ソニーらしい

ソニーらしい"オンリーワン"なスマートウォッチが抱える課題

2017.12.13

ソニーは12月7日、腕時計のバンド部に必要な機能を内蔵したハイブリッド型スマートウォッチ「wena wrist」新モデル「wena wrist pro」と「wena wrist active」の2製品を発表した。

wena wristは、ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」から生まれた製品。wena wrist開発者のソニー 新規事業創出部 wena事業室 統括課長の對馬 哲平氏によれば、「腕時計という長年培われた文化や伝統を大切にしながら、最新テクノロジーを駆使し、ウェアラブルデバイスを違和感なく身につける世界をつくる」ことをコンセプトにしているという。

第1弾として登場したwena wristは、腕時計のバンド部分にスマートウォッチに必要となる機能や電子マネー機能などを内蔵することで、腕時計文化とスマートウォッチという新しい文化を融合させることを狙ったものだった。

初代wena wristが発表された2015年当時は、各社から多くのスマートウォッチが登場し、注目を集めていた時期でもあるが、その中でwena wristは、クラウドファンディングで当時の国内史上最高額となる支援を集めるなど、かなりの成功を収めた。そして、初代の考え方を受け継ぎつつ、理想の姿に近づけるよう、さらなる進化を実現したのが、今回発表された第2世代となる新モデルとなる。

wena wrist新モデルについて説明する、ソニー 新規事業創出部 wena事業室 統括課長の對馬哲平氏
wenaプロジェクトのコンセプトは、ウェアラブルデバイスを違和感なく身につける世界をつくるというもの

今回の発表では、本流となる正統進化モデルがwena wrist proとして登場した。ハンド幅が22mmから20mmに狭められ、厚みも薄くすることによって、体積比で約25%の小型化を実現。中でも薄さについては、「0.1mm違うだけで装着感が変わるので、薄くすることに全力を注いだ」と對馬氏が語るように、外装のカーブに合わせて内部基板のパーツ実装位置を調整するなどして、薄型化を実現した。

防水性能も5気圧防水に高められており、バンドの小型化と合わせて装着感や実用性を向上させている。また、初代では着信やメール受信などの通知をバイブレーションと7色LEDで行っていたが、wena wrist proでは新たに最大2行の文字表示が可能な有機ELディスプレイを搭載した。

着信相手の名前やメールのタイトル、SNSの内容などを文字で通知できるようになり、スマートウォッチとしての利便性を高めた。また、スマートフォンのアプリと連携して、歩数や消費カロリー、睡眠状態などを測定する活動ログ機能も利用可能となる。

新モデル「wena wrist pro」
バンド部分にスマートウォッチ機能を集約。バンド幅を狭め、薄さも追求することで装着感が高められている
特に薄さには全力を注いだとのことで、外装カーブに合わせて基板のパーツ実装を調整するなどして薄型化を実現している
有機ELディスプレイを搭載し、文字での通知も可能となった

そして、對馬氏が"分流"と話すのがwena wrist activeだ。

こちらは、GPSや光学式心拍センサーを搭載し、活動ログ機能を強化したモデル。バンド側にスマートウォッチとしての機能を集約したり、各種通知を文字で確認できる有機ELディスプレイの搭載といった部分はwena wrist pro同様だが、スポーツシーンにも対応できるよう、バンド素材にはシリコンラバーを採用した。

また、對馬氏が最大の特徴と強調するのが、時計ヘッドを簡単に着脱できる独自の機構を採用している点だ。これにより、普段は腕時計として利用しつつ、運動や睡眠時には時計ヘッドを外してスマートバンドとして、シーンに合わせて利用できる。

活動ログ機能を強化した新モデル「wena wrist active」
GPSや光学式心拍センサーを搭載し、より高度な活動ログ機能を備える
単体での位置情報や移動距離などの取得、心拍数モニター、睡眠状態の計測などが行える
時計ヘッドを簡単に着脱できるようになっており、シーンに合わせて使い分けられる

また、両モデルとも、従来モデル同様にFeliCaベースの電子マネー機能も搭載。利用できる電子マネーは、初代と同じ楽天EdyやiDなどをはじめとした6種類。残念ながらSuicaなど交通系ICカードには非対応だが、對馬氏によれば第2世代モデルに搭載されるFeliCaは交通系ICカードの技術要件を満たしているとのことで、今後対応に向けて努力したいという。

このように進化を遂げたwena wrist新モデルだが、課題もある。以前に比べ、現在はスマートウォッチへの注目度がかなり低下しており、市場も縮小している。発表会では、そういった状況をどのように考えているのか、という指摘もあった。

