自由度の高いチェーン店? 25周年を迎えたフレッシュネスの秘密

自由度の高いチェーン店? 25周年を迎えたフレッシュネスの秘密

2017.12.14

フレッシュネスが貫くコンセプトとは

2017年12月14日はフレッシュネスバーガー創業25周年の記念日である。25年前、1992年の同月同日にフレッシュネスバーガーは東京都渋谷区富ヶ谷にオープンした。以来25年。現在は創業者の手を離れ、コロワイドグループのレインズインターナショナルに経営が渡っている。

経営者は変われど、創業の精神は今も変わらず。コンセプトを受け継ぎつつ、「店舗数を増やしてゆきたい」とフレッシュネスの船曵睦雄社長は語る。では、そのフレッシュネスが受け継ぐべきコンセプト、守るべき魅力とは一体、何だろうか。他のハンバーガーチェーンにはない、フレッシュネスバーガー“ならでは”の魅力について、この記念すべき25周年を機に考えてみたい。

チルドレンを生み出したフレッシュネスの影響力

まずフレッシュネスバーガーには、きっと多くの人が思っているであろう“以上”の「ブランド力」がある。

筆者は「フレッシュネスバーガーに憧れて自分のハンバーガー屋を始めた」という人を少なくとも3人知っている。そのうちの1人、京都の井藤典男さんは、都内に住んでいた1990年代の初め、近所に新しく出来たハンバーガーショップに強い衝撃を受けた。その店こそが富ヶ谷のフレッシュネスバーガー1号店だ。

渋谷区富ヶ谷にあるフレッシュネスバーガー1号店。創業は1992年12月14日。もとは劇団の「稽古場」だった

何よりその「手づくり感」に惹かれたという井藤さん。「お金があれば自分でFCをやっていた」というほどに惚れ込んで、構想10年、ついに勤めを辞め、京都の西大路に自身のハンバーガーショップをオープンする。

井藤さんの店、京都・西大路の「九条ねぎバーガー MAHALO」。地元特産の京野菜「九条ねぎ」を使ったバーガーで一躍人気店に

中でも井藤さんが「意外で、ピーンと来た」というフレッシュネスのお気に入りメニューが「ネギミソバーガー」だった。92年の創業時からあったメニューで、今秋、25周年を記念して復刻販売されている。ネギミソバーガーのネギは白ねぎだが、井藤さんは奥さんの実家が京都特産の青ねぎ「九条ねぎ」の生産者であったことから「九条ねぎバーガー」を開発。そんな井藤さん夫妻の店「九条ねぎバーガー MAHALO(マハロ)」は、来年で創業10年を迎える。

25周年を記念して復刻販売された「ネギみそバーガー」。白ネギの辛味に豆板醤を利かせたミソソースとマヨネーズ、黒コショウが絡んで絶大なインパクトを残す逸品

自作の看板もOK、工夫やアイデアがいかせるチェーン店

実はフレッシュネス本部が定めたもの以外にも、「フレッシュネスというブランドを理解し、よりよく表現・アピールしていただけるデコレーションなら」(船曵社長)、店の側で独自にそろえた雑貨などを「自由に置いてよい」という、各店の自主性に任せた大らかな一面がフレッシュネスにはある。

例えば、本や雑誌を置いている店がある。自作の看板を吊り下げている店もある。毎年秋には、ハロウィンの飾りつけを競う「ディスプレイコンテスト」が社内で開かれ、全国各店がそれぞれのアイデアで思い思いに店の内外をデコレートしている。つまり、同じ飾りつけの店は1つとしてないということだ。

町田店には自作の看板がかかる

そんな自由な気風の中から、ついに独自のハンバーガーショップを構えた例もある。大阪の林知一さんは、かつて大阪市内のフレッシュネスバーガー3店のFCオーナーだった。

ポスターだらけの店舗も!

林さんがオーナーだった当時、フレッシュネスはまだ大阪に3、4店しかなく、その知名度の低さに林さんは大いに苦しめられた。その店の名を誰も知らない……それはチェーン店にとって致命的なことだ。まずは名前を覚えてもらうところから始めねばならない。そこで、少しでも店が目立つよう、記憶に留めてもらうようにと、大好きな「ハリウッド映画」のポスターを店内いっぱいに貼りめぐらせて懸命にアピールした。映画のポスターだらけのフレッシュネス――。そんな店舗は日本でおそらく3店だけ、「自分がオーナーのフレッシュネスだけだったろう」と林さんは振り返る。

