ミニバンに代わるクルマに? マツダの3列シートSUV「CX-8」に試乗

ミニバンに代わるクルマに? マツダの3列シートSUV「CX-8」に試乗

2017.12.08

マツダが多人数乗車のニーズに対応すべく開発した3列シートSUV「CX-8」。小飼雅道社長が「ミニバンに代わる新たな市場の創造に挑戦する」と意気込む最新のマツダ車だが、実際のところ、ミニバンの購入を検討する人にとって新たな選択肢になり得るのだろうか。試乗して確かめた。

最新のマツダ車「CX-8」に試乗

新世代商品群を補完する「CX-8」

マツダは、2012年に新世代商品群の第1弾としてSUV(スポーツ多目的車)の「CX-5」を発売して以後、「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」「CX-3」「ロードスター」と順次、SKYACTIV(スカイアクティブ)技術と魂動(こどう)デザインを用いた新車を発表してきた。2017年にはCX-5がフルモデルチェンジし、新世代商品群の車種展開が一巡したことになる。

その上で、新世代商品群を補完する位置づけとして登場したのがCX-8だ。車両概要については、発表時に掲載となった記事を参照していただきたいが、マツダは「マツダ車にずっと乗り続けていただきたいので、CX-5に乗っていただいた方に家族が増え、多人数乗車を希望する際に応えられる車種として、3列シートのCX-8を導入しました」と説明している。

発売は2017年12月14日だが、受注は好調とのこと。カラーは「スノーフレイクホワイトパールマイカ」(いわゆる白)が人気のようだ。画像はキャンプに使うイメージで、車中泊もスペース的に余裕がありそうだった

日本で使える車体寸法に

その言葉を裏付けるように、CX-8の車体幅はCX-5と同じで、全長のみ3列シートを実現するため35.5cm伸びて4.9mとなっている。それでも「車体寸法は、国内で不便なく使える大きさに抑えている」とマツダは話す。事実、CX-8は、国内市場を主な狙いとして開発された車種だ。

車体寸法は全長4,900mm、全幅1,840mm、全高1,730mm

エンジンは、初代CX-5から採用されてきた排気量2.2LのディーゼルターボエンジンをCX-8のために改良し、搭載している。ガソリンエンジン車の選択肢はない。このディーゼルターボエンジンにより、「CX-5に比べ約200キロの重量増を感じさせない走りを実現した」と松岡英樹主査は語っている。

以上、CX-8の概要をおさらいしたうえで、試乗の印象を次に紹介しよう。

一貫して理想を追求するドライビングポジション

まず運転姿勢について。これはCX-8に限らないことだが、マツダは、運転を楽しむためと安全運転を促すため、運転姿勢を正しく得られる運転席の作りにこだわっている。簡単に言えば、進行方向に正対してきちんと座れて、手足をまっすぐ前へ伸ばせる姿勢をとれるようにする。

そんなことは当たり前だと思うかもしれないが、実際には、体が少し斜めになった状態で運転させられるクルマが多いのが現状だ。それが、ペダル踏み間違いの遠因になっている可能性は否定できない。

ということで、マツダ車の運転席に座ると、正しい姿勢であることに安堵を覚える。それはCX-8も同じだ。

運転席に着くとマツダのこだわりを感じた

最上級SUVならではの静粛性を実現

ディーゼルエンジンを始動して走りだすが、ディーゼル特有の振動や騒音はよく抑えられ、少なくとも車内にいる乗員に対しては、ディーゼルエンジンであることを気付かせない快適性を実現している。

走っている最中も室内の静粛性は優れ、CX-8をマツダが最上級SUVと位置づけるだけの高級さを実感することができた。そして、運転席のある1列目の座席と、3列目の座席の乗員が、日常的な普通の声で会話をすることができるほど静かな室内が保たれる。やや残念なのは、それほどの静けさの中にタイヤ騒音が侵入してくることだ。装着されていたのは走行性能を重視した銘柄だったが、その分、タイヤ騒音は気になった。

走行中は静粛性を実感したが、タイヤ騒音はやや残念だった

マツダの最上級SUVとして、走行感覚にも乗車感覚にも上質さを重視する車種であるにもかかわらず、その雰囲気を壊してしまうタイヤ選択には疑問が残った。近年、快適性を重視したタイヤであっても、走行性能を十分に満たしたものが出回っている。“Be a driver”を標榜し、“Zoom-Zoom”な走りを求めるあまり、目指した狙いと実際の開発とに多少のズレが生じたようだ。

