ミシュラン最新作で考える、日本の冬にスタッドレスが必須な理由

ミシュラン最新作で考える、日本の冬にスタッドレスが必須な理由

2017.12.20

ウインタードライブの必需品と言えるのがスタッドレスタイヤ。なぜスタッドレスタイヤは雪に強いのか。実際に走った結果はどうなのか。日本で初めてスタッドレスタイヤを発売したミシュランの最新作でテストしてみた。

ミシュランの最新作をテストし、日本の冬にスタッドレスが必須な理由を考えた

気温の割に雪が多い日本、冬の路面はどうなるか

今年もまた雪の季節がやってきた。スキーやスノーボードなどのウインタースポーツが好きな人は、シーズン到来と心踊らせているかもしれない。しかし同時に、雪道ドライブという難題に直面する季節でもある。

日本は緯度や気温の割には雪が多い国だ。数年前に海外メディアが発表した統計によれば、人口10万人以上の世界の都市で積雪量が多いのは1位青森市、2位札幌市、3位富山市だった。

ここで注目したいのは気温が高めということ。雪道が滑るのは、雪や氷と靴やタイヤの間に水の膜が存在するためだ。北極圏のようなマイナス数十度にもなる地域では、この水の膜ができないので、むしろ滑らないという。

気温が高いと雪が溶けやすい。雪が解ければ水になり、再び寒くなれば氷になる。道路ではクルマが繰り返し通ることで硬くて平らな圧雪路になり、昼夜を経て氷に変わる。これがアイスバーンだ。

日本は世界一滑りやすい雪道がある国かもしれない。だからこそスタッドレスタイヤが必須と言えるのだ。

世界一滑りやすい雪道は日本にあるのかもしれない

スタッドレスのメカニズムを復習

スタッドレスタイヤはなぜ滑りにくいのか。理由はトレッド面(接地する部分)に細かく刻まれた「サイプ」と呼ばれる細かい溝にある。このサイプが路面の水分を吸い取ることで、タイヤと路面が接するようにしている。さらに加減速やカーブでタイヤに力が加わると、サイプがエッジに変わる。これが路面を掻くことでグリップ性能を発揮できるという仕組みなのだ。

東京のように雪があまり降らない地域に住んでいる人は、チェーンで十分と思うかもしれない。しかしチェーンは舗装路では乗り心地が悪いし路面も傷める。関越自動車道の関越トンネルのように、金属チェーンは入口で外し、出口で装着するというルールの場所もある。クルマで移動する機会が多い人は、スタッドレスタイヤのほうが便利で快適であることが分かるだろう。

そんなスタッドレスタイヤを日本で最初に発売したのは、日本のタイヤメーカーではない。今から130年近く前の1889年に設立され、飲食店や宿泊施設のガイドブックでもその名を知られるミシュランだ。

開拓者ミシュランに“別格”の評価

ミシュランは1982年、日本でいち早くスタッドレスタイヤを発売して以来、このカテゴリーのリーダー的存在であり続けてきた。1991年には日本に研究開発センターを開設。ここで世界的にも雪が多い日本の道に最適なスタッドレスタイヤを生み出してきた。

日本のメーカーもスタッドレスタイヤを出してはいる。しかし雪国のドライバーに聞くと、ミシュランは別格という言葉を聞く。歴史の長さだけが理由ではなく、日本の雪道に合ったスタッドレスタイヤを送り出すべく、絶え間ない技術開発を進めていることもアドバンテージに結び付いているようだ。

日本で初めてスタッドレスタイヤを発売し、その後も日本に合ったタイヤの技術開発を続けるミシュラン

新採用のコンパウンド「Mチップ」の効果とは

今年8月に発売した新製品の「X-ICE3+」(エックスアイス スリープラス)では、クロスZサイプとマイクロポンプと呼ばれる微小な穴とサイプが水膜を取り除き、ジグザグ型のエッジがグリップ性能を高める「トリプル・エフェクト・ブロック」、3方向に刻んだサイプでさまざまな運転シーンに対応する「バリアブルアングルサイプ」、路面への接地圧力を均等にした「マックスタッチ」など、前作から引き継いだ技術に加え、「Mチップ」と名付けられた新しいコンパウンドを採用したことが特徴だ。