フレッシュネス"OB"林さんの店、大阪・豊中の「NICK&RENEE」。A4ランクの黒毛和牛を使った直火焼きパティのバーガーで関西でも屈指の人気を誇る

そうした独自の世界をもっともっと追求すべく、FCを7年やった後、3店を他の人へ譲り、林さんはついに"独立"して、豊中市内に「NICK&RENEE(ニック・アンド・レネイ)」をオープンした。2009年に開業して今年で9年目。今では近畿・大阪を代表するハンバーガーの名店に数えられる。もちろん店内はハリウッド映画のポスターだらけだ。

"OB"の林さんがフレッシュネス現役当時、特にお気に入りだったのが、この「スパムバーガー」だ。しかし、そうした社内人気の高さに関わらず、売り上げ成績が悪かったことから、この秋「生き残りキャンペーン」が催され、その結果、晴れて販売継続が決定したという「知られざる」実力メニューである

大ヒットした千葉の「ピーナッツバターバーガー」

"自由なフレッシュネス"を語る上で、もうひとつ注目したいのが「店舗限定バーガー」だ。

文字通り、その店舗「1店だけ」ないし「限られた地域の店舗だけ」で食べられるメニューだが、ポイントは、期間限定などの一時的なものでなく、常時販売されていること。もうひとつは、商品開発の経緯の中に「店側からの提案や発信」も含まれる点だ。

酒々井プレミアム・アウトレット店のスーパースター「ピーナッツバターバーガー」。ベーコンやアスパラをはじめ、バーガー全体の味に絶妙に絡みつく千葉県産ピーナッツバターのコク味の旨さが印象深い傑作

店舗限定メニューは現在11品ある。第1号は2013年、千葉の酒々井プレミアム・アウトレット店で発売した「ピーナッツバターバーガー」。千葉県の名産「落花生」を使ったバーガーで、登場以来、常に同店舗の1番人気、すべての店舗限定バーガー中でも断トツ1番の売り上げを誇る。

この好評を受けて、さらにその2年後、アウトレット施設側からの要望で「菜の花ベーコンチーズバーガー」を発売した。南房総産の菜の花を乗せた一風変わったバーガーだが、こちらもヒットして、今ではピーナッツバターと並ぶ同店舗の二枚看板になっている。

酒々井プレミアム・アウトレット店限定「菜の花ベーコンチーズバーガー」。南房総産の茹でた菜の花にベーコン、チェダーチーズ、からしマヨネーズの組み合わせで、こちらは一転「大人の味」

「名物にうまいものなし」を覆す限定メニュー

どちらも地域の特産品を使った「その店でしか食べられないメニュー」であるばかりでなく、「名物にうまいものなし」の定説を覆す高い商品力と際立つ個性を持っているのが大ヒットの理由だろう。同店舗のFCオーナーである土肥賢一さんは「また食べたくなる魅力がある」とした上で、「何度も利用される"リピーター"がいるのではないか」と登場以来のロングヒットを分析している。

同じく土肥さんがFCオーナーを務める西早稲田店限定のドリンク「サクラクランベリーソーダ」は今年3月、ついに全国販売されるに至った。

同商品は、店をよく利用する学習院女子大学の学生や教授たちとの交流の中から生まれたもので、地域貢献をテーマに、店舗と学生が一緒になって考えた。同校の校章である「桜」の花の蜜漬けを浮かべたドリンクで、西早稲田店限定で1年間売られたのち、"昇格"して、春の期間限定ドリンクとして全国販売された。

「サクラクランベリーソーダ」は西早稲田店限定ドリンクとして登場。春夏はアイス(ソーダ)、秋冬はホット(チャイ)にして同店で1年間売ったのち、今年の春、全国販売された

このように店舗限定メニューの開発は、店舗が入る商業施設からの依頼や地域からの要望がきっかけで実現した例が多い。こうした「ご当地メニュー」開発の要望に対し、船曵社長は、それに応じられる柔軟性もまたフレッシュネス「だからできる」魅力とし、「もっともっとやっていきたい」と前向きだ。さらに、店舗(=現場)から上がってくるアイデアから新商品が生まれる可能性について、船曵社長は次のように語る。

「フレッシュネスバーガーで働くスタッフの中にはハンバーガーが大好きな人、『もっとこうしたい』『こんなバーガーが作りたい』といった"こだわり"を持っている人が多い。そんな中から、フレッシュネスの商品のクオリティに達する優れたアイデア・企画力のある提案がなされたなら、ぜひ検討したい」

