スマホは「ほぼディスプレイ」時代に、JDIが語る「技術優位性」

スマホは「ほぼディスプレイ」時代に、JDIが語る「技術優位性」

2017.12.19

ジャパンディスプレイ(JDI)は、かつての日の丸ディスプレイ企業の6社が集まってできた企業だ。日本の高い技術力、そして高いシェアを誇った分野の結晶とも言える存在だが、現在は経営再建中という状況にある。ジャパンディスプレイを支えるコア技術について、同社の執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(研究開発統括部統括部長)である瀧本 昭雄氏が説明を行った。

ジャパンディスプレイ 執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(研究開発統括部統括部長) 瀧本 昭雄氏

90%以上がディスプレイになる近未来のスマホ

瀧本氏は、「ディスプレイには多数のTFT(薄膜トランジスタ)が使用されている。ひとつひとつの画素に入っているTFTがディスプレイの画質を決めることになる。ジャパンディスプレイのコア技術は薄膜トランジスタのひとつの方式であるLTPS(低温ポリシリコン)に尽きる」と話す。

LTPSは、透過型LCDや反射型LCD、そして有機ELといったさまざまなデバイスのベース技術となるため、将来の多種多様なデバイスにとって重要な技術となる。現時点でも、メジャーなバックプレーン技術として成長を遂げており、「まもなく、アモルファスシリコンと構成比が逆転することになる」(瀧本氏)。ジャパンディスプレイは1984年からLTPSの製品化に取り組んできたうえ、国内にある生産拠点もすべてLTPSの生産を行っている。

特にこの先進性が生きるのが「FULL ACTIVE」と呼ばれる製品だ。LTPSの特徴のひとつが「デザインの自由度」であり、現在のスマートフォンのトレンドとなりつつある「狭額縁化」と「曲面化」「ベンダブル化」で大きく効果が発揮できるという。

「スマートフォンの画面専用率は2012年に60%だったものが、2015年は70%、2017年では80%になってきた。このトレンドは今後も続き、『画面占有率90%』を超える仕掛けが必要になってくる。FULL ACTIVEの方向性に間違いはなく、更なる狭額縁化や大画面サイズを提供できる」(瀧本氏)

瀧本氏によれば、単に「狭額縁化を実現する」と言っても、狭額縁化は3つの技術によって実現できるものだそうだ。

  • 0.5mmという狭いところにまで回路を作り込むことができる狭額縁技術

  • LEDから表示部までの光学設計の最適化により光導入部をミニマム化するバックライト技術

  • COF(リシコンオンフィルム)による高密度実装技術

中型液晶や切り欠け液晶も、多彩な技術力をアピール

また、LTPSは異形状ディスプレイについても応用度が高い。こちらも、ゲートドライバ回路の内蔵化や、ゲート線と信号線の負荷調整による電気的時定数の最適化、高精度な整形技術や額縁部分の構造といった外形整形技術などで成り立つ。

「異形状ディスプレイは曲線や穴あき、切り抜きという整形が可能。6.6型のスマートフォン向け異形状ディスプレイの場合、ラウンドコーナーではR6mm、ガラスでR6.6mmでの整形ができ、6mm×6mmでの切りかけが可能である。今後、需要にあわせて製品化していくことになる」(瀧本氏)

そのほかにも、同社のコア技術であるLTPSを生かしたいくつのかユニークな製品を開発している。例えば、高透過・透明ディスプレイでは、偏光板やカラーフィルターがなくても従来の透明ディスプレイの1.5倍以上の透過率となる70~80%を実現する。ARや車載、ショーケースなどでの利用提案を行うという。

また、「LTPSの最高峰」と銘打つ17型高精細8K4Kディスプレイでは、500ppiで120Hz高速駆動の製品を開発し、すでにNHKが利用している。また、約130度の広視域角での3D表示が可能な8K4Kディスプレイをベースにした広視野角ライトフィールドディスプレイも開発し、左から右に動きながら見ると、静止画の3D画像の影が視点にあわせて移動してみえるという次世代3D映像ディスプレイも実現している。

他方で超低消費電力反射型ディスプレイについてもすでに量産化。32型フルHDのディスプレイの画素にメモリ(SRAM)を内蔵し、200分の1という超低消費電力を実現しており、「屋外での視認性を確保しながら、大きな電源を確保しなくても利用できる」という。

一方で、この技術説明会の目玉は、仮想現実ヘッドマウントディスプレイ(VR-HMD)専用の3.6型803ppi低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイだった。2018年春にサンプル出荷を開始し、2018年上期には1000ppi超のディスプレイを開発する予定だという。

「VR酔いなど、ユーザーの目や脳に負担をかけないためにVR-HMDが必要だが、現在のスマートフォンディスプレイでは不十分。スマートフォンディスプレイをVR向けに改良するか、VR専用機が必要である」(瀧本氏)という環境のため、同社はVR専用機向けの液晶ディスプレイを投入し、市場ニーズに対応していく。

JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ 第1事業部 商品部応用技術1課 課長 原山 武志氏

JDIのVR向けの取り組みでは、2016年10月に「651ppiのVR専用機向け液晶ディスプレイ」を製品化し、すでに量産体制に入っているが、「レンズ越しに見ると、画素の固定パターンが見える場合がある。今回発表した803ppiの精細度を実現することで、画素の格子が固定パターンとして見える現象の『スクリーンドアフェクト」がなく、画像のリアリティを向上できる」(JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ 第1事業部 商品部応用技術1課 課長 原山 武志氏)という。

ただし800ppiがゴールではなく、HMDを小型軽量化するためにはディスプレイを小さくし、レンズの倍率を大きくする必要がある。これには1000ppi以上の高精細化が必要であり、実際に引き合いもあるという。

「(1000ppi級では)画像のリアリティを追求できるだけでなく、ディスプレイの解像度を維持したまま小型化、さらにはコストダウンにもつながる」とし、「ジャパンディスプレイは、VR専用高精細ディスプレイ分野において、リーディングポジションを維持していきたい」と原山氏は話す。

ただ、VR-HMD市場は市場全体の動向が読みづらく、調査会社によって需要動向にばらつきがある。その点については「300ドル以下の手頃な価格の製品が出始めたことで、ハードウェア市場がようやく広がる気配が出てきた。2018年以降の立ち上がりが期待できる」とした。

技術的な課題では、表示解像度だけでなく、データ量や転送速度の課題もあり、有線ケーブルによるHMDシステムが主流となっている。この点については、スマートフォン向けに5Gが2020年より提供されるため、アプリケーションやサービスの広がりが生まれ、ひいては「VR-HMD専用機の市場拡大が見込まれる」と予測する。これらの市場予測から、同社はVR-HMD専用機市場で、2018年度に数十億円規模の売り上げ規模を目指す。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。