新幹線は年末年始輸送をどう乗り切っているのか?

新幹線は年末年始輸送をどう乗り切っているのか?

2017.12.19

毎年、ゴールデンウィーク、旧盆、そして年末年始が、鉄道をはじめとする公共交通機関がもっとも混雑する「繁忙期」と見なされている。曜日配列にもよるが、2017~2018年ならば、東京発の下りが12月29日、上りは1月3日が利用客数のピークとなることが予想される。

繁忙期になると、マスコミでは「下り『のぞみ○号』では、自由席の乗車率が150%に達した」といったニュースを流す。新幹線のような長距離輸送用の車両では、定員=座席の数だ。東海道新幹線のN700系は定員が1両100人前後であるため、乗車率150%ならば50人ほどが通路やデッキに立っている状態だ。こうなると、車掌や車内販売が車内を巡回することも困難である。

東京駅に並ぶ新幹線の電車。繁忙期には長大な列車がずらりと利用客を待つ

指定席は在庫が効かない商品

けれども、すべての列車が大混雑になるわけではない。マスコミは、いちばん極端なケースを流しているにすぎない。

ピークとなる日の朝夕などはともかく、それ以外の日や時間帯では、指定席が満席となる列車こそ多いものの、1人や2人なら何とかなるものだ。列車の指定席は払い戻しや変更が常に行われており、コンピュータシステムに戻された席が、しばらく次の買い手を待っていることが十分にありうる。

公共交通機関の座席は、いわば時間と空間を売っている。在庫が一切、効かない商品である。「12月31日の『のぞみ1号』、東京から新大阪まで、16号車1番A席」は、その日時、その列車、その区間にだけしか存在せず、空席のままであれば完全なロス。経費だけがかかり、収入は得られない。

莫大な需要に対し鉄道各社はどのように対応し、その一方で、民間企業として収入を取りこぼさないよう、どのように考えているのであろうか。

時間と空間を販売している以上、形がある商品のように在庫を売り切って、それでよしとはならない。ロスを多少、抱えてもよいから、できるだけ供給を増やし、需要に極力、応じることが最善策となる。

ただ、鉄道車両は新製するだけで、在来線は1両約2億円、新幹線では1両約3億円ほどかかる、かなり高い設備投資になる。需要のピーク時に合わせて用意するのは当然なのだが、需要は季節や曜日、時間によって大きく増減する。閑散期に遊んでいる車両が、少ないに越したことはない。これは、朝夕のラッシュに対応する通勤型電車にも言える。

鉄道車両は、法令で定められた定期検査を行わなければならない。そこで、繁忙期にはこれを行わず、営業に投入できる車両を最大数確保し、その代わり閑散期に集中して検査を実施する方策がよく取られる。繁忙期は一般的には休暇の時期に当たるため、検査に当たる係員の労務管理上も、これは理にかなったやり方だ。ただ、検査工場の能力が、どこまで作業の集中に耐えられるかが課題ではある。

東海道新幹線の需要と供給のバランス

参考までに、JR東海・JR西日本が所有し、営業に使える東海道新幹線向けの車両は、2017年度初頭の段階で、主力のN700系が16両編成129本。臨時「のぞみ」や「ひかり」「こだま」用の700系が16両編成36本。合わせて165本ある。

左:一見、区別がつかないが、この「のぞみ189号」は多客に対応する臨時列車。右:臨時に運転される列車は、表示される列車番号で区別できる。こうした列車が、繁忙期には最大限増発される

編成1本当たりの定員(座席数)は、N700系、700系とも1323人。12月28日から1月4日までの繁忙期において、JR東海は2016~2017年には1日平均405本の列車を東海道新幹線で運転した。席数では約53万5000席/日、片道当たり約26万8000席/日となる。

これに対し、下りのピークとなった2016年12月29日の利用客数は約29万6500人、同じく上りは2017年1月3日で、約31万7000人あった。単純に比較すると供給不足のように思えるが、利用客は東海道新幹線の全区間、乗車するわけではない。

例えば東京から名古屋まで使われた「のぞみ」の席に、名古屋からは別の利用客が座るというように、同じ列車の同じ席を何人も使うことは、ごく当たり前にある。それを考え合わせると、一部の利用客が集中する時間帯を除けば、需要と供給のバランスはうまく取れていると考えられよう。

左:N700系より一世代前の新幹線電車、700系。現在も臨時ながら「のぞみ」に使われる。右:現在の東海道新幹線の主力車両である、N700系

ピークを避けるのが、やはり楽

もちろん需要が大きい時間帯には、1時間あたり片道「のぞみ」10本、「ひかり」2本、「こだま」2本が運転可能な、東海道新幹線のダイヤがフル活用される。臨時の「のぞみ」も最大限、増発される。

利用する客の方も、こうした実状を知り、利用が集中することが予想される日や時間帯に無理に乗ろうしないこと。少し日時をずらせば、意外に楽に帰省できるものだ。

現代ではインターネット予約も普及している。それならば空席検索も容易なので、「みどりの窓口」の長蛇の列に並ぶ必要もない。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。