会イベントを対象に、クラウドファンディングで運営される。現在同イベントを支援するパトロン(支援者)を募集中だ。

同社のWebサイトから支援コースを購入すれば、アメリカでのイベント参加者に日本酒を振る舞うことができる。パトロン1人の支援につき1杯、これに同社が1杯をプラスし、計2杯をおごれるという仕組みだ。これはアメリカでいま流行している「マッチングギフト」のスタイルを採用した。マッチングギフトは、企業や団体が主催者となって寄付を募り、寄せられた寄付金と同じ額を主催者側もプラスすることで、計2倍の寄付を行うものだ。

今回のプロジェクトでアメリカの人たちに振る舞われる純米・無濾過生原酒「KAKEYA 2016」

目標は200万円

最近では熊本地震などの災害に対してもマッチングギフトによる支援が行われている。 支援コースは最小1,000円から。「今回は金額を低めに設定していますので、学生の方でも気軽に参加していただけます」と古原さん。3,900円以上のコースなら、パトロンにも特典として「KAKEYA」や「NOTO」といった同社が手掛ける純米・無濾過生原酒が額に応じて贈られる。8月3日までの期間に、200万円を集めるのが目標という。

彼らが考える「おごる」という感覚は、たとえばアメリカ映画によく出てくるワンシーンを思い浮かべるとイメージしやすいだろう。バーのカウンターで、身なりのいい紳士がカクテルを楽しんでいる。ふと見ると、カウンターの端にひとりの美女。紳士はバーテンダーにひと言告げる。

「これと同じものを、あの美しい女性にも1杯」。そこから会話が始まり、ストーリーがつながっていく……。

「映画のようにナンパするわけではありませんが、“おごる”という行為はコミュニケーションのアイスブレーカー、つまりスタート地点になるものだと思います」と古原さんは言う。同プロジェクトは、そうして異国の地でコミュニケーションを生むことで、日本酒の良さを広めることを目指している。

アメリカの人たちにおごる日本酒は、手作りにこだわり大量生産はしない小さな蔵が造る「純米・無濾過生原酒」。同社共同代表の竹下正彦さんによれば、火入れ処理をしない無濾過生原酒は製造方法だけでなく管理方法も含めて、蔵の技術や実力、そして酒造りに臨む緊張感がもっとも明確に表れる指標なのだそうだ。

実際に同社では、竹下さんの実家である島根県雲南市掛合町の竹下本店で製造する「KAKEYA」、石川県鳳珠郡能登町の数馬酒造で造る「NOTO」という2つのブランドの無濾過生原酒を、すでに世に送り出している。

10月にアメリカのイベントで振る舞われるのも「KAKEYA」の無濾過生原酒だ。火入れをしない生原酒は、実は海外への輸送が難しい。当然、コストもかかる。日本で味わえる最良のおいしさをそのままアメリカに運ぶため、同社では冷蔵をはじめ最大限の配慮を行うが、こうした部分のコストにも支援が活かされる。

募集期間が残り1カ月強となった現時点で、約60人のパトロンが支援の声を上げている。インターネットで募集するクラウドファンディングの性格上、若い世代がメインターゲットになっており、現時点でも20代、30代からの支援が多くを占めているが、もちろん40代以上からの支援も待っている。

本物の日本酒のおいしさを海外に伝えたい! という想いは、同社のスタッフだけでなく、多くの日本酒ファンが秘めている気持ちでもある。とはいえ、一般個人が海外でそうした周知活動を行うのは限界がある。「海外に日本酒を広める手伝いなんて、自分にはできないよ」、最初からそう決めつけてしまう人は多いだろう。「その代わりになれたら」(古原さん)というのが今回のプロジェクトの大きな趣旨だ。プロジェクトに参加することで、あなたも“日本酒大使”になれるのである。

