新型SUV「エクリプスクロス」に込められた“三菱らしさ”とは何か

新型SUV「エクリプスクロス」に込められた“三菱らしさ”とは何か

2017.12.13

日本では2018年3月の発売予定となっている三菱自動車の新車「エクリプスクロス」。競争の激しいコンパクトSUV分野に登場する新手は、どんな商品性を特徴とし、並み居るライバルといかに差別化を図るのか。試乗会で商品企画担当に聞いた話をもとに考えてみたい。

三菱自動車の新車「エクリプスクロス」。気になる価格は北米向けが2万3,295ドルからとアナウンスされているので、日本では200万円台中盤あたりからのスタートになりそうだ

成長が続く市場環境

エクリプスクロスは、三菱自動車が「『パジェロ』に代表されるようなSUVとしての基本性能の高さと、『ランサーエボリューション』の『スーパーオールホイールコントロール』(S-AWC)に代表されるような優れた走行性能」という同社のヘリテージを活用し、競合ひしめくコンパクトSUV市場に投入すべく開発した新型車だ。

三菱自動車は先頃、大磯でエクリプスクロスの試乗会を開催。その会場では、商品企画を担当したチーフ・プロダクト・スペシャリスト(CPS)の林祐一郎氏から、このクルマが参入する市場の状況や商品特性などを聞くことができた。

まず市場だが、自動車販売は世界的に右肩上がりでの成長が予想される。中でも、最も大きな伸びが期待されているのがSUVだ。SUVの販売台数は、コンパクトSUVに牽引される形で増加していく見通しとなっている。

右肩上がりの成長が予想される世界の自動車販売台数だが、中でもSUV(赤で表示)の伸びは著しい
伸びゆくSUV市場の中でも、急速に拡大するのがコンパクトSUV(赤で表示)だ

コンパクトSUVの用途は街乗り? 購入者は「外観」重視

SUVを選ぶ顧客は、レジャーやスポーツなどにクルマを使うケースが多いのかというと、最近ではそうでもないらしい。林氏のプレゼンによれば、日本でコンパクトSUVを選ぶ顧客のうち、用途としてレジャーやスポーツを挙げる人の割合は、2011年には28%だったのに対し、2016年には19%に減少したとのこと。つまり、こういったクルマは街乗り用途で存在感を増しているのだ。

街乗りを重視するためか、コンパクトSUVを購入する顧客は「スタイル・外観」を重視するようになっているという。そういった状況を受けて、自動車メーカーはスタイリッシュなクーペスタイルを盛り込んだSUVの品ぞろえを充実させている。三菱自動車もこういったニーズに応えるべく、「SUVの走行性能とスタイリッシュクーペの世界観の融合」(以下、発言は林CPS)を目指し、2013年にエクリプスクロスの開発をスタートさせた。

サイズは全長4,405mm、全幅1,805mm、全高1,685mm、ホイールベース(前輪軸と後輪軸の間の長さ)は2,670mmだ

それでは、顧客が最も重視するデザインの面で、三菱自動車がエクリプスクロスに盛り込んだ要素とは何か。次ページで見ていきたい。

鋭いキャラクターラインが特徴、三菱の「赤」も新たに開発

そもそも、アイポイントの高さや広い室内を特徴とするSUVに、スタイリッシュで俊敏な走りを予感させるクーペのスタイルを取り入れるのは、2つの矛盾する価値を1台のクルマに盛り込むことでもあるので、難しいという。三菱自動車はエクリプスクロスのデザインで、アンビバレントな2つの価値の両立に挑戦した。

林CPSはエクリプスクロスのデザインについて、車体側面の上部には「塊から彫刻刀で削ぎ落としたような」鋭いキャラクターライン(ボディの側面に入るラインのこと)を入れつつ、一方の下半身には「マッシブで力強いフェンダーのデザイン」を採用し、「三菱らしい力強さ」を表現したと胸を張る。

キャラクターラインが印象的なエクリプスクロスの外観

印象的な「ダイヤモンドレッド」は新開発のカラーだ。塗装には「多コート重ね塗り」という複雑なプロセスを導入。まずメタリックな赤を塗り、その上から半透明の赤を重ねることで、色合いに深みを持たせた。試乗会の日は残念ながら曇っていたが、太陽光が当たると陰影はよりくっきりしてくるという。

三菱自動車のコーポレートカラーでもある「赤」も新たに開発した

インテリアは水平基調、車内には目に見えない工夫も

次にインテリアだが、インパネは水平基調としている。車体姿勢を確認しやすく、前方の視認性も向上するため、SUVに適したデザインとして水平を選んだと林CPSは説明していた。

インパネは水平基調。三菱自動車では初となるフルカラーのヘッドアップディスプレイも搭載している

見た目ではないが、デザインのこだわりとして林CPSが挙げたのは、後席に施した工夫だ。後席は200mmのスライドが可能で、前に出せば荷室が広がるし、再後端まで下げればクラストップクラスのレッグルーム(座った時に足を入れておく空間のこと)が確保できる。後席のシートリクライニングは9ポジションの細かい設定が可能。クーペスタイルなので、どうしても後席に向かってルーフが低くなってきて、室内も狭く感じてしまうわけなのだが、それだけに、エクリプスクロスでは後席の居住性にこだわっているのだろう。

200mmのスライドが可能な後席シート

デザインは画像の通り、SUVでありつつクーペのスタイルを取り入れることに成功しているように見える。それでは、林CPSが“ランエボ”を引き合いに出しつつ語った「ドライビングフィール」の面で、エクリプスクロスの出来栄えはどうなのだろうか。

なぜエクリプスクロスの走りはスポーティーなのか

エクリプスクロスはアプローチアングル(クルマ先端の最下部と前輪の設地面が作る角度のことで、悪路走破性の高さに影響する)、デパーチャーアングル(クルマ後端の最下部と後輪の設地面が作る角度)、最低地上高(車体の床下と路面の隙間)を大きく確保してSUVらしい走りを実現しつつ、四輪駆動モデルについては全車でS-AWCを採用する。S-AWCとは、4つのタイヤに最適な駆動力を配分するシステムのこと。三菱自動車のHPでは「さまざまな走行状況で、ドライバーの操作に忠実な車両挙動を実現でき、“誰もが安心して気持ち良くドライブできる”ことを可能に」する技術と説明されている。

さまざまな状況でドライバーの意のままに走るのがエクリプスクロスとのこと

エクリプスクロスのS-AWCは、「オート」「スノー」「グラベル」という具合に、路面状況に合わせてモードを選べる。「どんな路面でも安心して走れる走行性能」を実現しているというのが林CPSの説明だ。S-AWCにも複数の種類があるが、エクリプスクロスでは「オンロードの旋回トレース性の向上を一番に意識した」という。

クルマによって性格の異なるS-AWCだが、エクリプスクロスではオンロードでのコーナリングを重視しているという

S-AWCは三菱自動車が約10年前の「ランサーエボリューションX」で初めて投入した技術だが、開発当初から四輪駆動のモデルには横展開していこうとの考えがあったらしい。エクリプスクロス四輪駆動モデルでの全車標準装備は、こういった考えが実現してきている証左ともいえる。

高度な制御だけでなく、ボディ剛性の高さもエクリプスクロスの特徴だという。工業用接着剤を用いたスポット溶接を採用するなど、剛性を上げるための工夫も随所に盛り込んだそうだ。パワートレインには、新たに開発した1.5Lダウンサイジング直噴ターボエンジンと8速CVTの組み合わせを採用。「低い回転数から大きなトルクを発生し、非常にパワフルな加速フィーリングを楽しめる」とのことだった。

試乗会では最大45度の急な傾斜を走るデモもあったが、エクリプスクロスは坂道発進も難なくこなした

三菱のSUVが充実、スポーティーな味付けは受けるか

SUVとクーペ、そして走りとデザイン。両立が難しい2つの要素の融合に三菱自動車が挑戦し、その成果として世に問うのがエクリプスクロスだ。同社には「RVR」と「アウトランダー」という2種類のSUVがあるが、エクリプスクロスは大きさからいうとその中間に位置する。

試乗会では既存SUV2車種(左が『RVR』、右が「アウトランダー」)と乗り比べることができた。3台のプラットフォームは共通だが、寸法が違っていたり剛性が高まっていたりするので、エクリプスクロスのスポーティーな走りは既存車種とは異なる味わいだった

既存2車種に比べスポーティーな印象が強いので、三菱自動車にスポーツカーのイメージを抱く人にとって、エクリプスクロスは気になる存在になるかもしれない。コンパクトSUVにはスバル「XV」やトヨタ自動車「C-HR」といった競合も存在するが、三菱自動車がエクリプスクロスで活用した同社のヘリテージは、他社との違いを感じさせる要素として機能しそうに感じた。

ボルボ「XC60」がカー・オブ・ザ・イヤー! 選考委員に聞く高評価の理由

ボルボ「XC60」がカー・オブ・ザ・イヤー! 選考委員に聞く高評価の理由

2017.12.12

今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーはボルボのSUV「XC60」が受賞した。輸入車がイヤーカーに選ばれるのは2013年のフォルクスワーゲン「ゴルフ」以来、2度目。当然ながらボルボにとっては初の受賞だ。この結果の受け止めについて4人の選考委員に話を聞いた。

「2017 - 2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したボルボの「XC60」。トロフィーを持っているのはボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長だ

選択と集中で示す新しいボルボ車の姿

「XC60」はボルボがプレミアム・ミッドサイズSUVと位置づけるクルマで、受賞したのは2代目となるモデル。日本では2017年10月に発売となった。

ボルボは創業当初から安全性を全てに優先させてきたメーカーだが、そのDNAは残しつつも、イメージを変えてきているのが最近のボルボ車だ。四角くて頑丈なイメージは少し前の話。フォード傘下入りから中国資本へという最近の動きの中で、ボルボが進めたのが「選択と集中」であり、デザインも以前とは変わってきている。

ボルボ車はイメージを変えつつある

では、ボルボが進めた「選択と集中」とは何か。それは例えば、車種をセダンの「S」、ワゴン/クロスカントリーの「V」、SUVの「XC」の3つに絞り、それぞれに小さいほうから「40」「60」「90」とサイズ別のモデルを設定しているシンプルなラインアップであったり、クルマが違ってもエンジンを2.0L直列4気筒までしか作らないと決めている姿勢などから見てとれる。「スカンジナビアン・デザイン」をうたう新しいデザインは画像の通りだが、以前のボルボに比べれば丸みを帯びてきているのが一見して分かる。

それでは、ボルボ「XC60」が日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞できた要因はどの辺りにあるのだろうか。授賞式で聞いた選考委員の方々の話をもとに考えてみたい。

選考委員から満遍なく点数を集めた「XC60」

XC60が受賞した要因は「選考委員が満遍なく点数を入れたこと」と語るのはモータージャーナリストの岡本幸一郎氏だ。輸入車勢がトップ2を占めた今回の選考結果には岡本氏も驚いたというが、日本勢への採点がばらつく一方で、確かにXC60は着実に得点を伸ばしていた。

BMW「5シリーズ」が2位。日本車ではトヨタ自動車「カムリ」、スズキ「スイフト」、ホンダ「N-BOX」などが健闘した

XC60に乗った印象を岡本氏は、「クルマの出来はいい。将来を見据え、軽量化であったり、2.0L以下のエンジンしか載せないことであったり、電動化であったりと、新しいものは取り入れている。デザインも(これまでの)アグレッシブな感じからエレガントになった」と評価する。

こういった新世代ボルボの考え方は、実は昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーで4位につけた「XC90」でも採用となっていたそうだが、XC90はサイズが大きくて高価でもあるため、XC60は「普及するクルマ」として評価を集めたのでは、というのが岡本氏の感想だ。

岡本氏が「エレガントなデザイン」と評価したボルボ「XC60」

選考委員を務めたモビリティジャーナリストの森口将之氏も、「新世代ボルボの魅力が多くの人に伝わったのでは」と評価する。モータージャーナリストの清水和夫氏はXC60を「いいクルマ」だとし、高級路線の新世代ボルボを「スウェーデンのレクサス」と独特の言い回しで表現していた。

