なぜIBMはUstreamを買収したのか、何を目指すのか

なぜIBMはUstreamを買収したのか、何を目指すのか

2016.01.26

米IBMが1月21日(現地時間)に動画ストリーミング配信サービスの米Ustream買収を発表したことが話題になっている。エンターテイメントから現地実況までライブ配信ではすでに多くのユーザーにお馴染みのサービスだが、一方でソフトバンクの全額出資子会社であるUstream Asiaが今年2016年2月からの事業撤退を発表するなど、その今後の動向に注目が集まっていたところだ。IBMのUstream買収の狙いはどこにあるのか、同社の目指す方向性も探ってみたい。

動画配信サービスのUstreamはIBM参加に

一般向け配信サービスに苦戦か

「IBMがUstreamと買収交渉」というタイトルで同件を1月20日に最初に報じたのはFortuneだった。Fortuneによれば、複数の情報筋の話としてIBMがUstreamの1億3000万ドルでの買収を提案しており、同社のクラウド事業の一部に組み込む計画なのだという。

Ustreamは2011年に最新の投資ラウンドを経て5000万ドル程度の規模まで資産価値を上げたと指摘される一方、IBMによる買収のタイミングではまだ非上場であったため、21日に正式発表が行われた段階でも買収金額の詳細は公表されていない。なお、1億3000万ドルという買収金額は、21日の正式発表で同件を報じたWall Street Journalによっても関係者の話として語られている。

ライブストリーミング配信のパイオニアとして日本でもUstreamは一躍有名になったが……

前述のように、Ustreamは2007年にベータ版サービスを開始して以来、インターネット経由でのライブストリーミング配信の先駆けとして知名度を飛躍的に高めた一方で、コンシューマ向けサービスとしてはYouTubeやTwitchにプロモーションなどの面で苦戦しており、日本国内でもニコ生などのサービスに主席の座を譲っている感がある。こうした背景もあり、広告を絡めた一般向けの配信サービスとしてはやや厳しいなかでのIBMによる買収という見解もある。だが、近年では今回のIBMをはじめとしたベンダーとの連携を深めており、動画配信プラットフォームそのものの強化を行っていたように思える。

買収の下地はかねてより整えられていた

例えばFortuneによれば、2014年4月にIBMがCloud Marketplaceを発表した際、Ustreamは同マーケットプレイス(オンライン商店)唯一の動画配信サービスだったという。Cloud Marketplaceとは、クラウド経由で提供される各種Webアプリケーションをマーケットプレイスで選んで購入し、好きに組み合わせて利用できる仕組みだ。IBM謹製のサービスだけでなく、サードパーティが自身のWebアプリケーションを登録してユーザー企業に購入してもらえる機会を得られる点に特徴があり、Ustreamはその店子の1社の位置付けだといえる。

そして2014年10月には、Bluemix上でUstreamの動画配信機能を実装する仕組みが発表され、IBMクラウド上でUstream動画の取り扱いが容易になった。BluemixとはIBMが2014年にスタートしたクラウド上でのアプリケーション構築サービスで、サポートされている複数の言語のうち、好きなものを用いてアプリケーションの開発が可能になる。もともとは「Cloud Foundry」の名称で「オープンソース」の形式で自由開発が進んでいた仕組みを、IBMが商用のクラウドサービスとして新たに提供を行ったものだ。このBluemixは、同社が以前に買収した「SoftLayer」というデータセンター上で運用されている。

このように、UstreamがIBMに買収される下地は、過去2年以上にわたって少しずつ築かれており、クラウド事業への注力するIBMにとって重要なピースとして位置付けられていたというわけだ。

Ustreamは必要なピース

IBMの発表によれば、今回のUstream買収を機に同社は「IBM Cloud Video Services」部門を設立し、すでに買収済みのClearleap、Cleversafe、Asperaを組み合わせたエンタープライズ向けの動画配信プラットフォーム構築を支援するという。

