楽天モバイルがワイモバイルに勝つには何が必要か

楽天モバイルがワイモバイルに勝つには何が必要か

2017.12.04

「FREETEL」ブランドの通信事業を買収し、契約数が140万に達するなど好調な伸びを見せる楽天の「楽天モバイル」。個人向けサービスとしてMVNOとしてはトップシェアを獲得したものの、低価格という括りではソフトバンクのワイモバイルブランドに大きく水をあけられている。ワイモバイルに追いつくためには何が必要なのだろうか。

FREETEL買収で契約数を140万に伸ばす

大手キャリアの顧客流出防止策などによってMVNOが軒並み軒並み伸び悩む中、順調に成長を続けているMVNOが楽天の「楽天モバイル」だ。楽天モバイルは積極的なプロモーションや実店舗展開などで知名度と販路を急拡大しており、2014年10月のサービス開始から約3年で、105万を超える契約数を獲得するに至った。

そしてもう1つ、楽天のMVNO事業の契約数を大きく伸ばしたのが企業買収である。楽天は、経営危機に陥り12月4日に民事再生法の適用を申請した、プラスワン・マーケティングの、「FREETEL」ブランドの通信事業を11月1日に買収。同ブランドの35万契約が楽天に移ったことで、140万以上の契約数を獲得するに至ったのである。来年の1月15日には同ブランドの通信事業が楽天モバイルに統合されるとのことで、来年以降は名実共に楽天モバイルの契約数としてカウントされることになる。

楽天のMVNOによるモバイル通信事業は100万契約を超えており、買収したFREETELブランドの35万契約を足して140万契約に達している

楽天モバイルが特徴的なのは、大手MVNOの中でも、個人向けの通信サービス利用者が契約数の大半を占めていることだ。契約数だけで言えば、やはりMVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が既に200万契約を超えているのだが、同社は法人向けのビジネスにも力を入れているため、個人向けの「IIJmioモバイル」に限ればその契約数は97万となっている。個人向けだけで140万もの契約数を持つ楽天が、いかにMVNOとして大きな存在感を持つかが理解できるだろう。

しかも楽天モバイルの顧客は、従来のMVNOの主要顧客層と言われてきた30~40代から、20~30代へと、スマートフォンをより積極的に利用する若い世代へと移ってきている。従来、MVNOはiPhoneを正規に取り扱うのが困難であり、若い世代の獲得は難しいと言われてきたが、楽天モバイルはそうした世代の攻略にも成功しつつあるようだ。

総合力では圧倒的にワイモバイルの方が上

確かにMVNOの中では頭一つ抜き出た存在となった楽天だが、低価格のモバイル通信サービスという視点で見た場合、より大きなライバルが存在する。それはソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルだ。

低価格サービスの先駆けであるワイモバイルはMVNOではなく、大手キャリアの一角を占めるソフトバンク自身が直接サービスを提供している。その優位性を生かして、充実した店舗網や積極的なプロモーション、そしてアップルやグーグルなどとコネクションを持つソフトバンクの強みを生かした端末ラインアップなどで、MVNOよりまいつきの料金はやや高いながらも、低価格の市場で圧倒的なシェアを獲得しているのだ。

しかもワイモバイルは低価格サービスの先駆けだけあって、他のサブブランドやMVNOの先を行く戦略を積極的に進めており、それが顧客獲得へと大きくつながっている。サポート効率化のためグーグルと手を組み、自身で提供する販売するAndroidスマートフォンを、2世代までのOSアップデートを保証する「Android One」に統一を図ったり、純粋な新規契約者である中高生をいち早く獲得するべく、12月より学割サービス「タダ学割」を開始するなどの取り組みは、他社には見られないものだ。

ちなみにワイモバイルの前身は、PHS事業を展開していたウィルコムと、「イー・モバイル」ブランドでWi-Fiルーターなどを中心としたモバイル通信サービスを提供してきたイー・アクセスの2社。両社が合併してワイモバイルが誕生した当初は、両社の契約数を合わせて約1000万契約を獲得していた。ソフトバンクと合併した現在、ワイモバイル単独での契約数は公表されていないのだが、PHSなどの純減が続くとはいえ、現在の好調ぶりを考慮すれば当時の契約数を超えている可能性が高い。

ワイモバイルは「Android One」を採用したスマートフォンを積極投入し、ソフト部分を統一することでサポートを効率化する取り組みを進めている

つまり楽天が、真に低価格のモバイル市場を押さえるには、10倍近い契約数を獲得していると考えられ、なおかつインフラ、サービスなどさまざまな面で圧倒的優位性を持つ相手と戦う必要があるわけだ。正面からぶつかっても勝てる相手ではないだけに、戦略にも相当の工夫が求められることとなる。

契約数拡大の切り札はやはり買収か

そこで、楽天が現在推し進めている戦略の1つに挙げられるのが、楽天のサービスとのシナジーを生かした顧客獲得策の強化だ。楽天は「楽天市場」「楽天カード」「楽天スーパーポイント」など、多くの人に利用されているサービスを持つ強みがある。それらのサービスと連携することで、効率よく契約獲得につなげることができているわけだ。

例えば、楽天モバイルを契約するとスーパーポイントアッププログラム(SPU)の対象となり、ポイントが2倍、楽天カードやスマートフォンアプリなど他のサービスと組み合わせて、最大で8倍のポイントが得られる仕組みを用意。さらに楽天スーパーポイントで楽天モバイルの携帯料金を支払える仕組みも用意していることから、楽天のサービス利用者にとってその魅力は大きい。

また楽天モバイルは端末の値引きによる販売施策を積極的に実施し、それが契約獲得に大きな効果をもたらしていることから、「楽天スーパーセール」でも楽天モバイルのスマートフォン値引きセールを実施。スーパーセールをきっかけに楽天モバイルに申し込んだ人が6割を超えるなど、契約数の拡大に貢献しているようだ。

端末の値引き販売が加入者獲得に高い効果があるとのことで、楽天では「楽天スーパーセール」での端末セールを、楽天モバイルの加入者拡大にも結び付けている

そしてもう1つは、投資コストを抑えて契約数の獲得や顧客満足度を高める、コスト効率化の徹底だ。例えば、楽天モバイルのテレビCM投下量は大手キャリアのサブブランドの14分の1だというが、それでも楽天の他のサービスとの連携などによって、サブブランドと変わらないブランド認知を獲得しているという。さらに今後は利用者の声を取り入れた改善を積極的に進めることで、口コミによる契約の拡大も進めていきたい考えのようだ。

楽天モバイル事業を担当している、楽天の執行役員である大尾嘉宏人氏は、「モバイルとサービスとの組み合わせに関して言えば、楽天グループの総合力を生かすことで勝てると思っている。まだ打つ手はいっぱいある」と話し、ワイモバイルへの対抗にも自信を見せている。だが足元の会員数を見ると、楽天モバイルは3年かけてようやく100万契約を超えたという状況で、現状のペースでワイモバイルに追いつくのは相当厳しいと言わざるを得ない。

そこで注目されるのは、やはりプラスワン・マーケティングの通信事業を買収したように、他のMVNOを買収して契約数を拡大していくことだろう。大尾嘉氏は買収に関して「前向きに検討している」と話し、積極的に取り組む姿勢を示している。今後MVNO同士の競争は一層激しくなり、脱落するMVNOも多く出てくると考えられることから、買収が楽天モバイルの事業拡大に向けた大きな武器の1つになると考えられそうだ。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。