モータージャーナリストの御堀直嗣氏も、新世代ボルボの方向性に良い印象を持っている1人だ。XC90で採用したデザインやPHV(プラグインハイブリッド)技術などを、ひとまわり小さいサイズのXC60にも拡大したのはボルボの「進化」と受け止めているという。

大きくて高価なモデルから始まった新世代ボルボのクルマづくりが、より手頃なサイズへと拡大してきている

次は「XC60」より小型のSUVが登場

イヤーカーに輝いたXC60に対し、話を聞いた4人の選考委員は軒並み好意的な評価を下していた。そうなると注目したくなるのが、ボルボから登場する予定となっている新型SUV「XC40」の売れ行きだ。

岡本氏によると「XC60は世界で最も売れているボルボ車だが、日本では3番目。日本で最も売れているのは『V40』」であるとのこと。日本では小型のクルマの方が受けるとすれば、ボルボのSUV「XC」シリーズで最も小さいXC40が、日本でXC60より好成績を残しても不思議ではない。XC60の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞がXC40の販売に追い風となるのも間違いなさそうだ。

「FREETEL」はなぜ民事再生法の適用という結末に至ったのか

「FREETEL」はなぜ民事再生法の適用という結末に至ったのか

2017.12.12

「FREETEL」ブランドでスマートフォンや通信サービスを提供していたプラスワン・マーケティングが、12月4日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。11月に、楽天に通信事業を売却したばかりであるにもかかわらず、経営破綻に至ったのはなぜだろうか。

民事再生法適用を受けFREETELの新規サービス受付は停止

年の瀬を迎えた12月4日、「FREETEL」ブランドで知られるプラスワン・マーケティングが東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請するという、大きなニュースが舞い込んできた。同社は11月1日に、MVNOによる「FREETEL SIM」ブランドの通信事業を、楽天に5億円で売却したことを発表したばかり。それからわずか1カ月余りで、経営破綻という結果を迎えたことになる。

楽天に通信事業を売却した後も端末事業を継続していたプラスワン・マーケティングだったが、約1カ月後に民事再生法の適用を申請。事実上の経営破綻となった

楽天に通信事業を売却した後も、プラスワン・マーケティングはスマートフォンの開発・販売のほか、楽天の代理店となってFREETEL SIMの販売を継続。端末とネットワークのセット販売「スマートコミコミ+」なども継続して提供していた。だが今回の民事再生法申請によって、FREETEL SIMを含め各種サービスの新規受付は全て停止。スマートフォンやアクセサリの販売も、現在販売を一時休止するとしている。

また既存のFREETELユーザーに関して、定額通話サービスの「FREETELでんわ」、そしてFREETEL SIMなどは楽天がサービスを引き継いでいるため継続利用が可能だという。しかしながら定期的な端末買い替えがしやすくなるプログラム「とりかえ~る」など、今後の動向に関して明確に決まっていないサービスもいくつか見られるようで、契約者には不安が続くことだろう。

なおプラスワン・マーケティングの今後に関しては、現在スポンサー候補とされているMAYA SYSTEMらと協議中とのこと。それゆえ同社の事業がどうなるのかはまだ不透明な部分が多く、今後の発表が待たれる所だ。

プラスワン・マーケティングはここ1、2年のうちに急速に事業を拡大しており、有名タレントを起用したテレビCMを積極展開していた。それゆえ「FREETEL」というブランド名を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。それほど勢いのあった同社が、なぜ民事再生法を適用するまでに至ったのかを、同社の歴史を振り返りながら追ってみよう。

日本品質をうたい国内外でビジネスを拡大

プラスワン・マーケティングは設立が2012年と、実は非常に若いベンチャー企業である。同社は2013年の「freetel」を皮切りとして、MVNOの人気が大きく高まる前からローエンドモデルを中心としてSIMフリースマートフォンを投入しており、知る人ぞ知る存在であった。

そんな同社が勝負に打って出たのは、MVNOのビジネスが大きな注目を集めた2015年。マイクロソフトの「Windows Phone」を採用したスマートフォンの投入を明らかにしたことで一躍注目を集めた同社は、国内外での事業拡大を図るべく、ビジネスの拡大路線をとることとなったのである。

プラスワン・マーケティングは2015年から2016年にかけて、携帯電話の世界最大の見本市イベント「Mobile World Congress」に出展。日本企業であることを強みとして海外への積極展開を図ってきた