それに対し對馬氏は、「スマートフォンなどと比べると市場は小さいかもしれないが、腕時計やスマートウォッチの市場は十分に大きく、今後も成長の余地がある」と強気の見通しを示した。そして、wena wristは既存の腕時計やスマートウォッチなどと競合する関係にはないとも指摘。wena wristの本質部分がバンド部分で完結し、既存の腕時計やスマートウォッチと組み合わせて利用できるという特徴があるため、共存は十分可能と考えているという。

ただ、スマートウォッチとしての機能は、他の製品に比べて飛び抜けたものではなく、どちらかというとありふれたものとなっているため、この点でのアピール度は低いと感じる。競合製品にはない魅力があるのは事実だが、今後はデザイン面だけでなく、機能面へのさらなる追求も必要となるだろう。加えて、海外へ販路を広げることも重要だ。そのためには、電子マネー機能を世界標準であるNFCベースのものに対応させる必要があるとし、現在開発を進めているとのこと。

また、腕時計という長年培われた文化や伝統を大切にするというコンセプトを考えると、時計ヘッドを用意するという点にもやや違和感を感じる。デザインを合わせた時計ヘッドを用意するのではなく、既存の腕時計に合わせたバンドのデザインを用意することこそ、コンセプトを実現する本来あるべき姿だろう。

對馬氏は、まずは製品として立ち上げるには「これは腕時計です」ということを知らせる必要があるために、時計ヘッドも用意したと説明するが、腕時計メーカーとの協業を進めつつ、バンド部の提供に特化した戦略も必要と感じる。ただこの点については、既にいくつかの腕時計メーカーと協議を行い、近々新たな発表ができそうと對馬氏は述べており、今後の展開には期待が持てそうだ。

對馬氏は、wenaプロジェクトの製品は、単なる"商品"ではなく、作り手の思いや感情、願い、思想などが込められた"作品"であると指摘する。

それだけ對馬氏の思いがこめられている証拠で、新モデルでは對馬氏の考える理想へと一歩近付いたのは間違いない。ただ現状では、對馬氏の思いをうまく製品に落とし込めていない部分も多いと感じる。他にはないオンリーワンの魅力を備える製品だからこそ、市場の期待も大きい。その期待にどこまで応えられるかが、今後のカギとなるだろう。

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第33回

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

2019.03.19

大画面化の限界を破ろうと登場した「折り畳みスマホ」

2019年にスマホ大手が参入し、本格的なトレンドに

普及する? 価格とコンテンツが最大の課題に

2018年末から2019年初頭にかけ、ディスプレイを折り曲げて畳むことができる「折り畳みスマートフォン」大きな注目を集めている。閉じた状態では普通のスマートフォン、開くとタブレットサイズで利用できるのが特徴だが、新しいスタイルのスマートフォンとして市場に定着し、普及していくには課題も多い。

大画面化の限界から生まれた折り畳みの発想

ここ最近、にわかに注目されるようになった「折り畳みスマートフォン」だが、そもそもどんなものなのか。簡単に言えば、これはディスプレイ素材に、一般的なLEDとは異なる面光源で、かつフレキシブルな特徴を持つ有機ELを採用することで、1枚のディスプレイを2つに折り曲げられるようにしたスマートフォンのこと。いくつかの企業が折り畳みマートフォンを相次いで発表したことから、一気に注目を集めるに至ったようだ。

折り曲げられる7.8インチのディスプレイを備えたRoyoleの「FlexPai」は、世界初の折り畳みスマートフォンとして注目を集めた

最初に折り畳みスマートフォンを発表したのは中国のRoyoleというベンチャー企業で、2018年11月に7.8インチのディスプレイを折り曲げられる「FlexPai」という機種を発表している。だがより本格的に注目されるようになったのは、2019年2月に入ってからであろう。

その理由は、2019年2月20日(米国時間)にサムスン電子が「Galaxy Fold」、ファーウェイ・テクノロジーズが2019年2月24日(スペイン時間)に「HUAWEI Mate X」と、スマートフォン大手が相次いで折り畳みスマートフォンを発表したからだ。いずれの機種もFelxPaiより洗練され、より日常使いに適したスタイルながらディスプレイを曲げられるという機構を実現したことから、がぜん折り畳みスマートフォンに対する注目が高まったのである。

サムスン電子の「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレイを内側に備え、本を開くようにして開くと大画面ディスプレイが現れる仕組みだ