「CX-5」に比べ200キロの重量増

CX-5に比べ車両重量の増加を感じさせないと試乗前に解説された動力性能については、やはり200キロという重量増は大人3~4人分の体重に相当するため、影響を無視しえない状況だった。

低回転域で大きな力を発揮するディーゼルエンジンとはいえ、例えば実際の交通環境の中で、時速40キロから50キロへ、あるいは50キロから60キロへというように、わずかな速度調節のため加速をしたいとき、一瞬のもたつきというか、遅れが生じた。

低回転域で力を発揮するディーゼルエンジンを搭載

強くアクセルペダルを踏み込んだ時の動力性能はかなり改善したとの説明であったが、アクセルペダルを強く踏み込むような場面は日常生活の中でめったにあることではない。もっと実用領域での気持ちよさや加速の俊敏さに開発の労力を注いでほしかったと思う。ここにおいてもマツダの勇み足と思える作り方が見えた。

ただ、それ以外の走行安定性や乗り心地について気掛かりな点はなく、快適に運転することができた。

3列目で感じた安全への目配り

また、2列目と3列目にも座ってみたが、2列目の座席は床との差が十分にあって、足を下へきちんと降ろした姿勢で座ることができ、それによって腿が座面で支えられるので、体を安定させやすかった。

3列目にも座ってみた

3列目は、さすがにやや体育座りに近い格好になるが、できるだけ足を曲げずに済む着座位置にしたとの説明である。その上で、やや体を斜めにして座りたくなったが、それでもシートベルトがきちんと腰の位置に落ち着き、走行中にズレることもなく、万が一の衝突に対しても体の拘束という安心が確保されているところに、安全への目配りの効いた作り込みがなされていることを知った。1列目から3列目まで、手抜きの無い開発が行われた1つの証と言えるだろう。

マツダの新世代商品群に、ミニバンはない。“Be a driver”のフレーズと共に、運転を楽しむための“Zoom-Zoom”なクルマづくりをマツダが目指した結果、ミニバンは切り捨てられた。では、ミニバン同様の3列シートを持つCX-8が、ミニバンの代替となるかというと、そうではないと試乗をして感じた。

スライドドアは不採用、最低地上高はSUV水準

CX-8の後ろのドアは、スライドドアではなくヒンジドアであるため、ミニバンを志向する人の求める大きな要件の1つは果たせない。実際、マツダのミニバンとして長らく愛用されてきた「MPV」は、初代がヒンジドアだったが不評で、2代目以降がスライドドアとなった。最終型のMPVはCX-8に近い車体寸法だが、後ろのドアの使い勝手がCX-8では大きく異なる。

ヒンジドアを採用

次に、車体の床下と路面との隙間にあたる最低地上高は、MPVが155mmであったのに対し、CX-8は200mmとなる。未舗装路を走ることも視野に入れるSUVにとって、この最低地上高は標準的であり、当然の高さだが、この差は乗降性においてやや不便が生じる。6~7人乗りで、若い家族の両親も同乗すると想定した場合、高齢者には床が高くなると乗り降りが不便だ。若者や壮年の人のように足を高く上げにくく、また体をSUVの床の高さまで持ち上げにくいのが高齢者である。たとえ手すりがあっても簡単ではない。

頭の中で思い描いた家族3世代でのドライブに、座席数が6~7あればいいと考えたのかもしれないが、乗降性が悪いと感じれば、高齢者は出掛けたくなくなるだろう。

ミニバンの“代替品”ではない「CX-8」

魂動デザインという、1つのイメージ戦略からすれば、マツダにとって四角い箱形のミニバンは想定外となるのだろう。かといって、SUVが3列シートになればミニバンの代替を果たせるのではないかという期待はしないほうがいい。マツダも、CX-8がミニバンの代替になるとは言っていない。

ミニバンに代わる市場の創出を狙う「CX-8」だが、ミニバンの“代替品”を期待してはいけない

マツダはCX-8について、長くマツダ車に乗ってもらいたいと考え、新世代商品群を補完する3列シート車を加えたとする。だが、ミニバンを選んできた顧客に選択肢がなくなったのも事実だ。マツダは、国内にミニバンブームが起きる前から多目的車としてMPVを世に送りだし、車名の通り、まさに多目的車(MPV:Multi Purpose Vehicle)の意味そのままにクルマの多用途性を提案したが、国内市場においては約26年で姿を消した。

そういった観点から考えると、企業の都合で車種を絞り込んだことにより、新世代商品群を好むファンを獲得できた一方で、永年のマツダ愛好者が離れていっているかもしれない側面がある。この後に登場するという次世代商品群が、これまでの新世代商品群の顧客離れを起こさせない車種構成や商品性を備えていることを願う。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu