Airbnb幹部と東京のど真ん中でカヤックを

Airbnb幹部と東京のど真ん中でカヤックを"体験"してわかったこと

2017.12.05

民泊サービスとして有名な「Airbnb」だが、「体験」も取り扱っていることをご存知だろうか?

「体験とは何か?」と言われても、Airbnbのサイトには「体験(Experiences)」としか書かれていない。従来の旅行サービスで言う「オプショナルツアー」とも言うべきものだが、同社は「さまざまな場所でユーザーが"体験"できるやりたいこと」を「体験」と定義しており、「ツアー」とは一線を画す。日本人向けサービスでは「アソビュー」が競合に当たるだろう。

Airbnbで東京・体験を検索すると、食事からスポーツまで、さまざまなアクティビティが見つかる

Airbnbは1年前の11月に「Trips」を発表。これは、「体験」に加えてレストラン予約サービスなどと連携する「プレイス(国内では未提供)」などを用意し、Airbnbが長年提供してきた民泊の枠を超え、文字通り"旅行"を一つのサービス・アプリとして横断的に提供するものだ。

特にコアとなる「体験」の成長は著しく、公開後1年で掲載件数が全世界3100件を超え、26カ国40以上の都市で楽しめる「体験」が掲載されている。さらに驚くのが、体験の予約数で「東京」が世界一であることだ。来訪観光客数はもちろん、国内ユーザーの絶対数が少ない東京が、パリやLA、バルセロナなどの欧米主要都市を差し置いてもっとも利用されたのはなぜか。

筆者は、米AirbnbでTrips事業の最高責任者を務めるJoseph Zadeh氏と共に「東京都心で遊ぶカヤック」を体験し、その魅力とAirbnbが考える「体験」の価値についてZadeh氏に話を聞いた。

米Airbnb Trips事業 最高責任者 Joseph Zadeh氏

3カ月で100組以上の訪日外国人に「体験」を提供したカヤック

今回体験した「体験」は、「Tokyo waterway night paddling」。旧中川を上って北十間川へと進入し、東京スカイツリーを背景に記念写真を撮れる往復約6kmのルートだ。この「体験」を提供するクーランマランの福田 高士氏がAirbnb向けにサービスをスタートしたのは9月から。Airbnb側からのアプローチで掲載を始めたという。

実際に、東京スカイツリーを背景に記念撮影した写真

もともと日本語で日本人向けをメインにサービス展開しており、昨年から台湾人の知人などからの紹介で「ポツポツ紹介があった程度」(福田氏)でしか外国人の利用者はいなかったという。10年以上に渡ってカヤック体験のインストラクターを務め、スカイツリー見学のコース体験も5年ほど提供してきた福田氏だが、「英語は本当に初歩的なガイドしかできなかった」と苦笑いする。

しかし、Airbnbに掲載されてから3ヶ月ほどで、既に100数十組の応対をこなし、時には1日に20~30組とメールでコミュニケーションするようになったという。「日本人は冬に向けて客足が鈍るし、週末に予約が集中しますが、外国人はまだ予約が入りますし、平日の予約も多く、今では『これ(Airbnb)一本でできるかも』という手応えを少し感じています」(福田氏)。

Airbnbによれば、このカヤック体験は東京の「体験」人気でトップ5に入る人気コンテンツだという。料金は2~3時間で料金は1人あたり7000円と、「体験」全体の平均料金である1人あたり約6125円(55ドル)を超えており、「日本の首都の川でカヤックを楽しめる」という希少性が好まれている一端が見て取れる。

「体験」のホストは応募自由、でも「落第」も

来日したAirbnbの社員は、Zadeh氏と共にアメリカから来た2名と中国、オーストラリアオフィス各1名の計5名で、Zadeh氏は短期留学で、日本に滞在したことがあるという。来日の目的は、「(トリップ事業最高責任者として)40都市以上でサービスを提供する中で、できるだけ各国のオフィスへ行き、街を見て、トップホストに会うこと」と話す。

東京以外にも北京や上海、香港、シンガポールとアジア各国を訪問するが「東京で一番長く滞在します。大学院で日本語を勉強しましたし(笑)」とZadeh氏。前述の福田氏以外にも、脱サラして渡英し、英語でコメディを勉強した日本人の「コメディバー」を訪れたという。