「1杯の支援に協力してくだされば、私たちが責任を持って、アメリカの方たちにあなたからの1杯と私たちからの1杯を無料で提供します。そして、実際のイベントの様子は映像に収録して、メディアでの露出も含め支援者の方にお届けしますので、日本にいながらにしてアメリカの方においしい日本酒をごちそうし、喜んでいる様を確認できますし、そこで生まれたコミュニケーションから日本酒の良さが海外で広がっていくのです」と古原さん。他人事ではなく、まさに自分事として、日本酒大使の役割と成果を実感できるようになっている。

日本酒はいうまでもなく日本の歴史と文化、民俗、そして土地、水、空気……すなわち日本各地のテロワールに根ざした酒であり、そのおいしさ、良さを海外に伝えるといっても、まずは日本人がそれを知らなければならない。まだまだ日本人自身が日本酒の本当のおいしさを知らない、というのは、日本酒に携わるさまざまな方面の人々から日常的に聞かれる言葉である。

酒造りのストーリーに就いても知ってもらいたい

それゆえ今回のプロジェクトのように、日本人を動かすというベースの上で海外へ向けたアプローチを築き上げることの大切さを、竹下さんは強調する。竹下さんの実家の蔵も、近年は規模が縮小し、使用していないタンクや麹室がある。そうした余剰施設を活用し、かつ仕事がなくなった杜氏や蔵人がふたたび活躍できる場を模索するのは、いわば差し迫った課題でもある。いい酒を造りつつも、同様の課題を抱える小さな蔵は全国に山ほどある。日本酒のおいしさはもちろんのこと、そうした現状……すなわち酒造りにまつわるストーリーについても、日本人に知ってほしいと竹下さんは語る。

人々に広めるためには、自らの体験が重要だろう。だから同社では、「スタッフ全員が酒造り・米作りの現場を経験」することにもこだわっている。1日2日ではなく、現地に長期泊まり込んで作業に取り組む。酒造りの時期は4カ月。冬期間の早朝からの水作業は味を守るため素手で行うため、とにかく寒くて冷たい。また、日本酒は汚れが大敵であり、掃除にも気を遣う。瓶詰めもラベル貼りもすべて手作業だ。実家が蔵元である竹下さんとは異なり、古原さんはここで初めて酒造りの現場を知った。

日本酒応援団の社員は全員、蔵での酒造りを体験する。酷寒の蔵での作業は、苦労と発見の連続だ
純米酒のおおもとは、もちろんコメ。酒造りとともに米作りも同社社員の必須体験となる

「もともと日本酒が好きだったので、酒造りの工程については知っているつもりでしたが、実際に携わるようになると、想像以上に手が込んでいることに驚きました。とくに私たちが行くのは手作りの小さな蔵ですから、本当に地味な作業の連続。こうして携わったからこそ、日本酒がさらに大好きになりましたね」。

当初は竹下さんの実家1蔵でスタートしたが、創業後の昨冬は2蔵となり、さらに今年の冬は大分県と埼玉県の2蔵も加わって4蔵体制になる。倍、倍と順調に増えている。蔵側からの問い合わせも多い。

「現状、社員は6人なので、この4蔵でも一杯一杯なのですが、目指すところは5年で30蔵。ワインのテロワールという考え方を日本酒にも取り込み、“テロワール×無濾過生原酒”にこだわり続けることで、全国のいろいろな蔵に展開したいと考えています」(竹下さん)。

「私たちは、造る立場に立って事業に取り組んでいます。一方では実際に日本酒が大好きで、世界中の日本酒ファンと触れ合う立場にもあるわけですから、いわば酒造りの両末端をつなぐ位置にいるのだと自負しています」(古原さん)。

自分たちが提案する無濾過生原酒を呑んでさえもらえば、その価値はわかってもらえるはず。実際に展示会などで、彼らはその確かな実感を得ている。本物の味はきっと、日本人だけでなく、アメリカの人たちにもわかる。その信念を原動力に、同社は今後も国内・海外を問わず、日本酒のおいしさを伝える活動を展開していく。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。