パナソニックが歩んだ2017年、キーワードは「車載」「外様」「コト」

パナソニックが歩んだ2017年、キーワードは「車載」「外様」「コト」

2017.12.20

2017年の家電業界はある種堅調な一年だったようにも思える。

シャープは12月に東証一部復帰を果たし、復活が鮮明となった。一方で、再建に向けた動きが迷走を続けた東芝だが、ウェスタン・デジタルとの訴訟リスクを回避し、日本を主軸とした投資連合からの資金調達がうまく行けば、ようやくその道筋に決着がつくという段階に入ったと言えよう。

そうした中で、2017年度末の2018年3月にパナソニックは創業100周年を迎える。この老舗企業もまた、地道ながらに、そして着実に体質転換の成果を挙げた1年だったと言えるだろう。

テスラとトヨタ、車載事業で大規模提携

米ネバダ州 ギガファクトリー

パナソニックの1年間は、その軌跡を3つの出来事に集約できる。その一つは成長分野として経営資源を集中させた車載事業だ。

2017年1月に米テスラとの協業を発表し、米ネバダ州の「ギガファクトリー」でテスラ向け二次電池の生産に乗り出した。そして先日発表された同じく電池分野におけるトヨタ自動車との協業は大きな話題を呼び、電池分野のトップランナーとしての面目躍如といったところだろう。

車載事業は、2018年度に2兆円の売上高を目指しており、そのうち93%が受注済みという高いレベルにある。そうした事業環境に加え、「次の成長」を見据えてテスラやトヨタとの提携にこぎつけたことは、今後のパナソニックに大きな意味を持つ。両社は自動車業界に対するビジョンやリーダーシップを発揮するポジションにそれぞれ立っており、業界全体への影響力を持つためだ。

一方で、テスラのモデル3は生産の自動化が遅れ、量産体制が未だに整っていない。これを「テスラリスク」として業績圧迫への懸念を示す声もある。パイの拡大や業績安定を図るためにも、この2社との提携を軸に、戦略的提携を他メーカーまで拡大できるかが当面の課題だろう。

もちろん、パナソニックは車載ビジネスの可能性を電池分野までに留める考えはない。

代表取締役社長の津賀 一宏氏は、近い将来におとずれる自動運転時代に、車内空間が「走るリビングルーム」になると語っている。エンジン音がなく、ガラス部分が少なくなれば、オーディオルームとしての進化が見込まれる上に、「空質」の提案や家電製品が応用できる範囲も広がる。

走っている時のみならず、自宅に駐車している際にも、ひと部屋増えたような形で居住空間の提案できるようになるというビジョンもある。「ここ(居住空間の提案)に入れば、それはパナソニックの得意分野。新たなビジネスを作ることができる」(津賀氏)というわけだ。

提携を発表したトヨタ自動車とパナソニック。両社社長の豊田章男氏(左)と津賀一宏氏(右)が最初に出会った場所は、豊田佐吉記念館だったという
パナソニック 代表取締役専務 樋口 泰行氏

2つ目の出来事は、外部人材の積極的な登用だ。その象徴的な例が、IT業界からパナソニック入りした2人の外様だ。

1人は、代表取締役専務の樋口 泰行氏、もう1人は馬場 渉氏である。

樋口氏は、2007年から2015年まで日本マイクロソフトのCOO、社長を務めたのち、3月まで会長として活躍していた。4月の入社後はパナソニックのコネクティッドソリューションズ 社長に就任し、さっそく東京に同カンパニーの本社機能を移転した。「門真発想のままでは限界がある」として、物理的な仕掛けも加えながら、パナソニックが持つ伝統的な姿勢や考え方を根本から変える取り組みを開始している。松下電器産業に新卒で入社した樋口氏だからこそできる改革にも期待したいところだ。

一方で、SAPジャパンのバイスプレジデントから転身した馬場氏はビジネスイノベーション本部 副本部長に就任。シリコンバレーに拠点を置き、シリコンバレー流のデザインシンキングなどの手法を持ち込み、パナソニックのモノづくりを変えようとしている。先頃発表した「Panasonicβ」はその取り組みのひとつだ。

いま、パナソニック社内には、「タテパナ」と「ヨコパナ」という言葉がある。

従来のような事業部を中心とした垂直型の組織構造によってビジネスを行うのが「タテパナ」。そして、横のつながりをベースにして、既存の枠にとらわれない仕組みで、新たなものを生み出すのが「ヨコパナ」だ。「タテパナ」と「ヨコパナ」がつながる体制を作り上げたことで、スピード感を持った開発はすでに実証した。あとはこれを短期間に事業化し、収益につながる仕組みに発展させることができるかが鍵だ。

パナソニック ビジネスイノベーション本部 副本部長 馬場 渉氏

100周年は通過点でしかない

最後の出来事は、100周年を機に開発した「Creative! セレクション」だ。第1弾の商品群では、ななめドラム洗濯乾燥機やロボット掃除機、ルームエアコンなど、13商品を発表した。

残念ながら、第1弾の商品そのものはインパクトが欠ける。ただ、約3年前から新たな家電商品の開発を進めてきたなかで、「モノづくりの会社から、コトづくりの会社」へと移行する仕掛けがいくつか用意されていた。「成果」と呼べるレベルのものが明確には見えていないものの、ちょうど100周年となる3月には第2弾の商品が発表される予定だ。

Creative! セレクション

そしてパナソニックは100周年を「区切り」ではなく「通過点」と捉えており、Creative! セレクションは2020年まで継続して発表していくという。同社は2018年度に、4500億円以上の営業利益を目標に掲げている。「増収増益に転じる年」とした2017年度業績見通しからは約1000億円の積み上げが必要という高いハードルにパナソニックは挑むことになるが、創業100周年をどんな姿で迎えるのか。

100周年の節目を迎える2018年の新たな一手を明確に打ち出せるのか、注目しておきたい。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。