タイヤの摩耗が進んでいくと、表面に出たMチップが溶けることによって無数の穴が出現し、この穴が水を吸い取ることで凍結路でのブレーキ性能が向上しているという。スタッドレスタイヤは磨耗が進むにつれて性能が低下していく。ミシュランはこれに対し、従来から50%磨耗してもサイプが残る設計でロングライフを実現していた。今回のMチップはその長所を引き伸ばす技術として注目に値する。

「Mチップ」の仕組み

もうひとつ、ミシュランのスタッドレスタイヤの特徴として挙げられるのが、雪や氷に覆われない通常の舗装路でも安全快適に走れること。凍結路面での性能は申し分ない反面、舗装路ではステアリングの感触が頼りなくなったりして不安を抱くタイプではないということだ。以前からミシュランが追求しているトータルパフォーマンスが形になったものと言える。

こうした特性ゆえ、ミシュランのスタッドレスタイヤは降雪地帯以外でも幅広い支持を集めている。そこで筆者も、最新作X-ICE3+を自分の愛車であるシトロエン「C4カクタス」に装着し、雪が降り積もる新潟で性能をチェックしてみた。

愛車シトロエン「C4カクタス」でミシュラン「X-ICE3+」を試した

ミシュランの最新作でシトロエンを走らせてみた

東京から新潟県の入り口にあたる越後湯沢までは、関越自動車道で約2時間掛かる。その間は時速80~100キロでの高速巡航が続く。しかしX-ICE3+は、良い意味でスタッドレスタイヤであることを感じさせない。

とりわけ好感を抱いたのはステアリングの反応で、終始カチッとしていて正確だった。高速コーナーでのマナーも、いかにもタイヤの剛性が高い感触で、不安感はない。ノーマルタイヤと同じ印象のまま2時間を過ごすことができた。

越後湯沢の市街地は除雪が行き届いているので、ノーマルタイヤでも問題なく走れそうだ。しかし、周辺の山道に入ると状況が一変する。

日が当たっている場所は路面が乾いているのに、日陰になると突然、路面が白くなる。コーナーを曲がった先が真っ白ということもあり、一瞬たりとも気が抜けない。しかも路面を見ると、表面が光っている。アイスバーンになっていることが想像できる。

クルマを路肩に止めて歩いてみると、やはり凍結していた。気を抜くと転倒してしまいそうなほど滑る。ここで改めてX-ICE3+の性能に驚かされた。ツルツルの路面で平然と加速し、曲がり、止まっていたのだから。

アイスバーンでも加速し、曲がり、止まる

写真の下り右コーナーもアイスバーンに近い状況だった。ノーマルタイヤではブレーキを踏もうがステアリングを切ろうが反応せず、そのまま雪壁に激突となっていただろう。X-ICE3+はこうした状況でも、コーナー入口でブレーキを掛ければ確実に減速し、ステアリング操作に対して向きを変え、出口が見えたところでアクセルを踏むと加速していった。

ますます重要性を増すスタッドレスタイヤ

スタッドレスタイヤとて万能ではない。床がつかえてしまうほどの大雪では能力が発揮できないし、凍結した道で思い切りブレーキを踏めばABSが作動する。しかし、急のつく運転をしなければ、歩くことも満足にできないアイスバーンを確実に走破する。マジカルという言葉を使いたくなるほどの性能だ。

東京も3年前には2度の大雪に見舞われ、スリップ車両が続出した。異常気象が続く現在、温暖な地域でもいつ大雪に見舞われるか分からない。クルマで日常的に移動する機会の多い人は、やはりスタッドレスタイヤの装着を前提として欲しいし、その場合にはやはり、技術も経験もあるミシュランがお勧めであると痛感した。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。