Ustreamが傘下に入ることで動画配信サービスの構築要素が揃う

Cloud Video Services部門のトップにはClearleap買収でIBMに参加したBraxton Jarratt氏が就任する。Clearleapは動画資産管理ソリューションを提供する企業で、Cleversafeは「オブジェクトストレージ」と呼ばれる従来のファイルシステムとは異なる分散管理に適したストレージサービスを提供する企業だ。もう1社のAsperaは数GBから数TBなど、大容量ファイルを効率的に高速で転送するソリューションに強みを持った企業だ。

つまり3社を組み合わせることで、大容量データを必要とする動画配信サービスにおいて資産管理や保存、データセンター間やリモート拠点でのデータ転送などの仕組みが利用できる。ここで唯一存在していなかったピースが「デバイスへのストリーミング配信」の部分であり、Ustreamの買収をもって、動画配信サービス構築に必要な要素が揃ったことになる。

IBMはクラウド企業に変質する過程にある

IBMがターゲットとする動画配信は、エンタープライズ向けということで企業内でのコンテンツ配信だけでなく、おそらくは既存のUstreamのユーザーの多くもその対象になっていると考えられる。もしインターネット放送局やサービス事業者が自ら動画配信を行いたいたいと考えた場合、Ustreamの仕組みを使って、配信用のプラットフォームをIBMのクラウド上に構築できる。また、この配信インフラにWatsonなどのツールを組み合わせることで、マーケティングツールとしての活用や広告配信プラットフォームの強化も期待できるだろう。

いくつかの調査報告によれば、現在北米のインターネットにおける動画トラフィックの比率は7割を超えているといわれており(Netflix、Facebook、YouTubeの3社が中心)、それだけユーザー層の厚い分野で、IBMもビジネスとしての成長性に期待していると思われる。

同社によれば、将来的に1050億ドル規模の市場になると説明しており、同社のクラウド事業の重要ピースとしてぜひとも揃えておきたかったのだろう。また、IBMは直近の決算まで過去15四半期連続で売上が減少していることが知られており、PCサーバなどハードウェア事業をLenovoなどのライバルに売却する一方で、過去2~3年の間に急速にクラウド事業の比率を強化している。

将来は1000億ドル超の巨大市場になると見込む

売上減少とはつまり、過去の資産を切り離してクラウド企業へと変質しつつある過程にあるということだ。Ustreamの買収も思いつきなどではなく、こうしたクラウド事業強化に向けて設定した青写真(Blueprint)の完成に向けたステップの1つだといえる。

なぜIBMがクラウド事業に突き進むか

では、なぜIBMがクラウド事業へとまい進するのかという点だが、「高収益」で「安定した事業」という理由が大きいと考える。かつてのIBMは「メインフレーム」と呼ばれる巨大な中央集権型コンピュータ(サーバ)を主軸に、事務機器メーカーとして周辺のハードウェア機器を販売するメーカーだった。

ハードウェア販売は高い売上を実現する一方で、競争の激化から利益率は低くなる一方ということもあり、IBMはしだいにサーバや一部ストレージを除いたハードウェア事業からの資産売却による撤退を始め、2000年代にはソフトウェアのライセンス販売とコンサルティングを中心とした事業体制へとシフトしていった。

ただ、市場の変化はIBMの想定以上に激しかった。同社はハードウェアからは完全に撤退していなかったが、その理由は高収益なサーバ事業を中心にあえて残すことで、これを軸にコンサルティングとソフトウェア販売で収益を上げるモデルを想定していたからだ。

だが、市場のトレンドとしてはクラウド利用が進んでおり、ハードウェア販売が不振に陥ったことで、残りのコンサルティングとソフトウェアも含めた収益モデルにも影響が出始めた。そのため、前述のSoftLayer買収やデータセンターへの大規模投資、「Watson」を活用した新しいサービスの開拓など、ニーズの大きい分野への移行を推し進め、ユーザーの要望に応えようとした。