ディスプレイを曲げられるというだけでも十分に大きなインパクトがある折り畳みスマートフォンだが、その誕生にはやはり「スマートフォンの大画面化傾向」が影響している。初代iPhoneが登場した頃には3インチ程度だったスマートフォンのディスプレイも、年を追う毎に大画面化が進み、いまでは6インチを超えるディスプレイも当たり前のものとなってきている。

だが人間が片手で持つことができるスマートフォンのサイズ、特に横幅には限界がある。6インチ超でも、18:9や19:9の縦長比率として片手に持てる横幅に抑えていたのが最近のトレンドだが、従来の方法によるディスプレイの大画面化は限界に達しつつある。しかしながら特に海外では、消費者がスマートフォンに一層の大画面化を求める声が非常に強い。そうした市場ニーズに応えるべく、持ち運ぶ時はコンパクトで、必要な時だけ大画面で利用するという、折り畳みスマートフォンの開発を推し進めるに至った訳だ。

ファーウェイの「HUAWEI Mate X」。さらなる大画面化を求める消費者ニーズに応えるべく、3年もの歳月を費やして開発されたとのこと。同社初の5G対応スマートフォンにもなるという

各社の折り畳みスマートフォンは、開いた状態では7.3~8インチと、小型のタブレット並みのサイズ感を実現している。従来より一層の大画面でコンテンツを楽しめるというメリットが生まれる訳だが、大画面によってもう1つもたらされるメリットは、表示できる情報量が増やせること。実際Galaxy Foldはそのメリットを生かし、画面を3つに分割して3つのアプリを同時に利用できる機能を搭載している。

さらに今後、次世代通信の「5G」が普及していけば、通信速度が一気に高速になりコンテンツのリッチ化が進むことから、大画面を生かせるシーンも現在以上に増えていくことが考えられる。それゆえ折り畳みスマートフォンこそがスマートフォンの将来像と見る向きもあるようだ。

普及にはコンテンツや価格など多くの課題あり

だが実際の所、折り畳みスマートフォンが真に普及して定着に至るかといえば、まだ多くの課題があるように感じる。理由の1つは、折り畳みスマートフォンに適したコンテンツが少ないことだ。その最大の要因はディスプレイのアスペクト比で、折り畳みスマートフォンでは開いた状態のアスペクト比が、アナログテレビで主流だった4:3に近い比率になってしまう。これは折り畳むという構造状どうにもならない課題だ。

折り畳みスマートフォンは、開いた状態では4:3、あるいはそれに近いアスペクト比となることから、オフィス文書や地図、Webサイトなど情報量が求められるコンテンツは見やすい

この比率は、オフィス文書などを利用するのには適しているといわれる一方、映像やゲームなどのコンテンツでは横長の傾向が強いため、あまり適していない。実際、折り畳みスマートフォンで16:9や21:9の映像コンテンツ再生すると、どうしても上下の黒帯が目立ってしまうのだ。

一方で映画などの動画コンテンツ再生時は、上下に黒帯が目立つなど大画面をフルに生かせていない印象だ

そうしたことから折り畳みスマートフォンを普及させるには、それに適したコンテンツの開発も同時に求められているのだ。そのためにはいかに多くのコンテンツホルダーから協力を得られるかが、非常に重要になってくるだろう。

そしてもう1つの課題は価格だ。折り畳みスマートフォンは最新の技術を詰め込んで開発しているため、Galaxy Foldは1980ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xは2299ユーロ(約29万円)と、価格が非常に高い。現在は“初モノ”ゆえにこれだけの価格でもやむなしとの認識がなされているようだが、普及を考える上では少なくともその半額程度、つまり現在のフラッグシップスマートフォンと同程度にまで価格を落とす必要がある。

折り畳みスマートフォンの実用化を実現した今後は、いかにその価値を落とすことなく価格を落とすかという、難しい課題をクリアする必要がある訳だ。そうした課題をクリアできなければ普及にはつながらないだけに、折り畳みスマートフォンが今後の主流になるかどうかは、現状ではまだ見通せないというのが正直な所でもある。

関連記事
78万人のIT人材不足に一石、新たな人材育成に挑む「メイカーズチャレンジ」とは?

78万人のIT人材不足に一石、新たな人材育成に挑む「メイカーズチャレンジ」とは?