Zadeh氏は、なぜ東京が「体験」で一位になったのか、体感してわかったポイントがあるという。

「体験が成功する鍵は『ホスト』です。予約する時こそ、『面白そう』というだけで予約しますが、最終的なユーザーの評価には『人柄』や『情熱』が影響します。似たような体験であっても、方や成功、方や失敗となるのはこの要素が大きい。(福田氏が英語はダメと言っていた話に対し)英語がダメとかは関係ない。ボートをわかりやすく身振り手振りで教えてくれたり、細かい道具を用意してくれていたりと、『気配り』が大事。それが素晴らしいホストの要素だと思います」(Zadeh氏)

こうした写真撮影も『人柄』の一つとして評価につながるケースがあるとZadeh氏は話す

ホストが大切と力説するZadeh氏だが、実は人気コンテンツに特徴がないという裏返しでもあるようだ。「これが特に人気になるという予測は難しい」(Zadeh氏)と話すように、ヨガやランニング体験といったありふれたアクティビティはどの都市でも人気になるという。

「例えばスペイン・バルセロナの服屋の地下でフラメンコを見られたり、米国・シアトルでは狼に触れ合うことができる。蜂の防護服を着てミツバチの生態を知るといったことも可能です。日本では築地の『体験』も人気ですし、一概に何が当たるとは言い難い」(Zadeh氏)

だからこそ、Airbnbとしては『体験』を提供するホストを厳選している。福田氏のようにAirbnb側からアプローチすることがあれば、同社Webサイトから応募もできるものの、「体験のホストには、専門知識があるのか、情熱を持っているのかという審査を設けています。教育プログラムも用意して、どのように応対すべきか改善してもらうこともできますが、それでも水準に満たなければ受け入れられません」(Zadeh氏)。

日本では民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年6月に施行され、少なくとも法制度上は民泊のGoサインが明確に出ることになる。Airbnb=民泊というイメージが定着しつつある中で、いかに「体験」を、トリップという付加価値を広めていくのか。

「『体験』は私たちにとってあくまで一部です。2011年~2012年頃に『滞在(民泊)』が順調に軌道に乗り、次のステップとして総合的な旅行体験の一部に『体験』があると考えました。レストラン予約も含め、私たちの価値は一つのアプリですべてを完結できること。それは、『差別化の中心は人』という私たちの考えも含め、既存のパッケージツアーにない『人と触れ合う体験』を大切にすることが、これまでとは違う価値だと思います」(Zadeh氏)

例えば「体験」を利用した1週間あたりのユーザー数は、今年の1月から20倍に伸びたという。主なユーザーはミレニアル世代で、2/3が35歳未満だという。これは、口座の開設でさえアプリの利便性で銀行を選択する若年層ならではの「一つのアプリですべてが完結できる」ことを重視した結果だと言えよう。

福田氏(左)のような上質なホストを多く抱えられる仕組みがAirbnbのメリットだが、絶対数ではアソビューに大きく劣る

Zadeh氏は、現在の東京の「体験」が訪日外国人ばかりであると前置きした上で「サンフランシスコで言えば地元が多い。長期的には、市場に対してたくさんの上質な『体験』を提供していけば、東京でもこの傾向は変わっていく」(Zadeh氏)と話す。

現状のAirbnbは全世界の「体験」が約3100件であり、日本で「体験」を提供する代表格のWebサービス「アソビュー」の1万7864件(12月4日時点)と比較すると格段に少ない。アプリUI・UXの統合体験が重視される世の中になりつつあるのは説明するまでもないが、コンテンツ量の格差は集客する上で少なからず足かせとなるだろう。

また、福田氏のカヤック体験ページに代表されるように、マルチ言語表示にも対応しておらず、現状は「インバウンドビジネス」としての魅力に偏っている。これでは、いくらホストが「人柄」や「情熱」を持ってユーザーに接しても、インバウンドと両輪となる「日本人のユーザー増」というZadeh氏の描くロードマップにも支障をきたす可能性がある。

Airbnbとしては、昨年7月に東京・新宿にオフィスを開設し、日本人スタッフの拡充も進めている。MicrosoftやGoogle、Facebook、Twitterのように日本に根ざしたサービスと成長できるかは、Zadeh氏ら米Airbnbが抱くビジョン以上に、日本法人の働きにかかっていると言えそうだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。