東証一部復帰で勇退検討も道半ば、シャープ 戴社長続投で目指す「飛躍」

東証一部復帰で勇退検討も道半ば、シャープ 戴社長続投で目指す「飛躍」

2017.12.11

シャープ 代表取締役社長 戴 正呉氏

シャープは12月7日、東京証券取引所 市場第一部銘柄に指定され、同社 代表取締役社長の戴 正呉氏が就任以来、トッププライオリティに掲げていた「一部復帰」を果たした。

同社は6月30日に一部復帰の申請を行なっており、「東証一部から二部に指定替えとなった企業が、再び一部へ復帰したケースは過去数10年間で1件のみ。加えて、指定替え後、わずか1年4カ月でのスピード復帰は、過去に前例がない」(戴氏)という、異例ともいえる短期間での一部復帰を果たした。

シャープは、2015年度通期連結業績で430億円の債務超過に陥り、2016年8月に一部から二部へと指定替えになっていたが、鴻海傘下に入ることで再建を進めてきた。戴氏にとって、最初の通信簿となった2016年度決算では、売上高は前年比16.7%減の2兆506億円にとどまったが、営業利益は前年同期の1619億円の赤字から624億円の黒字に転換し、経常利益も前年同期の1924億円の赤字から250億円の黒字となった。

当期純損失こそマイナス248億円の赤字だったものの、2016年度下期だけで見れば、当期純利益は205億円の下期最終黒字化を達成し、黒字転換を確実なものにしていた。2017年度上期の連結業績も、売上高は前年同期比21.3%増の1兆1151億円、営業利益は前年同期の7900万円の赤字から405億円の黒字に転換を達成した。

特に第2四半期の最終利益は上期予想を大幅に上回り、リーマンショック以前の水準にまで回復したほどだった。自己資本比率も、2017年6月末時点の17.5%から、9月末時点では18.2%に上昇している。

同時に、2017年度通期業績見通しも上方修正を発表。売上高は据え置いて前年比22.4%増の2兆5100億円としたものの、営業利益は30億円増となる前年比48.9%増の930億円、経常利益は80億円増となる247.0%増の870億円、当期純利益は100億円増とし、前年の248億円の赤字から690億円への黒字転換を目指している。

債務超過という痛んだ財務体質を改善し、業績回復を達成した。戴氏の経営手腕は大いに評価されるものだといっていいだろう。

一部復帰で退任の腹積もりも留任、後継者には一部権限を委譲

もちろん、財務体質の改善だけでは「復活」とは言いがたい。しかし戴氏の残した成果はその他の面でも優秀だ。例えば

設備投資額では、2016年度には274億円の実績であったものが、2017年度計画では732億円と2.67倍に拡大。また、新卒採用は142人から312人へと2.20倍に、1人あたりの年間平均給与も1.17倍に増加しており、一部復帰にあたって社員にあてたメッセージでは「まさに、シャープ復活の証といえる」と宣言した。

実は、戴氏は東証一部への復帰を機に、シャープ社長の退任を視野に入れていた。

「2016年8月に、シャープの東証一部復帰を果たすという強い決心をし、片道の切符を買って日本にきて、シャープの社長に就任した。『One Way Ticket』という歌と同じ気持ちだった。ようやくこの目標を果たすことができた」(戴氏)

しかし、「次の100年のシャープを考えると、一部復帰は通過点である」とした上で、「中期経営計画の達成は私の使命であり、この責任を一身に背負い、中期経営計画の最終年度となる2019年度まで全力をあげて取り組む覚悟である」と決心を語る。

ただし戴氏は、長期的に経営を担うよりも、次期社長へとタスキを渡す準備を進める姿勢を明確にする。

「2018年度以降の経営体制については、取締役会ならびに次期株主総会に判断を委ねる」としながらも、「次期社長育成のため、今後は共同CEO体制へと移行し、決裁権限の委譲を検討する。これまでは取締役会の議長、経営戦略会議の議長、そしてオペレーション決裁のすべてを私一人で行ってきたが、共同CEO体制として、オペレーション決裁は共同でCEOとなる新社長に任せる。共同CEOは、社内社外を問わず、いい人材であることが条件である。早急に検討したい」(戴氏)

