地方から変わる教育。広島県が先進的な新たな教育を目指す

地方から変わる教育。広島県が先進的な新たな教育を目指す

2017.12.05

2021年の大学入試改革に向けて、小中高の教育のあり方が大きく変化している。というのも、これまでの入試テストは、問題用紙が配られ、それに対する答えを記入するというのがスタンダードだった。それが今、変わろうとしている。

どのように変わるのか。文部科学省の「学習指導要領のポイント等」によると、「思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する」という一文がある。つまり、これまで受験で重視された「記憶力」ではないのだ。もちろん、学習をするにおいて記憶力は大切だ。ただ、それ以上に思考力、判断力、表現力等が重視されることになる。

では、具体的にはどういう学習になるのか。これまで、しばしば多くの学校の授業を見学・取材させていただいたが、グループワークの時間を多くとる学校が増えている。先生がテーマを与え、グループ分けされた生徒たちがそれについてディスカッションする。そして、プレゼンテーションするという具合だ。もちろん、正当な答えはない。生徒たちの議論から生まれた結論が、まさしく答えなのだ。

離島に先進的学校を新設

こうした教育を目指すために、新たに中高一貫校を新設しようとしている自治体がある。広島県だ。

もちろん、既存の学校の教育方針を変更し、こうした新たな学習を推進していくというのが大筋だ。だが、そうした新教育を目指し、学校を新設するというのも良案だと思う。

では、広島県はこの学校をどこに新設するのか。それは瀬戸内海に浮かぶ大崎上島。橋でつながっていない“離島”としては、瀬戸内海で小豆島に次ぐ大きさの島である。「地理的及び自然的特性を生かした振興を図るための特別の措置を講ずること」を目的とした、「離島振興法」が適用された島である。

広島県教育委員会 寺田拓真氏

まず、県庁にて教育委員会の方に話をうかがった。なぜ、県が大規模な学校を新設するのか。広島県教育委員会事務局課長の寺田拓真氏は、「広島から日本の教育を 変えていきたい。その手本となるべき学校の新設を目指す」と話す。広島県は、一昔前はいわゆる“不良”と呼ばれる若者が多かったところ。文科省から是正指導を受けたこともある。それが今、小学校教育で全国5位、中学校教育で15位前後の学力を達成しているのだそうだ。教育委員会や学校の先生といった方々の努力は並大抵ではなかったであろう。

竹原と大崎上島を結ぶフェリー

実際に、どのような学校になるのか。何しろ離島だ。通学に生徒たちが苦労するのは想像に難くない。だが、おおよそ予測できていたが、全寮制の中学・高校の一貫校となるらしい。孤島の学校といえば、島根県の隠岐島前高校が有名だが、こちらは寮を備えるほか、家からの通学も可能だ。だが、「高校魅力化」に成功した孤島の学校として、全国の教育現場にその名が知れわたっている。

さて、県庁で寺田課長からお話をうかがったあと、教育委員会の職員の方に建設予定地を案内していただいた。まず広島市内から東へクルマを走らせること1時間30分ほど。竹原市の港へと向かう。余談だが、この竹原市はアニメ「たまゆら」の舞台になったところだそうだ。そして、ここからフェリーで約30分、大崎上島に上陸した。

瀬戸内海が見わたせる神峰山

大崎上島に到着したところ、島の主峰「神峰山」(かみみねやま)の頂上に案内された。頂上からは瀬戸内海に浮かぶ島の数々、白い航跡を引く船が見わたせた。正直「こんな景観のよい島で勉強できるのか。しかも、全寮制だというのだから、3年間、もしくは6年間、この島で過ごせるだけでも価値がある」と素直に思った。

神峰山頂上からの景観をひとしきり堪能したあと、いよいよ本題である学校建設予定地へと向かった。現地に着いてみると、とにかく広い! なんでもマツダスタジアム約5個分の広さがあるそうだ。まだ、建築物がないまっさらな敷地だったので、余計に広く感じたのかもしれない。

左:神峰山からの景観。右:広大な学校建設予定地

そしてロケーションのよさ。私が立った場所からは右に先ほど訪れた神峰山、そして左側は瀬戸内海だ。この神峰山方面にコテージ風の寮が建つらしい。通常、寮といえば3階建てぐらいのビル1棟というイメージだが、コテージ風とは何ともうらやましい。そして、建設予定地から海までは、すぐに歩いて行ける距離にあり、堤防を越えるとそこは穏やかな瀬戸内海だった。しかも、真っ白な砂浜。案内してくださった教育委員会の方によると、この砂浜で生徒が遊んだり、泳いだりできるらしい。