またクラウド事業の副産物として、顧客ユーザーをデータセンターで抱えることで「一定の収入が安定して入る」というものがあり、エンタープライズ市場における「景気によって企業の設備投資が大きく増減する」といった現象を緩和する効果も期待できる。いずれにせよ、事業シフトの過程で売上の減少が続くIBMだが、このクラウド戦略が成功すれば、遠からずその効果は業績に現れることだろう。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

2018.11.14

VAIOが独自機構の新型モバイルPC「A12」を発表

パソコン事業の成長は数年続き、海外展開も拡充

パソコンのVAIOから、ITブランドのVAIOを目指す

VAIOが業績が好調だ。2017年度は売上、利益ともに2ケタ成長となる増収増益を達成した。PC事業が順調なことに加え、EMS事業も進展したことが奏功したという。11月22日にはオールラウンダーPCというコンセプトを打ち出した新型モバイルパソコン「VAIO A12」を発売する。国内PC事業は合従連衡や海外への売却が続くが、数少ない「純国産」のPCメーカーであるVAIOの今後の戦略とは。

VAIO A12

働き方改革を追い風に地固め、今後は拡大を目指す

VAIOは、ソニーから独立後、法人向けビジネスを中心に据えたことで、早くから黒字化を実現しており、今期も順調な決算となった。売上高は前年同期比10.8%増となる214億8,800万円、営業利益は同13.9%増となる6億4,800万円で、過去最高益を達成した。

PCの法人需要が旺盛で好調な決算となった

法人向けモバイルPCの伸びが前年比30%増と順調だった点が特徴で、その背景にあるのが昨今のトレンドとなっている「働き方改革」だ。テレワークやフリーアドレスなど、それまでの決まったデスクに座ってデスクトップPCを操作するという環境から、ノートPCを持ち歩いて仕事をするという環境に移っていくなかで、VAIOの製品構成がこれに上手くはまった。

VAIO株式会社 代表取締役 吉田秀俊氏

VAIOでは、2017年から11~15インチのモバイルPCでラインアップを構築しており、今年はその後継機種を投入していた。パフォーマンスに特化したVAIO True PerformanceやVAIO Premium Editionといったバリエーションモデルも提供してはいるが、一方でVAIO ZやVAIO Z Canvasといった過去のハイエンドモデルに相当する製品はなく、あくまで「メインターゲットは法人ユーザー」を想定していることが伺える。

同社の吉田秀俊代表取締役は、今後も数年はPC事業が伸長を続けると想定している。働き方改革の拡大を受けて法人需要がさらに伸びることに備え、ラインアップをさらに拡充することで売り上げを伸ばしたい考えだ。

構想3年、開発2年の「VAIO A12」

これを目指して今月発売する新ラインアップが、12.5インチサイズのデタッチャブルWindows PC「VAIO A12」だ。市場にある課題とその解決を徹底的に図ったという製品で、求められているPCはクラムシェルか2in1か、タブレットタイプかコンバーチブルかデタッチャブルか、そういったゼロからの検討を行った結果、「構想3年、開発2年」を費やして仕上げたモバイルPCだという。

VAIO A12は、既存のカテゴライズでは、タブレットとキーボードの着脱機構を備えたいわゆる2in1モバイルPCだ
「膝上で使える」問題の解決や、まともなキーボードの搭載など、クラムシェルPCの使い勝手を求めた

前提とした課題がすべて解決しない限り製品化を見送るという強い意識で開発されたのがA12であり、それには新たな技術的ブレークスルーが必要となった。それが「Stabilizer Flap」と呼ばれる新たなデタッチャブルの機構だ。

「Stabilizer Flap」と呼ばれる独特のデタッチャブル機構が最大の特徴

きっかけは書籍の背の動きだったそうだが、軽量なPCを実現しながら、クラムシェル型と同等の使い勝手を実現した。キーボード部にはVGAやLAN端子を含む多くの端子類を装備して、周辺機器との接続性を求める日本の法人ユーザーのニーズに対応させた。実際、すでにA12導入に向けて動いている法人の中には、「VGAがあるのが選択の決め手」というところもあるそうだ。

