ラジオ再浮上に1つの可能性 - ネットとの融合は進むか

ラジオ再浮上に1つの可能性 - ネットとの融合は進むか

2016.06.30

日本ではラジオ広告費が減少基調にあるが、ネットラジオが盛んな米国では、ラジオ広告市場が1兆円を越える巨大なマーケットを形成している。日本に米国のような市場が誕生する可能性はあるのだろうか。ネットラジオの収益化に不可欠な音声広告手法を手掛けるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)で話を聞いた。

左からDACプロダクト開発本部 シニアマネージャーの砂田和宏氏、テクノロジーサービス本部 第二システム開発部長の紙田拓弥氏、プロダクト開発本部 広告技術研究室長の永松範之氏

規模が違う日米のラジオ事情

まずは日本のラジオ業界が置かれている現状を電通の調査「日本の広告費」で確認すると、ラジオ広告費は1991年の年間2,406億円をピークに減少を続けており、ここ数年は同1,200億円台で推移している。ビデオリサーチの調査で聴取率を見てみると、首都圏に住む12歳から69歳までの男女のうち、2016年4月18日からの一週間で、ラジオを実際に聴いた人の割合は平均すると6.8%。2015年12月にFM補完放送(いわゆるワイドFM)が始まったこともあってか、聴取率は半年前の調査から1%増加した。首都圏の聴取率1%は約36万人に相当する。

米国のラジオ業界はどのような状況なのだろうか。DACの永松氏によれば、米国でネットラジオを含むラジオを聴いている人(リスナー)は1.5億人に達するという。車社会の米国ではカーラジオと接触する機会も多く、ラジオを聴くという文化は昔から根付いていたが、ネットラジオの登場でリスナーが全国レベルで増えたのだ。

巨大なラジオ広告マーケットが生まれた米国

国土の広い米国では、インターネットがラジオを米国全土に行き渡らせた。オンデマンド配信の番組ならば、聴きたいときに聴けるのもネットラジオの特徴。米国では、インターネットがラジオから時間と空間の制約を取り去ったわけだ。多くのリスナーを獲得したラジオの媒体価値は向上し、広告市場は日本の10倍以上、金額にすると1兆円超の規模に成長した。

2010年に登場した日本の「ラジコ」も一種のネットラジオといえそうだが、米国とは事情が大きく異なっている。ラジコには80を超えるラジオ放送局が参加しているが、配信しているのは、CMを含めて地上波放送と全く同じ内容。ラジコ独自の音声広告を導入するには至っていないのが現状だ。ラジコの登場でラジオは聴きやすくなったが、日本に独自の広告市場を有するネットラジオの経済圏が誕生したかというとそうではない。

「iHeartRADIO」や「Tunein」といった、米国で人気のネットラジオが使っているのが、音声広告をリスナーの属性に合わせてターゲティング配信する仕組み。聴いている人の端末から得られる情報を分析し、その人の年代、性別、興味のある分野などに合わせた広告を配信するシステムだ。同じ番組でも、聴いている人に合わせて異なる広告を配信できる同システムは、リスナーの属性を把握したうえで広告を出稿したいと考える企業(広告主)に訴求力が高い。

日本にネットラジオ勃興の機運?

音声広告のターゲティング配信はネットならではの技術で、地上波放送がメインの日本のラジオ業界では真似のできないシステムといえるが、この広告手法に取り組む日本企業は、ここへきてにわかに増えて始めている。そのうちの1社がDACだ。

DACは自社で保有する膨大なオーディエンスデータと連携し、ユーザーの属性に応じた音声広告を配信できる音声広告アドサーバー「FlexOne APE(フレックスワン・エイプ)」を先頃リリースした。この仕組みは「インターネット×音声」という組み合わせであれば様々な方法で活用が可能。DACの紙田氏は「(音声の分野であれば)可能性は無限大」とFlexOne APEの将来性に自信を示す。

FlexOne APEはDACが保有するデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)「AudienceOne」と連携している。AudienceOneにはスマートフォンなどから得られるcookie情報など、1兆件のデータが蓄積されているという

同社がFlexOne APEの導入先として想定しているのは、ネットラジオ、音楽配信サービス、アプリ、webサイトなどの分野。ラジオ業界がネットラジオに対応し、音声広告のターゲティング配信を導入すれば、その広告市場は飛躍的に拡大する可能性がある。