しかし、なぜこれほどの規模の全寮制中高一貫校を設立するのか。その目的は「グローバル・リーダー」の育成にある。日本ではグローバル・リーダーと呼べる人材が少ない。そうした人材を生み出すために、それに見合った教育を行っていくという。授業の内容も大事だろうが、案外と豊かな自然と寮生活ではぐくんだ協調性・協働性などが、新たなリーダーを生み出すのかもしれない。

左:建設予定地至近にある大串海岸の夕陽。晴れていれば、この学校の生徒は毎日この眺めを見られる。右:帰路のフェリーからの夕陽

いい忘れたが、この学校の名称は「広島叡智学園」となる予定だ。特筆したいのは、私立校ではなく県立校であるということ。つまり、基本的に入学金、月額授業料はほかの県立学校と同じということになる。海外研修旅行積立金や寮費といった諸費は別になるが、私立に比べれば教育費は抑えられるだろう。平成31年4月に開校を目指し、中学1年の1期生を50人程度、高等学校進学時に20人程度の外国人留学生を受け入れる予定だ。そして平成36年には360人規模まで生徒を増やすという。

取材が終わり、先ほどの海岸を再び訪れると、なんとも美しい夕景が映えていた。何年後かに、グローバル・リーダーと呼ばれるような人材が、広島叡智学園から輩出されるのを楽しみにしたい。

ワイモバイルが「学割」で先制攻撃、スマホデビューの低年齢化を取り込む

ワイモバイルが「学割」で先制攻撃、スマホデビューの低年齢化を取り込む

2017.12.05

ソフトバンクが11月30日に開催した「Y!mobile」(ワイモバイル)の発表会では、12月からの「学割」を発表。大手キャリアのサブブランドを含めた格安スマホ市場でシェアNo.1を誇るワイモバイルによる先制攻撃が始まった。

年々スマホデビューが低年齢化する中で、ワイモバイルは子どもが安心してスマホを利用できる環境作りにも取り組む。その狙いはどこにあるのだろうか。

ワイモバイルは「学割」を12月から開始する

中学生のスマホデビューは3年前の2倍に

スマホの「学割」は、春の入学や進級シーズンに向けたキャンペーンとして、年明けに発表される風物詩となっていた。だがワイモバイルは12月から半年間に渡って展開。5〜18歳を対象に、次の機種変更まで続く「データ容量2倍」や3か月の基本料無料を提供する。

なぜ12月に前倒しするのか。ワイモバイル事業を統括するソフトバンク執行役員の寺尾 洋幸氏は、「早く始めればそれだけ話題になるだろう、という仮説を立てた」と飄々と語る。実際に数が出るのは3月になると予想するものの、他社に先んじたプロモーションにより若年層からの認知度も高める狙いもあるという。

囲み取材に応じるソフトバンク 執行役員 プロダクト&マーケティング統括 Y!mobile事業推進本部 本部長の寺尾 洋幸氏

背景には「スマホデビュー」の低年齢化もある。ワイモバイルの調査では中学1年生の39%がスマホを保有しており、3年前と比べて2倍に増えている。子どもにスマホを持たせるかどうかではなく、「親御さんは、スマホを買うこと自体は決めている」と寺尾氏は指摘する。

学割と併せて発表した新端末として、中〜低価格帯の「Android One」スマホが4機種登場した。ベーシックな端末が中心だが、グーグルがアップデートを保証するため安全性が高いことが特徴になる。

安価なAndroid端末ならMVNOという選択肢もあるが、ワイモバイルはiPhoneを取り扱えるという強みもある。学生に人気だった小型の「iPhone 5s」や「iPhone SE」に加え、10月には4.7インチの「iPhone 6s」も発売したことで、「クラスの仲間と同じiPhoneを使いたい」若年層に訴求しそうだ。

iPhone SEに加え、10月からは「iPhone 6s」も取り扱う

親子間のスマホルールに一役買う取り組みも

だが、スマホデビューの低年齢化はいいことばかりではない。ネット上の有害な情報やトラブルは、親にとって不安の種だ。そこで、子どもにスマホを買い与える親たちを安心させる仕組みが求められる。

その仕組みの1つとして、ワイモバイルは有害サイトをブロックする「あんしんフィルター」をスマホに搭載する。だが、子どもは子どもなりに、LINEやSNOW、動画やゲームを自由に楽しみたいと考えている。まして中学生にもなれば、親から子に向けて一方的に制限をかけるだけではうまくいかない。

スマホへの関心は親子間で異なる

スマホの普及に伴い、スマホ利用に関する親子間での意見の調整は、どの家庭でも悩みどころだ。そこでワイモバイルは「ティーン雑誌」に着目したという。子どもにとって憧れの存在である読者モデルを活用しつつ、「夜何時までスマホを使えるか」などのルールをリスト化。具体的な時間などの詳細は各家庭で相談し、親子でサインできる書式になっている。