あるいは、これはフレッシュネス全社・全スタッフへ向けた船曵社長からの"メッセージ"であるかも知れない。

フレッシュネスバーガーとは

以上から今回、こんなことがわかった。

1.フレッシュネスで働く人の中には「ハンバーガーが大好きな人」が多い

2.各店それぞれに独自の工夫を凝らし、「自分の店」であるかのようにフレッシュネスを楽しんでいる

3.フレッシュネスの魅力を一言で言うなら「手づくり感」。それに影響されてハンバーガー屋を始めた人もいる。おそらくその「手づくり感」がそうさせたのだろう

フレッシュネスバーガーとは、そんなハンバーガーショップである。

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

2019.04.25

携帯3社が「+メッセージ」の機能拡充を発表

LINEと比較した強みは「信頼性」

金融サービスと連携し、住所変更手続きが容易に

NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯大手3キャリアが「+メッセージ」(プラスメッセージ)の機能拡充を発表した。

国内大手3キャリアが「+メッセージ」の機能拡充を発表

サービス開始から1年が経過した「+メッセージ」だが、広く普及した印象はない。「メッセージならLINEで十分」との声も多い中で、普及する可能性はあるのだろうか。

「LINE」とは異なる可能性を秘めた「+メッセージ」

2018年5月に大手3キャリアがサービスを開始した「+メッセージ」は、2019年4月までに利用者が800万人を突破したという。だが「使ったことがない」とか、そもそも「名前を知らなかった」という人もいるのではないだろうか。

+メッセージの利用者は800万人に

「+メッセージ」とは、国際規格のRCSに準拠したメッセージサービスだ。従来のSMSを置き換えるサービスとして、短いテキストだけでなく長文や画像、スタンプを送れるのが特徴だ。

「+メッセージ」はSMSを置き換える上位サービス

一方、日本国内ではLINEが普及しており、月間利用者数は7900万人、そのうち毎日使うユーザーは6600万人もいるという。日本のほとんどのスマホにLINEは入っており、日常的なメッセージ需要はLINEが十分に満たしている状態だ。

だが、どんなにLINEが普及してもSMSがなくなることはない。サービスのID登録やログイン時など、本人確認を必要とする多くの場面でSMSは使われている。SMSは契約時に身分証明書で本人確認を済ませており、信頼性が高いのが特徴だ。

一般に「+メッセージ」は大手キャリアのLINE対抗策と認識される傾向にあるものの、その性質はやや異なる。「+メッセージ」がSMSの延長にあるという特性を活かせば、SMS認証のような本人確認はもちろん、企業と個人の間でのさまざまな手続きに活用できるはずだ。

こうした背景を踏まえて3キャリアが発表したのが、新サービスの「公式アカウント」や、金融各社と連携する「共通手続きプラットフォーム」だ。

仕組みの共通化やMVNO対応など、課題は山積

2019年5月以降に始まる「+メッセージ」の公式アカウントは、企業向けのアカウント機能だ。利用例としては銀行やレストラン、携帯会社を挙げ、登録住所の変更やレストランの予約、問い合わせといったサービスを実現できることを示した。

「+メッセージ」の「公式アカウント」機能

こうした機能はアプリでも提供されているが、スマホにアプリを入れていないユーザーも多く、パスワードを入れてログインするのは煩雑だ。だが「+メッセージ」なら電話番号だけでユーザー本人とつながり、チャットで手続きができるので便利というわけだ。

銀行やレストラン、携帯会社による利用例

だが、サービス提供に向けた課題は多い。公式アカウントの開設は、大手3キャリアが個別に営業をかけ、各社の基準で審査する方式となっている。一見すると無駄な仕組みだが、独占禁止法への抵触を避けるため、3社が競争している建前になっているという。

3キャリア以外への対応として、ワイモバイルなどのサブブランドやMVNOでは利用できない状況が続いている。サービス開始時から指摘されていた問題だが、1年が経過して何の進展もないのは理解に苦しむところだ。

iPhone対応にも課題がある。アプリを入れることで「+メッセージ」は使えるものの、SMSを送受信する標準のメッセージアプリを置き換えるものではない。ここに手を加えるのはiPhoneの基本的なユーザー体験に影響するため、アップルの判断次第になりそうだ。

また、今後の構想として、金融5社を横断した「共通手続きプラットフォーム」も打ち出された。住所変更手続きなど、各社の競争に直接関係しない事務手続きを共通化し、顧客の利便性向上を図るのが狙いだ。

金融5社と「共通手続きプラットフォーム」に向けた検討を開始

最近、フィンテックやキャッシュレスの新サービスが増え、新たに住所や電話番号を登録して口座を作る機会は多くなった。しかし、それに伴い変更の手間も増している。そこで+メッセージを利用したオープンな事務手続きプラットフォームが実現すれば、1回の手続きで全社に情報が伝播するというわけだ。