2019.03.19

2030年までに日本国内でIT人材が78万人も不足する危機的状況

学生や若手のIT育成に挑む新機軸の試み、その中身をレポート

企業内実施では難しい基礎育成や異能コラボを補完する可能性も

世界で500億台ものIoT機器が普及することが見込まれている2020年台がいよいよ目前に迫っている。

少し古い調査結果だが、2016年6月の経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT人材は2019年をピークに減少傾向へ転じ、2030年には(高位想定で)約78万人不足すると予測する。IT人材に限らず、日本では少子高齢化が進み、多くの業種で人手不足が発生するといわれている。

その対策の柱となるのが、人材育成だ。これまでの20世紀型のビジネスでの価値創造の要素が「ヒト・モノ・カネ」だったのに対し、今後は「データ・ソフト・サービス」に要素が大きくシフトするといわれている。すなわち、必要となる人材も大きく変わっていくことになる。それは、従来のICT企業に限ったことではなく、ユーザ企業においても然りだ。

そこで今回紹介したいのは、総務省が学生や若手エンジニアを対象にIoT人材育成を目的として実施している「Web×IoT メイカーズチャレンジ」である。2018年度は国内9か所でイベントが開催され、2019年2月から3月にかけては、東京でも開催された。この取り組みが何を変えようとして、どのような一石を投じているのか、イベントで実際に実施された内容を下敷きに紐解いてみたい。

Web×IoT メイカーズチャレンジ 2018-19

Web×IoT メイカーズチャレンジ開催の経緯

総務省の情報通信審議会の技術戦略委員会では、かねてよりIoT・ビッグデータ・AI時代の人材育成方策についての議論が続けられており、去る2016年には、中間答申というかたちで以下のような旨の提言も出されている。

「IoTを総合的に理解し、使いこなせる人材・アイデアを発想できる人材が求められており、若者やスタートアップを対象とした開発キットやオープンソースなどを使ったモノづくりを通じた体験型教育やアイデア・ソリューションを競うハッカソンの取り組みを推進することが重要である」

こうしたことを受け、日本最大規模の産官学のIoT推進組織「IoT推進コンソーシアム」の技術開発ワーキンググループ「スマートIoT推進フォーラム」に、「IoT人材育成分科会」が設置されることとなり、そこでの議論を踏まえてこの人材育成事業、Web×IoT メイカーズチャレンジがスタートすることになった。

IoT推進コンソーシアムとスマートIoT推進フォーラムの体制

では、具体的にはどのような人材が今後必要とされるのか? また、未来に向けて、どういった手法でそのような人材を育成していくのだろうか?

Web×IoT メイカーズチャレンジの基本方針などを策定する実行委員会の主査で、上述のIoT人材育成分科会の構成員でもある株式会社KDDIの高木悟氏と、同実行委員会で副査を務める一般社団法人WebDINO Japanの瀧田佐登子氏の両氏に、その点についての話を伺った。

高木氏は、IoTを活用し社会を変革する創造性豊かなエンジニアリング・イノベータ力を備えた若手人材の育成には、

(1)無線装置やセンサ・アクチュエータなどのハードウェアとコンピューティングロジックを中心としたソフトウェア双方を扱えるスキル
(2)情報システムの共通基盤技術となっているWeb技術に基づくIoTシステム構築スキル
(3)企業の製品開発やサービス企画の現場でも、新技術の迅速な導入にもスピード感を持って対応できるアジャイル開発に対応できるエンジニア力
(4)実際にアイデアを試作し、改良を繰り返して実現するプロトタイプ創出力といったスキル

が求められており、Web×IoT メイカーズチャレンジでは、特にそのあたりを意識したイベント設計を行っていると話す。

KDDI株式会社技術開発戦略部マネージャー:高木悟氏

ポイントになるのは、このイベントに参加する学生や若手エンジニアが、座学の講習だけでなく、ハンズオン形式の講習会で実際にボードコンピュータやセンサーやアクチュエータの扱いを体験し、一定の準備期間を設けたうえで、ハッカソンで実際にプロトタイピングを行うという一連のものづくりプロセスを実体験することにある。

Web×IoT メイカーズチャレンジでは、UIやクラウドを含む情報システム全体をひとつの標準化された中立的な技術体系のもとで「ハードウェアを制御できるスキル」を獲得する機会を提供しているが、Webを介することによって、OS、デバイスといったレイヤーごとの違いを吸収し、普遍性の高い共通な技術を学ぶことができる。さまざまなデータをやりとりするには、「Webがもっともやりやすい」と副査の瀧田氏も指摘する。そういった観点からイベント名にもWeb×IoTの文字が冠された。

