中・韓との競合も視野? トヨタとパナソニックが車載電池で組む理由

中・韓との競合も視野? トヨタとパナソニックが車載電池で組む理由

2017.12.18

車載用角形電池で業界ナンバーワンに

トヨタ自動車とパナソニックは12月13日、車載用次世代電池の協業検討合意で記者会見を開いた。会見には豊田章男社長と津賀一宏社長の両社トップが出席した。

記者会見に出席したトヨタの豊田章男社長(左)とパナソニックの津賀一宏社長

トヨタとパナソニックは、これまでも共同出資会社「プライムアースEVエナジー」(PEVE)でハイブリッド車(HV)向け電池を製造・供給する関係にあったが、現状ではトヨタが子会社化し、両社の関係は稀薄になっていた。

パナソニックは、むしろ米国の電気自動車(EV)ベンチャーであるテスラとの電池供給関係を深めていた。米国のネバダ州に量産電池工場「ギガファクトリー」を合弁で設立し、2017年1月からリチウムイオン電池の生産を開始してテスラのEVに供給している。

こうした流れのなかで今回、トヨタがパナソニックに呼びかける形で、改めて車載用電池の協業化を図ることとなった。まずは両社で業界ナンバーワンの「車載用角形電池」を実現し、さらに全固体電池の開発にも結びつけて、ポスト・リチウムイオン電池の競争力強化へ「日本連合」を形成していく構えだ。

トヨタとパナソニックは、協業関係をクローズドなものとするつもりはないという(画像はトヨタ「プリウス」)

課題も多いEV、テスラも量産には苦戦

世界に広がる「ガソリン・ディーゼル車規制」により、「EV大転換」の見出しが躍り、EV時代到来とも言われる昨今だが、それには課題も多い。電池などのコスト削減や電池の長寿命化、コバルトやリチウムといったキーメタルの大幅増産、電力供給・充電インフラの充実などが解決すべき課題だ。

パナソニックがタッグを組む米テスラも、量産EV「モデル3」の生産立ち上げには苦慮している。今回、トヨタとパナソニックが改めて次世代電池の共同開発に乗り出すのも、EVを含めた電動車で世界をリードする体制づくりを進めようとする狙いが合致したということだろう。

野心的な目標数値だが、別の見方をすると…

豊田社長は、トヨタの電動化戦略の中長期目標をこの会見で明示した。「地球温暖化とエネルギー問題に直面する中で、2つのルール対応が求められている。1つはZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制であり、もう1つは燃費規制だ。ZEV規制より燃費規制の方が圧倒的に厳しい。これに対応するためにも電動化のフルラインメーカーであることは優位性を持つ」とする。

この考えに基づき、トヨタは2030年に世界販売の50%、台数でいえば550万台を電動車両とする方針だ。その内訳として豊田社長は、450万台がHVとプラグインハイブリッド車(PHV)、100万台がEVと燃料電池車(FCV)との目標値を打ち出した。

しかし、これは別の見方をすれば、2030年になっても、トヨタ車世界販売の半分は内燃機関のエンジン車が残るということである。

HVとPHVは内燃機関も積む電動車だ(画像はトヨタ「プリウスPHV」)

ここで、世界の自動車メーカーが掲げている主な電動化目標を確認しておきたい。ボルボは2019年、ジャガーは2020年に全モデルを電動車にすると宣言。メルセデス・ベンツのダイムラーは、2025年に全売上高のうち15~25%をEVにするとしている。BMWは2025年にPHVの割合を15~20%に増やす方針。フォルクスワーゲン(VW)は2030年までに全モデルでEV・PHVを設定するとしている。ホンダは2040年に世界販売の3分の2を電動車とする方針だ。

これを見ても、自動車メーカーは全てのクルマをEVに切り替えると言っているわけではなく、世界各国の環境規制やエンジン車規制への対応で、「電動車」促進戦略を打ち出していることが分かる。ボルボは中国、ジャガーはインドに親会社がある関係上、政府がらみで国策としてEV化を打ち出しているとも考えられる。

ボルボは中国、ジャガーはインドに親会社がある。中国とインドはEV化に積極的な姿勢を示す国だ(画像はジャガー・ランドローバーのスポーツ・サルーン「XE SV PROJECT 8」)

パナソニックがにじませた生き残りへの危機感

一方で、パナソニックがトヨタの呼びかけに応じた背景には、テスラ依存の払拭という目論みがあるのかもしれない。パナソニックの津賀社長も「電池は電動車普及のカギを握るデバイス。トヨタと協力してナンバーワンの電池をつくらないと生きていけない。将来を見てどこに伸びしろがあるか、一緒にチャレンジしていきたい」と述べた。

豊田社長も「電動車両は普及してこそ、地球環境に貢献することになる。そのためにも、他の自動車メーカーとも仲間で一緒にやれるようにしていきたい」と、電動車の仲間づくりに意欲を示した。

電池を巡る各社の動きは

トヨタとパナソニックの車載用電池の関係は、1996年12月にトヨタ60%、パナソニックグループ40%の出資で「パナソニックEVエナジー」(当時の社名)を設立したことを契機に深まった。これは翌1997年12月に登場するトヨタ初のHV「プリウス」に載せるニッケル水素電池を作るための協業だった。

1997年に登場した初代「プリウス」。トヨタはプリウス発売から20周年となった今年、HVの累計販売1,000万台を達成した

その後、2010年には第三者割当増資を実施し、トヨタ80.5%、パナソニックグループ19.5%と出資比率が変化した。トヨタによる子会社化で、社名も「プライムアースEVエナジー」に変更となった経緯がある。

日本の車載電池関連では、この他に三菱自動車とGSユアサの合弁「リチウムエナジージャパン」、ホンダとGSユアサの合弁「ブルーエナジー」がある。日産はNECおよびNECエナジーデバイスとの合弁「オートモーティブエナジーサプライ」を持っていたが、中国ファンドに売却した。

日産はバッテリー調達をフリーハンドで行う姿勢を示す(画像は日産のEV「リーフ」)

一方、海外では韓国のLG化学やサムスンSDIが電池工場で増設・増産の動きを示している。また、中国政府は2019年から、自動車メーカーに対し、販売台数の一定比率をEVなど電動車とするよう求める規制(新エネルギー政策:NEV規制)を導入し、EV領域における地場メーカーの競争力向上を狙う方針を示す。完成車と電池を手掛けるBYDなど、すでにEVで先行している中国企業もある。

仕組みづくりで日本は先行できるか

トヨタとパナソニックによる協業検討は、単なるEV化に向けた取り組みということではなく、「電動車」のウェイトが高くなるトレンドを受けて、世界的な競争力の強化に向けたカギを握る動きとなりそうだ。次世代電池を共同開発するほか、電池の規格づくりやリユース・リサイクルの仕組みづくりなどでもリードしていくことが求められる。

また、パナソニックとの協業検討合意を受けてトヨタは、12月18日に寺師茂樹副社長による「トヨタの電動車普及に向けたチャレンジ」に関する説明会を開催するが、その内容も注目されよう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。