「+メッセージ」は、携帯市場で競合する大手3キャリアが共通サービスの整備を進めなければならない。その中で「電話番号でつながる」強みを活かした独自の活用法が、ようやく見えてきたといえそうだ。

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日本の掃除機市場を変革した元外交官、日本市場への本格参入を語る

2019.04.25

シャークニンジャ日本法人の社長 ゴードン・トム氏に直撃

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者が語る参入秘話

日本向けの製品カスタム、消費者ニーズの取り入れ図る

全米ナンバーワンの掃除機ブランド「シャーク」。日本では、長年スチームクリーナーのメーカーとして知られていたが、2017年6月に日本法人が設立され、翌2018年夏に日本市場に本格参入した。

第1弾として、同年8月にコードレススティッククリーナーの「EVOFLEX」を発売。翌9月にはハンディクリーナー「EVOPOWER」、10月にはスチームモップ3製品、ロボット掃除機「EVOROBOT」と精力的に新製品を日本市場に投入している。

そこで今回は、シャークニンジャ日本法人の社長を務めるゴードン・トム氏を直撃。同社の日本市場への本格参入の意図と、今後の戦略や日本の掃除機市場や消費者について伺った。

シャークニンジャ日本法人の社長のゴードン・トム氏。英国の元外交官で、20年前にダイソンの掃除機を日本に広め、現在の業界の発展につながる市場の開拓の礎を築いた人物だ

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者

ゴードン・トム氏と言えば、日本の掃除機市場の変革者と呼んでも過言ではない人物。もとはイギリスの外交官として来日。赴任中の1990年代にダイソンの日本法人の初代社長に抜擢された(編集注:イギリスの外交官には副業を認める制度がある)。

当時国内メーカーの寡占状態であった日本の掃除機市場に“吸引力が落ちない”の謳い文句で同社のサイクロン掃除機を展開し、「ダイソン」ブランドの地位確立の礎を築いた。

ダイソンを退いた後は、エレクトロラックス日本法人の社長に就任し、キャニスター型に代わり、現在日本の掃除機市場において主流となった“コードレススティッククリーナー”の人気を定着させた。

外国人でありながら、日本の掃除機市場を知り尽くした“業界のマシュー・ペリー”的存在のトム氏だが、今度は全米ナンバーワンの掃除機メーカーの日本法人の社長として日本に再上陸したのは、どういった経緯なのだろうか。

「2014年にエレクトロラックス社を退職して、以降はマーケティングのコンサルタントの仕事をしていましたが、2016年の9月ごろにシャークから連絡がありました。当時のシャークの売上は北米が95%、イギリスが5%ほど。中国法人を立ち上げ、代理店経由でメキシコにも進出するなど本格的な国際化戦略を進めており、日本も大事な市場の1つと考えていました。そんな中、私のところに相談があり、翌2017年の1月くらいにボストンの本社へ出向き、エンジニアやデザイナーに会って話をし、3~4月ぐらいに日本に展開する商材や現地法人の設立、取引・流通事情、マーケティング戦略の提案をしました」

日本法人の設立にあたっては、最終的にはトム氏自らが初代社長に就任することになり、これまでの経験をもとに、オフィスの設置場所や人材集めなども自ら担ったとのことだ。

参入にあたり日本向けにカスタム

次に着手したのは、日本市場に投入する商材の選定。氏曰く「これまでで最高の掃除機に出会えた」と評する同社の製品で、日本市場参入第1弾に選ばれたのは、「EVOFLEX」。本国では2017年秋に発売され、ボタン1つでパイプを90°曲げて掃除ができるという独特のギミックで注目を集めた製品だが、日本で発売するにあたっては多くが日本向けにカスタマイズされたという。

日本市場への本格参入の第1弾として2018年8月に発売されたコードレススティッククリーナー「EVOFLEX」。本国でおよそ1年前に発売された製品(左)を、サイズからモーター、操作性に至るまで、日本向けに大幅にカスタマイズした上で登場し

「本国で開発された最初の試作機は、私の目から見たら全然ダメでした。まず、大きすぎて日本人の身体にも家にもマッチしていませんでした」

パイプ部分が90°曲がって家具の下にも潜り込みやすいという、製品のアイデンティティーとも言える独自性はそのまま継承しつつも、パーツの着脱をしやすくするためにボタンの改良が施されるなど、日本のユーザーに受け容れられるよう細かい部分にまで配慮がなされた

そこで実際に、試作機を用いて日本の家庭50世帯で6週間のテストを3回行い、その結果、日本向けの「EVOFLEX」は、原型は同じでありながらも本国の製品とは見た目も中身もかなり異なる製品に仕上がった。「例えば、ヘッドブラシは、畳や木材などが多い日本家屋の床に合わせて柔らかいローラーにしました。ダストカップも中身が見える透明な素材で、中のメンテナンスがしやすいように角を丸くしています」とトム氏。