戴氏は、社内からの人選に限定することこそ否定したが、下馬評では、次期社長候補として、副社長の石田 佳久氏や代表取締役 兼 執行役員の高山 俊明氏などの名前が挙がり、共同CEOには社内からの昇格が有力との見方もある。いずれにしろ戴氏の経営ノウハウを、共同CEO体制を通じて伝承する期間を設けることになる。

シャープ復活の理由については、戴氏は独特の言い回しで表現した。

「私は日本人ではない。だが、多くの人が応援してくれたこと、全員一丸となってがんばってきた結果が、今日につながっている。みなさんに感謝したい。シャープはもともと実力がある会社。金脈と同じである。私は、金脈を掘る役割を行ってきた。これからも金脈を掘りたい」(戴氏)

独特の表現で、シャープの現場の底力の強みを訴えてみせたが、経営トップが変わったことで回復した事実を示したことは、現場を評価しながらも、暗に過去の経営陣を批判する意味が込められていたともいえる。

会見のなかで、シャープが新たに打ち出したのが、有機EL事業の拡大に本腰を入れることだ。

有機ELディスプレイのサンプル出荷を今月スタートする

同社は2016年9月に、有機ELディスプレイの4.5世代生産ラインへの投資を決定し、その後は順次、投資を進めてきた経緯がある。12月下旬には、スマートフォン向け6.18型有機ELディスプレイのサンプル出荷も開始する予定だ。

「長年培ってきたディスプレイ技術を活用することにより、投資後、わずか1年余りで生産スタートを実現するなど、有機ELディスプレイにおいても技術開発は着実に進んでいる。今後も市場動向をしっかりと見極めつつ、本格生産へと移行していく。シャープは、東証一部上場企業として投資を継続していく」(戴氏)

一方で、「有機ELでサムスンと戦うことにはあまり興味がない。サムスンは横綱であり、シャープは自分ができるところをやっていくことで、事業を拡大していく」とも述べ、シェアを追う戦略ではないことも強調した。そして、液晶ディスプレイについては、「日の丸連合」を創生すべきとの考えを改めて示した。

戴氏は、2016年8月の社長就任後から「日の丸連合」について言及。特に、ジャパンディスプレイの資本参加に中国企業が名乗りをあげるといった動きが見られてから、その姿勢をさらに強めている。

戴氏は、「液晶ディスプレイ事業を日本に残すのか、残さないのか。これから経済産業省と産業革新機構に相談したい。シャープは、東証一部上場企業として、日本の社会に対して責任がある」などとし、東証一部復帰によって証明された財務体質および経営体質の改善の実績をベースに、日の丸連合の提案を加速する姿勢をみせた。

2018年はシャープ飛躍の年へ

一方で、戦略的事業領域には「8K」と「AIoT」を置き、「商品の独創性、革新的なデバイスの創出といった当社の強みを活かしつつ、チャレンジする企業文化を醸成し、『人に寄り添うIoT』、『8Kエコシステム』の実現に向けたトランスフォーメーションを進めることにより飛躍的成長を果たす」とも語る。

また、重要技術の開発については、事業本部の経費とは別枠で社長ファンドを活用。2017年度下期には、8Kエコシステム構築に向けた技術開発に約47億円の社長ファンドを充当することも、この日発信した社員向けメッセージのなかで明らかにしている。

「今後も8Kだけでなく、AIoTに関わる技術やソフトウェア、商品などの開発をはじめ、様々な分野の技術開発に対象を拡大し、取り組みを一層加速していきたいと考えている。皆さんが積極的に新しい提案をしてくれることを期待している」(戴氏)

戴氏は、2017年は「シャープ復活の年」になったと総括し、2018年を「シャープ飛躍の年」にしたいと語る。

「飛躍と言っても、単に売上げや収益を拡大するということではなく、経営理念に示された、『広く世界の文化と福祉の向上に貢献する』、『会社の発展と一人一人の幸せとの一致をはかる』、『全ての協力者との相互繁栄を期す』ことができてこそ、本当の飛躍だと考えている。全社一丸となって、シャープを、日本を代表する企業へと成長させていきたい」(戴氏)

だが、東証一部復帰というひとつのゴールを達成しても、手綱を締めることは忘れない。「2017年も残すところ3週間。2018年のスタートダッシュが切れるよう、一年の締めくくりと、新年の準備をきっちりとやり上げてほしい」と、社員へのメッセージの最後で呼びかけた。

社員の活躍を高く評価する一方で、最後の一言で手綱を締めるというあたりにも、戴氏流の経営法があるといえそうだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。