機能はとにかくニーズの実現を徹底し、端子が豊富という今では貴重な仕様。手持ちのモバイルバッテリで本体を充電できる5V充電機能もいざというときに役立つ

コンシューマ向けで考えると、端子を減らしてスッキリとしてさらに薄型化、軽量化、低価格化も期待したいところだが、豊富な端子に対する法人ニーズは根強く、その点はVAIOとして譲れない線ということだろう。ただ、薄型軽量であることにはこだわり、タブレットとしては重さ607グラムで薄さ7.4ミリ、キーボードユニットを装着しても重さは1,099グラムまで抑え込んだ。

ソニー時代から同社が得意とする高密度実装技術を活かし、薄型軽量化にもこだわった

海外市場に再挑戦、PCラインアップも早々に増やす

PC事業では、一度は撤退した海外市場に向けて再挑戦にも乗り出している。販売エリアを順次拡大しており、今年は12カ国まで拡大した。今後は北米、中国、欧州での展開を計画している。特に欧州へは「検討中というわけではなく、決めている。来年早々にも展開する」(吉田氏)という。

PC事業の勝算はあるのか。吉田氏は、会社としてのVAIOが240人体制になり、「(ソニー時代に比べ)限られたリソースの中でどう成長戦略を描けるか」が課題であったと振り返る。この1年は「足りているもの、足りていないものを見極める」ことに集中し、独立後1~3年という「短期決戦を乗り切った」と話す。

引き続き、「VAIOはPC事業だけで将来生き残れるのか、という(市場の)問いに答えなければならない」としており、その答えとしては、「ビジネスユーザーにPCは必要なので、PCが大きな核としてVAIOを支えるのは間違いない」とするが、それだけではPC事業としての生き残りには不十分というのが吉田氏の認識だ。

そのため、技術革新や世の中の進化に伴って、ユーザーの生産性をいかに高められるかという観点で新しいPCを打ち出し、生き残りを図っていく考え。その一つの回答が「VAIO A12」となるが、来年以降の新製品でもそうした点を踏まえた新製品を投入していく。「来年度はもう少し違った形で生産性を高める製品を提供していく」という意向を示しており、年明け早々には今までとは異なるタイプの製品を企図しているようだ。

現行のラインアップ。最上部にあるのがVAIO A12で、来年さらなる新ラインアップを展開する

PCはVAIOのコアだが、VAIOはPCブランド脱却目指す

吉田氏は「貪欲な姿をもちながら、VAIOのブランドを伸ばす」と話すが、ここで大きな戦略の柱となるのは、「PCブランド」としての「VAIO」ブランドからの脱却だという。PC事業は順調とは言え、ライバルも多い。MicrosoftのSurfaceだけでなく、レノボとその傘下のNEC、富士通、鴻海傘下のシャープ、東芝、そしてデル、HPといった米国勢もあり、働き方改革の影響で伸びた市場をどこまで獲得できるかは未知数だ。

吉田氏は「次世代ITブランドとしてのVAIOを目指す」としており、単にPC単体を売るのではなく、セキュリティやキッティングといった付加価値サービスも盛り込むことで、トータルソリューションとしてのPC事業を展開する。

これに、EMS事業でのシナジーも追加していきたい考えだ。あわせてPCの周辺機器などを扱うことで、PC事業の強化にも繋げていき、市場全体の活性化も狙える。ハード、ソフトの両面から事業領域を拡大していく。

PC事業は、周辺機器やセキュリティソリューションなどでさらなる拡大を目指す

EMSやパートナーの強化、IoTなどの新規事業など、ビジネス領域の拡大で企業としてのVAIO自体の強化を目指すが、今後も屋台骨となるPC事業で好調を維持できるか。ここまでの短期決戦を乗り切り、ここから一過性の盛り上がりではなく継続した強い事業構造への転換を図る、吉田氏が「フェーズ2」と呼ぶVAIOの新たな成長戦略がはじまったばかりだ。