実際同年6月には、ブランド名を「freetel」から「FREETEL」へと改め、「Made by Japan」とうたい、日本発の企業として世界進出を図っていくことを宣言。同年10月にはカンボジアやメキシコでの販売を発表し、さらにその後も販路拡大を続けて、今年には22ヵ国への販売を実現している。

また国内での事業に関しても、大手キャリアと同様、端末と通信、サービスをセットで提供する「SIMフリーキャリア」になることをうたい、月額299円から利用できる通信サービス「使った分だけ安心プラン」や、日本を強く意識したネーミングの「SAMURAI」シリーズのスマートフォンを投入。フラッグシップモデルの「KIWAMI」や折り畳み型の「MUSASHI」、大容量バッテリーの「RAIJIN」など個性的なモデルを揃え、しかも他社より低価格で販売することによって人気を急拡大してきた。

一般的なスタイルのスマートフォンだけでなく、折り畳みタイプの「MUSASHI」など特徴あるラインアップを揃えていたのも同社の特徴だった

そして2016年には女優の佐々木希さんをキャラクターに起用。テレビCMを積極展開して知名度を高めてきたほか、今年に入ってからは実店舗「FREETELショップ」の展開を開始。昨年11月には訪日外国人向けの施策で日本航空やジェイティービーとの提携を発表したほか、一時は東京ガスとの提携も報じられるなど、順調な事業展開を進めているように見えた。

急拡大で見えていたほころびの数々

だが同社のこれまでの動向を見ると、事業の不安定さや、強引さがいくつか見られたのもまた事実である。サービス面に関して言えば、2016年に実施したエムティーアイの音楽配信サービス「music.jp」との連携施策「最大3年間0円キャンペーン」で、3年間0円から利用できる代わりに、music.jpに強制加入させられることが「抱き合わせではないか」と批判を集めた。また今年3月に打ち出したセット販売施策「スマートコミコミ+」でも、継続的に端末を買い替えなければ通常の倍近い端末代金を支払わなければならず、実質的な“3年縛り”ではないかとして批判を集めている。

「music.jp」と連携した「最大3年間0円キャンペーン」では、当初music.jpの契約が強制となっていたことが批判を集めるなど、強引な施策が目立っていた

端末事業に関しても同様だ。いくつかのモデルは発表時に発売日が明らかにされず、いつ販売されるのか分からないケースがあったし、コンパクトな音声通話端末「Simple」は2度発売が延期された上、発売された台数も非常に少なく、すぐ完売してしまったことで話題となった。また2016年に発売された「REI」は、6月に追加色として「メタルレッド」を提供することを明らかにしたものの、その半年後には発売を中止するなど、不安定な様子を見せていた。

2015年8月に発売された超小型の携帯電話「Simple」は、発売日が2度延期された上に販売台数が非常に少なく、すぐ売り切れてしまうなど多くの不満を集める結果となった

そして極めつけは、Webサイトの表記に関して誤認を招く表記がいくつかなされていたとして、4月に消費者庁から景品表示法違反を指摘されたことだ。この出来事がプラスワン・マーケティングの信頼を大きく落とし、破綻に至るきっかけになったと言われているのだが、改めて振り返ってみると、それ以前にも急速な成長を求めるがあまりのほころびが随所から見えていたわけだ。

もちろんプラスワン・マーケティングの契約数が伸び悩んだのには、大手キャリアがサブブランドを強化したり、通信料を引き下げたりするなどして、MVNOへの顧客流出を大幅に抑えたことが影響しているのは事実だ。だが同社に関して言うならば、本来小さな会社であり企業体力が弱いにもかかわらず、成長を急ぐあまり身の丈に合わない事業展開をした結果、無理が目立って信用を落とし、破綻に至ったといえそうだ。

大手キャリアの攻勢によってMVNO、そしてSIMフリースマートフォンを取り巻く状況は非常に厳しくなっている。だがそれだけに、これらの事業に係る企業には、成長を追い求める攻めの施策だけでなく、顧客からの信頼を得て継続的な利用につなげる、守りの施策も同時に求められていることを、忘れてはならないだろう。