ティーン人気No.1の雑誌「ニコラ」と共同で作った、スマホルールリスト

MVNOの中にもトーンモバイルのように子ども利用にフォーカスした事業者は出てきているが、まだ少数派だ。この機会にワイモバイルは親世代に向けて安心感をアピールしつつ、あわよくば「家族割」で家族まるごと囲い込みたいという思惑も見えてくる。

実は、この戦略には大きな死角もある。それはソフトバンクが提供する「SoftBank」ブランドの存在だ。同じ企業体の別ブランドであるワイモバイルとして、繰り出せる施策には限界もある。寺尾氏自身も兼ね合いの難しさを漏らす場面があった。

だが学割について、ワイモバイルが攻めていることは間違いない。料金の安さや端末ラインアップ、安心・安全といったさまざまな角度から、ワイモバイルは若年層のスマホデビューに最適なパッケージを作り出そうとしている。

Airbnb幹部と東京のど真ん中でカヤックを

Airbnb幹部と東京のど真ん中でカヤックを"体験"してわかったこと

2017.12.05

民泊サービスとして有名な「Airbnb」だが、「体験」も取り扱っていることをご存知だろうか?

「体験とは何か?」と言われても、Airbnbのサイトには「体験(Experiences)」としか書かれていない。従来の旅行サービスで言う「オプショナルツアー」とも言うべきものだが、同社は「さまざまな場所でユーザーが"体験"できるやりたいこと」を「体験」と定義しており、「ツアー」とは一線を画す。日本人向けサービスでは「アソビュー」が競合に当たるだろう。

Airbnbで東京・体験を検索すると、食事からスポーツまで、さまざまなアクティビティが見つかる

Airbnbは1年前の11月に「Trips」を発表。これは、「体験」に加えてレストラン予約サービスなどと連携する「プレイス(国内では未提供)」などを用意し、Airbnbが長年提供してきた民泊の枠を超え、文字通り"旅行"を一つのサービス・アプリとして横断的に提供するものだ。

特にコアとなる「体験」の成長は著しく、公開後1年で掲載件数が全世界3100件を超え、26カ国40以上の都市で楽しめる「体験」が掲載されている。さらに驚くのが、体験の予約数で「東京」が世界一であることだ。来訪観光客数はもちろん、国内ユーザーの絶対数が少ない東京が、パリやLA、バルセロナなどの欧米主要都市を差し置いてもっとも利用されたのはなぜか。

筆者は、米AirbnbでTrips事業の最高責任者を務めるJoseph Zadeh氏と共に「東京都心で遊ぶカヤック」を体験し、その魅力とAirbnbが考える「体験」の価値についてZadeh氏に話を聞いた。

米Airbnb Trips事業 最高責任者 Joseph Zadeh氏

3カ月で100組以上の訪日外国人に「体験」を提供したカヤック

今回体験した「体験」は、「Tokyo waterway night paddling」。旧中川を上って北十間川へと進入し、東京スカイツリーを背景に記念写真を撮れる往復約6kmのルートだ。この「体験」を提供するクーランマランの福田 高士氏がAirbnb向けにサービスをスタートしたのは9月から。Airbnb側からのアプローチで掲載を始めたという。

実際に、東京スカイツリーを背景に記念撮影した写真

もともと日本語で日本人向けをメインにサービス展開しており、昨年から台湾人の知人などからの紹介で「ポツポツ紹介があった程度」(福田氏)でしか外国人の利用者はいなかったという。10年以上に渡ってカヤック体験のインストラクターを務め、スカイツリー見学のコース体験も5年ほど提供してきた福田氏だが、「英語は本当に初歩的なガイドしかできなかった」と苦笑いする。

しかし、Airbnbに掲載されてから3ヶ月ほどで、既に100数十組の応対をこなし、時には1日に20~30組とメールでコミュニケーションするようになったという。「日本人は冬に向けて客足が鈍るし、週末に予約が集中しますが、外国人はまだ予約が入りますし、平日の予約も多く、今では『これ(Airbnb)一本でできるかも』という手応えを少し感じています」(福田氏)。

Airbnbによれば、このカヤック体験は東京の「体験」人気でトップ5に入る人気コンテンツだという。料金は2~3時間で料金は1人あたり7000円と、「体験」全体の平均料金である1人あたり約6125円(55ドル)を超えており、「日本の首都の川でカヤックを楽しめる」という希少性が好まれている一端が見て取れる。

「体験」のホストは応募自由、でも「落第」も

来日したAirbnbの社員は、Zadeh氏と共にアメリカから来た2名と中国、オーストラリアオフィス各1名の計5名で、Zadeh氏は短期留学で、日本に滞在したことがあるという。来日の目的は、「(トリップ事業最高責任者として)40都市以上でサービスを提供する中で、できるだけ各国のオフィスへ行き、街を見て、トップホストに会うこと」と話す。