それ以外にも、高音域のモーター音を好まない日本のユーザーのために音を低減したり、高性能なHEPAフィルターの採用や、取り外しやすいメッシュフィルターを採用してサイクロン部の手入れをしやするなど、掃除機の本質性能だけでなく、操作性やメンテナンス性にこだわった改良が多数施された。

こうした改良点について、トム氏は日本とアメリカの掃除機に対する消費者の根本的な考え方や流通ルートの違いを明かす。

「日本の場合には、掃除機や家電製品の購入は、家電量販店が主流ですが、米国の場合にはウォルマートなどの巨大スーパーで購入するケースが一般的です。そこでは日本のように実際に製品に手で触れて試してみるという機会がありません。そのため、製品への信頼度が重要で、ブランド力というのはとても大事なのです」

日本でも昨秋発売された同社のロボット掃除機。本国ではそのおよそ1年前に発売されているが、ほぼアイロボット社の独占市場であったアメリカのロボット掃除機市場において、初めてアイロボット以外で2桁のシェアに躍り出ている。

2018年10月発売のロボット掃除機「EVOROBOT」。掃除機メーカーとしてのブランドへの信頼性と、十分な機能・性能と消費者が受け入れやすい価格帯で、アイロボットの「ルンバ」以外で初めて10%を超えるシェアを獲得したという

さらに、米国の消費者は「掃除機が必要」という需要があった上で、その用途を満たすための機能と予算を照らし合わせて製品を選ぶというのが購入の意思決定。ゆえに、デザインやメンテナンスといった要素は日本人ほど重視されず、むしろ「さまざまなユーザー層の需要に応えるために、価格によって付属品を選べることが重要なのです」と話す。

20年前の日本市場は「つまらなかった」

一方、約20年前に日本の掃除機市場に乗り込み、「日本の掃除機は紙パックのキャニスター式ばかりで個性がなく、つまらなかった」と当時を振り返るトム氏。業界の“エバンジェリスト”として、日本市場においてシャークブランドのプレゼンスをどのように高めていくのかに注目される。

そこで目を向けたのが、昨年9月に発売された「EVOPOWER」だ。本国での発売後、日本向けにカスタマイズして上陸した「EVOFLEX」とは異なり、日本をメインマーケットとして、日本の消費者のニーズを多く取り入れて開発されたハンディクリーナーで、その後に英国でも発売されているとのこと。

さらに、今年1月には長崎県の無形文化財である「臥牛窯」とコラボレーションし、「EVOPOWER」に絵付けを施した限定商品を発売するなど、"日本発"の掃除機を送り出している。今後もこうした商品展開や戦略を積極的に進めていく方針なのだろか。最後に、シャークニンジャの展望について訊ねてみたところ、次のように語ってくれた。

2018年9月発売の「EVOPOWER」。コンパクトで部屋に設置しやすくサッと使える機動力のよさと、生活感を感じさせない外観でインテリアにもなじみ、部屋に常設しやすいと好評だ
「臥牛窯」とのコラボレーションで生まれた限定の「EVOPOWER」。プロモーションというよりも、どちらかと言うと日本の伝統工芸贔屓のゴードン社長の“趣味”で作られたようだが、今後も相性がよいものがあれば実現していきたいとのこと

「シャークの掃除機は、あくまでユーザーの使い勝手が最優先です。ゆえに、EVOPOWERも持ちやすく、どこにでも置いて使いやすいサイズ・形状を追求したハンディクリーナーですが、空間に置かれた時のこともイメージし、見た目のデザインにもこだわって開発された、これまでになかった商品だと思います。そういう意味ではEVOPOWERのデザインはまさに"機能美"と言えます。臥牛窯は、単に私が好きだと言う理由でやりました(笑)。積極的にとまでは言えませんが、伝統工芸が好きなので、実現できれば個人的には今後もコラボ商品を展開してみたいですね」

ダイソンで日本の掃除機市場に風穴を開け、エレクトロラックスで新たな掃除スタイルを日本に定着させたゴードン・トム氏。掃除機メーカーとして全米で絶対的なブランド力を誇るシャークニンジャを率い、今度はどのような手腕を奮うのか楽しみである。

長年の経験・知見を武器にした"掃除機"を通じた外交で、日本と諸外国をつないで、今後も世の中の掃除・家事スタイルやあり方を変えていってくれることへの期待が寄せられる、ゴードン・トム氏
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