WebDINO Japan代表理事:瀧田佐登子氏

東京大会の概要をレポート

では、東京大会の様子を交えつつ、本取り組みの具体的な流れを少しレポートしたい。2月9、10日の2日間にわたりハンズオンを含む講習会が開催された。IoTの基礎知識やWiFiやLTEなど、IoT開発には欠かせない通信技術やその根源となる電波の特性について講義を受けたうえで、実際に「Raspberry Pi 3」と各種センサーやデバイスなどの接続・動作を行うハンズオンを約1日半じっくりと行う。受講者は個人単位で参加申し込みを行うが、講習会の2日目にはチーム単位に分けられ、準備期間を置いた後日に開催するハッカソンに向けた準備をスタートする。

東京会場にて。チームでのアイデアソンの風景

チーム分け後は、まずはアイデアソンを実施し、「身近な人をハッピーにするIoTデバイスを作ろう」などといったテーマをもとに議論を進める。初めて会ったメンバー同士で、いかに議論を深めていくか、これが最初の試練といえるだろう。また、各チームには上限額25,000円の予算が与えられ、その中でハッカソンに提出する作品で使うセンサーなどの部品を用意する。ここでは準備期間中の材料調達を含むマネージメント力が求められる。

そして、ハッカソンに向けて作成する作品では、以下の要件が求められる。

・ネットワークサービスの連携、もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと
・Raspberry Pi 3を使って、Web GPIO APIあるいはWebI2C APIのいずれかを利用すること

ちなみにハッカソンの審査基準は、以下の通り。

・ソフトウェア・ハードウェアの実装力
・アイデアの独創性・ユースケースの有用性
・無線の活用度

そして、今回の東京大会のハッカソンには、計35名8チームが参加した。

ハッカソンの各チームの様子。今回は計35名8チームが参加した

ハッカソンというと、賞金目当てのツワモノが集まるというイメージがある。しかし、メイカーズチャレンジは、そもそもが「学びの場」として開催しているため、ハッカソン初心者やスキルレベルが不安な学生であっても参加しやすい枠組みを用意している。とにかく、わからないことがあれば積極的にチューターやメンターに聞き、解決していく。終始なごやかな雰囲気で進んでいくことも印象的だ。

こちらはハッカソン2日目の様子。初日のなごやかさからは打って変わり、開発完了に向け緊張感も漂う

それでもハッカソンが2日目にもなると緊張感が漂う。決められた開発締め切りに向かって、時間との戦いである。その日のうちに審査が始まり、今回は、最優秀賞が1チーム、優秀賞が3チーム選出された。

最優秀賞受賞チームの皆さん。後ろに立つ3人は審査員

順序が逆になってしまったが、審査員は以下の通りである。

・村井純氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授 大学院政策・メディア研究科委員長)
・小林茂氏(情報科学芸術大院(IAMAS) 産業文化研究センター教授)
・瀧田佐登子氏(一般社団法人WebDINO Japan代表理事、実行委員会副査)

各チームの作品やその他の情報については、Web×IoT メイカーズチャレンジの公式サイトで情報が提供されるので、参照してほしい。

Web×IoT メイカーズチャレンジの成果と今後

今回、2年目を迎えたメイカーズチャレンジの取り組みであるが、その成果はどうだろうか。高木氏は、ほぼ目的は達成されていると判断しているという。実践的な講習会とハッカソンの組み合わせに参加者の多くが満足しており、チューターのサポートやチームでの開発体験を貴重な機会だと感じてもらえたと、手ごたえを語る。

人材育成というと、とかく受講者が受け身の講習が行われがちだが、この施策は講習会からハッカソンまで、参加者が自ら試行錯誤しながら様々なスキルを身につけるアクティブ・ラーニングの機会となっている。瀧田氏は、プログラミングやハードウェアのスキルに限らず、少ないとはいえ制作予算の配分管理や、材料の調達、さらに時間配分やチーム内のコミュニケーションなど、プロジェクトのマネジメントを体験する貴重な機会にもなっていると説明する。

学生から社会人まで、参加者は様々

企業が社員に向けて行う人材育成は、成果の前に、そのコスト・手間暇が大きなハードルとなる。Web×IoT メイカーズチャレンジは、その課題を補完する答えの1つともいえるだろう。今回の東京開催の会場を見ると、30才未満の若手社会人も多く参加しており、大学生や高専生、高校生と混じってチームを組み、真剣にものづくりに向き合う姿が見られた。

Web×IoT メイカーズチャレンジは2019年度も各地で開催される予定だ。立場を問わず関心を持った読者の方がおられれば、将来に立ち向かう可能性のひとつとして、参加や見学を検討してみていただきたい。

関連記事