東京以外にも北京や上海、香港、シンガポールとアジア各国を訪問するが「東京で一番長く滞在します。大学院で日本語を勉強しましたし(笑)」とZadeh氏。前述の福田氏以外にも、脱サラして渡英し、英語でコメディを勉強した日本人の「コメディバー」を訪れたという。

Zadeh氏は、なぜ東京が「体験」で一位になったのか、体感してわかったポイントがあるという。

「体験が成功する鍵は『ホスト』です。予約する時こそ、『面白そう』というだけで予約しますが、最終的なユーザーの評価には『人柄』や『情熱』が影響します。似たような体験であっても、方や成功、方や失敗となるのはこの要素が大きい。(福田氏が英語はダメと言っていた話に対し)英語がダメとかは関係ない。ボートをわかりやすく身振り手振りで教えてくれたり、細かい道具を用意してくれていたりと、『気配り』が大事。それが素晴らしいホストの要素だと思います」(Zadeh氏)

こうした写真撮影も『人柄』の一つとして評価につながるケースがあるとZadeh氏は話す

ホストが大切と力説するZadeh氏だが、実は人気コンテンツに特徴がないという裏返しでもあるようだ。「これが特に人気になるという予測は難しい」(Zadeh氏)と話すように、ヨガやランニング体験といったありふれたアクティビティはどの都市でも人気になるという。

「例えばスペイン・バルセロナの服屋の地下でフラメンコを見られたり、米国・シアトルでは狼に触れ合うことができる。蜂の防護服を着てミツバチの生態を知るといったことも可能です。日本では築地の『体験』も人気ですし、一概に何が当たるとは言い難い」(Zadeh氏)

だからこそ、Airbnbとしては『体験』を提供するホストを厳選している。福田氏のようにAirbnb側からアプローチすることがあれば、同社Webサイトから応募もできるものの、「体験のホストには、専門知識があるのか、情熱を持っているのかという審査を設けています。教育プログラムも用意して、どのように応対すべきか改善してもらうこともできますが、それでも水準に満たなければ受け入れられません」(Zadeh氏)。

日本では民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年6月に施行され、少なくとも法制度上は民泊のGoサインが明確に出ることになる。Airbnb=民泊というイメージが定着しつつある中で、いかに「体験」を、トリップという付加価値を広めていくのか。

「『体験』は私たちにとってあくまで一部です。2011年~2012年頃に『滞在(民泊)』が順調に軌道に乗り、次のステップとして総合的な旅行体験の一部に『体験』があると考えました。レストラン予約も含め、私たちの価値は一つのアプリですべてを完結できること。それは、『差別化の中心は人』という私たちの考えも含め、既存のパッケージツアーにない『人と触れ合う体験』を大切にすることが、これまでとは違う価値だと思います」(Zadeh氏)

例えば「体験」を利用した1週間あたりのユーザー数は、今年の1月から20倍に伸びたという。主なユーザーはミレニアル世代で、2/3が35歳未満だという。これは、口座の開設でさえアプリの利便性で銀行を選択する若年層ならではの「一つのアプリですべてが完結できる」ことを重視した結果だと言えよう。

福田氏(左)のような上質なホストを多く抱えられる仕組みがAirbnbのメリットだが、絶対数ではアソビューに大きく劣る

Zadeh氏は、現在の東京の「体験」が訪日外国人ばかりであると前置きした上で「サンフランシスコで言えば地元が多い。長期的には、市場に対してたくさんの上質な『体験』を提供していけば、東京でもこの傾向は変わっていく」(Zadeh氏)と話す。

現状のAirbnbは全世界の「体験」が約3100件であり、日本で「体験」を提供する代表格のWebサービス「アソビュー」の1万7864件(12月4日時点)と比較すると格段に少ない。アプリUI・UXの統合体験が重視される世の中になりつつあるのは説明するまでもないが、コンテンツ量の格差は集客する上で少なからず足かせとなるだろう。

また、福田氏のカヤック体験ページに代表されるように、マルチ言語表示にも対応しておらず、現状は「インバウンドビジネス」としての魅力に偏っている。これでは、いくらホストが「人柄」や「情熱」を持ってユーザーに接しても、インバウンドと両輪となる「日本人のユーザー増」というZadeh氏の描くロードマップにも支障をきたす可能性がある。

Airbnbとしては、昨年7月に東京・新宿にオフィスを開設し、日本人スタッフの拡充も進めている。MicrosoftやGoogle、Facebook、Twitterのように日本に根ざしたサービスと成長できるかは、Zadeh氏ら米Airbnbが抱くビジョン以上に、日本法人の働きにかかっていると言えそうだ。