ネットラジオへの取り組みとして、注目したいのがTBSラジオの新サービスだ。リスナーの属性が把握できないポッドキャストの終了を決め、新たに「TBSラジオクラウド」を立ち上げた同社。新サービスの収益化に向けては、音声広告のターゲティング配信を導入する姿勢を示している。規模は小さいながらも、広告収入による無料放送を目指すネットラジオが日本にも誕生したというわけだ。

三方よしの音声広告手法

TBSラジオとDACがネットラジオで協力するかどうかは不明だが、仮にTBSラジオクラウドがFlexOne APEと連携すると、どのような広告配信ができるのか考えてみたい。例えば「ひげ剃り」の音声広告を行う場合は、配信先となる端末の持ち主が女性だと効果は薄い。FlexOne APEと連携していれば、端末の持ち主が男性と考えられる場合にのみひげ剃りのCMを流し、女性が持ち主と思われる端末には化粧品のCMを流すといったようなことが可能となる。

最適な音声広告を配信できる体制を整えることで、企業から広告を獲得したいメディア(この仮説でいうとTBSラジオ)にとって営業はやりやすくなる。1つの番組でも、リスナーの属性に合わせて異なるCMを流せるので、1番組あたりの広告収入に上限はなくなる。極端に言えば1番組で獲得可能な広告の数は無限に広がるのだ。

効率的に音声広告を流せる仕組みは、CMの無駄打ちを避けたい広告主にとってもメリットがあるだろう。リスナーにしてみれば、自身に関係の薄いCMが減るため不快感の軽減につながる効果も見込める。リスナー、メディア、広告主の全てに利点があるとするFlexOne APEの特徴をDACの砂田氏は「三方よし」と表現する。

ネットとの融合でラジオの価値を再発見

オールドメディアと呼ばれることもあるラジオだが、ネットラジオへの挑戦は、ラジオの広告媒体としての価値を改めて世間に示すチャンスとなるかもしれない。

地上波ラジオの聴取率調査では、「この番組はF1層(20歳から34歳までの女性)が何人くらい聴いている」といったような情報は集められるものの、同じF1層であっても置かれた状況や生活スタイルなどについては様々なケースが考えられる。FlexOne APEのようなアドサーバーと連携したネットラジオであれば、コンテンツの受け手について詳細な属性を把握することが可能。ネットラジオに取り組むラジオ局は、本放送のリスナー像を考える際にも、ネットラジオで得た情報を活用できる。

思い込みや先入観で「自社製品とラジオリスナーでは客層が違う」と判断していた企業であっても、詳しいリスナー情報を知れば、ラジオへの広告出稿を考えるようになるかもしれない。「ラジオには、可視化できていないユーザー層が存在していたと思う」と語る砂田氏は、リスナーの可視化が進むことで、ラジオ自体の媒体価値が向上するとの見方を示した。

日本のネット上に音声広告市場は誕生するか

革新的な音声広告手法を用意したDACだが、その仕組みを使うには、音声コンテンツが集まる大きなメディアが不可欠となる。例えばラジオ局が集結し、ネットラジオという大きなメディアを形成するような事態になれば、DACのFlexOne APEもその効果を発揮できるようになるわけだ。

どうしたら日本に大規模なネットラジオが誕生するか。ラジコが米国などと同じ意味でのネットラジオとして機能するようになるのが近道だと考えられるが、この道には高いハードルが待ち受けている。ラジコが独自広告による収益化を始めるには、コンテンツを供給している様々な権利者との間で交渉を進め、収入を分配するシステムを構築する必要があるからだ。

三方よしのFlexOne APEを展開するDAC。普及には音声広告を乗せられる場所、つまりは音声コンテンツが集まる大きなメディアが不可欠だ

ラジコが音声広告に対応するのがいつになるかは不明だが、豊富な音声コンテンツを持つラジオ局がネットラジオに取り組むことで、日本では現状でほぼないといわれるネット上の音声広告市場が生まれる可能性がある。現状のままではラジオ広告費の反転が難しいと考えるラジオ局が、率先してネットラジオに挑戦する意味は十分にあるはずだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。